パワーに特化した土単の強さの秘訣を聞く! 「MASTERS2018」神戸優勝者インタビュー

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今回は「MASTERS2018」神戸大会で優勝したabcさんのインタビューを掲載します。「Opus V」環境で躍進を続ける土属性の強さの秘訣を聞きましたので、土属性デッキを使おうと思っている人はもちろん、土属性デッキの弱点を探りたい人も必見です。

◆はじめに

どうもこんにちは!『FF-TCG』プレイヤーのたるほです。

先日、関西初の開催となった「MASTERS2018」神戸大会に参加してきました。
横浜から深夜バスで会場入りする予定でいたので夜まで横浜近郊で友達とデッキを調整していたのですが、間違えて東京駅発のチケットを購入していたため、結局翌朝に新幹線で行くことになりました……。
ほかにそんな人はいないと思いますが、皆さんも深夜バスチケットの発券には注意しましょうね(笑)。

神戸大会には「風氷チョコボ」で挑んだのですが、3勝3敗と振るわない結果でした。「Opus V」環境は本当にいろいろなデッキがあっておもしろい環境なので、また違うデッキを作って挑戦していきたいと思います。

さて、今回はこの「MASTERS2018」神戸大会で優勝されたabcさんにインタビューをしました。
本大会を勝ち抜いた「土単」とabcさんの強さの秘訣に迫りたいと思います。

それではさっそくどうぞ!

abc
名古屋のプレイヤーで、「MASTERS2017」徳島大会優勝経験を持つ強豪。
好きなカードは【1-107L】《シャントット》をはじめとする土属性のカードで、それらをもちいたデッキをよく使う。
『FINAL FANTASY』シリーズだけでなく『ドラゴンクエスト』シリーズもこよなく愛するRPG好き。

 

◆【4-085H】《ダダルマー》の強さが各所で輝いた

――「MASTERS2018」神戸大会、優勝おめでとうございます。
abc:ありがとうございます。
――熱い「土単」の同型対決を制しての優勝でしたね。今回、abcさんが「土単」を選択した理由はなんだったのでしょうか。
abc:土属性を使おうと思ったのは前回の「MASTERS2018」千葉大会の結果を見て、氷属性の使用率が高くなるなと感じたのが大きな理由です。あと個人的に【1-107L】《シャントット》というカードが好きなので使いたかったというのもあります。彼女は好きな属性のCPを出せるので2属性やそれ以上のデッキも考えたかったのですが調整に取れる時間があまり多くなかったので、今回は単属性にまとめてみようと思って「土単」を使うことになりました。

「MASTERS2018」神戸大会
abc:「器用な土単」

カードNo. カード名 枚数
フォワード(23枚)
【2-145L】 《ウォーリアオブライト》 3
【5-075L】 《ウォル》 3
【5-074H】 《イングズ》 3
【4-085H】 《ダダルマー》 3
【5-086L】 《セシル》 3
【4-096H】 《ラウバーン》 3
【5-095H】 《ヤン》 2
【2-094H】 《リディア》 1
【1-093H】 《ヴァニラ》 1
【3-088L】 《ディリータ》 1
バックアップ(18枚)
【5-082C】 《採掘師》 3
【1-095R】 《エナ・クロ》 3
【3-094C】 《ペリノア》 2
【1-107L】 《シャントット》 2
【5-093C】 《モグ [MOBIUS]》 2
【5-094R】 《モモディ》 1
【1-120C】 《モンク》 1
【4-079C】 《黒魔道師》 1
【5-091H】 《星の神子》 1
【5-085R】 《セーラ》 1
【5-087R】 《ドーガ》 1
召喚獣(9枚)
【4-093R】 《ヘカトンケイル》 3
【1-117R】 《ヘカトンケイル》 2
【4-073C】 《アトモス》 2
【5-081C】 《コカトリス》 2

 

――この「土単」の強みはどういったところにありますか。
abc:なんと言っても【4-085H】《ダダルマー》が強かったですね。今回のMVPと言っていいくらい活躍してくれました。高いパワーのフォワードを使って相手に対処を迫り続けていくいくというのが「土単」の基本的な戦術です。そのまま押し切れればいいのですが、相手がしっかり除去手段、特にフォワードを使っての除去などがあると、こちらの戦力を除去されたうえに相手にフォワードが残って攻守が逆転してしまうという弱点があります。
その点で【4-085H】《ダダルマー》はそういった除去に対して非常に強い耐性があり、本来苦手な「雷単」のような除去手段の多いデッキへのキラーカードになりました。決勝の「土単」対決では【3-095R】《ヤン》と【3-073C】《アーシュラ》のコンビや【5-084C】《PSICOM治安猟兵》などを採用した展開力の高い「土単」との試合になりましたが、ここでも除去されにくく、かつ除去としても使える【4-085H】《ダダルマー》の有無が勝敗を分けたなと思っています。

――キーカードの【4-085H】《ダダルマー》を活かすために、普段は採用しないカードを採用したといった調整もされたのでしょうか。
abc:なるべく【4-085H】《ダダルマー》を活かそうとは考えていましたが「土単」で使えるカードの範囲では【3-094C】《ペリノア》と【4-093R】《ヘカトンケイル》くらいしか採用できないので、そこまで厚いシナジーを形成できるわけではありません。それでもこれだけ強力なカードなので、これはもう単純に【4-085H】《ダダルマー》というカードの単体での強さ、そして環境における強さがすごかったということでしょう。

◆デッキ調整の秘訣は「動き方のイメージ」と「汎用性の有無を見ること」

――デッキ全体を見ていて非常に強力なカードが多い反面、2コスト以下のフォワードがまったく採用されていないなど、CPの軽いカードが少ない印象を受けます。
abc:もともとは【4-088C】《盗賊バンガ》を採用していたのですが、「MASTERS2018」千葉大会でハラさんが使っていた「土タッチ風」デッキを見てコストの軽いフォワードやモンスターを採用するよりも純粋にパワーで圧倒する方が強そうだと感じたので、デッキから抜けていきました。

abc:「土単 調整中ver」

カードNo. カード名 枚数
フォワード(20枚)
【2-145L】 《ウォーリアオブライト》 3
【5-075L】 《ウォル》 3
【5-074H】 《イングズ》 3
【4-085H】 《ダダルマー》 3
【4-096H】 《ラウバーン》 3
【3-092L】 《プリッシュ》 3
【2-094H】 《リディア》 1
【3-088L】 《ディリータ》 1
バックアップ(18枚)
【5-082C】 《採掘師》 3
【1-095R】 《エナ・クロ》 3
【3-094C】 《ペリノア》 2
【1-107L】 《シャントット》 2
【5-093C】 《モグ [MOBIUS]》 2
【5-094R】 《モモディ》 1
【1-120C】 《モンク》 1
【4-079C】 《黒魔道師》 1
【5-091H】 《星の神子》 1
【5-085R】 《セーラ》 1
【5-087R】 《ドーガ》 1
召喚獣(9枚)
【4-093R】 《ヘカトンケイル》 3
【1-117R】 《ヘカトンケイル》 2
【4-073C】 《アトモス》 2
【5-081C】 《コカトリス》 2
モンスター(3枚)
【4-088C】 《盗賊バンガ》 3

――パワーを重視するコンセプトでデッキを調整されたわけですが、デッキを組む過程やプレイ時に特に意識したポイントはどこでしょう?
abc:デッキ内のフォワードがどれもコストも重く、出してすぐ仕事をするようなオートアビリティを持っているわけではないのでテンポの面では後手に回りがちです。そのため召喚獣は【4-093R】《ヘカトンケイル》や【5-081C】《コカトリス》などコストの軽いものを多めに採用して、バックアップが5枚あるときは「4コストフォワード+1コスト召喚獣」「3コストフォワード+2コスト召喚獣」と動けるようにして、デッキが鈍重になりすぎないよう意識しました。

abc:また、強いと思ったカードはサーチしなくても手札に来るように3枚ずつ採用し、役割が限られているカードは1枚のみの採用にするというバランスにも気をかけました。例えば【2-094H】《リディア》は調整の段階では3枚使っていたんですが「水単」や「火氷」など特定の相手にしか活躍しないため1枚にしましたし、「土単」の同系を意識した【1-093H】《ヴァニラ》も2枚目以降は引きたくないため1枚にしました。【3-088L】《ディリータ》も4枚目の【4-085H】《ダダルマー》として1枚のみ採用しています。
――汎用性のあるカードは多く、特定の相手にしか有効でないカードは1枚ずつとしたわけですね。
abc:はい。なのでバックアップも基本的に“フォワードに変換できる”カードは複数枚、それ以外は1枚の採用ということを基準に考えました。【5-082C】《採掘師》と【5-093C】《モグ [MOBIUS]》はあらかじめバックアップとして出しておいて、状況に応じて必要なフォワードに変換できるので非常に強力でした。特に【5-082C】《採掘師》は「Chapter」シリーズでもお気に入りのカードだったんですが、「MASTERS2018」千葉大会で採用率が低いのを見て「強いカードなんだぞ!」とアピールしたくて3枚採用しました(笑)。1枚だけ入っているバックアップもフォワードと同じように仮想敵に合わせての採用でしたが、【5-087R】《ドーガ》などはあまり活躍させられなかったので、細かいカード選択についてはまだまだ研究の余地があったなと感じています。

――新しい要素といえば【ジョブ(光の戦士)】を活かしたギミックも目を引きますね。
abc:パワーを強化する【5-074H】《イングズ》と受けるダメージを軽減する【2-145L】《ウォーリアオブライト》はお互いに強化しあって堅牢な戦線を組めますし、さらに【5-075L】《ウォル》も彼らの恩恵を受けられるのでパワーで押す戦略とよくかみあっていたと思います。【4-096H】《ラウバーン》も【5-074H】《イングズ》のおかげでフィールドに残しやすくなって「除去能力を持ってその後も戦闘要員になれるフォワード」として考えられるようになりました。ただ、こういったコンボに固執しすぎると思い切ったプレイができなくなってしまうので、大会中はコンボを狙いすぎないよう注意していました。

――神戸大会を優勝という結果で終えたわけですが、大会で当たったデッキで相性が悪いと感じたものなどはありましたか。
abc:予選ラウンドで1敗してしまったんですが、その相手が使っていたデッキが「水単フースーヤ」でした。早いタイミングで置かれた【2-146H】《フースーヤ》に【4-132R】《トンベリーズ》などが合わさることでこちらが展開したフォワードをどんどん除去されてしまいました。経験が足りなかったのでどう戦うかの指針も持てていなかったのですが、フィールドに出たときのオートアビリティを持ったものが少なく、フィールドに残って初めて仕事をするカードが多いデッキなので、出してすぐに除去されるとどうしようもないという弱点を突かれてしまいました。あと準決勝でしどさんが使っていた「フェニックス」デッキは初めて見るギミックも多かったので驚かされました。「Opus V」で本当にできることが多くなったんだなと思います。

――これを踏まえて今後環境はどうなっていくかなどイメージはありますか?
abc千葉神戸と結果が出たようにパワーの高い4コストフォワードが存在する氷属性と土属性が頭ひとつ抜けて強いかなという印象です。この2つに対抗していくデッキとして除去の強い雷属性が今後は流行るんじゃないかと思っています。また風属性も【5-062L】《ディアボロス》など優秀なカードが増えているので、フォワードのパワーが低いという弱点を克服できたときにどんな活躍ができるかという点も個人的に注目しています。

◆実践よりも情報戦! 少ない対戦で実力を磨くコツとは

――少し話題が変わりますが『FF-TCG』を始めた経緯をお聞きしてもよろしいですか?
abc:僕が『FF-TCG』を始めたのは「chapter」シリーズのころなんですが、ちょうど以前やっていたゲームがサービスを終了してしまったときに兄がスターターデッキを買ってきて、やってみるとゲームシステムがとてもおもしろかったので兄と2人で始めることにしました。
――兄弟でプレイされてたんですね。『ファイナルファンタジー』シリーズも遊ばれてたんですか?
abc:やるにはやっていたんですが、ちゃんとクリアしたことがあるのは『ファイナルファンタジーVIII』だけでした。どちらかというとRPGといえば『ドラゴンクエスト』だと思っていたかもしれません(笑)。
――なるほど(笑)。お兄さんが持ってきて始めた『FF-TCG』ですが、今も調整なども兄弟でされるんですか?
abc:基本的には1人でデッキを回して調整しています。もともと関西に住んでいたんですが、今は名古屋に引っ越しまして。友人と遊びながら調整することもありますが、今は1人で調整することが多いですね。
――そうなんですね。Skypeなど使っての対戦もあまりしないんですか?
abc:Skype対戦はまったくしないですね。まずカードリストを眺めながら使いたいカードやギミックを考えてデッキを組んで、公式HPのコラムで勝ち上がったデッキを参考にどんなデッキが使われているか、どんな動きするかなどイメージしながら調整しています。コラムに掲載されるようなデッキは仮想敵として強いのはもちろん、自分が使ううえでも参考になる構築が多いですからね。実際にデッキを2つ組んで回すより、自分のデッキがどんな引きをするのか、どんなプレイをすれば無理なく回るのかのイメージをつかんで、ぶっつけ本番で実際対面した相手とイメージと実践のすり合わせをしていくことが多いです。実は今回の「MASTERS2018」神戸大会は「Opus V」が発売されて2回目の対人戦でした。
――1人回しで調整してぶっつけ本番はかなり衝撃的な調整方法ですね。
abc:今回はどのデッキ相手にもしっかりと自分のプレイをすることが重要な「土単」を使ったので、この調整方法とマッチしたのかなと思っています。受けに回るコントロール系のデッキを使うときはもっと対人戦で調整したいですね。
――普段はあまりショップなどには遊びに行かれないんですか?
abc:まだ名古屋に来て日が浅いので行けてなかったんですよね。ただ今回の神戸大会アドバンテージ上前津さんと名古屋の『FF-TCG』プレイヤーの方にはとてもお世話になりました。足りなかった【5-086L】《セシル》を大会当日に貸してもらえたので本当に感謝しかないですね。今後はぜひ遊びに行きたいなと思っています。

――最後に「MASTERS2018 Final」へ向けて一言いただいてよろしいでしょうか?
abc:今まで「MASTERS Final」など大きな舞台で結果を出せていませんでしたが、今年は一足先に挑戦権を得たのでじっくり調整して万全の状態で最高の結果を残せるようにがんばっていきたいです。
――ありがとうございました。

◆終わりに

今回は「MASTERS2018」神戸大会で優勝されたabcさんのインタビューでした。
1人回しで調整してそのまま大会に持ち込むというスタイルは個人的にかなり衝撃的でしたが、入念な情報収集と的確な環境分析がイメージと実戦のギャップを埋めていっているのかなと感じました。
万全の状態で挑むという「MASTERS2018 Final」では、abcさんがどう活躍をするのか今からワクワクしますね。

「Opus V」環境はまだまだ始まったばかりですが、氷属性から土属性へと目まぐるしく環境の中心は動いています。次はどんなデッキが勝ち上がってくるのでしょうか?
できれば自分も活躍したいなと思いつつ、またいろいろな方にお話しを聞いていきたいなと思っています。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!