【FF-TCG】今年1人目の日本代表プレイヤー、閣下が海外遠征と「Opus V」環境を振り返る

『FINAL FANTASY TRAING CARD GAME』の公式記事連載。今週は関東の強豪プレイヤーであり、今年1人目の日本代表プレイヤーとなった閣下さんによる「ASIA Grand Championship 2018」シンガポール大会、大阪大会のレポートをお届けします。

皆さん、こんにちは。『FF-TCG』プレイヤーの閣下(かっか)です。

公式記事連載で記事を書くのは初めてなので、簡単に自己紹介をさせていただきます。
私は神奈川のプレイヤーで、「MASTERS」「名人戦」「ASIA Grand Championship」といったイベントのときには地方に遠征もして『FF-TCG』を楽しんでいます。
先日開催された「ASIA Grand Championship 2018」大阪大会では幸運にも優勝できたため世界選手権への参加権を取れました。これで2年連続で日本代表プレイヤーとして世界選手権に出られることになりました。

今回は、友人たちと遠征した「ASIA Grand Championship 2018」シンガポール大会、大阪大会についてのレポートを書きました。
環境はまもなく「Opus VI」の入ったものに変わりますが、このレポートが「Opus V」環境の中期~末期がどういったものだったのかの記録と、新環境を研究するうえでの前提をお見せするためのテキストとなれば幸いです。

◆「MASTERS2018」諏訪大会から「ASIA Grand Championship2018」シンガポール大会へ
「ASIA Grand Championship 2018」シンガポール大会に遠征することはイベントが発表されたときから決めていて、あとはどういうデッキを持っていくかということだけが問題でした。
私は元々コントロールデッキが好きなのですが「Opus V」環境では攻めるデッキが強く、なかなか満足のいくコントロールデッキの構築ができないでいました。シンガポール大会前に出られる最後の競技的なイベントである「MASTERS2018」諏訪大会では、そのとき最有力と言われていた氷単を使用しました。ここで氷単の強さを見きわめ、シンガポールではそれを意識した風雷デッキを使おうと考えていましたが、この氷単が思ったよりも手になじむ感覚があり大会でも優勝という結果を残せたので、シンガポール大会もこの氷単を使おうと決心しました。

最終的に私がシンガポール大会に持ち込んだデッキがこちらです。

ASIA Grand Championship Singapore使用:氷単

カードNo. カード名 枚数
フォワード(22枚)
【1-192S】 シド・レインズ 2
【4-048L】 ロック 3
【3-030L】 クジャ 1
【5-036L】 皇帝 1
【4-038L】 セリス 3
【3-033L】 ジェネシス 3
【1-047R】 ティナ 2
【4-146L】 ティナ 2
【2-026L】 ヴェイン 2
【5-029L】 オーファン 2
【3-036H】 シド・オールスタイン 1
バックアップ(18枚)
【2-037R】 ジル・ナバート 2
【3-044C】 ハル 2
【3-043C】 時魔道士 2
【4-030C】 黒魔道師 1
【1-196S】 モーグリ[XIII-2] 1
【4-026H】 ガストラ帝国のシド 2
【5-031H】 ギルバート 3
【1-057R】 ラーグ公 3
【1-048C】 導師 2
召喚獣(10枚)
【1-038R】 シヴァ 1
【3-032R】 シヴァ 2
【4-033C】 シヴァ 3
【5-032H】 グラシャラボラス 2
【5-044C】 背徳の皇帝マティウス 2

「Opus V」環境での氷単の強さについては、以前にも公式記事連載のインタビューでお話ししたのでそちらをご覧いただければと思います。
諏訪大会から変更を加えた点としては、同型のデッキに対して有利になるよう【1-057R】《ラーグ公》imageを3枚投入し、また決勝ラウンドではデッキリストが公開であろうと考え【3-036H】《シド・オールスタイン》imageを1枚入れました。このデッキは手札破壊要素がそこまで多くないため相手の手札を0枚にすることができないリスクもありますが、相手からするとこちらのデッキに【3-036H】《シド・オールスタイン》imageが入っているとわかっていると手札を使い切るプレイがしにくくなるため、潜在的なアドバンテージを稼いでくれそうな点を評価して採用しました。

予選ラウンドのマッチアップは以下の通りです。

●第1回戦:対「土雷暁の血盟」デッキ 勝ち
●第2回戦:対「氷単」デッキ 勝ち
●第3回戦:対「雷単」デッキ 勝ち
●第4回戦:対「水雷騎士」デッキ 負け
●第5回戦:対「雷単」デッキ 勝ち
●第6回戦:対「氷単」デッキ 勝ち
●第7回戦:対「雷単」デッキ 勝ち

6勝1敗で6位通過となりました。
ここまでのマッチアップはおおむね事前に予想していた通りで一安心という気持ちでした。

しかし翌日の決勝ラウンド、準々決勝では衝撃的なデッキとマッチングしました。
それが「ASIA Grand Championship 2018」北京大会で優勝されたJoshさんが今大会に持ち込んだ風土です。

●準々決勝:対「風土」デッキ 〇×× 負け
氷単と風土の相性はかなり氷単側が不利です。
時間をかけると【4-085H】《ダダルマー》imageと【4-058C】《サボテンダー》imageがそろってしまい、こちらのフォワードがフィールドに残らなくなってしまうため、その前にこちらから攻める必要があります。
しかし、序盤の速攻に対しても風土側には【1-107L】《シャントット》imageとそれをサーチできる【5-091H】《星の神子》imageが3枚採用されているため、展開しすぎても一掃されてしまう危険性が高いです。そのため早すぎもせず、遅すぎもしない難しい攻めのリズムが要求されます。

1ゲーム目は先手1ターン目に【3-044C】《ハル》imageを含むバックアップ2枚を出し、次のターンには1コストになった【5-031H】《ギルバート》imageで手札を捨てさせつつ【4-048L】《ロック》imageでプレッシャーをかけるという理想的な展開ができました。
ブロッカーとして出てきた【4-085H】《ダダルマー》imageも【5-044C】《背徳の皇帝 マティウス》imageでブレイクし、そのまま攻め続けます。こちらに合わせた展開で手札がなくなったところに【3-036H】《シド・オールスタイン》imageを引いて除去できるなど運にも恵まれて勝利することができました。

これは案外いけるのかと思いましたが、2ゲーム目はバックアップを引き込めずフォワードを展開せざるを得ないところに【5-091H】《星の神子》imageでサーチしてきた【1-107L】《シャントット》imageで一掃されてしまい、これが響いて負けてしまいました。3ゲーム目は手札に除去を引きすぎてしまって序盤にフォワードを展開できず、相手の体勢が整ってしまって負けました。
見た目だけなら2-1と接戦ではありましたが、私の感覚としては完敗という印象でした。
Joshさんは準決勝で手札破壊に特化した氷単に負けてしまいましたが、この風土デッキに私は大きな可能性を感じました。

私はそれまで風土に対してあまり強いデッキだというイメージを持っていませんでした。
日本で見ていた風土デッキは2種類あって、1つは一般兵のフォワードを多く採用したもので【1-083H】《マリア》imageや【2-050H】《アルクゥ》image、【1-095R】《エナ・クロ》imageといったバックアップを展開し、高いパワーを持ったフォワードで攻めていくデッキです。このタイプは攻撃力こそ高いもののバックアップのコストが全体的に重く、カードアドバンテージを稼ぐカードや劣勢を挽回するためのカードも少ないため一度後手に回ってしまうとそのまま押し切られてしまうことが多いです。

もう1つは【5-163S】《ウリエンジェ》imageや【3-020H】《フェニックス】などをタッチしてフィールドをコントロールしていくものです。
このデッキはシナジーは強力なのですが、特定のキーカードに強く依存してること、タッチしているカードが多く安定感に欠けるという弱点があります。

そういった理由でどちらのデッキも長丁場になる大きな大会向けではないと思っていました。
しかしJoshさんのデッキは2つ目のデッキタイプに近いものの、以下の2つの点で既存の風土とは異なる強みを持っていました。

・ほぼ2属性で構成されているためデッキが安定している
・多くのプレイヤーが選択しているであろう氷単や土単に対して有利に立ち回れる

まず、タッチする3属性目以降のカードを【5-163S】《ウリエンジェ》imageのみにして、残ったスペースには【5-075L】《ウォル》imageや【4-093R】《ヘカトンケイル》imageといった使いやすく強力なカードを投入しており、シナジーによるデッキパワーの高さを維持しつつ安定性も追求した内容になっていたのです。このバランス感覚はすごいと思います。
また、大会で多くのプレイヤーが選ぶであろう氷単と土単の2デッキに対しても有利に立ち回れます。除去の少ない土属性のデッキに対しては【4-085H】《ダダルマー》imageがフィールドに残りやすく、相手ががんばって除去してきても【5-082C】《採掘師》imageなどで回収する時間的、リソース的な余裕があります。氷に対しても《ダダルマー》をダルにしなければ除去されることはほとんどありません。この「【4-085H】《ダダルマー》imageをダル状態にしない」というプレイングも私にとっては衝撃的でした。ゲームのテンポが遅くなれば遅くなるほど風土側が有利になっていくので、盤面が完全に整うまではアタックできる状態だとしても風土側は攻めずに待っていて問題ないのです。

◆シンガポール大会での経験から風土を調整

シンガポールから帰国し、さっそくJoshさんの風土をベースにデッキを構築して回してみると非常に感触が良く、自分のプレイスタイルにも合っているデッキでした。
大阪大会に向けて多少の変更を加えて「ASIA Grand Championship 2018」大阪大会に持ち込んだデッキがこちらです。

ASIA Grand Championship Osaka使用:風土

カードNo. カード名 枚数
フォワード(19枚)
【5-163S】 ウリエンジェ 2
【5-068L】 ヤ・シュトラ 3
【5-083C】 PSICOM治安兵 1
【2-147L】 皇帝 1
【4-085H】 ダダルマー 3
【5-075L】 ウォル 3
【3-066R】 バルバリシア 2
【5-086L】 セシル 1
【4-147H】 ケフカ 1
【5-148H】 カムラナート 1
【5-073R】 異端の騎士 ガーランド 1
バックアップ(20枚)
【5-059R】 セミ・ラフィーナ 3
【1-088C】 弓使い 3
【1-083H】 マリア 2
【5-093C】 モグ[MOBIUS] 1
【5-082C】 採掘師 3
【3-076R】 仮面の女 1
【5-091H】 星の神子 3
【1-107L】 シャントット 2
【4-086H】 タマ 1
【1-184H】 カオス 1
モンスター(5枚)
【4-058C】 サボテンダー 3
【5-071R】 レヤック 2
召喚獣(6枚)
【5-062L】 ディアボロス 3
【4-093R】 ヘカトンケイル 3

Joshさんの風土からの変更点ですが、まず抜いたカードから説明します。

・【1-089H】《リュック》imageの不採用
Joshさんのデッキには2枚入っていました。ミラーマッチをはじめとする遅いデッキとの対戦で有効なカードだと最初は考えていましたが、風土デッキはフォワードを回収する手段が豊富でしっかり戦線を構築し、ダメージを与えて勝ちを目指せるため不要と考えました。

・【5-162】《ウリエンジェ》と【5-071R】《レヤック》image、【1-107L】《シャントット》imageを1枚ずつ減らす
前の2枚はどちらも序盤に引きたいカードではなく、各3枚は多すぎるように感じました。また【5-163S】《ウリエンジェ》を減らしたことで序盤から雷属性のCPを出す必要が減り、またサーチや回収もできるという理由で【1-107L】《シャントット》imageも1枚減らしました。

次に、抜いたカードと入れ替えたのはこれらのカードです。

・【1-062H】《マリア》の採用
【1-089H】《リュック》image2枚とそのまま入れ替えました。採用理由は【1-057R】《ラーグ公》imageや【1-095R】《エナ・クロ》imageといった特定の属性のフォワードを強化するバックアップへの対抗手段です。フォワードによる戦闘や【4-093R】《ヘカトンケイル》imageをうまく使うためにはこちらもパワーを上昇させる必要があると考えました。相手の【1-057R】《ラーグ公》imageなどを【1-088C】《弓使い》imageでブレイクして、こちらは【1-083H】《マリア》が置けているという状況になれば大きく有利に立てます。

・【2-147L】《皇帝》image、【5-086L】《セシル》image、【5-073R】《異端の騎士 ガーランド》の採用
【2-147L】《皇帝》imageは【5-148H】《カムラナート》imageでサーチするカードがなくなることがあったので追加の闇属性のカードとして投入しました。効果が薄い場合もありますが、効く相手には劇的に効きます。【5-086L】《セシル》imageは、このデッキは序盤は守勢に回り、ダメージもそこそこ受けるためオートアビリティを活用できることが多く、またパワーも高いので追加のアタッカーとして優秀です。【5-073R】《異端の騎士 ガーランド》はいまの環境ならば【5-082C】《採掘師》imageや【1-048C】《導師》imageなどブレイクする対象には困らないだろうと考えて投入しました。

もとのデッキはバックアップが21枚でしたが、いくらフォワードに変換できるカードがあるとはいえ、さすがに多すぎると感じたのでフォワードを1枚増やしてバックアップは20枚としました。

このデッキで大阪大会では、

●第1回戦:対「土風」デッキ 勝ち
●第2回戦:対「土単」デッキ 勝ち
●第3回戦:対「氷単」デッキ 勝ち
●第4回戦:対「水光タッチ火」デッキ 勝ち
●第5回戦:対「土単」デッキ 勝ち
●第6回戦:対「水風」デッキ 負け
●第7回戦:対「土単」デッキ 勝ち

●準々決勝  水風 〇〇 勝ち
●準決勝   氷単 〇〇 勝ち
●決勝    氷単 〇〇 勝ち

という結果で、優勝することができました。
全体的に相性のいい氷単や土単に多く当たるという幸運もありましたが、氷、土は多いだろうと読んでいたので事前の予想が正解だったともいえるでしょう。
唯一、予選では相性の悪い水風相手にフォワードをなかなか引けずに負けてしまいましたが、それ以外では決勝ラウンドを含めて1ゲームも落とさずに勝利できました。
準決勝で私以外のプレイヤーが全員氷単となったときにはほぼ優勝を確信するほどこのデッキは強力で、シンガポールでデッキを見せてくれたJoshさんにはとても感謝しており、遠征してよかったと強く感じています。

◆海外遠征で感じた、世界での『FF-TCG』の広がり

「MASTERS2018」諏訪大会から「ASIA Grand Championship 2018」シンガポール大会、大阪大会と私のデッキ変遷とその調整の過程をご覧いただきました。
このテキストが皆さんのデッキ選択やデッキ調整方法などの参考になればうれしいです。

そしてもう1つ。海外の『FF-TCG』もすごいということに目を向けていただければと思います。
私はシンガポールに遠征しなければJoshさんの風土のすごさを体験することはできず、大阪大会も氷単で出場していたでしょう。そうなれば優勝していたかどうかはまったくわかりません。

『FF-TCG』は「Chapter」時代から考えるともう7年以上が経過しており、昔から遊んでいるプレイヤーにはさまざまな知識やテクニックが蓄積されています。しかし海外プレイヤーの熱意もものすごく、彼らも急速に力をつけています。
もちろん身近な友達と遊ぶというのも『FF-TCG』の楽しみ方ではありますが、少し視野を広げて海外の『FF-TCG』にも目を向けてもらえたらうれしく思います。そこには私たちと同じ情熱を持って、そしてあるときは私たちとはまったく異なる視点で『FF-TCG』を研究し、楽しんでいるプレイヤーがいます。海外の大会に遠征するというのはハードルが高いものですが、大きな大会は配信や動画アーカイブもあるので、ぜひそれらで海外の『FF-TCG』にも触れてみてください。きっと、より『FF-TCG』をおもしろく感じられるようになり、そして好きになれるはずです。

秋にはロンドンで世界選手権が開催されます。
世界中から『FF-TCG』の強豪プレイヤーが集結し、世界一を決めるべく戦います。私もそのなかの1人に加わることができ、とてもうれしく思っています。
そしてこれから「ASIA Grand Championship 2018」横浜大会や「MASTERS2018 FINAL」、「MASTERS2018 THE AFTER」といったイベントで新たな日本代表プレイヤーが決まります。『FF-TCG』の発祥国として、今年はぜひ日本のプレイヤーが優勝トロフィーを持って帰れるようにしたいと思っているので、代表になった方は一緒にがんばりましょう。よろしくお願いします!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。