【ウィクロス:オールスター】《レイラ=クレジット》とショット事情

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『ウィクロス』の攻略記事連載。今回は第3弾ブースターパック「ユートピア」に収録されているキーカード《レイラ=クレジット》に注目し、ショットデッキを愛好するしみずきさんがオールスター環境のショット事情の変化を解説します!

はじめまして。しみずきというハンドルネームでカードゲームをプレイしています。ほかのライターとともに今後『ウィクロス』の攻略記事を掲載させていただきます。僕特有の切り口でデッキや環境考察をお届けしていければ思いますので、これからよろしくお願いします。

毎度おなじみになっているのかいないのかは冒頭のテキストを打ち込んでいる現段階では不明ですが、簡単に自己紹介をさせて頂きます。

「カードゲーマーvol.41」では「関東強豪プレーヤー」と言うくくりで紹介していただいていたのですが、実はあの中で僕だけ関東在住ではなかったんですよね! しかし、関東に住んでると思われても仕方がない位には遠征しまくっているのも事実です。静岡を起点に東京・神奈川・名古屋・大阪を毎週のように転々とし、『ウィクロス』のための総合移動距離ならセレクターの中でも5本の指に入るであろう遠征系プレイヤー!?です。

『ウィクロス』は第1弾の頃からプレイしており、現在の『ポケモンカードゲーム』を思わせるスーパー品薄状態の中で、当時住んでいた広島のカードショップを構築済みデッキを探し回り、ついには県外の岡山まで出張って(コイツ当時から遠征してんな……)ようやく見つけた花代さんのデッキ「レッド・アンビション」から、僕の『ウィクロス』は始まりました。

WIXOSS PARTYで初めて優勝したのは《熾炎舞 花代・参》でグロウを止める、いわゆる3止め花代。WIXOSS PARTY SPECIALで初めて優勝したのは《轟炎 花代・爾改》を使ったデッキでした。そこからは《爾改》に魅せられ、いろいろな形の《爾改》『ウィクロス』をプレイしていました。そういう経緯もあり、ルリグの中では花代が一番好きですね。

実績としましては

・WIXOSS TEAM WORLD CHAMPIONSHIP 2017:準優勝
・WIXOSS WORLD CHAMPIONSHIP 2016:Best8
・WIXOSS PARTY SPECIAL/ウィクロスセレモニー:優勝多数
etc.

……と、こう並べてみるとそこそこ華々しい経歴となっていますが、《爾改》を使用していた時期はまったくと言っていいほど、勝ち切れていませんでした。僕がそれなりに結果を残せるようになったのはあるアーキタイプとの出会いが切っ掛けでした。対戦相手にアーツを使わせることなく、もしくはアーツの上からでも倒し切ってしまういわゆる「ショット」と呼ばれるアーキタイプです。

ショットとのなれそめを怒涛のように語りたいところではありますが、それだけで今回の記事が終わりかねないのでまたの機会にさせて頂きます。

限られた試合時間の中で状況に応じて思考するのではなく、ほぼ無制限に使える試合外の時間で「この状況に持っていけば勝ち」という明確な勝ち筋を対ルリグ毎に設定できるため、プレイミスを抑えることができ、自分の脳内の想定を対戦相手に上回られない限りは思い通りに試合を運べるので、実戦経験を積める機会に乏しかった僕の境遇にもマッチしていました。

というわけで現在では「ショット大好きジジイ」になり果ててしまいましたが、ショットに関してはお話しできることも多いと思います。執筆の際はショットする側もされる側にも有益な情報をお届け出来るよう、日夜デッキを試行錯誤していきますので、よろしくお願い致します。

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……たまにはショット以外のことも書きます。


◆そもそも「ショット」って?

今回の記事でも、ショットについて語らせていただくのですが、みなさまとの認識をそろえるために、僕の中のショットというアーキタイプがどういうものであるかを簡単に説明させて頂きます。

ショット=対戦相手にアーツを使わせない、もしくはアーツの上からでも倒し切ってしまう動きをすることに特化させたデッキ

という認識で、その行動に至るためのアプローチの仕方でざっくり4タイプに分けています。

1.直ダメ型

例)
《大火の轢断》《西部の銃声》特化型……2止め遊月
《羅輝石 サンスト》《西部の銃声》特化型……《雪月風火 花代・肆》
《幻水 キス》特化型……エルドラ etc.

まず1つ目は、メインフェイズ中に対戦相手のライフクロスをクラッシュもしくはトラッシュし、その後、対戦相手に直接ダメージを与えることのできる《西部の銃声》や、《羅輝石 マラカイト》《コードハート A・M・S》などの耐性を持ったシグニを絡めた多面要求を繰り返すことでゲームエンドを狙うタイプのデッキです。

対戦相手のひとり回し(いわゆるソリティア)によって自分のライフクロスがみるみるなくなり、酷いときにはメインフェイズ中で試合が終了してしまうこともあるので、最も理不尽なデッキタイプといっても過言ではありません。

その反面、スペルを多用するため、スペルカットインを持ったアーツを多く採用されていると厳しい展開となります。

2.エナ破壊型

例)
《因果応報》《羅星姫 ≡コスモウス≡》ロングショット植物緑姫
《龍滅連鎖》《ロック・ユー》ピルルク
《龍滅連鎖》《捲火重来》花代orユヅキ etc

2つ目は単純明快でアーツを使用するためのエナを奪ってしまうタイプ。
お手軽なところから《烈情の割裂》で4エナ、《龍滅連鎖》《捲火重来》で2エナ、《因果応報》で0エナ、さらに《ロック・ユー》を添えることで実質マイナスまで対戦相手のエナを削り、何もできないところにシグニによる総攻撃を仕掛けてゲームエンドへと運びます。

エナを破壊する手段がほぼアーツに偏っており、繰り返しの使用を想定しないことのほうが多いため、考慮していないアーツが採用されていたり、LBによってしとめ損なってしまうと途端に劣勢になってしまいます。

3.耐性付与型

例)
《水流の打落 *マーライ*》2止めアン
《ビカム・ユー》《先駆の大天使 アークゲイン》《アイヤイ☆ディール》特化型《白滅の巫女 タマヨリヒメ》
《武装の全智 ギルガメジ》特化型リル etc

3つ目は「ルリグ以外の効果を受けない」「対戦相手の効果を受けない」「バニッシュされない」「ダウンされない」といった、さまざまな耐性を相手ルリグの効果や採用が予想されるアーツに合わせて組合せ突破するデッキタイプです。LBに対する耐性も高く、型にはまってしまえば非常に安定感のあるフィニッシュが望める反面、実戦で通用するレベルの耐性を持てるシグニが高レベルに集中している(マーライは例外)点と、昨今のルリグの防御力がレベル4~5グロウ時から跳ね上がる点から、タイムリミットが決まってしまう場合が多く、そこまでの試合運び(ライフクロスを何枚まで削っておくなど)に失敗してしまうと負けに直結したり、トラッシュ送りなど、付与した耐性の穴を突かれる防御手段を複数回行使されてしまうとどうしようもないといった穴があります。

4.ルリグアタック強化型

例)
《燐廻転生》《応援の駄姫 グズ子》のダイレクト
《惨乃遊 †バカラ†》《アーク・オーラ》特化型3止めタマ

最後は単純明快にルリグアタックを強化することで、一気にゲームを終わらせに掛かるデッキタイプです。非常にお手軽に対戦相手にチェックを掛けることができる反面、ゲームをとおして行なえるアプローチの回数が決まっており、すべてを防がれると、なすすべなく敗北してしまうのが弱点です。

以上の4タイプに、《幻竜 ボルシャック》《轟砲 ウルバン》《羅星姫 ≡コスモウス≡》などの複数のライフクロスをクラッシュできるシグニを組み合わせてロングショットを狙ったり、エナ破壊+ルリグアタック強化など、2つのタイプを取り入れることでより強力なショットが産声を上げます。


■ショットの歴史はメタカードとインフレーションとの戦いの歴史

《一覇二鳥》《アーク・オーラ》などの強力なスペルとアーツを組み合わせが流行すれば《アイドル・ディフェンス》が。
《西部の銃声》による銃殺が多発すれば《生々流転》が。
《因果応報》《龍滅連鎖》《捲火重来》などのエナ破壊が頭角を現せば、《羅植華姫 バオバブーン》《クライシス・チャンス》《カウンター・ヴァンプ》が。

「出る杭は打たれる」のことわざどおりに、いつまでも好き放題に暴れることはかないません。

それに加えて『ウィクロス』のルリグやカードに与えられた防御性能のインフレもショットデッキにとっては逆風です。

なんの防御手段も持ち合わせていなかった《コード・ピルルク・Ω》が、エクシードによってエナ消費なく防御可能になった《コード・ピルルク Λ》に。

追加のエナを支払うことでアタックフェイズにスペルを撃つことのできる《コード・ピルルク VERMILION》に。
そしてその上位種の《コード・ピルルク APEX》や面埋め・ダウン・バニッシュを軽々こなす《アロス・ピルルク N》へと進化していくように。

新しいブースターパックが発売されるたびに、ショットデッキにとっては逆風が吹き荒れていました。そして今弾、最強最悪のメタカードが世に放たれることとなります。

そう、《レイラ=クレジット》です。


■《レイラ=クレジット》の与える影響

エナ破壊、手札破壊、山札破壊に加えて効果によるダメージも完封してしまう、すさまじい干渉能力を持った一枚。既存のショットデッキであれば、これをアンロックされるだけでコンセプトが崩壊してしまうものも少なくありません。

このカード自体が直接的に与えてくる影響は上記のとおりで、これでも十分過ぎるレベルで痛手なのですが、水面下でおこる事象もショットデッキにとっては逆風となってしまいます。

1.環境にいるというだけで何かしらのサブプランが必要となってしまう。

そもそも、よほどショットデッキに恨みのある人間でなければ《レイラ=クレジット》をショットメタ目的で採用しないと考えています。

早期にショットを仕掛けてくる2止めユヅキなどの存在を考慮するなら、序盤からコインを獲得できるルリグでなければ始まりませんし、貴重なアーツ枠に加えて、ほぼほかのキーを採用することができなくなってしまいます。搭載されるのは、手札破壊やエナ破壊などの妨害がなければ強力な動きができるデッキに限られると思います。

会場を見渡せば一面の《レイラ=クレジット》と言うような環境にはなりえないでしょう。

しかし、ウィクロスセレモニーなどの上位に入賞することを目的とした大会に出る場合には、《レイラ=クレジット》を張られただけで詰んでしまうようなデッキを持ち込むのは避けたいので、こちら側も何かしらのサブプランを搭載する必要が出てくるのですが……。

そもそもショットデッキって、一芸に特化させることで環境に逆らって生き残っているので、通用しうるサブプランを搭載できるようなデッキは限られてきます。さらに従来の安定性を落としてようやく◎◎と△△と□□が無ければギリギリ……みたいな頼りないプランなってしまいがちです。

また、完全にリペア不可能な状態に追い込まれたデッキタイプも多く、単純にショットのバリエーションが減ってしまうため、的を絞って対策を取ることが出来るようになってしまいます。

かなり苦しい点です。

2.《音階の右律 トオン》をライフクロスに埋め続けることのできるデッキの隆盛

《レイラ=クレジット》の登場によるもう一つの逆風がこちらです。

ご存知とは思いますが、この《トオン》は「このターン、あなたはダメージを受けない」という非常に強力なLBを有しています。ハンデスを喰らわなくなったことによる再現性の向上に加え、《堕落の砲娘 メツミ》による強制リフレッシュや《幻水 ナフシュ》などによって《トオン》を仕込んだライフクロスが落ちることがなくなったことによる、防御手段としての確実性の向上。《トオン》をライフクロスに埋め続けることで耐久勝ちを狙うデッキが隆盛してくることが予想されます。

ショットデッキにとって、この簡単に剥がせない《トオン》というLBは厄介極まりなく、どれだけ耐性を付与していようが、ルリグで殴りつけようが無力となってしまいます。

それだけでなく、《トオン》がデッキに採用されているだけで、仮に対戦相手が《トオン》をライフクロスに仕込む前にショットを仕掛けられたとしても、もともと《トオン》が埋まってしまっているという「野生の《トオン》」現象がしばしば発生してしまいます。

こちらもかなり苦しい点です。


■《レイラ=クレジット》への順応

さて、この《レイラ=クレジット》の登場によって冒頭で紹介した4タイプのデッキがどのような影響を受けるのかを、そして新環境でそれぞれのショットデッキはどのように調整していけばよいのか考えていきましょう。

1.直ダメ型

《幻水 キス》を用いていたキスショットと呼ばれるデッキは、再起不可能と考えてよいでしょう。

そのほかのデッキに関しては、強力な詰め手段であった《西部の銃声》が弾かれてしまうことから別のアプローチを採用する必要が出てきます。早期にライフクロスを割り切ることができる点を最大限に活かし、早いターンから3面要求による負荷を掛けに行きたいところです。

その場合、2止めユヅキは自身のライフクロスをリソースへと変換して《大火の轢断》のコストとしている点、《羅石 サンスト》を用いる場合には自身のライフクロスも減ってしまっている点から、相手の盾を0にしてから数ターンという前提が苦しく、新環境には適していない印象です。代わりに《弩砲 ゴルドガン》《弩砲 アヴェンジャー》を用いた直ダメギミックであれば、自身のライフクロスを減らすことなく、また《トオン》のLBを無効化できるため、新環境にも対応できるのではと考えています。

また、「ユートピア」にて収録された《2-遊 サイクロンインターセプター》がこの直ダメ型のショットデッキと非常に相性がよく、条件こそあるものの限定無しシグニでは初のレベル2でアーツ耐性を持つことができるため、《仁の遊 ホワイトパールホープ》を除去してから……という1手順を相手に踏ませることができます。もしくは青ルリグによく見受けられるダウン系のアーツのみの採用であった場合にそのまま貫通するという場面も望めます。

単純に既存の2止めユヅキに組み込むという手もありますが、非常に低コストで2枚のライフクロスをクラッシュできる《ロスト・テクノロジー》に特化させた2止めウムルのフィニッシャーとして採用するのも強力だと考えています。近年の強化によって、《コードアンチ アステカ》で復活させることで1ドローできる《コードアンチ ダゴン》と、その《アステカ》を一度に3枚回収できてしまう《ゼノ・カインド》《トルネード・サルベージ》によってリソースの工面は容易になっています。

ライフクロスを消費して動くわけではないので、《ロスト・テクノロジー》を連打したあとに数ターン攻撃のチャンスがあります。《サイクロンインターセプター》だけでなく、黒で回収しやすい《怠惰の魔王 ベルフェゴール》《疾走の魔鹿 フルフル》なども優秀なアタッカーになりそうです。

2.エナ破壊型

こちらは壊滅と言ってしまってよいでしょう。

《龍滅連鎖》《捲火重来》《因果応報》などの強力なアーツほど採用するにあたってそれなりに構築を寄せる必要があり、その状態で《レイラ=クレジット》とご対面してしまうとかなりのハンデを背負って戦うことになってしまいます。
烈情の割裂》などのメインで済ませられるものや、《龍滅連鎖》《燃盛 遊月・鍵》のエナ破壊以外に役割が持てるカードをほかのショットタイプの補佐として使用してく形になると思います。

3.耐性付与型

こちらはほぼ無傷といってもよいでしょう。

しかし、先述した《音階の右律 トオン》を埋めるデッキが増えてくることが予想されるのでそちらの対処策を講じる必要があります。タマであれば《弩砲 アベンジャー》もしくは《弩砲 トミガン》の採用。リルであれば《謳金時代》などを採用したいところです。個人的には「ユートピア」収録のLRアーツ《フラクタル・ケージ》によって強化された、2止めアンを推しています。実質無色エナ2枚で使用可能な《炎固一徹》として運用ができつつ、いざというときには防御手段にもなってくれるので非常に優秀です。色縛りが緩くなったことで、ほかのアーツにマルチエナを回せるようになったりと自由度が向上しています。天敵だったリワトが《レイラ=クレジット》の登場によって衰退するというのも追い風です。

4.ルリグアタック強化型

こちらもほぼ影響なしと言えます。

ただし前環境にて唯一実戦クラスだった、《因果応報》《燃盛 遊月・鍵》《燐廻転生》《応援の駄姫 グズ子》のダイレクトデッキが、エナ破壊部分で壊滅的な被害を受けてしまっています。
しかし、ダイレクトの裁定のおかげで、多数のライフクロスの上からLBを無視して止めを刺せるのは非常に魅力的です。《悲願の駄姫 グズ子》《期之遊姫王 †ブラジャック†》で戦いながら、期が熟したら《時英の埋設 #タイプス#》を用いて《応援の駄姫 グズ子》にダウングロウして、ダイレクトで詰めるという形が強そうです。


■まとめ

というわけで、《レイラ=クレジット》に対する所感で1記事執筆させて頂きました。結論としましてはエナ破壊と《西部の銃声》という惜しい奴らを失くしてしまいました。初めて《レイラ=クレジット》のテキストを読んだときは、残り1か月しか使ってやれないデッキの多さに涙しそうになり、その次は、ショットに全振りしてしまった自分のプレーヤースキルのビルディングは間違えだったんじゃないかと後悔したりして、情緒不安定もよいところでした。それでも何とか「ユートピア」環境もショットで遊んでいけそうなのでホッとしています。

ショットデッキはいつの時代も何かに嘆きながら、それでも試行錯誤を重ねてその環境で通用するものを生み出して、また新弾でメタカードに悩まされ、たまに出る強化に歓喜して……の繰り返しです。って、どのデッキも同じかと、感傷から戻ってきたところで筆(キーボード)を置かせて頂きたいと思います。

最後までお付き合い頂いた皆様、本当にありがとうございました。