【FFTCG】無限のポテンシャルと汎用性を武器に「火単」が連覇! ~「MASTERS2021」鳥栖、下関大会優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS2021」鳥栖大会、下関大会をフォーマットをまたいで「火単」で連覇したあとらさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに
みなさんこんにちは! 『FFTCG』プレイヤーのたるほです。

ついに明日は「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」が発売されます。
すでに公式ホームページではカードリストも公開されており、多くのプレイヤーは早速気になるカードを見つけているのではないでしょうか?

かくいう僕も、デッキを考えては早く実際のカードで遊べないかとソワソワしながら過ごしています。
来たる新環境、どんなカードが活躍するのか今から楽しみですね!

さて、今回は「Opus XIII ~クリスタルの輝き~」環境最後の記事として、「MASTERS 2021」鳥栖大会(L6構築)、下関大会(スタンダード)を2連覇したあとらさんのへのインタビューを行ない、フォーマットを超えた強さを持つコントロール型の「火単」についてお話をうかがいました。

あとら

福岡のプレイヤー。
『FFTCG』の大会経験は浅いながらも「MASTERS 2021」鳥栖大会、下関大会で連覇を果たすという偉業を達成した。
フォーマットを超えたコントロール軸の「火単」の強さを示した注目のプレイヤーだ。


◆L6構築からスタンダードへ! フォーマットを超えた強さの「火単コントロール」

――「MASTERS 2021」鳥栖大会、下関大会での連続優勝おめでとうございます。
あとら:ありがとうございます。

――今回使用された「火単」は「MASTERS 2021」開催前から注目を集めていて大会でも使用者こそ多かったですが、大きな結果には結びついていませんでした。そんななか、L6構築、スタンダードとそれぞれフォーマットの異なる大会を「火単」を使いW優勝となりました。あとらさんの考える「火単」の強さについて教えてきただきたいと思います。
あとら:今回の「火単」はもともとL6構築のために考えたデッキでした。そのためコンセプトもL6環境に即したものを考えていました。下関大会で使用したのは鳥栖大会の優勝を受け、「火単」のコンセプトがスタンダード環境でも通用するものだと確信したからです。

●「火単(「MASTERS 2021」鳥栖大会優勝 フォーマット:L6構築)

カード番号 カード名 枚数
フォワード(22枚)
【13-129S】 《フィリア》 2
【13-130S】 《ランジート》 3
【11-015L】 《ブラスカの究極召喚獣》 3
【13-017H】 《レイン》 3
【10-132S】 《ティナ》 3
【13-002L】 《アクスター》 2
【8-018R】 《マーシュ》 2
【12-018H】 《ラニ》 3
【11-008H】 《ジタン》 1
バックアップ(17枚)
【12-016C】 《ブレイズ》 3
【10-012C】 《風水師》 3
【11-012C】 《タツノコ》 2
【8-007C】 《黒魔道士》 3
【11-004R】 《クー・チャスペル》 3
【10-015R】 《モーグリ-1組-》 1
【13-006C】 《ザンデ》 1
【11-129H】 《カオス》 1
召喚獣(11枚)
【13-012R】 《バハムート》 3
【12-002H】 《アマテラス》 3
【9-017C】 《ベリアス》 2
【11-001R】 《イフリート》 3

●「火単」(「MASTERS 2021」下関大会優勝 フィーマット:スタンダード)

カード番号 カード名 枚数
フォワード(20枚)
【13-129S】 《フィリア》 2
【13-130S】 《ランジート》 3
【11-015L】 《ブラスカの究極召喚獣》 3
【13-017H】 《レイン》 3
【10-132S】 《ティナ》 3
【13-002L】 《アクスター》 2
【8-018R】 《マーシュ》 2
【12-018H】 《ラニ》 2
バックアップ(18枚)
【12-016C】 《ブレイズ》 3
【6-011C】 《朱雀兵》 3
【10-012C】 《風水師》 3
【11-012C】 《タツノコ》 1
【1-030R】 《レブロ》 1
【8-007C】 《黒魔道士》 3
【11-004R】 《クー・チャスペル》 2
【13-006C】 《ザンデ》 1
【11-129H】 《カオス》 1
召喚獣(11枚)
【13-012R】 《バハムート》 3
【12-002H】 《アマテラス》 3
【9-017C】 《ベリアス》 2
【11-001R】 《イフリート》 3
モンスター(1枚)
【6-008C】 《ゴブリン》 1

――L6構築のデッキがスタンダードに転用されるのは珍しい例ですね。「Opus XII」環境までは「火単」といえば【侍】型というイメージでしたが、アトラさんの使われた「火単」では【侍】ギミックが搭載されていませんね。
あとら:このデッキはこちらからは攻めず、相手のフォワードを除去し続け、息切れを狙うコントロールデッキです。そのためにCPの安定して供給できるようスピーディに、かつ手札の消費を抑えてバックアップを展開することを目指しています。

基本的にこちらから攻めることは考えていないデッキなので、【12-012L】《テンゼン》や【11-003R】《カイエン》imageを軸に攻撃を仕掛けていく「火単【侍】」とは真逆のコンセプトのデッキです。

具体的には従来の「火単」と比べて、奇数コストのバックアップを多く採用し実質1CPでキャストすることでバックアップの展開効率を高め、リソース面で優位が取れるようにと考えました。

――手札の消費を抑えたバックアップ展開というのは、コストとして除去カードを捨てずに手札の質を維持する狙いということでしょうか?
あとら:そういった意図もありますが、どちらかと言えばコストパフォーマンスに優れたフォワードに対して、よりよい効率で除去をしたいという狙いがあります。

現在の『FFTCG』ではリソースを減らさずにフォワードを展開するデッキというのがトレンドです。

コストそのものが軽かったり、出たときにアドバンテージを稼ぐので実質的なコストが軽かったり、あるいは効果でフィールドに出てきたりとパターンはいくつかありますが、こうしたカードを対処するにあたって、バックアップが並んでいないうちに除去を行なおうとすると、相手が手札1枚を消費して展開したカードに対して、こちらはコストと合わせて手札を2枚使って対処するといった状況が発生します。

これを繰り返すと除去する側はいつか除去が追い付かなくなり、相手に負けてしまいます。
逆に相手が展開に使った手札の枚数と同じ、もしくはそれより少ない枚数で除去を繰り返すことができれば、相手の息切れを狙うことができると思い考えたのが今回の「火単」です。

――あとらさんの「火単」はL6構築とスタンダードでほとんど採用カードに違いがありませんが、それぞれどういった理由から採用されたカードなんでしょう?
あとら:バックアップに関しては【8-007C】《黒魔道士》image、【12-016C】《ブレイズ》、【10-012C】《風水師》image、【11-004C】《クー・チャスペル》imageの4種類に関しては確定として考えていました。

まず【8-007C】《黒魔道士》imageですが、実質的に召喚獣として考えられるカードです。
相手ターンにアクティブ状態で構えておくことで、4枚目以降の【12-002H】《アマテラス》としてプレッシャーをかけられる点も強力だと考え3枚採用しました。

【12-016C】《ブレイズ》は対「土水」を想定したときに【11-064L】《アーシュラ》imageや【13-118C】《セーラ[MOBIUS]》を同時に対処できる点、EXバーストが強力でダメージゾーンに置かれた後も【13-002L】《アクスター》を絡めて強力な除去要員になる点を加味して採用しました。

【10-012C】《風水師》imageはデッキコンセプトである実質1CP換算の奇数コストバックアップとして【11-012C】《タツノコ》imageなどと合わせて採用しています。

また【10-012C】《風水師》imageのアクションアビリティは【13-100R】《リヴァイアサン》や【9-065C】《ゴーレム》imageをかわすときに有効です。
本来であれば軽減されてしまうダメージを【10-012C】《風水師》imageのダメージでケアすることで相手に除去をすかされ、狙った除去が回避されてしまうという展開を防ぐことができます。

これは【11-004C】《クー・チャスペル》imageにも同じことが言えます。

【13-100R】《リヴァイアサン》に関しては、従来の「火単【侍】」などでは中盤戦以降フォワードが選べなくなってしまう可能性がありますが、このデッキはこちらから攻めないので、そういった状況になることがほとんどありません。

相手の【13-129S】《フィリア》に対して構えておくことで、こちらだけが一方的に対処される状況を防ぎたいという狙いもありL6構築では【11-004C】《クー・チャスペル》imageも3枚採用しています。

――【11-004C】《クー・チャスペル》imageは確定枠とのことでしたが、スタンダード(下関大会)では1枚減らされているんですね。
あとら:3枚採用している理由のひとつに、初手でキャストしやすい2CPのバックアップはキープの基準になるのである程度の枚数を採用したかったという点があります。
奇数コストのバックアップを最大限に使うためにも、最初は偶数コストのバックアップを必ず出しておきたいので。

スタンダードではバックアップの安定を図れる【6-011C】《朱雀兵》imageが追加されたため、このためのスロットを捻出する必要がありました。そこで【11-012C】《タツノコ》imageと【11-004C】《クー・チャスペル》image1枚ずつを減らし、もう1枚バックアップにスロットを割くことでスペースを確保しています。

同じく偶数コストのバックアップである【8-007C】《黒魔道士》imageではなく【11-004C】《クー・チャスペル》imageを減らしたのは、ゲーム中の使用頻度で考えたとき、【11-004C】《クー・チャスペル》imageはアビリティを使用しないマッチアップもあるためです。

――L6構築とスタンダードで入れ替わったカードとしては【10-015R】《モーグリ?1組?》と【1-030R】《レブロ》imageも挙げられますね。
あとら:パワーを+1000できる恩恵として最も大きいと考えていたのは、【13-130S】《ランジート》に対して【12-002H】《アマテラス》をキャストされたときに【13-130S】《ランジート》の生存率を上げられるという意図がありました。「火単」の同型対決では【13-130S】《ランジート》の打ち合いになりますからね。

また、スタンダードでは【12-110L】《ネオエクスデス》の存在も意識しています。
【12-110L】《ネオエクスデス》との対戦で一番困るのが、フィールドに出た【12-110L】《ネオエクスデス》の攻勢を止められないことなのですが、こちらが【1-030R】《レブロ》image+【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》imageを並べて11000のブロッカーを用意できれば【12-110L】《ネオエクスデス》側はアタックができず盤面が硬直します。

相手がほかにフォワードを出してくれば、こちらは【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》imageがアタックする理由ができますし、こちら側は【12-110L】《ネオエクスデス》を選んだときにブレイクゾーンに置くためのカードの準備さえできれば【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》image自身で【12-110L】《ネオエクスデス》を対処することもできます。

こういった状況に持ち込むうえでも【1-030R】《レブロ》imageは重要な役割のカードとなりました。

――このデッキでは闇属性のカードとして【11-129H】《カオス》imageが採用されています。奇数コストのバックアップという理由以外にどういった意図から採用されているんでしょうか?
あとら:【11-129H】《カオス》imageを採用した一番の理由は【8-068L】《アーデン》imageでした。「火単」は除去の手段がダメージに依存しているため、【8-068L】《アーデン》imageを対処することができません。「Opus XIII」では【13-014R】《ラーケイクス》も登場しましたが、バックアップが1枚使えなくなってしまうのはこのデッキではデメリットが大きすぎて採用はできません。

そのため光属性、闇属性の枠のスロットをそのために割く必要がありました。
【8-068L】《アーデン》imageを対策するためのカードとして候補に挙がったカードにほかに【11-140S】《カダージュ》imageがあり、この2枚から選択となりました。
どちらも一長一短ありましたが、【11-140S】《カダージュ》imageは【12-068H】《フェンリル》で除去されてしまうという弱点がありました。
【8-068L】《アーデン》imageは土属性のカードなので、【8-068L】《アーデン》imageを採用してくるデッキには同じく土属性の【12-068H】《フェンリル》は当然採用されるだろうと考えられたので、今回は【11-129H】《カオス》imageが採用されたという流れになります。

【11-129H】《カオス》imageの強みとして、一度フィールドに出して相手に見せてしまえば実際にアクションアビリティを起動しなくても、相手が【8-068L】《アーデン》imageを諦めてくれるという点が挙げられます。明らかに損をする行動を取ってくる人はいないですからね。

アクションアビリティ自体も単純に強く、後半でほかに出したいバックアップが手札に来ても簡単にバックアップの枠を譲ることができる点も強力でした。

そのうえで横浜大会などで【11-129H】《カオス》imageを複数採用した「火単」なども勝ち残っていたため、【8-068L】《アーデン》imageを出されることはありませんでした。
相手視点ではこちらが何枚【11-129H】《カオス》imageを採用しているかはわからないでしょうから直前の大会結果が図らずもブラフとして作用してくれました。

また4枚目の【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》imageとして、ブレイクゾーンから復活させることも視野に入れています。

――フォワードについてはどういった基準で採用したのでしょうか。
このデッキでは除去に関わるフォワードと召喚獣はすべて3枚ずつ採用しています。

まず【13-129S】《フィリア》ですが、ゲーム序盤はバックアップの展開を最優先するため、放置してしまった相手のフォワードへの切り返しの手段となります。
このデッキは【1-107L】《シャントット》imageがいない「L6構築」を想定したデッキだったので、全体除去という唯一の個性を持つ【13-129S】《フィリア》はまず3枚採用しようと考えました。

また除去性能が高く強さがわかりやすい【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》image、【13-017H】《レイン》、直接的な除去ではないものの召喚獣を回収できる【10-132S】《ティナ》imageは、先ほどの【13-130S】《ランジート》とあわせてデッキコンセプト上ブレてはいけないスロットだと考え、それぞれ3枚ずつ採用しています。

――これら以外のフォワードについてはどういった基準で採用されたんですか?
あとら:最初に話したとおり、このデッキはこちらから攻めるデッキではありません。
攻撃を仕掛けるのは相手が疲弊しきってからと考えていて、デッキ自体に明確なフィニッシャーを用意する必要がないので、除去以外の役割のフォワードは実質的なコスト換算が低いフォワードを基準に採用しました。

【13-002L】《アクスター》は運の要素も絡みますが、2つのアビリティがどちらも手札を増やせる可能性があります。
例えばダメージゾーンに【8-018R】《マーシュ》imageがあるときにキャストすれば、サーチ効果と合わせて手札が2枚増えるため、実質0CPで運用できます。
相手ターンに【8-007C】《黒魔道士》imageや【11-004C】《クー・チャスペル》imageを構えて戦いたいデッキということもあり、手札を減らさずにフォワードを展開できるのはありがたいです。

また、バックアップが5枚ある状態でダメージゾーンに【12-016C】《ブレイズ》があれば【13-017H】《レイン》をサーチしそのままキャストして、5000ダメージを4回与えるという動きを手札1枚でできます。

――L6構築、スタンダードのデッキリストともにEXバーストを持つカードは16枚で固定されていますが、どういった考えからこの枚数になったのでしょうか?
あとら:【13-002L】《アクスター》を採用した段階ですでにEXバーストを持つカードが14枚採用していました。
最初はどれでもいいから使えればいいかと考えていましたが、実際に【13-002L】《アクスター》を使って強さに気付いて、そこから【8-018R】《マーシュ》imageを2枚採用して16枚になった、という流れです。

――では【8-018R】《マーシュ》imageは【13-002L】《アクスター》のために採用されたカードということでしょうか?
あとら:もちろんそれも1つの理由です。それ以外にも【8-018R】《マーシュ》imageにはおとりとしての役割があります。

【8-018R】《マーシュ》imageはパワーも低く、ちょうど除去しごろなフォワードなので、手札に使わないカードが余ったタイミングでキャストして、相手の除去を引き出せればラッキーという使い方になります。
実質的なコストが軽いフォワードなので、こちらとしては除去されても問題ありませんし、仮に生き残ることがあれば終盤のアタック要員にもなります。

――【12-018H】《ラニ》はL6構築では3枚採用されていますが、それほど重要度が高いカードということでしょうか?
あとら:【12-018H】《ラニ》も相手のデッキトップをこちらの手札のように扱え、かつキャストのコストを2CP軽減できるので、実質的に0CPで運用できるフォワードです。

特に対「火単」の同型対決では、相手のカードもこちらのデッキと相性がよく非常に強力なので、スタンダード以上に「火単」が有力候補となるL6構築では3枚、バックアップにスロットを割いているスタンダードでは2枚それぞれ採用しています。

――L6構築では【11-008H】《ジタン》image、スタンダードでは【6-008C】《ゴブリン》imageがそれぞれ採用されていますが、これらはどういった採用意図なのでしょう。
あとら:ちょっと順番が前後するんですが、もともと今回使った「火単」以外にも「火単」は使う機会が多いデッキで、スタンダードでもよく使っていました。【6-008C】《ゴブリン》imageはスタンダードの「火単」で愛用していたカードです。

【6-008C】《ゴブリン》imageはフォワード化できるモンスターなので【1-107L】《シャントット》imageや【13-129S】《フィリア》に巻き込まれず、メインフェイズ中に除去されないというコスト2のフォワードとしては破格の除去耐性を持っています。

「火単」ではダメージがあと1000点足りないという状況が多々あるのですが、【6-008C】《ゴブリン》imageはこういった状況を補ってくれます。
【13-130S】《ランジート》がパワー9000のフォワードを対処したり、【1-030R】《レブロ》imageなどでパワーラインを上げて除去をケアしてくる相手にも有効です。

また追加のダメージを手札から捻出するとコストがきついという点も、場持ちのよさと合わせて継続したダメージソースとなるので、1枚で「火単」の課題を補完してくれる非常に優秀なカードです。


ただL6構築では残念ながら【6-008C】《ゴブリン》imageは採用できないため、【11-008H】《ジタン》imageを採用しています。
【6-008C】《ゴブリン》imageとは性質の異なるカードですが、ヘイストという役割をこなしつつ、出したら出したで活躍したため、明確な理由があるわけではなく自由枠として採用していました。

――召喚獣についても教えてください。「火単」で【10-002H】《イフリート》imageが採用されていないのは、少し意外だと感じました。
あとら:召喚獣のスロットはもともと10~11枚で考えていて、【13-012R】《バハムート》の部分を、もとは【10-002H】《イフリート》imageで考えていました。

ですが調整の過程で、ダメージも1つのリソースだと考えて【13-012R】《バハムート》を採用するに至ったという形です。

――ダメージがリソースというのは、EXバーストを考慮しているということですか?
あとら:それはもちろんありますが、『FFTCG』は7点ダメージを受けなければ負けないので、一定のダメージまでは除去にリソースを割かなくていいと考えています。
なので、ダメージが危険水域に入るまではバックアップを伸ばしてリソースを稼いで、そこから巻き返せば十分に間に合います。

そういったゲームをするうえで、【13-002L】《アクスター》が持つDamageアビリティや【13-012R】《バハムート》のコスト軽減はデッキにあっています。

このデッキでは【10-002H】《イフリート》imageのパワー+2000はそれほど重要な効果ではないですし、逆に【13-012R】《バハムート》の除外効果は【13-119L】《ソフィ》や【13-118C】《セーラ[MOBIUS]》、このデッキの弱点である【13-022H】《シド・ランデル》をゲームから取り除けるので優秀です。

【9-017C】《ベリアス》imageはスタンダードでは【2-019R】《魔人ベリアス》imageと悩みましたが、このデッキでは【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》imageと【13-130S】《ランジート》以外は偶数コストのフォワードが多く、余ったバックアップを有効に使える点も考慮して【9-017C】《ベリアス》imageを採用しました。

――「火単」は以前から愛用しているとのことですが、今回こういったコンセプトの構築に行き着いた経緯を教えてください。
あとら:もともと「MASTERS 2021」に向けたデッキとして「火単【侍】」と「土水【ソフィ】」を調整していて、火属性が好きなこともあり鳥栖大会は「火単【侍】」で参加することを検討していました。

ところが横浜大会で「土水【ドーガ】」が登場したことで事情が変わります。
自分が調整してきた「火単【侍】」では「土水【ドーガ】」にまるで歯が立たなかったんです。

調整用とはいえ自分でも「土水【ドーガ】」を組んだ手前、「土水【ドーガ】」に勝てなかったデッキで大会に参加するものはいかがなものかと考え、「土水【ドーガ】」を意識して考えたのが今回の「火単」です。
「土水【ドーガ】」は強力なデッキなので相性が有利とは言えませんが、「火単【侍】」のときのような不利はつかないだろうと認識しています。

――具体的にどういった面で相性関係が改善されたのでしょうか?
あとら:これはコンセプトにもつながる話なのですが、【13-120H】《ドーガ》を対処するために無理して【12-002H】《アマテラス》を使わないという点は徹底しました。

【13-120H】《ドーガ》に【12-002H】《アマテラス》を使ってしまうと後続の【11-064L】《アーシュラ》imageや【13-118C】《セーラ[MOBIUS]》を使わせる隙を与えてしまいます。

なので【12-002H】《アマテラス》の狙いは【11-064L】《アーシュラ》imageや【13-118C】《セーラ[MOBIUS]》に定め、【13-120H】《ドーガ》の処理はバックアップを十分展開した後に【11-129H】《カオス》imageで行なうよう意識しました。

――諏訪大会、枚方大会では相性上不利と言われている「風氷」も結果を残していましたが、この点についてはどう考えられていたのでしょうか?
あとら:「風氷」については、明確に不利なデッキだと考えていました。
ただ「L6構築」に関して言えば「風氷」は【5-067R】《ミューヌ》imageが採用できないので、ドロー要素やキャスト数を稼ぐギミックが弱くなり再現性が落ちるので、使用者は減るんじゃないかと考えました。

同じく【12-116L】《ロック》を使うデッキとして「風土氷【スカリー】」も横浜大会で結果を残していましたが、こちらに関してはダメージを受けていいという前提でデッキを考えていたので、1度目の【スカリー】は許容して、全体除去で切り返してから2度目の【スカリー】に【12-002H】《アマテラス》を合わせて対処しておこうと考えていました。

どちらもカードを組み合わせて使うことが重要なデッキなので「安定してデッキが回り続けるだろうか?」という考えもありました。

仮にマッチングしてしまうことがあっても「MASTERS 2021」は予選ラウンドがスイスドローなので、1敗までなら決勝ラウンドに進めます。決勝ラウンドに進めば優勝の目は消えないですし、そのなかで「風氷」系統のデッキが勝ち切れるとも限りません。そういった要素を考慮したうえで、自分としては安定性があり、多くのデッキに対して不利のつかないデッキを選択したいという思いもあり、「火単」を選択しました。

◆不利がないという「火単」の強さ
――鳥栖大会、下関大会ともに「火単」を使おうというのは、もともと考えていたんでしょうか?
あとら:もともと大会の1週間前の段階で、このデッキはスタンダードでも十分活躍できるんじゃないかと考えてはいました。
ですが、スタンダード用のデッキとしては「土水【ソフィ】」を考えていて、実際に「火単」を使う決め手になったのはやはり鳥栖大会の優勝という結果を踏まえてその実力を確信したからでした。

ただ、地元のプレイヤーが多かった鳥栖大会に比べて下関大会には別地域のプレイヤーも集まっていたため、想定外のデッキとも当たることが多かったです。
特に印象的だったのが広島から参加していた方が使っていたデッキで、自分の知らないデッキのバリエーションがまだまだあるんだと感じました。
そういう環境でも勝てたのは「火単」のポテンシャルと、どんなデッキに対しても不利を取らないという汎用性によるものだと思います。

――あとらさんは普段どのあたりでプレイされているんですか?
あとら:エリア的には福岡でプレイしています。今年からショップ大会を開いてくれるお店もできたので、自宅かショップでプレイするということが多いです。

大会に向けてデッキを調整するときなどは、ファンサイトや公式HPで取り上げられている大会の上位入賞デッキをひととおり作って、自宅で友人と練習しつつ、いいなと思う仕上がりのデッキがあればショップ大会に持ち込んで、日本代表プレイヤーでもあるサトツさんを相手に答え合わせをするという流れで調整をしています。

――あとらさんはいつごろから『FFTCG』をされているんですか?
あとら:もともと『FF』シリーズが好きだったこともあり、「chapter」の1弾のころに遊んではいたんですが、当時一緒に遊んでいた友人が仕事の都合で福岡を離れてしまって、自分もそのタイミングで一度フェードアウトしていました。最近友人と新しいカードゲームをやりたいねって話をしていたところ、その友人の知り合いにサトツさんがいて、だったら『FFTCG』をやろうよって話になったんです。それで「Opus X」のときにあらためて始めたというのが、きっかけです。

なので、ルールは知ってはいたんですが、ちゃんとプレイするようになったのはここ1~2年ですね。

――では最後に「MASTERS 2021 FINAL」に向けて一言お願いします。
あとら:初の参加となるので、がんばりたいと思います。

――ありがとうございました。

◆おわりに
今回は「MASTERS 2021」鳥栖大会、下関大会で2連覇を果たしたあとらさんに、コントロール軸の「火単」についてお話をうかがいました。

強豪ひしめく「MASTERS」で連覇を果たすのは、並大抵のことではありません。
フォーマットを超える強固なコンセプトでデッキを構築したからこその結果と言えるでしょう。

「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」環境でも「火単」はさらなる強化を受け活躍すること間違いなしなので、「MASTERS 2021」後半戦に参戦予選のプレイヤーの方はチェック必須のデッキです。

「Opus XIII ~クリスタルの輝き~」環境は、およそ1年半ぶりに公式トーナメントも開催され、あらためて大会の楽しさを感じることができたシーズンでした。
まだまだ不安定な情勢ですが、「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」環境ではさらに情勢が改善し、もっともっと『FFTCG』が楽しめる世界になっていればと思います。

僕もインタビューや「デッキ語り」をして『FFTCG』を盛り上げていきたいと思いますので、ぜひお付き合いいただければと思います。

それではまた次回の記事でお会いしましょう!