【FFTCG】経験で最新のデッキを乗りこなす古豪の腕 -「第四期名人戦」九州予選優勝者インタビュー-

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「第四期名人戦」九州地区予選を「火単【ブラスカ】」で優勝したモウハさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに
みなさん、こんにちは!『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

毎週激戦が繰り広げられている「第四期名人戦」、先週は九州地区と中国地区で予選が開催されました。
僕も引き続き両大会に参加し、九州地区予選では2位という結果を残すことができました。
使用した「水風【FFX】」は「光の使者」環境でとても気に入っているデッキなので、こちらも今後ご紹介させていただきたいと思います。

その九州地区予選は、前週に行なわれた東海地区予選の影響から「火単【ブラスカ】」を中心にしたメタゲームが予想されましたが、結果は「火単【ブラスカ】」の連覇となり、またもやデッキのポテンシャルが示されるかたちとなりました。

今回は「第四期名人戦」九州地区予選で優勝されたモウハさんにインタビューを行ない、「アニバーサリーコレクションセット2022」でさらなる強化を受け、現環境の中心となっている「火単【ブラスカ】」とそれを取り巻く環境、そして勢いを増す福岡勢についてお話をうかがいました。

先週のケンタッキーさんへのインタビューとあわせてお楽しみください!

 

モウハ
「Chapter I」から『FFTCG』をプレイする、福岡最古のプレイヤー。
プレイヤーとしての実力も高く、遠征勢から地元福岡のトロフィーを守り抜いた。
他地域との交流も広く、豊富な経験値を活かしたメタゲーム予想が強みのプレイヤーだ。

 

 

◆環境上位席巻!?「火単【ブラスカ】」2連覇達成
――「第四期名人戦」九州地区予選、優勝おめでとうございます。
モウハ:ありがとうございます。

――モウハさんが使用されたのは、関東地区予選・東海地区予選で猛威を振るった「火単【ブラスカ】」でした。東海地区予選ではワンツーフィニッシュを決めるなど、今もっともメタゲームで意識されているデッキだと思いますが、今大会で「火単【ブラスカ】」を使う側に回ろうと考えられたのはどういった思惑があったのでしょうか?
モウハ:僕がこのデッキを知ることになったのは、関東地区予選直後、デッキの制作者であるケンタッキーさんが自身のTwitterに「火単【ブラスカ】」のデッキリストを投稿しているのを拝見したときでした。
その日のうちにデッキリストをコピーして、実際に一人回しをしてみたとところ、すぐにこのデッキのポテンシャルが高いことがわかったので、九州地区予選で使うデッキの候補のひとつにしようと思っていました。

●デッキリスト「火単【ブラスカ】」(「第四期 名人戦」九州地区予選優勝 フォーマット:スタンダード)

カード番号 カード名 枚数
フォワード(14枚)
【16-133S】 《ブラスカ》 3
【12-017H】 《マギサ》 3
【12-004R】 《アルフィノ》 2
【PR-108】 《スコール》 1
【14-010H】 《グツコー》 1
【12-015H】 《フォルツァ》 1
【14-116H】 《マシュリー》 3
バックアップ(8枚)
【7-017H】 《ミース》 3
【11-131S】 《エース》 1
【13-006C】 《ザンデ》 1
【13-013C】 《パロム》 1
【11-004C】 《クー・チャスペル》 1
【13-014R】 《ラーケイクス》 1
召喚獣(28枚)
【12-002H】 《アマテラス》 3
【15-014H】 《ブリュンヒルデ》 3
【13-012R】 《バハムート》 3
【2-019R】 《魔人ベリアス》 3
【3-020H】 《フェニックス》 3
【2-002C】 《イフリート》 3
【7-005C】 《イフリート》 3
【12-005C】 《イフリート》 3
【14-002R】 《イフリータ》 3
【9-002H】 《イフリータ》 1

ただ、その翌週の東海地区予選の結果は、使用をためらわせるものとなりました。
――ワンツーフィニッシュはセンセーショナルな結果でしたからね。東海地区予選以降「火単【ブラスカ】」とどう戦うかという話題はTwitterでもよく議論されていた印象です。「火単【ブラスカ】」を使う、あるいは対策をするという立場でデッキ選択するプレイヤーが多い環境になることが予想される大会だったと思います。

モウハ:自分の現状としても、ほかのプレイヤーと比べて『FFTCG』の練習に割ける時間がどうしても少なくなってしまう状況だったこともあり、そういったなかで「火単【ブラスカ】」の練習量が多い方とマッチしたときに、はたして勝てるのかという不安がありました。

「火単【ブラスカ】」を対策しているデッキという観点では、「火単【ブラスカ】」に採用されているフォワードを効率よく除去できる雷属性を使用したデッキ、もしくは「火単【ブラスカ】」のアグロプランをEXバーストによって切り返していくデッキが活躍するのではないかと考えており、そして、それらのデッキに対して強い「風単【デブチョコボ】」などの風属性のデッキが復権する三すくみの環境を想定していました。

最終的に自分が想定したメタゲームのなかで、もっともポテンシャルの高さを感じたデッキを使うのがベストな選択になるだろうと思い、今回の九州地区予選では「火単【ブラスカ】」を使用することにしたというのがデッキ選択の経緯になります。

――関東地区予選直後の段階で使用候補に挙がったとのことですが、このデッキのどういったところに魅力を感じたのでしょうか?
モウハ:僕は基本的に自分でデッキを作ることに苦手意識があり、自分では思いつかないようなデッキを知ることがうれしいので、ほかのプレイヤーが結果を残したデッキは積極的に作って自分のなかに取り入れるようにしています。

そうしてデッキを取り入れるなかで、「火単【ブラスカ】」は個人的にも非常に衝撃的なデッキで、これまでにない新しいデッキタイプであり、またひと目見た瞬間に美しさを感じるデッキだったんです。

例えば「風単【デブチョコボ】」などは「第四期名人戦」以前から海外で活躍していたことも話題となっており、知る機会もあったのですが、「火単【ブラスカ】」に関してはケンタッキーさんのデッキリストを見るまで考えもしないデッキでした。

特に斬新だと感じたのは【16-133S】《ブラスカ》imageのスペシャルアビリティ「召喚」に注目し、【12-017H】《マギサ》imageと組み合わせていたところでした。

【12-017H】《マギサ》imageは自身にダメージを与えるために手札のリソースを消費してしまうのですが、【16-133S】《ブラスカ》imageは【12-017H】《マギサ》imageに使うリソースを最小限におさえつつ、自ら除去でボードアドバンテージを稼ぐことができる無駄のない組み合わせです。

そもそも【16-133S】《ブラスカ》imageが自分のフォワードにもダメージを与えられるという認識がなかったこともあり、あらためてテキストを確認し、この運用法には「なるほど!」と思わされました。

「風単【デブチョコボ】」の【16-056R】《デブチョコボ》imageに対して7000ダメージでスムーズな除去が可能な【16-133S】《ブラスカ》imageをデッキの軸に組み込んだ構築は、あの時点で環境を読み切ったみごとな選択だと思います。

「水単【ティーダ】」に対しても、大量に採用したEXバースト持ちの召喚獣という【16-116L】《ティーダ》imageをスマートに対処できる手段を持ち合わせています。

召喚獣を大量に採用することでデッキ全体のコストが重くなりがちな点も【14-116H】《マシュリー》imageで効率よくリソースに還元できるなど、「火単【ブラスカ】」は構造的な強さとメタゲーム的な強さを両立している、非常に美しいデッキだと感じました。

――構築の面では、先週インタビューをしたケンタッキーさんに解説していただいたものとほぼ変わりはありませんが、「アニバーサリーコレクションセット2022」に収録された【PR-108】《スコール》は今大会から公式トーナメントで使用が可能になったカードということもあり、使用感などが気になります。
モウハ:【PR-108】《スコール》は「アニバーサリーコレクションセット2022」の新規カードをチェックしたとき、見つけた瞬間に「火単【ブラスカ】」にフィットすることを確信した1枚です。


この「フォワードのパワーを+2000する」というのが非常に肝となる効果で、例えば「風単【デブチョコボ】」がブロッカーとして並べてくる【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageや【16-058R】《フィーナ》imageに対して8000というパワーでアタックできたり、【2-019R】《魔人ベリアス》imageを絡めればパワー9000の【14-042L】《雲神ビスマルク》imageなどに対しても強気に攻めていけるなど、非常に重要な働きをします。

今回はヘイストを持つフォワードということもあり役割の近い【16-015H】《トゥモロ》imageと差し替える形での採用としましたが、正直これは調整期間の短さが理由で【16-015H】《トゥモロ》imageにしかできない役割も存在するため、これらを両立させた構築もありだろうと考えています。

――【10-131S】《エース》imageもケンタッキーさんのデッキには採用されていなかったカードですが、これはどういった意図で採用されたカードなんでしょうか?
モウハ:これはものすごく私的な理由なんですが、《エース》は僕が『ファイナルファンタジー』シリーズで一番好きなキャラクターだからというのが最大の採用理由です(笑)。

また5000ダメージがちょうど相手の【16-133S】《ブラスカ》imageを対処できるので、ミラー対決での活躍も期待していました。
大会中はあまり思惑どおりの活躍はしてくれませんでしたが、カード名が分散していたことにより、バックアップの展開が重要な試合で相手よりバックアップを多く置くことができて、その差が勝敗を別けた試合もあったので、採用してよかったと思います。
――なるほど。こだわりの1枚が活躍するのは、プレイしていてニヤリとするポイントですね。

――「火単【ブラスカ】」は間違いなく強力であることは明らかですが、反面プレイの難易度も高く、使いこなすうえで相応の練習が必要かと思います。1~2週間という短い期間でプレイを身につけるため、心がけたことなどはあるのでしょうか?
モウハ:僕は人のデッキを参考にする際、まず「3枚採用されているカード」をすべて確認するようにしています。
『FFTCG』では同じカードは最大3枚まで使用することができます。つまり3枚採用されているカードは、そのデッキで最大限採用したい理由があるカードだと考えられます。

このデッキは召喚獣を多用する都合上、ほとんどの召喚獣は3枚採用されていますが、それ以外のスロットで3枚採用されていたのが【16-133S】《ブラスカ》image、【12-017H】《マギサ》image、【14-116H】《マシュリー》imageでした。

これらのカードがデッキの主軸であることは組み合わせて強いという点からも感じ取れたので、そこからどのようにデッキを運用するかを確認するため、次にチェックしたのが【12-017H】《マギサ》imageから展開するであろうコスト3のフォワードでした。

【12-004R】《アルフィノ》image、【14-010H】《グツコー》image、【12-015H】《フォルツァ》image 、【16-015H】《トゥモロ》imageのそれぞれが明確な役割を持っていましたが、このなかで【12-004R】《アルフィノ》imageだけが2枚採用されており、そこから「なるほど、【12-004R】《アルフィノ》imageから【16-133S】《ブラスカ》imageか【14-116H】《マシュリー》imageをサーチしてくることがコンセプトなんだな」と読み解くことができました。

そういった過程をもとにデッキの挙動を考えて、デッキを一人回ししていたころ、ちょうどケンタッキーさんのインタビュー記事が公開され、その内容をもとに自分の導き出したデッキの動かし方と製作者の構築意図との答え合わせをしながら練習を進めることで、早い段階でデッキへの理解が深められたと思います。

――今回、「火単【ブラスカ】」は2連覇を果たしましたが、使用者の目線から「火単【ブラスカ】」の弱点や今後活躍しそうなデッキのビジョンなどはありますか?
モウハ:今大会で対戦したなかで、有望だと感じたのは【ジョブ(モールズの夜会)】を軸にしたデッキです。

もともと【16-003C】《エルビス》imageが必ず採用されるので、序盤からリソースを失わずにこちらのフォワードを除去できる点が強力な印象のデッキではあったのですが、九州地区予選ではあそくま勢(※福岡で活動するチームで、翌日の中国地区予選ではチームメンバーが優勝を果たしている)が「火単【ブラスカ】」をより意識したEXバースト多めの「モールズの夜会」デッキを持ち込んでいて、非常に苦しめられる試合となりました。

「火単【ブラスカ】」は基本的にアグロプランを取りながらアタックしなければならないので、それを逆手にとってEXバーストで戦ってくるデッキは今後勢力を伸ばしてくると思います。


ただ、EXバーストを厚めに採用したデッキは、盤面を対処するためのカードのコストが重くなりがちなので、EXバーストされてもリソース差が覆らないよう目指して戦うことはできそうです。

 

◆培った経験を力に変えての勝利
――デッキ選択に関してもそうでしたが、いわゆる実践の場以外での『FFTCG』との向き合い方が結果に結びついている大きな要因だと感じます。
モウハ:福岡では一時期、結婚や転勤など生活環境の変化から『FFTCG』プレイヤーが減ってしまい、実際にプレイする機会が少なくなった時期がありました。
僕自身、そういった環境から『FFTCG』をプレイしていない時期もあり、復帰した今でも実際のカードの知識や実戦経験の面では他地域のプレイヤーとの間に差があると思います。

そうしたなかで僕が頼りにしているのが、「Chapter」シリーズから積み重ねてきた経験に基づくゲームへの理解です。
『FFTCG』は「Chapter」シリーズから「Opus」シリーズにかけて大きくルールが変更されていないため、どういったデッキに対してどういった対策が有効かなど、具体的なカードがわからなくても、おおまかな環境を想像することができます。こうした経験値が、自分の踏んできた調整の過程や時間以上に、「火単【ブラスカ】」というデッキのポテンシャルを信頼させてくれたのだと感じています。

――中国地区予選で優勝されたまっすー@あそくまさんも福岡のプレイヤーと伺っていますが、コミュニティ的には分かれているのでしょうか?
モウハ:もともと福岡にはいくつかの『FFTCG』コミュニティがあり、ショップなどに集まって遊んでいたのですが、先ほど話したような生活環境の変化から一定数のプレイヤーが『FFTCG』を離れていっているという状況でした。

一時期は僕とサトツさん(※2019年の日本代表プレイヤー)しかプレイヤーがいないかもという状況にまでなってしまったのですが、そんなときに別のカードゲームで親交があった、あそくま勢のリーダー・アトラさんから「『FFTCG』を始めたいから教えてほしい」と声をかけてもらいました。

それでルールの説明や当時はやっていたデッキについてお伝えしたんですが、アトラさんはその年の名人戦でプレーオフラインまで進出されて、それでせっかく始めたからと周りのプレイヤーをどんどん巻き込んで福岡の『FFTCG』界隈をすごく盛り上げてくれたんですよね。

そういったつながりもあり、今もよくあそくま勢の集まりにご一緒させていただいています。
また、僕は山口勢とも親交があり、彼らと調整させていただくこともあります。
特に、多方面の大会に出場されている243さんには環境に多そうなデッキや、細かなプレイングについてなど指示を仰ぐことも多いです。

福岡からプレイヤーが減って、僕自身も引退を考えていた時期があるのですが、両コミュニティの存在や活躍が、これまでの僕のモチベーションや今回の結果に深くかかわっていると思うので、この場を借りてお礼ができればと思います。

――では最後に、今後の大会に向けた目標などあればお願いします。
モウハ:ここ数年、九州では『FFTCG』のタイトルをほかの地方のメンバーに奪われていたと感じていますが、ここ数年は地元プレイヤーの活躍でこうした状況を打破しつつあります。

次はこちらが取りに行く番なので、よろしくお願いします。

――ありがとうございました。

◆おわりに
今回は、「第四期名人戦」九州地区予選で優勝されたモウハさんへインタビューを行ないました。

現在特に意識されているであろう「火単【ブラスカ】」を使い、地元福岡プレイヤーの威厳を示したのは、まさにあっぱれな結果でした。
実践する時間の少なさを埋めるために意識されているデッキ理解のプロセスなどは、僕もぜひ取り入れていきたいと思います。

次回は、「第四期名人戦」中国地区予選で優勝されたまっすー@あそくまさんへのインタビューを予定しております。

「火単【ブラスカ】」を打倒したという「モールズの夜会」デッキと、それを生み出した九州一大勢力のあそくま勢に迫りたいと思いますので、お楽しみに!

それではまた次回の記事でお会いしましょう!