全国から選ばれた強豪16人が集結!『桜降る代に決闘を』巫鏡杯決勝戦レポート!

対戦相手の目の前で使用するメガミを選び、デッキを構築して戦う『桜降る代に決闘を』。その全国大会となる「巫鏡杯」の本戦が10月24日に東京で開催された。
本記事では、そんな全国大会決勝のレポートをお届けしていく!
また、最後には本作の製作者であるBakaFire氏のコメントも掲載しているので、こちらもチェックしてほしい!

 

◆「巫鏡杯」概略/予選からの環境推移
「巫鏡杯」はシーズン6-2環境を締めくくる公式大会であり、予選・本戦ともに「完全戦・三拾一捨」(すべてのメガミが使用可。相手に3柱のメガミを提示し、そのうち一つを取り除かせる。その後、残った2柱で桜花決闘を行う)で行われた。
予選は16の会場(国内12地区+韓国、台湾、香港+オンライン※)で行い、それぞれの優勝者が本戦へと進むこととなった。ただし昨今の情勢から海外からの参加は見送られ、代わりに過去の大型大会で高い成績を収めたプレイヤーが3人がリザーバーとして招待された。

その予選と本戦の間に行われた禁止改定は、環境(メタゲーム)の変遷を語る上で欠かせないものだろう。

予選環境ではシーズン6‐1からの大規模な下方修正を経てもいまだ強力であった最新メガミ・カナヱが環境を席巻。中でも、特に相性がよい「桜花拝」ホノカ(Aホノカ)、ヒミカと組み合わせた構築(Aホノカ/カナヱ/X、ヒミカ/カナヱ/X)は、国内予選突破者の過半数を占めていた。


そんな最中の禁止改定では、カナヱの持つ万能の防御カード《封殺》と、Aホノカの根幹を成す1枚《指揮》が全体禁止、ヒミカ/カナヱにおいて「構想」達成と安定性に寄与していた《バックステップ》が組み合わせ禁止となった。これにより、各選手は使用メガミの再選択を強いられることになる。

カナヱ自身は「赤の幕」で打点補助を行なうビートダウンや「紫の幕」によるリソース増強、さらには「終幕」特殊勝利デッキといったほかの強みを残していたものの、Aホノカ絡み(特に、カナヱが除かれた時のAホノカ/X)とヒミカ/カナヱはデッキパワーが大きく落ち、それぞれ三拾一捨のボトム(ほとんどの対面で返される組み合わせ)となりやすくなった印象だ。

◆メガミ選出の特徴
各選手は予選よりも短い準備期間の中で、手探りながらそれぞれ変化に適応してきたように見えた。依然としてカナヱはひときわ強力であったが、彼女を取り巻くほかのメガミの様相は大きく変化していた。禁止されたカードの抜けた穴をリペアして予選突破時の三柱を使い続けた選手もいれば、Aホノカやヒミカに代わるカナヱの新しい相方を探った選手、果てはカナヱを外す選択肢を取った選手もおり、予選よりも混沌とした環境であったといえる。

やはり最大の変化としては、《封殺》の禁止だろう。


《封殺》は宣言した名前の切札使用を封じ、さらに「幕」の条件を満たせば通常札をも封じられる付与札だ。この効果は特に熟練者同士の決闘では有効に働き、「これをされたら負け」な相手の動きをピンポイントで止めて、実質的なターンスキップのように機能していた。

《封殺》が環境から消えたことで、特定のカードを準備やリーサルに使用するタイプのメガミが最検討されはじめた。中でも《大錬成マテリアル》で段階を踏んで《錬成攻撃》を強化する「鍛冶師」ハガネ(Aハガネ)、《BlackBox NEO》で「TransForm」を繰り返して追加効果を獲得する「帰還」サリヤ(Aサリヤ)は、実際に本戦で選出された。

準備している間に速攻を仕掛けてくるヒミカが禁止改定でカナヱと組みづらくなり、減少傾向にあったのも追い風だったのかもしれない。

もう一つの大きな変化は、シーズン6-2で大型上方修正を受けたサイネの台頭である。彼女は「起源戦」(メグミ・カナヱ除くオリジン版18柱限定ルール)の研究を通して注目され始めた。カナヱとAホノカが頭一つ抜けていたかつての「完全戦」では目立たなかったが、そのポテンシャルが明るみに出た形だ。実際に持ち込んだ選手も多く、彼女の高い評価がうかがえる。来シーズンの下方修正対象ともなっていないので、今後の活躍からも目が離せない。


◆決勝戦レポート

本項では、そんな波乱の「巫鏡杯」、その決勝の内容をお届けする。
勝ち抜きのトーナメント形式、そのAブロックを抜けたのはカリン選手。「第二幕」時代の全国大会や「新幕」の招待選手大会で優勝した実績を持つ古豪だ。惜しくも来日出来なかった海外予選の代表者に代わって招待されながら、並みいる予選突破者を破り勝ち上がった。

対するBブロックを勝ち抜いたのは、東京予選B代表のますたー選手。大規模大会での上位入賞経験は多数あり、中でもシーズン2の大交流祭では日本一に輝いている。カリン選手には招待選手大会決勝の対決で敗れており、この大舞台はリベンジマッチともいえる。

カリン選手(画像左)とますたー選手(画像右)

カリン選手の三柱は、ヒミカ/Aハガネ/コルヌ。カナヱ、サイネのいずれも不採用というユニークな構成だ。どのメガミを抜かれても遠距離レンジロックが可能なのが特長である。ヒミカの採用率が落ち、対遠距離意識が比較的弱まったところを狩りに行った形だろうか。

ますたー選手の三柱は、サイネ/「祈禱師」ライラ(Aライラ)/カナヱ。カリン選手とは打って変わって、下馬評で強力とされるメガミを組み込んでいる。Aライラの採用には、《円環輪廻旋》等を活かした対サイネ意識の側面もありそうだ。総じて、「対正統派を意識した正統派」の構成であるといえよう。

取り除きを終え、カリン選手がヒミカ/Aハガネますたー選手がAライラ/カナヱを宿すこととなった。

カリン選手が使用するメガミ。
ますたー選手はAライラとカナヱを使用。

カリン選手がサイネを除いたのは、遠距離攻撃・レンジロック両方に対しての耐性が三柱で最も高いメガミだからであろう。しかし、ますたー選手がコルヌを除いたのは意外に思えた。というのも、ヒミカ/Aハガネは《シュート》を《大錬成マテリアル》で《錬成攻撃》として強化するデッキが火力とロック性能共に優れており、有効な対応の少ないAライラやカナヱで捌き切るのは難しい印象があるためだ。

 

しかしますたー選手は、予選で自身がヒミカ/Aハガネを(カナヱと組ませて)使用しており、その動きを熟知している。そのため、ヒミカ/コルヌやAハガネ/コルヌより御しやすいと踏んだのだろう。大舞台らしからぬ大胆な選択に、踏んできた場数や研究成果を感じさせられた。

桜花決闘はカリン選手の先手でスタートし、定石通り初手で《大錬成マテリアル》。《シュート》を「金床」に送った。

返しにますたー選手は2前進から《脚本化》で「構想カード」《粒立て》を準備。さらに、《風走り》で間合を6まで一気に詰める。

次のターン、ますたー選手は《空駆け》で間合を3まで進めつつ、物語を右ルートに進めた。狙うは、なんと特殊勝利。ヒミカ/Aハガネの「3ターン目に連続攻撃しつつ《錬成攻撃》を強化する」という定石を知っているがゆえに、そのターンに間合操作で無理をさせられれば耐えきれると踏んだのだろう。まさに妙手だ。

カリン選手にとっては想定外の間合でのスタートとなってしまうが、さすがの実力者、一方的な展開にはさせない。Aライラの前進力に抗うべく採用されたであろう《ヴァーミリオンフィールド》により、詰まされることなく間合を離し、計画通りすべての攻撃を撃ち切って4点のライフを奪う。しかしオーラ、フレアといったリソースはぎりぎりとなってしまう。

 

ますたー選手はその隙を突く。1ターン早く再構成することで自分と相手の再構成に《鼓動》を合わせ、さらに《ほかげきらぼし》《暴風》の移動で《位置取り》(意思の面)を達成。計算されつくした最短ルートで物語を進める。《残光》での手札破壊やクリンチも合わせ、相手の攻め手を遅らせるのも忘れない。

さらには赤3(下)の幕で《桜飛沫》を準備して、オーラダメージ3以上の攻撃を牽制。着々と計画を遂行していく。

ここで、どうにか態勢を立て直したカリン選手が動き出す。もう一度間合を離し、《鐘鳴らし》《レッドバレット》。ライフ受け。さらに《マグナムカノン》。これもライフ受け。これは無茶な受け方のようで、ますたー選手にとっては《錬成攻撃》を受けきる唯一の選択肢であった。結果、ますたー選手はオーラ0、ライフ1とぎりぎりで生存しつつ、緑0の幕に進む。

しかし、ターンを返されたますたー選手は《位置取り》を達成するリソースが足りず、特殊勝利は成されなかった。他の構想は達成できそうになく、再構成もできないので、新しいカードを引けない。諦めず「緑の幕」で山札を回復しながら勝ち筋を探るますたー選手だったが、カリン選手はあせらず、頓死筋を見切り、粛々と手札を揃えて《錬成攻撃》でリーサルとなった。

だが、ますたー選手が《空想》の代わりに別の攻撃札を採用していたか、《あたらよちよに》ではなく《雷螺風神爪》やそれを呼び出せる《はらからのあまつそら》を採用していたらば、《マグナムカノン》や「赤の幕」でライフを減らしていたカリン選手を(特殊勝利でなく)攻撃で倒しきる可能性もあった。まさに達人同士でしかなされない、紙一重の名勝負であったといえよう。


両選手とも、素晴らしい決闘をありがとうございました。そして、カリン選手、おめでとうございます!

◆優勝者・カリン選手インタビュー

――どのメガミの組み合わせでもここまで高いレベルのレンジロックデッキができたのは『ふるよに』の歴史上初めて」とBakaFire氏もおっしゃっていましたが、レンジロックデッキはどのくらい検討されてきたのでしょうか?

カリン:以前の結果を残してきた大会でも、基本的にはレンジロックのデッキを使っていました。
「三拾一捨」というルールは、こちらが選んだ3柱のメガミから相手が1柱を抜き、その残り2柱でデッキを組むというものです。レンジロックデッキを相手が返してこないだろうという、最初の段階の読み合いを有利にするためにこれまで使っていました。
でも、今の環境では3柱のうちどのメガミを相手に抜かれても、高いレベルでレンジロックデッキを作れるものが完成し、そのおかげでより強固な勝ち筋を掴むことができました。

――決勝戦でヒミカ、アナザー版ハガネの2柱が相手から戻ってきたときはいかがでした?

カリン:そうですね。相手がどのメガミを戻してくるかという読み合いが三拾一捨では生じますが、今回はそこに勝った形です。
(決勝相手の)ますたー選手がこちらのメガミ3柱から、ヒミカを捨ててアナザー版ハガネとコルヌを戻す可能性がまずありました。その理由ですが、ますたー選手のメガミ3柱のうち、アナザー版ライラとカナヱの組み合わせはヒミカに対して脆弱性がかなりありました。そのため、ヒミカは残したくないと相手は考えるはずです。
そしてアナザー版ライラとサイネの組合せはヒミカに対して強い組み合わせなんですね。
ですので、ますたー選手がヒミカをこちらに戻すのか、戻さないのか、というところが大きな読み合いになりました。
そこで私は、ますたー選手がヒミカを残してくるだろうと踏んで、ヒミカに弱いアナザー版ライラとカナヱの組み合わせを戻したんです。
そしてその読みが実際に的中して……といった感じですね。

――試合の終盤でライフの読み間違えがありましたよね。あそこからリカバリーして勝ったのは手に汗握りましたね。

カリン:あれはライフ1点を見逃していて倒せなかったんですけど、その時点でターンを相手に渡していて、さらにこちらのリソースは吐ききっていたところでした。相手から打点が飛んでくれば負けという状況でしたが、相手の勝ち筋がカナヱ(の特殊勝利)に寄っていたんですね。ただ、その特殊勝利を達成する手段を相手も失っていて。(こちらがターンを渡した時点で)もう負けたものだと思っていました。
ますたー選手のターンになって、ここであと1つ条件を達成されれば特殊勝利になるというところで、でもこちらは対応札もなにもなくて。やれることがないから、ますたー選手が勝ち筋を考えている間はこちらは何も考えてなかったんです(笑)。
ターンが返ってくれば勝てるだろうけど、ターンが返ってこなければそのまま特殊勝利を決められて負けるなと。ライフ1点の見逃しミスはミスとして受け入れようと覚悟を決めていました。
でもターンがこちらに戻ってきて、特殊勝利を決められなかったということは……と相手の切札の予想も付きました。あとはゲームを粛々と進めていけば勝てるなと。

――最初の読み合いでは有利に立てましたが、ギリギリの試合展開になりましたね。

カリン:そうですね。メガミの読み合いには勝ちましたが、ますたー選手もそのまま普通のデッキを作ると勝てないとわかっているので、普段ならヒミカ相手にしないようなデッキをその場で組み上げてきました。その戦略に意表を突かれてしまい、こちらもギリギリのリソースで戦うしかないなと殴りに行った結果の、ライフ1点の見逃しでしたからね。

――最後に、巫鏡杯優勝ということで優勝の想いをお願いします。

カリン:
2回戦目の山札6枚から決まった2枚を引かないと勝てないという状況で、その2枚を引けて勝ったりしましたし、3回戦でもミスしたぶんを引きがカバーしてくれたりもして、今日は自分の日なのかなと思ったりもしました(笑)。そういう勝負強さもあったおかげで、今日は勝ちきることができました。
この大会に集まった方々はどなたも強い選手ばかりですが、その中で優勝できたということは非常に嬉しく思います。

――優勝おめでとうございます! 本日はありがとうございました。

◆『ふるよに』製作者・BakaFire氏インタビュー

――今日の参加者が選んだメガミを見て、製作者としていかがでしたか?

BakaFire:ここに集まったプレイヤーはデザイナーの手の届かないレベルの実力を身に着けた方々ばかりです。そのような方々の研究で有力な組み合わせの候補が固まって来ることは自然の摂理だと思います。そのうえで作り手の感覚としてはカナヱ一色になっていなくてよかったとは安心しました(笑)。禁止改定はやむなく出さざるをえなかった一方でカナヱを研究してきた方々の努力にも可能な範囲で配慮したいという本当に悩ましいところでしたので。
そんななかでカリン選手がメタの横っ面を叩きに来たようなメガミを持ち込み、ますたー選手がトップメタを掘り下げたメガミを持ち込んだ構図は作り手としても嬉しく、見ごたえのある組み合わせでした。どちらが勝ってもストーリーとして熱く、巫鏡杯を開催できて本当に良かったと感じています。
ますたー選手が決勝戦で特殊勝利を目指す戦略を取りましたが、実況で私は「このマッチアップのゲームスピードで特殊勝利を目指すのは無理だろう」と話していたんですよ。しかし特殊勝利があと一歩のところまで進んで驚きました。それ以外にも新しい戦略が次々とみられ、実況しながら「こんなプレイングもあるんですか」と驚きがたくさん生まれました。そして5年経った今でも驚ける本作の懐の深さを改めて実感しました。作り手として全て計算しているなど口が裂けても言えませんが、そうなってもおかしくないようにと心を込めてきたものが祝福されたようで嬉しい限りです。
集まって頂いた16名がそれぞれ個性と実力を発揮していただけた、とても熱い一日なったと思います。

――11月20日(土)、21日(日)の「ゲームマーケット2021秋」新しい拡張セット「第六拡張」が発売されますが、今後の『ふるよに』の目標などを教えていただけますでしょうか。

BakaFire:今度発売する「第六拡張」は今描いているストーリーのある種のクライマックス的な位置づけになります。そんなクライマックスで登場する新たなメガミとアナザー版メガミを楽しんでいただけたらうれしいです。
続いて、今度韓国語版の『ふるよに』が発売されます。それに伴ってすでに発売している中国語版と合わせて、来年以降はアジア選手権という方向を向いてみようかなと思っています。コロナ禍が落ち着いて海外との行き来ができるようになれば2022年~2023年を通してアジアでの盛り上がりにも力を入れていきたいと思います。
12月あたりからは、待ち望まれていたカジュアルな流れもやっていこうと思いますので、こちらも応援していただければうれしいです。

――本日はありがとうございました。