『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS2021」さいたま大会を「風単【チョコボ】」で優勝したリバップさんのインタビューをお届けします。
◆はじめに
みなさんこんにちは!『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
11月に入り、次のセットである「クリスタルの支配者」の発売も迫ってきましたね。
公式コラムやユーザープレビューで毎日のように新カードが公開され、気持ちもすっかり新環境に向けて切り替わっているというプレイヤーの方も多いかもしれません。
「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」環境の「MASTERS 2021」も、福岡・仙台・和歌山の3大会を残すだけとなりました。
今回の環境がどんなゴールを迎えるのか、最後まで気になるところです。
今回は「MASTERS 2021」さいたま大会(スタンダード)を「風単【チョコボ】」でみごと優勝されたリバップさんにインタビューを行ない、環境をコントロールしきった「待ち」の戦術についてお聞きしました。
環境終盤を迎えて新デッキの登場、そしてそれが【チョコボ】というのも驚きですが、残す「MASTERS 2021」はすべてスタンダードの大会となるので、要チェックのデッキなのは間違いないでしょう。
それでは、さっそくはじめていきましょう!
リバップ
秋葉原を中心に活動するプレイヤー。
普段は『FFTCG』だけでなく、さまざまなカードゲームを嗜んでいる。
さいたま大会で久しぶりに『FFTCG』トーナメントシーンに戻ってきたが、
さっそくその確かな実力を示すこととなった。
調整メンバーは「MASTERS 2021」でも結果を残している強豪コミュニティであり、
今後の大会でも活躍していくこと間違いなし!
◆環境席巻!?「風単【チョコボ】」
――「MASTERS 2021」さいたま大会、優勝おめでとうございます。
リバップ:ありがとうございます。
――今回使用された「風単【チョコボ】」は、さいたま大会でも使用率がもっとも高く、実に8名ものプレイヤーが選択していたデッキでした。今回リバップさんはどういった経緯でこのデッキを選んだのでしょうか?
リバップ:もともとこのデッキは「MASTERS 2021」千葉大会でベスト8に入ったプレイヤーが使っていたデッキに感銘を受けて作ったんです。
千葉大会に参加した際、たまたま「風単【チョコボ】」の試合を見る機会があったのですが、その試合を見ていて「このデッキはヤバい!」という衝撃を受けました(笑)。
ちょうど同じ試合を見ていた友人のひーとさん(※「MASTERS 2021」八王子大会優勝者)とも「かなり可能性があるデッキだ」という意見になり、試してみようと思ったわけです。
そして実際自分たちで作ってみたところ、デッキのポテンシャルはもちろんのこと環境におけるポジションもかなりいいのではということで、さいたま大会では「風単【チョコボ】」を使おうと決心した、というのが今回の使用までの経緯です。
●デッキリスト:「風単【チョコボ】」(「MASTERS 2021」さいたま大会優勝 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(38枚) | ||
【1-075C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【4-062C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【4-063C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【5-060C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【6-050C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【7-055R】 | 《チョコボ》 | 3 |
【9-050C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【11-050C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【14-042L】 | 《雲神ビスマルク》 | 3 |
【3-049C】 | 《イザナ》 | 3 |
【5-061C】 | 《チョコボ士》 | 3 |
【5-068L】 | 《ヤ・シュトラ》 | 2 |
【14-118H】 | 《シュテル・リオニス》 | 3 |
バックアップ(9枚) | ||
【9-051R】 | 《デブチョコボ》 | 3 |
【12-047C】 | 《チョコボ》 | 2 |
【5-067R】 | 《ミューヌ》 | 2 |
【11-056R】 | 《フィオナ》 | 2 |
召喚獣(3枚) | ||
【10-055H】 | 《チョコボ》 | 3 |
――さいたま大会では僕も別の方の「風単【チョコボ】」と対戦し大きな衝撃を受けましたが、リバップさんの考える「このデッキはヤバい」ポイントはどういったところだったんでしょうか?
リバップ:なんといっても【9-051R】《デブチョコボ》のカードを引く力です。
このデッキには10種29枚の【カード名(チョコボ)】のカードが採用されているのですが、【9-051R】《デブチョコボ》はこれら【カード名(チョコボ)】を大量に手札に加えられるため、ゲーム序盤にバックアップを展開しつつ、それにかけたコスト以上のアドバンテージを得ることができます。
また、バックアップや召喚獣にも【カード名(チョコボ)】が存在するため、さらにバックアップを展開したり、相手の動きに備えることもできます。
実際さいたま大会では、【5-067R】《ミューヌ》で【9-051R】《デブチョコボ》を 1ターンに2回キャストし、稼いだアドバンテージで1ターン目から【3-049C】《イザナ》、バックアップを4枚、そのうえで手札は5枚という展開をやってのけています。
この試合は対戦相手に「(回りすぎてしまって)申し訳ない…」と思うほどでしたが、無理せずこういった爆発的な展開を行なえる可能性があるというのが「風単【チョコボ】」の「ヤバいポイント」です。
また「風単【チョコボ】」はフォワードの展開力も優れたデッキです。
各種《チョコボ》はもちろんですが、【3-049C】《イザナ》や【5-061C】《チョコボ士》もコストが低く、なかでも【5-061C】《チョコボ士》はアクションアビリティでコストを払わずに《チョコボ》を展開できます。
この展開力を【14-042L】《雲神ビスマルク》のアクションアビリティを介して相手のフォワードを除去することに還元し、盤面をコントロールするのがこのデッキの本質です。
また【14-042L】《雲神ビスマルク》はフィールドの風属性のカードを毎ターン手札に戻せるので、【5-067R】《ミューヌ》や【9-051R】《デブチョコボ》を繰り返し使えます。
カードが手札に戻ることでさらにドローできるので、アドバンテージからアドバンテージを生み出せる点も強力です。
手札に戻した【9-051R】《デブチョコボ》は【5-061C】《チョコボ士》で相手のターンに出しなおせるため、自分のターンになればCPを生み出せます。細かい部分ですがこういったラグのなさも展開力に結びついています。
フィールドの展開力はもちろんですが、召喚獣の【10-055H】《チョコボ》も便利で、フォワードに疑似的に除去耐性を与えたり、カードを引くことで相手のターンにアドバンテージを得られるという点でも非常に噛み合っています。
まとめると《チョコボ》という馬力のあるエンジンを使い、【14-042L】《雲神ビスマルク》を最大限活かし切る。それに最適化されたデッキが「風単【チョコボ】」ということになりますね。
――なるほど。「風単【チョコボ】」のデッキパワーについてはよくわかりました。次に、環境におけるポジションのよさという点についてお話しいただけますか。
リバップ:私が直前に参加した「MASTERS 2021」千葉大会は、「土水【ドーガ】」が優勝しており、また「土水【ドーガ】」に対抗するデッキとして「火水【アクスター】」が人気を集めているという印象でした。
この2つのデッキには「強力なEXバーストを持つカードが多く採用されている」という共通点があります。
こうしたデッキに対して「風単【チョコボ】」は、大量展開した《チョコボ》と【14-042L】《雲神ビスマルク》で相手のフォワードをすべて除去し、そして【14-118H】《シュテル・リオニス》でパワーを強化してEXバーストで対処されない状況を作ってから 1ターンで仕留めるという戦術を取ることができます。
一撃で相手を倒せるまで徹底した「待ち」のプレイをすることで、相手のEXバーストを疑似的に無力化して勝ちを狙いにいけるという点が、EXバーストが重要な環境への回答になるというのが「風単【チョコボ】」が環境で優位な理由です。
実際、さいたま大会決勝のモーグリ大好きさんとの試合では、【14-118H】《シュテル・リオニス》と【14-042L】《雲神ビスマルク》でフォワードを除去する展開に専念し、キルターンまで1度もアタックすることなくゲームを進め、安全に勝利することができました。
半端に攻撃を仕掛けてEXバーストを発動させてしまうと、そこから一気に逆転を許してしまうので、相手にもよりますが基本的にはこちらから仕掛けず、がっぷり四つになって戦うほうが力を発揮するデッキだと思います。
――【9-051R】《デブチョコボ》をサーチするカードも【3-049C】《イザナ》、【5-061C】《チョコボ士》と2種採用されていて、安定感という面でもかなりコントロールに向いている印象を受けますね。
リバップ:基本的には【9-051R】《デブチョコボ》がデッキの要なので、【3-049C】《イザナ》、【5-061C】《チョコボ士》を絡めて【9-051R】《デブチョコボ》のキャストを目指す展開になります。基本的なキープ基準は【9-051R】《デブチョコボ》か、それをサーチできるカードになります。
ただし「風単【チョコボ】」のミラーマッチでは、ただ【9-051R】《デブチョコボ》を引くだけでは相手に勝つことはできません。
このマッチアップでは【14-042L】《雲神ビスマルク》を引けているかどうかが勝敗を大きく左右するので、何としても相手より先に【14-042L】《雲神ビスマルク》にたどり着く必要があります。
さいたま大会では2回「風単【チョコボ】」のミラーマッチをしましたが、そのどちらも私だけが【14-042L】《雲神ビスマルク》を引いたため一方的なゲームになりました。
「風単【チョコボ】」はアドバンテージを獲得する能力は飛び抜けていますが【チョコボ】以外のカードを引く性能は高くないため、こうしたマッチアップでは、マリガンの基準をより厳しくし【14-042L】《雲神ビスマルク》をキープ基準にしていました。
これは相手が使ってくるデッキがわかっていればこそですが、事前の情報がある場合はそれに合わせてマリガンを行なうというのも大会という場では重要です。
また、構築の面でも【14-042L】《雲神ビスマルク》へのアクセスは意識し【11-056R】《フィオナ》を採用しました。
サーチするために4CPかかってしまいますが、このデッキは【9-051R】《デブチョコボ》で過剰なほどのアドバンテージを得られるため、状況によっては手札を2枚コストにしてアビリティを起動することも少なくありません。
今回【11-056R】《フィオナ》は2枚採用していますが、ここのスロットは直前まで【2-050H】《アルクゥ》を採用し、ミラーマッチでの《チョコボ》の生存率を高めようと考えていました。
しかし、突き詰めて考えるとミラーマッチで重要なのは【14-042L】《雲神ビスマルク》や【14-118H】《シュテル・リオニス》といったカードだと思い、最終的に状況に応じてキーカードをサーチできる【11-056R】《フィオナ》を増量した今回の形に落ち着きました。
――ここまでの話を聞くとかなり万能感のあるデッキに感じますが、苦手とするデッキタイプはあるのでしょうか?
リバップ:今回対戦したなかでは、関東の強豪プレイヤーであるeurekaさんやkakkaさんが使っていた「土単【モンク】」はかなり苦手なデッキです。
【1-107L】《シャントット》、【14-062L】《岩神タイタン》と豊富な全体除去があり、こちらが展開したフォワードを簡単に処理できるうえ、こちらのフォワードはパワーが低いこともあり【11-064L】《アーシュラ》のアビリティで簡単に処理されてしまいます。
とはいえ、半端に攻撃を仕掛けても【13-064R】《ヤン》でフォワードのパワーが上がってしまい、【14-042L】《雲神ビスマルク》の除去が間に合わなくなってしまいます。
決勝ラウンドでは【5-068L】《ヤ・シュトラ》、【14-118H】《シュテル・リオニス》でなんとか全体除去をかわし、【14-042L】《雲神ビスマルク》でコントロールする展開に持ち込めましたが、先ほど話したとおり【チョコボ】以外のカードを狙って引くのはかなり難しいので、この試合は相当運がよかったと思います。
また、爆発力こそあるもののバックアップを準備する必要があるデッキなので、それ以上にフォワードの展開力があるデッキには押し負けてしまうこともあります。
「水氷【バイキング】」のようにフォワードのパワーラインが低いデッキに対しては、【14-042L】《雲神ビスマルク》+【3-049C】《イザナ》で切り返すこともできますが、たとえば「土水【ドーガ】」に【13-120H】《ドーガ》、【11-064L】《アーシュラ》、【13-119L】《ソフィ》のようなロケットスタートを決められてしまうと、フォワードの展開と【14-042L】《雲神ビスマルク》による除去が間に合わず、EXバーストも1枚も採用していないので逆転はまず不可能です。
◆秋葉原発! 強豪チームで「FINAL」へ
――今回秋葉原で活動されているプレイヤーでは「風単【チョコボ】」を使われた方がかなり多かったですが、これは皆さんで相談して使用されたんでしょうか?
リバップ:全員でというわけではなく、普段一緒に遊んでいるひーとさん、らっちょさん(「MASTERS 2021」浜松大会優勝者)たちと情報共有や意見交換を行なっていました。
もともと私は、日ごろからずっと『FFTCG』を遊んでいるわけではなく、気が向いたとき大会に出るというスタンスでプレイしています。
というのも、私自身「FF」シリーズのファンだったというわけではなく、普段遊んでいたメンバーが『FFTCG』を始めたので、一緒に遊ぶために始めたという要素が強かったからです。
前回、本腰を入れてプレイしていたのが昨年の「SHOP MASTERS」の開催に合わせてだったので、今回「MASTERS 2021」に参加したのは久しぶりに『FFTCG』をプレイする機会でしたが、実際にゲームをしてみるとプレイのセオリーがガッツリ変わっていたことには驚かされました。
――無事「MASTERS 2021 FINAL」への参加権利を獲得したわけですが、今後はしばらく『FFTCG』に専念されるのでしょうか?
リバップ:そうですね。権利を取れたからには、調整メンバーにも付き合ってもらってがんばりたいと思います。「MASTERS 2021 FINAL」の権利を持っているメンバーもいますし、みんなでまたがんばっていきたいですね。
「MASTERS 2021 FINAL」は新しい環境になるので、またデッキを考えるところからやっていきたいと思います。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回は「MASTERS 2021」さいたま大会で優勝されたリバップさんにインタビューを行ない「風単【チョコボ】」についてお聞きしました。
徹底した待ちの戦術で強豪デッキを下し、メタゲームに躍り出たことで環境に一石を投じるデッキとなりそうです。
リバップさんとともに調整を行なっているひーとさん、らっちょさんも「MASTERS 2021 FINAL」の権利を獲得しており、大会では一大勢力となるであろうことは明らかです。
「Opus XIV」環境で残す「MASTERS 2021」も3会場となりますが、僕も体力が許す限り参加していきたいと思います。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!