『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS2021」諏訪大会を「氷風」デッキで優勝したai_fftcgさんのインタビューをお届けします。
◆はじめに
みなさんこんにちは!『FFTCG』プレイヤーのたるほです。
ついにスタートした「MASTERS 2021」ですが、東京都に緊急事態宣言が発出されたことに伴い、再度延期となってしまいました。感染拡大を防ぐのが一番大切なこととはいえ、大会を楽しみにしていたプレイヤー全員にとって非常に残念な状況です。
とはいえ、これから「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」の発売も迫り、ユーザープレビューも盛り上がっており楽しめる要素はまだまだあるので、気を落とさずに再開を待ちたいと思います。
僕もこのあり余る『FFTCG』熱を記事にぶつけ、みなさんに楽しんでいただけるよう取り組んでいくつもりです。
まずはこれまでの「MASTERS 2021」の優勝者インタビューをお届けしていきますので、ぜひお付き合いいただければと思います。
さて、今回は前回の「MASTERS 2021」横浜大会を優勝されたしどさんのインタビューに引き続き、その翌日に開催された「MASTERS 2021」諏訪大会(スタンダード)を「風氷」で優勝されたai_fftcgさんへのインタビューとなります。
それでは、さっそく始めていきましょう!
東京のプレイヤー。
常にトップTierのデッキを選ぶだけでなく、環境や練度を加味した自身に最適なデッキを選択する審美眼をあわせ持つ。
筆者とは「FFTA」が好きという共通点があり、描き下ろしイラストのフルアートカードを求めて新弾の発売日にショップでよく出会う。
◆2つの戦略を使い分けよう!「風氷」デッキ解説
――「MASTERS 2021」諏訪大会優勝おめでとうございます。
ai_fftcg:ありがとうございます。
――ai_fftcgさんが使ったデッキは「風氷」でした。僕も決勝で対戦しましたが、2本先取のゲームできっちり2敗してしまい、デッキの力強さを感じました。この「風氷」はどんなデッキなのでしょうか?
●「氷風」(MASTERS2021諏訪大会:優勝 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(23枚) | ||
【12-116L】 | 《ロック》 | 3 |
【12-114R】 | 《バラライ》 | 3 |
【13-109R】 | 《ホープ》 | 2 |
【12-115C】 | 《リュック》 | 2 |
【11-037L】 | 《バルトアンデルス》 | 2 |
【13-132S】 | 《ティターニア》 | 2 |
【3-056H】 | 《ジタン》 | 2 |
【3-049C】 | 《イザナ》 | 2 |
【12-037L】 | 《アーシェ》 | 3 |
【10-127H】 | 《シトラ》 | 2 |
バックアップ(16枚) | ||
【11-022C】 | 《イドラ》 | 1 |
【6-022R】 | 《イゼル》 | 1 |
【1-196S】 | 《モーグリ[XIII-2]》 | 1 |
【11-041C】 | 《ユーク》 | 1 |
【10-039C】 | 《ナグモラーダ》 | 1 |
【4-026H】 | 《ガストラ帝国のシド》 | 1 |
【8-058R】 | 《ノルシュターレン》 | 3 |
【12-038H】 | 《アルテア》 | 2 |
【13-043C】 | 《スティルツキン》 | 1 |
【5-067R】 | 《ミューヌ》 | 2 |
【8-057C】 | 《忍者》 | 1 |
【12-048R】 | 《チョコラッテ》 | 1 |
召喚獣(8枚) | ||
【2-049H】 | 《アスラ》 | 3 |
【11-055R】 | 《パンデモニウム》 | 3 |
【10-055H】 | 《チョコボ》 | 2 |
モンスター(3枚) | ||
【13-037C】 | 《オチュー》 | 3 |
ai_fftcg:「風氷」はデッキの軸になる動きが2つあるデッキです。
1つが【12-116L】《ロック》や【12-037L】《アーシェ》などカードのキャスト回数に応じてリターンがあるカードを活かした戦術、もう1つが【12-114R】《バラライ》のアビリティでフィールドの制圧を狙う戦術です。
この2つの軸を結びつけているのが風属性の、バックアップをアクティブにする効果を持つカードたちです。
バックアップをアクティブにするという効果は【12-114R】《バラライ》のアビリティを誘発させる条件であり、バックアップがアクティブになることで自分がカードをキャストする回数を増やすことができます。
こうしたカードを【12-038H】《アルテア》や【5-067R】《ミューヌ》のようにフィールドのキャラクターを手札に戻すカードと組み合わせることで、毎ターン継続してキャスト数を稼いだり、キャラクターをアクティブにすることを目指しています。
特に「Opus XIII」で登場した【13-037C】《オチュー》は、このデッキの核となるカードで、「風氷」は【13-037C】《オチュー》によって成り立っているデッキといっても過言ではありません。
コスト1のカードでありながら、バックアップを2枚アクティブにできるのはこの系統の効果では破格のスペックです。『FFTCG』では使用したコスト分リソースが返ってくるカードに対して実質0コストという表現をしますが、使う前より使った後のほうがリソースが増えている【13-037C】《オチュー》は、もはや実質−1コストのカードと呼ぶことができます。
コスト1という点も強力で、【13-037C】《オチュー》のキャストにリソースをかけることなく動くことができるので、手軽に使えてキャスト回数を稼ぐことにも長けています。
また、3点以上ダメージを受けているとパワー7000のフォワードになり、フィールドに出たあとも戦闘要員として働けるため、ゲームを通して持て余すタイミングがありません。
バックアップをアクティブにするという『FFTCG』ではお馴染みのアビリティを持ちながらこれまでに類のないスペックを持つ、まさに新時代のカードと言えます。
――バックアップをアクティブにするカードを主力に置いたデッキといえば、これまでは「風単」などが代表的でしたが「風氷」はその発展系というイメージでしょうか?
ai_fftcg:「風単」のイメージとはかなり異なりますね。「風単」にも【1-080H】《バッツ》のように実質0コストでキャストできるカードが入っていましたが、あのデッキは【7-128H】《ユーリィ》によるアドバンテージの獲得がデッキの着地点でした。それに対して「風氷」では【12-116L】《ロック》を使って攻撃的に相手のリソースを奪うことができるという点で強さのベクトルが異なる、という感じです。
――このデッキはどういったアプローチで生まれたデッキなんでしょうか?
ai_fftcg:もともと僕は手札を捨てさせる効果が好きで、「Opus XII」環境でも【12-116L】《ロック》をコンセプトにしたデッキを使っていました。
当時は「風土氷」の3属性デッキで、【12-061L】《クルル》+召喚獣のギミックでキャスト数を稼ぐ構築でした。そこに【13-037C】《オチュー》が登場したことで【12-061L】《クルル》に頼らずキャスト数を稼ぎやすくなったこと、デッキの属性が減ることで早いターンから【12-116L】《ロック》のキャストを狙うプレイが可能なったこともあり、「Opus XIII」環境では「風氷」の2属性だけでデッキを考えました。
また、「風土氷」のときの氷属性は【12-116L】《ロック》のみを採用している、いわゆるタッチ氷だったのですが、氷属性に【13-132S】《ティターニア》という強力なフォワードが登場したことで、氷属性をしっかりと採用する価値が見出せたことも今回「風氷」というカラーリングを選択した1つの理由です。
「風氷」というカラーリングでデッキを考えるようになってかも、この構築に至るまでいろいろな変遷がありました。たとえば初期は【13-132S】《ティターニア》というカードにより注目して、【13-037C】《オチュー》以外にもモンスターを多く採用して【12-114R】《バラライ》を使ったコンボの比重を軽くした構築を使用していました。
――【12-114R】《バラライ》はデッキの軸という話もありましたが、当初はそれほど評価していなかったということでしょうか?
ai_fftcg:というよりはそれほど【12-114R】《バラライ》による除去が重要な環境だと考えていなかったという理由です。
それよりはキャスト数を稼いで【12-116L】《ロック》や【13-132S】《ティターニア》でのアドバンテージを奪っていくほうが強い行動だと考えていました。
【12-114R】《バラライ》を再評価するきっかけとなったのが「土水【モンク】」と対峙したときでした。
【11-064L】《アーシュラ》と【13-064R】《ヤン》からの展開力が高く、「ああ、この環境はフォワードの展開力が重要なのか」と強く感じました。
また同じようにフォワードを展開してくる「火単」が想像以上に速く、強かったことも要因です。
実際、【12-114R】《バラライ》を使ってみるとあらためてその制圧力の高さを実感したこともあり、採用しない理由はないだろうということで、もう1つの軸として【12-114R】《バラライ》の比重を重くしたというのがこのデッキができるまでの経緯です。
――なるほど。ということはかなり早い段階から「風氷」を使おうというビジョンは持って調整されていたんでしょうか?
ai_fftcg:デッキ自体はこれ以外にもいくつか調整していて、今回「風氷」でいこうと決心したのは前日の「MASTERS 2021」横浜大会の結果を踏まえてでした。
横浜大会では会場の半分くらいのプレイヤーが「火単」を使っていたと認識しています。諏訪大会はスタンダードで横浜大会とはフォーマットが違いましたが、「火単」というデッキはほとんど「L6構築」のカードプールで構築されているためフォーマットを問わず実力があり、地域的にもプレイヤー層が重なると予想したので、横浜大会の「火単」をスタンダード仕様にして使うプレイヤーが多いのではないかと考えました。
対「火単」という視点で「風氷」は非常に有効なデッキです。
基本的に「火単」には【12-012L】《テンゼン》たちを主軸にした【侍】型と、バックアップを展開しフォワードの除去アビリティで盤面を制圧してくるコントロール型があると考えています。
どちらも共通して、主力となるフォワードがコスト6以上に集中しているという特徴があり「風氷」は【12-116L】《ロック》でこれらのフォワードを簡単に対処することができます。
また「火単【侍】」は【12-012L】《テンゼン》を軸にしている以上、早いターンに【12-012L】《テンゼン》のキャストを目指さなければいけないんですが、フィールドに【12-012L】《テンゼン》を出したターンは手札が少ないという状況になります。それに合わせて【12-116L】《ロック》をキャストすることで【12-012L】《テンゼン》を除去しつつ手札を狙い打つことができるというのは、相手との差を大きくつけられるポイントです。【12-012L】《テンゼン》さえ対処してしまえば【侍】は本来のポテンシャルを発揮できず、汎用性を犠牲にバリューを得ている構築が裏目に出てしまいます。
一方でコントロール型の「火単」ですが、【13-130S】《ランジート》や【13-017H】《レイン》はバックアップを並べてこそポテンシャルを発揮するため、序盤はバックアップの展開に集中してデッキが動き出すのは中盤以降となり、こちらのコンボスタートの準備に十分な時間が稼げます。
相手の展開を許したとしても【12-114R】《バラライ》による全体除去の選択肢があるため、ゲームの主導権をこちらが握りやすいデッキといえます。
――前日の結果も踏まえ、「火単」に有利である「風氷」の使用を決めたんですね。
ai_fftcg:実はもう1つの候補として「土水【モンク】」も候補には挙がっていたんですが、こちらはデッキの練度に不安があって今回使用は見送りました。
「土水【モンク】」は同型対決をしたときに、デッキへの理解度が顕著に出るマッチアップなんですけど、自分は練度に不安があって使えないなと。
「風氷」との相性でいえば「土水【モンク】」側が極端に有利だと考えていました。少なくとも自分が対戦するうえでの勝率は10パーセント程度でしょう。
「土水【モンク】」が環境にいる以上は「風氷」を使わないという判断を下すべきというのが本来の筋の通った考え方ですが、今回は「火単」が多いと想定したため「氷風」を選択するのが筋だろうということで、諏訪大会ではこのデッキを使用しました。
――「風氷」と「土水【モンク】」の相性関係を決定づけている要素は、どこにあるんでしょうか?
ai_fftcg:【11-064L】《アーシュラ》を簡単に除去できないというのが大きな課題となります。
基本的に「風氷」は除去の役割を【12-114R】《バラライ》に頼っているのですが、そのためには【12-114R】《バラライ》をフィールドに定着させた状態で複数回バックアップをアクティブにしなければなりません。
【11-064L】《アーシュラ》のアクションアビリティはフィールドの【モンク】の数だけ使えるので、【12-114R】《バラライ》のアビリティに合わせて除去ができるうえ、相手の動きに対して【12-114R】《バラライ》を守ることもできないので【12-114R】《バラライ》をフィールドに定着させられず、盤面の取り合いで勝つことができません。
本来、展開されたフォワードへの対処が得意なデッキである「風氷」が、フォワードの展開を得意とする「土水【モンク】」に対して優位性を失ってしまうため、この2つのデッキの相性は明確に「土水【モンク】」に有利なものといえます。
それ以外にもブレイブを付与できる【13-064R】《ヤン》や、召喚獣やアビリティでダル状態にできなくなる【6-078R】《マート》のように氷属性に対して有効なカードもそろっているので、除去以外での突破も難しく、かなり厳しい相手と言えます。
――「土水」というデッキの中にも【モンク】型以外のタイプがありますが、そういったデッキに対しての相性関係はいかがだったでしょうか?
ai_fftcg:「土水【モンク】」以外の型にも【11-064L】《アーシュラ》は採用されることが多いですが、そういったデッキは【モンク】の数がさほど多くないので、【12-114R】《バラライ》を定着させることはそれほど難しくありません。
【モンク】に特化した構築に比べて多少付け入る隙はあるかと思いますが、それでも「土水」には【3-086R】《アグリアス》のような【12-114R】《バラライ》を対処する手段も豊富なデッキなので苦手ということに変わりありません。
――続いて、個々のカードの採用理由についても聞いていきたいと思います。
ai_fftcg:まずは 1つ目のコンセプトであるキャスト回数にまつわるカードということで【12-116L】《ロック》と【12-037L】《アーシェ》を3枚ずつと、もう1つのコンセプトとなる【12-114R】《バラライ》を3枚採用するところから構築をスタートしました。
【13-132S】《ティターニア》は強力なカードでしたが、使用感としては3枚は必要ないなと感じました。
キャストのために準備が必要なカードで、多く採用しすぎるとそのためにデッキを寄せなければならないので、構築によっては1枚以下という選択肢もあると思います。
反面、序盤に条件を満たせるとゲームのペースを完全にこちらのものにできる可能性もあり、今回はそういった上振れも期待して2枚採用しました。
【5-067R】《ミューヌ》と絡めて使いまわしたり、ゲームの詰めにも使えるので氷属性の新たなパワーカードという印象です。
【3-049C】《イザナ》は召喚獣の【10-055H】《チョコボ》を3枚採用したくないという理由から採用しました。
【10-055H】《チョコボ》は【5-067R】《ミューヌ》や【12-038H】《アルテア》同様、コンボパーツとして非常に強力なカードでしたが、勝ちに直結するカードではありません。
【3-049C】《イザナ》は【10-055H】《チョコボ》の枚数は減らさず、【5-067R】《ミューヌ》や【12-037L】《アーシェ》と合わせて使いやすい実質0CPで運用できるキャラクターを水増しできるカードということで2枚採用しました。【12-048R】《チョコラッテ》にアクセスできるので、バックアップが引けずに負け、となりにくいのもこのデッキでは重要な要素ですね。
――このデッキはフォワードとバックアップがかなりコスト3のカードに集中していますよね。
ai_fftcg:このデッキではまず1ターン目にバックアップ1枚、2ターン目にバックアップを2枚キャストし、3ターン目をバックアップ3枚の状態で迎えるというのが序盤のゴールになっていて、そこから展開に応じてゲームプランが分岐していきます。
そのためバックアップが3枚になった後どう動くかということを念頭に置いてカードを採用しているという事情があります。
最高の動きでいえば、3ターン目に【12-116L】《ロック》を2CPでキャストするプランが取れることですが、そういった展開ができなかったときに準備もないまま【12-114R】《バラライ》を出して、なにもせずに除去されてしまったら最悪です。【3-056H】《ジタン》や【10-127H】《シトラ》はそのような【12-116L】《ロック》が出せないゲームの中継地点としての役割を持つカードです。【3-056H】《ジタン》で【12-002H】《アマテラス》を捨てさせることができれば、より盤石に【12-116L】《ロック》を狙うことができます。
【10-127H】《シトラ》に関しては、デッキを作り始めた段階では3枚積むべきカードだと考えていました。ただ実際調整の中で3枚使い切る前にゲームが決着することが多く、手札からコストにできない光属性の特性も加味して2枚採用に落ち着きました。
――【10-127H】《シトラ》に関してはコストにできないことを嫌っての1枚採用や、人によっては採用しないという方も見かけるので、2枚採用という構築はカードのバリューを重要視しているという印象を受けます。
ai_fftcg:やはりバックアップを奇数枚展開することが多いので、【3-056H】《ジタン》と合わせて、奇数のアクションができるカードはそれほど減らす必要がないと考えました。
1枚までなら手札で余ってしまってもなんとかなるんですが、逆に引かない展開は避けたいという気持ちがありました。根拠となる確率があるわけではなく感覚での話になりますが、仮に予選を5回戦やるとして【10-127H】《シトラ》を使って召喚獣を回収したいタイミングのある試合が2回はあるだろうなと想像していて、その2試合でしっかり引くことを考えると、 1枚採用では枚数に不安があると考え2枚採用しています。
【13-109R】《ホープ》に関してはその強さを僕自身でもわかりきっていないところもあるんですが、個人的には【12-114R】《バラライ》のコンボの幅を広げるためのカードだと思っています。
それこそ、たるほさんとの決勝戦のように序盤から攻め込まれて、防御のために手札を使ってしまい【13-037C】《オチュー》や【11-055R】《パンデモニウム》をキープできないという展開のときに【13-109R】《ホープ》が出ていれば、手札を使わずに 1回多く【12-114R】《バラライ》のアビリティを誘発できる、みたいな使い方をするカードなのかなと。
正直、自分でも活かしきれていないカードという自覚はあります(笑)。
人によっては【13-109R】《ホープ》なしで【12-114R】《バラライ》を使うのは考えられないという意見も聞きますが、個人的な採用意図はあくまで補助的なカードとして考えています。それこそ、コストにする際に氷属性と風属性のCPを安定して供給できるというだけでも十分な働きをしてくれます。
――コスト3のフォワードといえば【5-068L】《ヤ・シュトラ》も強力な印象がありますが、採用候補には挙がらなかったんでしょうか?
ai_fftcg:【5-068L】《ヤ・シュトラ》は候補にはなりましたが、今回意識した「火単」や「土水【ソフィ】」を仮想敵としたときあまり役割が持てなかったんですよね。
特に【13-130S】《ランジート》や【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》のアビリティを止めてもそれほど得しないですし、一番止めたい【11-064L】《アーシュラ》はそもそもアクションアビリティで【5-068L】《ヤ・シュトラ》では止められないので今回は採用を見送っています。
【11-037L】《バルトアンデルス》は【11-064L】《アーシュラ》に対してワンチャンスを掴めないかという気持ちから2枚採用しました。
【11-055R】《パンデモニウム》→【11-037L】《バルトアンデルス》の順で使うことで、【11-064L】《アーシュラ》がどれだけパワーを上げても確実に処理できます。
大会中、一度そのシーンに出くわしたときはうまく対処できませんでしたが、落ち着いてプレイすれば通せた状況だったので、これは練習不足だったかなと。
――【11-055R】《パンデモニウム》を3枚採用しているのは、妥協のない構築だなという印象を受けます。
ai_fftcg:理由としては、まずさっき話した【11-037L】《バルトアンデルス》とのコンボが1つと、【12-114R】《バラライ》で確実に盤面を制圧するために、コンボパーツはしっかり3枚採用したいと考えました。
あと後付けなんですが、「火単」と対面したときにパワー9000のフォワードが多いので、【10-127H】《シトラ》や【3-056H】《ジタン》、【12-037L】《アーシェ》といったパワー7000になるフォワードと【11-055R】《パンデモニウム》を合わせて相打ちに持ち込むといったプレイも狙えます。
召喚獣でいうと【2-049H】《アスラ》は3つのモードがそれぞれ強かったです。
バックアップをアクティブにするのは言わずもがな、このデッキには【13-132S】《ティターニア》のようなコスト2の強力なキャラクターも多いので回収のモードも便利です。
【12-038H】《アルテア》などでバックアップが1枚だけアクティブになるというシーンも多いので、そこからバックアップをすべてアクティブにして【12-116L】《ロック》などにつないでいけるキャストのしやすさというのも【2-049H】《アスラ》の魅力だと思います。
――バックアップをアクティブにするのが1つのコンセプトということですが、16枚というのは結構スロットをしぼっている印象を受けます。
ai_fftcg:【8-058R】《ノルシュターレン》はバックアップをサーチする役割があるので、このカードに関しては1.5枚分くらいの活躍をしてくれるだろうということで、スロットに関しては割り切っています。
バックアップを展開する過程で【5-067R】《ミューヌ》につながれば、さらにドローしてカードを探しに行けますし、サーチ効果を持ったコスト3のバックアップを名前を散らして採用しているので、どれを引いても何かしら選択肢を探せるだろうというもくろみもあります。
強気な枚数でしたが、結果この16枚でもバックアップは並べられたし、バックアップが止まってしまう場合も何かしらのアクションは取れていたので、問題はなかったかなと思っています。
――僕なら【12-038H】《アルテア》を3枚採用したいところですが、2枚採用はどういった意図からでしょう?
ai_fftcg:【12-038H】《アルテア》は3枚採用したかったというのが正直なところではあるんですが、そこだけにスロットを割くわけにはいかないので、ここは2枚にとどめました。その分サーチやキャストする優先順位を上げてプレイして、2枚でも回るように意識しています。
――コスト3のバックアップを名前を散らして採用したのは、どういった理由からでしょうか?
ai_fftcg:私が優柔不断ということもあり、選択肢を広く受けたいからそれぞれ 1枚ずつ採用しているという感じです。
たとえば【11-037L】《バルトアンデルス》の枚数を増やしたいから【1-196S】《モーグリ[XIII-2]》を、【12-116L】《ロック》の枚数を増やしたいから【4-026H】《ガストラ帝国のシド》を、【8-058R】《ノルシュターレン》からのサーチ先を増やしたいから【11-041C】《ユーク》を採用して、擬似的に採用枚数をかさ増ししたいという思いからそれぞれ1枚ずつ採用していくという手段を取りました。
――【8-057C】《忍者》はこれまで聞いてきたカードと比べると、浮いているなという印象を受けるカードですが、これは特定のカードを意識して採用されたのでしょうか?
ai_fftcg:たぶんみなさん想像しているかと思うんですが、「風氷」ミラーの【12-038H】《アルテア》と【13-090L】《オヴェリア》を意識して採用しました。本来入れるべきではないカードという自覚はあるのですが、決まったときのリターンが大きいのでお守りとして採用しました。
極論で言えばコスト2のバックアップであれば何を採用してもいい枠と考えていたので、【5-067R】《ミューヌ》の3枚目を採用してもよかったのですが、一般アイコンやスペシャルアビリティを持たない同名カードを3枚採用するのもリスクだと思い、今回は【12-050C】《忍者》を採用することにしました。【2-049H】《アスラ》からも拾えますしね。ただ、実戦で活躍したことはなかったので、そこは予想どおりお守り程度だったのかなと。
最後まで納得できなかったのがバックアップの比率で、このデッキは氷属性のバックアップが1~2枚出れば十分なのに、採用比率が風属性:氷属性=10:6となっていて、やや氷属性の比率が高かったんですよね。
デッキの目指す動きが、1ターン目に【8-058R】《ノルシュターレン》キャストから2ターン目に【12-038H】《アルテア》+氷属性のコスト3バックアップが理想で、【8-058R】《ノルシュターレン》から【12-038H】《アルテア》のサーチを意識する以上、氷属性のバックアップは削れないってジレンマがあって。【6-022R】《イゼル》や【11-022C】《イドラ》もそれぞれ役割があったので、調整の難しいスロットでした。
本当は11:5にしたかったんですけど、採用している氷属性のバックアップがそれぞれ噛み合いの都合上、どうしても枠を削れなかったです。
――デッキテクというか、勝ちに向けて目指す方向性についてもお聞きしたいと思います。
ai_fftcg:先ほども話したとおり、このデッキではまず2ターン目にバックアップを2枚キャストして3ターン目をバックアップ3枚で迎えることを目標にプレイをしています。
――2ターン目にバックアップを3枚置く、という視点で言えば 1ターン目にバックアップを2枚キャストして2ターン目に3枚目を目指すパターンもありますが、なぜ2ターン目にバックアップを2枚キャストすることを目指すのでしょう?
ai_fftcg:2ターン目にバックアップを2枚キャストすると、このターンから【12-037L】《アーシェ》でドローできるようになります。【12-037L】《アーシェ》が動き出せば、そこからさらにキャスト数を稼ぐカードにつながっていくのでまず目指すべきはここかなと。それ以降は相手の展開に応じてゲームプランを選択していくといった流れになります。
――具体的に相手に応じてどのようなプランを狙っていくのかお聞きしてもいいですか?
ai_fftcg:『FFTCG』のセオリーとして序盤はバックアップの展開に注力するデッキが多いので、このセオリーが通用する相手には基本的に3ターン目の【12-116L】《ロック》キャストを目指してプレイしていきます。
ゲーム序盤は手札をコストにバックアップをキャストするので手札の枚数が少なくなり、また今後の展開を意識したカードが残ります。次のターン、すぐに使いたいカードとも言えます。そういったバリューの高いカードを【12-116L】《ロック》で捨てさせるのがもっとも有効というわけです。同時にバックアップも縛ることができますしね。
バックアップを3枚展開し3ターン目を迎えた場合、コスト2相当のバックアップ→【13-037C】《オチュー》→【3-049C】《イザナ》や【12-115C】《リュック》と展開することで、2CPで【12-116L】《ロック》をキャストできます。
反対に、こういったセオリーが通用しにくいデッキ、つまりバックアップの展開を重視していない【12-052H】《バッツ》+【12-053C】《ボコ》のようなデッキに対しては【12-114R】《バラライ》のコンボを積極的に狙っていく展開になります。
また「雷単」は比較的軽いコストでダル+ヘイストのカードを使うことができるので、【12-116L】《ロック》でコストを縛っていても最後の1点を詰められてしまう可能性があります。
展開力自体がもともと高いというわけではありませんが、調整のなかであえて相手にフォワードの展開を許してカウンター気味に動いたほうが強いという知見を得たので「雷単」に対しても【12-114R】《バラライ》で制圧するルートを目指すように心がけています。
【12-116L】《ロック》を狙わない=キャスト数を稼がないゲーム展開では、こちら側の手札の質を確保することが重要になるため、2ターン目であってもコンボパーツを手札に残すためにあえてバックアップを展開しないなど、セオリー外のプレイをするケースもあります。
――氷属性のデッキと対面したときはお互いリソースの削りあいになるわけですが、こういったとき意識するプレイなどはありますか?
ai_fftcg:氷属性のデッキとの対戦は、先手後手どちらを取ったかでプレイの方向性も変わってきます。
先手が取れればバックアップを3枚並べて【12-116L】《ロック》を狙っていきますが、後手の場合は手札に余裕がある展開を目指すためにバックアップを2枚で留めることも考慮します。
氷属性のデッキとの調整は、まだそれほどできているわけではないのでノウハウが蓄積されていない部分でもあります。自分にとっても詰めていかなくてはならない領域ですね。
◆予想外の優勝。大会を振り返って
――大会を振り返ってみて、今回はどうでしたか?
ai_fftcg:諏訪大会は参加者6名ということで横浜大会と比べて人数は少なかったですが、使用デッキは「火単」2名、「土水【モンク】」1名、「氷土」1名、「火氷」1名、私の「風氷」という内訳で、メタゲームの予想はしっかり当たっていたなと感じました。
今回は様子見で環境調査をし、まずは予選をしっかり戦って運がよければ「MASTERS 2021 THE AFTER」の権利を取れれば御の字と考えていたので、そういった視点では正しいデッキ選択をできていたのかなと。
――最初から優勝を狙っていたわけではないということですか?
ai_fftcg:初めから優勝狙うべき! という人もいるかもしれないですが、調整段階でもっとも強いと考えていた「土水【モンク】」を扱えるだけの練度がない以上、「風氷」というデッキはこういう立ち位置にいるよねという答え合わせをして、次につながる大会にしようと思っていました。
想像どおり「土水【モンク】」もいましたし実際予選でも負けてはいたので、自分の優勝は難しいんじゃないかと。
ただ決勝トーナメントでは準決勝で天敵の「土水【モンク】」をたるほさんが倒してきてくれたので、そこが予想外の結果でした。
もちろん「火氷」相手にも相性が圧倒的によいわけではないですが、こちらにも【12-114R】《バラライ》という解答があるので、戦いようはあるデッキだと考えていたので。
――僕も予選では「土水【モンク】」には負けていて、苦手なデッキと認識していたので本当に運がよかったんだと思います。
ai_fftcg:決勝戦では手札を捨てさせられなかったので、【12-114R】《バラライ》が間に合い勝つことができましたね。
――ai_fftcgさんとは僕もよく遊ぶ機会がありますが、普段『FFTCG』はどういった環境でプレイしているんでしょうか。
ai_fftcg:コロナ禍以前は都内の蒲田や秋葉原でショップ大会に足を運ぶことが多くて、そこで会ったプレイヤーの方と遊んでいました。
コロナ禍以降に関しては1人回しすることが多くなりましたね。
今回に関して言えば、調整の中で「火単」や「土水【モンク】」がどういった動きをするか確固たるイメージを持たせてもらえたので、それを1人回しに反映していくことができたんじゃないかなと思っています。
――『FFTCG』はいつごろから遊んでいたんですか?
ai_fftcg:もともとは別のカードゲームをやっていたんですが、ちょうどそのゲームが終わりそうっていう時期に「chapter」シリーズが発売されて、当時同じゲームをプレイしていたプレイヤーに誘われて始めてみたっていうのがきっかけです。
最初の数回プレイして「このゲームおもしろいぞ」ってなって調べたら、近所のショップで大会もあるから行ってみようとなって、どんどん大会を回っていくうちに知り合いも増えて流れでハマっていった感じですね。
これまでもいろいろなゲームをやってきましたが、手札をコストにできるという性質上、1ターン目からできることが多くて、ここから生まれる自由度の高さは他のゲームにはない魅力だなと。
今回のデッキでも、例えば【12-116L】《ロック》は2CPでキャストすることが理想ですが状況によってはあえて4CPでキャストしたほうがいいシーンもあったりと、局面ごとに考えることが多いのは、僕のゲームの好みにマッチしていました。
「Opus」シリーズに入るタイミングで引退した友人もいたんですが、私はもともと「FFTA」が好きなこともあり、続く限りは続けたいなと思い「Opus」シリーズも引き続きプレイしているといった感じです。
そういう意味で続けているのは、辞めどきを失っているとも言えるのですが、何せ楽しいので。
もちろん、もともと「FF」シリーズが好きで、それが題材になっているってこともあるんですけど。
――僕もそうですが、「FFTA」の描き下ろしイラストが登場したときはお互いフルアートカードを求めてショップを行脚しますもんね。
ai_fftcg:『FF』シリーズで言えば、プレイしたタイトルはそれほど多くないんですが、「FFTA」に関しては小学生のころにプレイした思い出が強くて今でも思い入れのある作品なんですよね。
まさか令和の時代になって、描き下ろしイラストが出てくるなんて信じられないですけどね。ビックリです、ほんとに。
――では最後に「MASTERS 2021 FINAL」に向けて意気込みをうかがってもいいですか?
ai_fftcg:私はいわゆる強豪と呼ばれるプレイヤーではないので、今回は勉強の機会になればと思っています。
ですが参加する以上、刺せるところでは刺すつもりでいこうと思うので、参加される方はよろしくお願いします。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回は「MASTERS 2021」諏訪大会で優勝されたai_fftcgさんの「風氷」デッキについてお話をうかがいました。
デッキの強みだけでなく、弱点も加味したうえでメタゲームを読みデッキを選択する審美眼が目標以上の結果を引き出したのかもしれません。
長期的な大会の際は、こういったメタゲームの変遷にも注視しながら使用デッキを選択することも重要な要素ですね。
僕は決勝戦で負けてしまい今回は悔しい思いをしたので、次の機会にまたリベンジしたいと思います。
次回はスタンダードで開催された「MASTERS 2021」伊勢崎大会で優勝した「氷単」デッキをインタビューする予定です。
それではまた次回の記事でお会いしましょう!