『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS2021」広島大会、大阪大会で優勝したサトツさん、riruさんのお二人に、「L6構築」フォーマットの「土水ドーガ」デッキについてうかがいます。
◆はじめに
みなさんこんにちは!『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
長かった緊急事態宣言もようやく解除され、およそ3か月ぶりに「MASTERS 2021」が再開されました。
「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」環境としても初となる広島大会、そして続く大阪大会はどちらも「L6構築」での開催。
僕も無事2回目のワクチンの接種も完了したので「MASTERS 2021」大阪大会に遠征し、参加してきました。
実は「L6構築」の大会は「自宅名人戦」などを含めても参加したことがなかったので、個人的には初めてのフォーマットでの大会であり、とても新鮮な気持ちで大会に臨むことができました。
結果は3勝3敗と奮いませんでしたが、今後の「L6構築」に向けて環境のイメージをつかむ最初のステップとなるイベントになったかと思います。
さて、今回は新たな試みとして「MASTERS 2021」広島大会の優勝者サトツさんと大阪大会の優勝者riruさんのお2人をお招きしてミニ座談会を行ない、それぞれの構築の違いや、大会の印象についてお話をうかがったのでその模様をお届けしていきます。
それではさっそく始めていきましょう。
サトツ
福岡のプレイヤー。九州、関西を中心に安定した活躍を見せる、2019年の「世界選手権」日本代表。
久しぶりの公式イベントとなった「MASTERS2021」でも、ブランクを感じさせない活躍で優勝を果たす。
◆「土水【ドーガ】」使いの優勝者2人にダブルインタビュー!
――サトツさん、riruさん優勝おめでとうございます。
サトツ:ありがとうございます。
riru:ありがとうございます。
――今回の2大会ではそれぞれ「土水【ドーガ】」を使っての優勝でした。「土水【ドーガ】」は「Opus XIII ~クリスタルの輝き~」環境の「L6構築」で登場したデッキタイプですが、「Opus XIV」環境でもキーカードがすべて残ったこともあり、注目されていたデッキだったと思います。はじめに今回の大会でお2人が「土水【ドーガ】」を使おうと考えた理由を教えてください。
サトツ:私はもともと「Opus XIV」環境の「L6構築」では【14-118H】《シュテル・リオニス》がメタゲームの中心にいるだろうと考えていました。
そこで【14-118H】《シュテル・リオニス》の対処に有効な【14-056R】《嵐神ガルーダ》や【14-049H】《テュポーン》が追加された風属性を中心としたデッキを使おうと考えていました。
しかし調整段階で「火単」のような火属性主体のデッキに対して、ゲームスピードの差から思うような勝率が得られず、その課題を解決できず使用するデッキを悩んでいました。
そんなときにDiscordの『FFTCG』公式サーバでぱっつぁんさん(※中部東海地方の強豪プレイヤー、現「名人」)と相談する機会があったのですが、そこでよりゲームスピードの速い「土水【ドーガ】」を使えばいいのではと薦められたというのが、使用に至った大まかな経緯です。
●「土水【ドーガ】」by サトツ(「MASTERS 2021」広島大会優勝 フォーマット:L6構築)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(17枚) | ||
【11-064L】 | 《アーシュラ》 | 3 |
【14-111R】 | 《美神ラクシュミ》 | 3 |
【14-116H】 | 《マシュリー》 | 2 |
【13-118C】 | 《セーラ[MOBIUS]》 | 3 |
【13-119L】 | 《ソフィ》 | 3 |
【13-120H】 | 《ドーガ》 | 3 |
バックアップ(8枚) | ||
【11-077C】 | 《魔獣使い》 | 3 |
【12-070C】 | 《モンク》 | 1 |
【11-120H】 | 《ブラネ》 | 1 |
【13-092C】 | 《賢者》 | 3 |
召喚獣(25枚) | ||
【9-065C】 | 《ゴーレム》 | 1 |
【9-068H】 | 《ドラゴン》 | 3 |
【10-068C】 | 《クーシー》 | 3 |
【12-068H】 | 《フェンリル》 | 3 |
【9-114C】 | 《不浄王キュクレイン》 | 3 |
【12-097H】 | 《シルドラ》 | 3 |
【12-108R】 | 《レモラ》 | 3 |
【13-100R】 | 《リヴァイアサン》 | 3 |
【14-113R】 | 《リヴァイアサン》 | 3 |
「土水【ドーガ】」はアグロデッキでありながらリソースが尽きにくいという特徴から、ゲーム中に考えるポイントとして「いかに攻め切るか、詰め切るか」に集中できます。ゲームスピードが速いというのはもちろんですが、プレイングが明確なデッキだという点で「土水【ドーガ】」は非常に魅力的でした。
大会自体が久しぶりだという点と、長丁場のトーナメントということもあり、一試合に使う思考のコストが省エネであるというのも私には魅力的に映りました。
riru:私が「土水【ドーガ】」を選択したのは、「L6構築」環境に存在するデッキタイプのなかで「土水【ドーガ】」がそれ以外のデッキに比べて高い勝率を出せると感じたからです。
「MASTERS 2021」大阪大会に向けて調整をしている段階で、「L6構築」で強そうなデッキをいくつか組んで使用したのですが、そのなかで試した「火単」や「氷雷」などのデッキに比べて「土水【ドーガ】」のポテンシャルは頭一つ抜き出ていました。
●「土水【ドーガ】」by riru(「MASTERS 2021」大阪大会優勝 フォーマット:L6構築)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(17枚) | ||
【11-064L】 | 《アーシュラ》 | 3 |
【13-096C】 | 《ニコル》 | 1 |
【14-111R】 | 《美神ラクシュミ》 | 2 |
【14-116H】 | 《マシュリー》 | 2 |
【13-118C】 | 《セーラ[MOBIUS]》 | 3 |
【13-119L】 | 《ソフィ》 | 3 |
【13-120H】 | 《ドーガ》 | 3 |
バックアップ(5枚) | ||
【10-079C】 | 《ノクティス》 | 1 |
【13-093H】 | 《サラ》 | 3 |
【11-128H】 | 《セーラ姫》 | 1 |
召喚獣(28枚) | ||
【9-065C】 | 《ゴーレム》 | 3 |
【9-068H】 | 《ドラゴン》 | 3 |
【10-068C】 | 《クーシー》 | 3 |
【12-068H】 | 《フェンリル》 | 2 |
【13-053R】 | 《アレキサンダー》 | 2 |
【9-114C】 | 《不浄王キュクレイン》 | 3 |
【12-097H】 | 《シルドラ》 | 3 |
【12-108R】 | 《レモラ》 | 3 |
【13-100R】 | 《リヴァイアサン》 | 3 |
【14-113R】 | 《リヴァイアサン》 | 3 |
特に「Opus XIV」では【14-116H】《マシュリー》が登場し大きく強化されたことで、これまで以上の実力を持つデッキとなりました。
サトツ:【14-116H】《マシュリー》は間違いなくデッキの中で一番活躍してくれたカードでしたね。
――僕も大阪大会で対戦したとき【14-116H】《マシュリー》には苦しめられました。【14-116H】《マシュリー》の強みはどういったところにあったのでしょう?
riru:一言で言ってしまえば「全部強い」に尽きます。
アビリティがすべてデッキに噛み合っていて、どこをとっても強力なカードでした。
特にフォワードを手札に戻す効果は強力で、擬似的な除去であり除去耐性でもあり、さらに強力な詰めの手段になるので攻守において隙がなかったです。
サトツ:「土水【ドーガ】」はフォワードの種類をかなり絞って採用しましたが、それを可能にしたのはひとえに【14-116H】《マシュリー》というカードの力だったと思います。
フォワードを手札に戻すアビリティのおかげで、【11-064L】《アーシュラ》などを手札に戻し再利用することでフォワードの少なさを補える点も非常に優秀でした。ひたすら【14-116H】《マシュリー》を守り続けて勝つなんて展開も少なくなかったです。
――対戦する際も【14-116H】《マシュリー》をきれいに対処する手段がなくて、僕も非常に苦しめられました。
サトツ:そういえばriruさんに聞きたかったのですが、【14-116H】《マシュリー》のアクションアビリティはどのモードを一番使いました?
調整のときにドローの効果もよく使うと教えてもらったんですが、個人的には使う機会が少なかったので、他の人はどうだったのかなって気になります。
riru:私は一番使ったのは手札に戻す効果ですけど、その次に使ったのはドローの効果ですね。召喚獣のコスト軽減の効果はほとんど使わなかったです。
――同じデッキでもプレイングの差は結構あるんですね。
サトツ:私も基本的にフォワードを手札に戻すモードを使う機会が一番多かったんですが、コストの大きい召喚獣も手札に残すようにプレイして【12-068H】《フェンリル》や【14-113R】《リヴァイアサン》を【14-116H】《マシュリー》か【13-120H】《ドーガ》からキャストしてゲームを詰めていく流れを意識してプレイしていました。
riru:私は手札にコストの大きな召喚獣を残しながらプレイしていなかったので、コスト軽減が必要なタイミングがあまりなかったです。ゲームが進んだタイミングでは、5点目のダメージ以降の展開を考慮して【13-053R】《アレキサンダー》をキープするプレイを意識しましたが、基本的にキャストする召喚獣のコストは小さいものが多かったので。構築段階でコストの大きい【12-068H】《フェンリル》などの枚数を減らしていたというのは一つの理由かもしれませんね。
――お2人のデッキですが、フォワードの選択はほとんど同じです。違いは【14-111R】《美神ラクシュミ》の採用枚数と【13-096R】《ニコル》の有無でしょうか?
サトツ:【14-111R】《美神ラクシュミ》は、採用しているフォワードのなかでも強く推している1枚です。生き残ってしまえばそれだけで勝てる試合もありますし、すぐに対処されたとしても、最低でも1枚ドローできていれば十分な働きだと考えていました。【13-120H】《ドーガ》に代わるスタートプランで、 1ターン目からキャストすることも視野に入るカードだと考えていたので私は3枚採用しました。
riru:私は「土水【ドーガ】」は展開できるフォワードが限られているので、採用する種類をできるだけ増やしたいという思いから【13-096R】《ニコル》を採用しました。反対に【14-111R】《美神ラクシュミ》は2枚にとどめましたが、いま考えればこちらを3枚採用してもよかったと思います。【14-111R】《美神ラクシュミ》に関しては過小評価だったかもしれません。
――同じデッキタイプでも採用されているカードには細部で結構違いがありますよね。例えばバックアップを見れば、サトツさんはすべてコスト3のカードに統一していますし、riruさんは採用枚数を5枚まで切り詰めています。こういった構築にはどういった理由があるのでしょうか?
サトツ:これはぱっつぁんさんからいただいたアイディアなんですが「土水【ドーガ】」どうしのミラーマッチにおいて、【12-068H】《フェンリル》でバックアップをブレイクされないよう意識して採用しました。ただ、【13-093H】《サラ》がないぶん【14-116H】《マシュリー》へのアクセス手段が少なくなっているので【11-120H】《ブラネ》を増量してもよかったかもしれません。
riru:私は「土水【ドーガ】」というデッキ自体がバックアップを出す必要性の低いデッキで、それこそ0枚でも戦うことができると考えていました。
もちろん1、2枚置くことで強く戦えることもあるので、採用しないということはしませんでしたが、【14-116H】《マシュリー》を強く使うためにもこれまで以上に召喚獣の枚数が重要だと考え、バックアップのスロットを召喚獣に回した構築を意識しました。
――召喚獣も採用枚数やカード自体に結構差がありますよね。先ほど話題に出た【12-068H】《フェンリル》はriruさんのデッキでは2枚にとどまっています。
riru:私もぱっつぁんさんが、コスト3のバックアップだけを採用した型の「土水【ドーガ】」を使われているのは以前から認識していて、今回の大会もそういった構築が増えると考えていました。となると【12-068H】《フェンリル》を有効に使える状況は以前より限定されるだろうと考え、採用枚数を減らしてデッキを構築しました。
また、ミラーマッチではEXバーストの回数が勝敗に直結する要素となるので、バックアップや【12-068H】《フェンリル》を減らしたぶんはEXバーストを持つ【13-053R】《アレキサンダー》や【9-065C】《ゴーレム》のスロットに回しました。
【13-053R】《アレキサンダー》も5点目のダメージ以降は【12-108R】《レモラ》や【14-113R】《リヴァイアサン》と同じかそれ以上のパフォーマンスを発揮してくれるカードなので、劣勢をひっくり返すカードとして強力でした。
これらのカードは、土属性召喚獣の枚数の底上げという点でも重要な役割を持っていました。
調整段階では【13-120H】《ドーガ》を持っていても手札の召喚獣が水属性しかないという状況も少なくなかったので、なるべく土属性と水属性の召喚獣の比率を近い枚数にして、より【13-120H】《ドーガ》をキャストしやすくできるようにと意識しました。
サトツ:riruさんの構築を見ていて【9-065C】《ゴーレム》3枚は自分もそうすべきだったと後から感じましたね。仮想敵である「火単」に対して強くなるだけでなく、ミラーマッチでも有効なカードなので、手札から使うことを考慮して採用しておくべきだったなと。
――「土水【ドーガ】」は2大会連続での優勝という結果でしたが、実際「土水【ドーガ】」を使って感じられた弱点などはあるんでしょうか?
riru:うーん。隙がないデッキだったので、これといって弱点は感じなかったですね。バックアップを置かずに戦えるのに、リソースが切れにくいという点も強力でした。
サトツ:『FFTCG』は割りと先攻が有利になりがちなイメージがあるんですが、「土水【ドーガ】」のミラー対決はその限りではないなと思いました。EXバーストの枚数が多いので、EXバーストが発動するかどうかの運も絡みますし、【13-120H】《ドーガ》や【14-111R】《美神ラクシュミ》は生き残れば勝ちに直結するので、先手後手のアドバンテージ差はそこまで気になりません。
riru:そうですね。できるだけ初手から【13-120H】《ドーガ》を狙っていきたいので、【13-120H】《ドーガ》か【12-097H】《シルドラ》から立ち上がることができればベストですが、【12-097H】《シルドラ》を経由するルートだと、先攻で光属性のカードを1枚でも引いてしまうと【12-097H】《シルドラ》→【13-120H】《ドーガ》で最大2枚しかドローすることができなくなってしまい、裏目となってしまう可能性もあります。
こうした展開だと先攻の優位性がなくなってしまうので、一概に先攻有利とは言い切れないマッチアップだと思います。
また、同型戦はコンバットの難しさもあるなかで、一度EXバーストを受けてしまうと展開が大きく変わったりするので、手札に何を残してプレイしていくかも難しかったです。
サトツ:私、実は大会中に大きな事故を2回しているんですけど、その2試合で両方とも勝てたんですよね。初手で何もすることがなくて、しぶしぶ出した【13-119L】《ソフィ》をEXバーストで除去される、みたいな展開だったんですけど、そのあとバックアップを並べ直してロングゲームに持ち込んで勝てちゃったりして。長期戦でも短期戦でも強く立ち回れる懐の広さも「土水【ドーガ】」の強さの一因だと思います。
――大会中はどんなデッキと対戦したんでしょう?
サトツ:私は「氷単」と3回、「火単」と2回、「土水【ドーガ】」と1回で、けっこういろいろなデッキと対戦した印象でした。
「火単」は高速でバックアップを展開されたあとの【14-011H】《豪神スサノオ》のプレッシャーが強くて、そこでまごまごしている間に負けてしまうという試合が2回あったので、かなり苦手意識ができてしまいましたね。逆に言えば対「土水【ドーガ】」への活路はそこにあるんじゃないかなと思っています。
riru:大阪大会はとにかく「土水【ドーガ】」と対戦する機会が多かったです。
大会を通して負けてしまったのも「土水【ドーガ】」のミラーマッチなので、大阪大会に関して言えば完全に「土水【ドーガ】」の環境でしたね。
サトツ:個人的な感想ですが、この2大会こそ「土水【ドーガ】」は活躍しましたが、広島大会では「氷単」なども活躍していたので、このまま「土水【ドーガ】」一強の環境にはならないとは思います。むしろここから環境がどう動いていくかは気になるところです。
――最後にお2人から、今後に向けて一言あればお聞きしたいと思います。
riru:「MASTERS 2021」久々に大会に参加できてすごくたのしかったです。感染症対策も徹底されているので、安心してプレイに集中することができました。スタッフのみなさんありがとうございます。これからも引き続きイベントや「MASTERS2021 FINAL」が無事開催されることを願っています。ありがとうございました!
サトツ:「MASTERS 2021」広島大会は久しぶりの公式トーナメントということもあり、イベントの楽しさを思い出させてくれる機会になりました。今後も「MASTERS 2021」はできるだけ行きたいと思っています。ゆくゆくは海外のイベントも復活してほしいですね。
みんなもぜひ行きましょう!
――ありがとうございました!
◆おわりに
今回は「MASTERS 2021」広島大会、大阪大会でそれぞれ優勝されたサトツさんとriruさんにお話をお聞きしました。
同じデッキタイプであっても、細かな採用理由やスロットの割り当て、手札の使い方などはプレイヤーごとに違いがあり、あらためてデッキを使う人間の個性が出るゲームだと感じました。
「Opus XIV」環境初期の王者が、今後どのような活躍をしていくか、また対抗馬になるデッキは登場するのか?
今後の「L6構築」の大会はまだまだ盛り上がっていきそうです。
僕もより環境を研究し、次こそは結果が実を結ぶようがんばりたいと思います。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。