『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS2021」枚方大会を優勝したるーさんに、【カテゴリ(VIII)】シナジーに着目した「風氷」デッキについてうかがいました。
◆はじめに
みなさんこんにちは!『FFTCG』プレイヤーのたるほです。
さて、「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」の発売も間近に迫り、先週末からはプレリリースイベントも開催されています。
早くも「Opus XIV」の新カードを手に入れたという方も多いのではないでしょうか?
新カードはどれも魅力的でワクワクしますよね。
僕も早く手に入れて、実際にデッキを組みたい気持ちでいっぱいです。
現在発売中の「カードゲーマー vol.59」では「Opus XIV」の新カードやデッキが特集されています。
僕の注目しているカードやデッキも紹介しているので、ぜひそちらもご覧ください。
さて、今回は「MASTERS 2021」枚方大会で優勝されたるーさんへのインタビューをお届けします。
【カテゴリ(VIII)】のギミックにフォーカスした「風氷」についてお話をうかがいました。
前々回、ai_fftcgさんへのインタビューでも取り上げたデッキタイプですが、また細部の異なる構築となっているので、2つを比較してみるのもおもしろいと思います。
関西のプレイヤーで、風属性を愛好する。
交流会などにも精力的に取り組んでいて、関西以外とも交流のある顔の広いプレイヤー。
「MASTERS 2021」枚方大会では、「風単」から一歩踏み込んだ「風氷」を武器に念願の初優勝を果たした。
◆仲間からのヒントをもとに!中盤戦を制する【カテゴリ(VIII)】型「風氷」
――「MASTERS 2021」枚方大会優勝おめでとうございます。
るー:ありがとうございます。念願の初優勝だったのでとてもうれしいです。
――るーさんが使われた「風氷」というデッキタイプは、前週の諏訪大会から続けて2週続けての優勝となりました。今回「風氷」を使おうと考えた理由から教えてください。
るー:もともと僕は風属性が好きで、大会にも「風単」を持ち込むことが多かったのですが、「Opus XIII」環境ではこれまでの【7-128H】《ユーリィ》を使う、バックアップを展開してから動き始めるコンセプトの「風単」は、主要なデッキに追いつけていないと感じていました。
そこで「Opus XII」で登場した強力な多属性カードである【12-116L】《ロック》と【12-114R】《バラライ》をメインに、自分の得意とする風属性を使ったデッキを作ろうということで考えたのが「風氷」です。
●「氷風」(「MASTERS 2021」枚方大会優勝 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(23枚) | ||
【12-116L】 | 《ロック》 | 3 |
【12-114R】 | 《バラライ》 | 3 |
【12-115C】 | 《リュック》 | 3 |
【13-031R】 | 《ラグナ》 | 3 |
【13-032H】 | 《リノア》 | 3 |
【13-132S】 | 《ティターニア》 | 2 |
【5-068L】 | 《ヤ・シュトラ》 | 2 |
【3-049C】 | 《イザナ》 | 1 |
【12-037L】 | 《アーシェ》 | 3 |
バックアップ(17枚) | ||
【13-024R】 | 《スコール》 | 3 |
【13-018C】 | 《キスティス》 | 1 |
【11-041C】 | 《ユーク》 | 1 |
【10-039C】 | 《ナグモラーダ》 | 1 |
【4-026H】 | 《ガストラ帝国のシド》 | 1 |
【6-022R】 | 《イゼル》 | 1 |
【5-067R】 | 《ミューヌ》 | 2 |
【12-048R】 | 《チョコラッテ》 | 1 |
【12-038H】 | 《アルテア》 | 3 |
【8-058R】 | 《ノルシュターレン》 | 3 |
召喚獣(6枚) | ||
【2-049H】 | 《アスラ》 | 3 |
【10-055H】 | 《チョコボ》 | 3 |
モンスター(4枚) | ||
【13-037C】 | 《オチュー》 | 3 |
【7-053C】 | 《ズー》 | 1 |
――「風氷」は前週の諏訪大会でai_fftcgさんも使われていましたが、るーさんの構築は【カテゴリ(VIII)】のギミックに着目されているのが印象的ですね。この構築にはどういった経緯で行き着いたのでしょうか?
るー:「風氷」デッキの【13-037C】《オチュー》はキャスト回数を稼ぎつつ、軽いコストでバックアップをアクティブにして追加のアクションも取りやすくしてくれる、重要な役割を持つカードです。この【13-037C】《オチュー》を【13-032H】《リノア》で回収できるというアイディアを調整のときに教えてもらったのが、この構築を考えたきっかけです。もともと役割の多い【13-037C】《オチュー》に【13-032H】《リノア》のコストを軽減する役割も持たせることができるので、相互にシナジーがあります。
【13-032H】《リノア》を活用するには【カテゴリ(VIII)】のカードを多く採用する必要があるので、ほかにいいカードがないか探していたときに【13-031R】《ラグナ》を見つけ、このカードを入れることで「風氷」デッキの抱えている課題を補えるのではないかと考えました。
――具体的にどういった課題を感じられていたのでしょう?
るー:「風氷」は【12-116L】《ロック》や【12-037L】《アーシェ》を活かすためにキャスト数を稼げるカードを多く採用していますが、コンボの要素が強くなりすぎるため、準備が整う前のゲーム中盤にやられてしまうという点が気になっていました。しかし【13-031R】《ラグナ》を採用することで、ダル凍結で時間を稼いだ隙にコンボまでたどり着いたり、あるいは【13-031R】《ラグナ》でそのまま押し切るゲームプランも取れるようになりました。
よりリソースを奪いやすく、相手の動きを制限しやすいという点で、ai_fftcgさんのタイプの「風氷」ともまた違ったコンセプトになったんじゃないかと考えています。
実際、枚方大会ではバックアップの展開に依存する「土風【スカリー】」などのデッキと対戦する機会が多く、【13-031R】《ラグナ》の継続した凍結効果により本来の動きを封じて機能不全に追い込めたので、手応えを感じられましたね。
――キーカードである【13-037C】《オチュー》の特性にもう一歩踏み込んで【カテゴリ(VIII)】に注目した構築にしたということですね。そのほかに採用されているカードについてもお話を聞いていきたいです。
るー:キーカードとして欠かすことができないのはやはり【12-037L】《アーシェ》でしょうか。キャスト数に注目するデッキなので、1ターンあたりに使うカードも必然的に多くなります。そのためには手札を補充する手段が必要になるので、キャスト回数に注目するデッキでは外せない1枚です。
【5-068L】《ヤ・シュトラ》は【12-114R】《バラライ》を守るために採用したカードです。「風氷」と対峙する以上、相手からすれば【12-114R】《バラライ》を許してしまえばフィールドが制圧されるのは明白です。
当然それを阻止するために何らかの除去を構えてくるので、さらにそれを阻止する手段として【5-068L】《ヤ・シュトラ》を採用しました。
一般的に【12-114R】《バラライ》を守るために採用されるカードは【10-055H】《チョコボ》や【12-038H】《アルテア》など手札に戻すことで除去を回避するものが多いですが、再度【12-114R】《バラライ》をキャストし直すと、コストがかかり過ぎてコンボまで進めない可能性があります。
事前に【5-068L】《ヤ・シュトラ》を出しておけば、【12-114R】《バラライ》を定着させること自体が簡単になるので、そういった狙いから今回は採用しました。
【3-049C】《イザナ》のスロットには、前日まで【10-127H】《シトラ》が採用されていました。
ただキャスト数を稼ぐうえで、手札からコストにできないカードをデッキに採用することに抵抗感があり、実際練習中にもそういったシーンが発生したので、大会中何回も戦うなかで光属性のカードが手札に残ってしまう展開は負けにつながると判断し、直前で【3-049C】《イザナ》に入れ替えました。【12-048R】《チョコラッテ》をサーチもできるので序盤の立ち上がりにも貢献し、【10-127H】《シトラ》から回収したい【10-055H】《チョコボ》にアクセスでき、【12-115C】《リュック》と合わせて実質コストをかけずにキャストできるという点もデッキの方向性と合っています。
【13-132S】《ティターニア》は採用すべきか悩みましたが、デッキのバランスとして召喚獣が6枚、モンスターが4枚入っていてそれぞれサーチ手段となるカードも入っていて、キャストの条件を満たすにはそれほど問題がない枚数を用意できていると考えたので、今回は2枚採用しました。実戦でキャストできた回数は想定より少なかったんですが、出せたときのリターンが大きく、一度条件を満たせば【12-038H】《アルテア》などから再利用できますし、パワー8000という数値もアタックに行くのに十分な大きさで、攻守両面で活躍してくれたカードでした。
――召喚獣とモンスターで目を引くのが【7-053C】《ズー》でしょうか。これまでも時折コンボデッキで採用されているのは見たことはありますが、ここにはどういった狙いがあったのでしょう。
るー:このデッキの召喚獣とモンスターは、キャスト数を稼ぐことと【12-114R】《バラライ》のアビリティを誘発させることを目的に採用していますが、例に漏れず【7-053C】《ズー》もその役割のために採用しています。【7-053C】《ズー》独自の動きとして、手札から捨てることで発動する特殊なアクションアビリティによって手札1枚から【12-114R】《バラライ》のアビリティを誘発させられます。コンボを狙っていくなかで、コストをかけずに誘発させる手段があると相手の対応にもケアができるので、あと一押しというときのために1枚採用しました。
とはいえ、当日は手札から使う機会はあまりなく基本的にはキャストしていましたが、コスト2のカードでバックアップを5枚アクティブにできるので、十分にアドバンテージを稼いでくれるカードでした。
――「風氷」はバックアップの展開が重要ですが、このスロットはどう考えられましたか?
るー:風属性のバックアップに関しては【8-058R】《ノルシュターレン》はじめオーソドックスな構成になっています。
氷属性のバックアップは、風属性と氷属性を最低2枚ずつ出したいという思いもあり、カード名が被ってバックアップが並べられないという状況は避けたいと考えてなるべくカード名を分散させて採用しました。
ただし【13-024R】《スコール》だけは【13-031R】《ラグナ》使う以上3枚採用しています。
また基本的にキーカードにアクセスするカードが多いので【10-039C】《ナグモラーダ》、【4-026H】《ガストラ帝国のシド》、【6-022R】《イゼル》を優先してキャストしたいと考えているので、動きがふわっとしている【13-018C】《キスティス》と【11-041C】《ユーク》はキャストの優先度は低めです。
――プレイングの面で意識したことなどはありますか?
るー:【13-031R】《ラグナ》は毎ターン2枚ずつキャラクターをダル凍結できるので、相手のキーカードを継続して縛り続けることができます。
反面、常に最適な対象を選び続けなければ相手に逆転の隙を与えてしまうことになるので、相手のデッキやシーンに応じてどのカードを凍結しておくのがベストか、選ぶべきキャラクターの優先順位については特に意識していました。
基本的には序盤はバックアップを凍結させて相手の展開を遅れさせつつ、フォワードが出揃う中盤以降は脅威となるフォワードを中心に凍結させていくというイメージです。
今回でいうと「水雷」はこうした選択が刺さる相手でした。
「水雷」は【13-090L】《オヴェリア》が厄介なので、【13-090L】《オヴェリア》を徹底して凍結させ続けます。相手のダメージ4点目までは【13-090L】《オヴェリア》+バックアップを凍結させリソースを縛りつつ準備を進め、ダメージ5点以降は【13-090L】《オヴェリア》+【13-086R】《アグリアス》を凍結させ【13-086R】《アグリアス》が再展開されないよう意識してプレイしました。
「土風【スカリー】」や「火土」のような、バックアップへの依存度が高かったり、バックアップのコストが重めなデッキに対してはバックアップを凍結させる優先度が高くなります。
「土風【スカリー】」に対しては、デッキの要である【11?073H】《テテオ》を凍結させ続けることで、相手のコンボを止めることができます。また【11-056R】《フィオナ》を凍結させて《スカリー》をそろえさせないことも重要です。
ですが、自力で《スカリー》をそろえられた試合には負けてしまったので、このあたりは根本的な無力化ではないダル凍結の限界ですね。相手がこちらの妨害から抜け出す前にすばやく倒す意識も大切だと感じました。
「火土」はバックアップのコストが重い構成のデッキで、リソースの獲得手段が【11-063L】《リッツ》のアビリティに依存しているので、序盤はバックアップを縛りつつ【11-063L】《リッツ》を凍結させ続けてしまえば逆転されにくく、比較的有利な相性関係にあると考えています。
今回対戦したなかで、個人的にもっとも苦戦したのが「雷単」です。もともとダル凍結はヘイストで奇襲をかけてくる「雷単」のような戦い方を苦手にしているのですが、「Opus XIII」では【13-079L】《ベヒーモス・K》が登場し、終盤戦での相手への対処がさらに難しくなっていました。除去の手段が豊富で、キーカードが対処されやすいという点も苦手な要因の1つです。
キーカードの1つである【10-101L】《ライトニング》に対しては【12-116L】《ロック》で対処できるので多少余裕はあるものの、【13-079L】《ベヒーモス・K》1枚で逆転される可能性がある以上、相手の【13-079L】《ベヒーモス・K》が動き出す前に勝てるかは運次第だったので、辛くも勝利できたという試合でした。
――「火単」や「土水」などはあまりいなかったんですね。「MASTERS 2021」枚方大会に向けて何か意識していたデッキはありましたか?
るー:「MASTERS 2021」は新型コロナウィルス感染症の状況を見ながらの開催ということもあって、メタゲームと呼ばれるものがまだ明確に定まっていないんじゃないかと考えていました。
普段のようにショップ大会で集まったり、交流の場が多いわけではないのでプレイヤー全体でのメタゲームに対する意識が共有されにくく、コミュニティ内で独自のメタゲームが進むと考えられたためです。Discord上で開催された「自宅名人戦」などもあったものの、ここで活躍したデッキと「MASTERS 2021」で人気が出るデッキには違いが出るだろうとも考えられました。
僕自身、「火単【侍】」が強いという漠然としたイメージで環境を予想していましたが、前週の横浜大会、諏訪大会で「火単」以外のデッキが優勝し、このイメージも払拭されてしまいました。
特に横浜大会で優勝した「土水【ドーガ】」は「L6構築」でありながら、スタンダード環境にも一石を投じるデッキだったと思います。当日の配信やアーカイブで多くのプレイヤーの目に触れましたし、僕自身も横浜大会優勝者のしどさんからスタンダード環境の「火単」とも戦えるデッキだと話をうかがったこともあり、いよいよどんなデッキが活躍するかわからなくなりました。
特に自分が知る関西のコミュニティは、もともと地域色が強くメタゲームに順じて人気があるデッキを使うより、好きなカードでその環境に挑もうと考えるプレイヤーが多いため、メタゲームを正確に定義できない以上、特定のデッキだけを強く意識するだけでなく、自分の勝ち筋が明確なデッキを使う必要があると考えました。
なので今回「風氷」を使った背景には、風属性が好きというほかに、基本に立ち返って自分のやりたい動きがハッキリしているデッキを使いたいという理由もありました。
◆地域に根付いたコミュニティで多様なデッキと出会えた強み
――るーさんは普段、大阪を拠点にプレイされているんでしょうか。
るー:僕は兵庫の人間なのですが、コミュニティ自体は兵庫の人と大阪の人の混成コミュニティです。誰かしらの家で遊ぶこともありますし、少し足を伸ばしてショップに行くこともあります。
幸いなことにコロナ禍であっても、僕たちのコミュニティは感染対策も徹底しつつリアルで集まる機会を設けられたので、その中でそれぞれが気に入ったカードを使ってデッキを組むこともできたんじゃないかなと思います。
いわゆるトーナメントシーンに名を連ねているデッキよりも、自分の気になるカードや気になるギミックを形にしたデッキと対戦する機会が多いと感じています。
そのぶん、「いつか輝くかも!?」と思わせるデッキと出会うことが多いのも、自分のコミュニティの魅力だと思います。
また大会環境を意識したデッキとの対戦はDiscordの公式サーバーで対戦相手を募集していますが、ありがたいことに多くのプレイヤーが相手をしてくれるので、今回も「火単」などとの対戦経験を十分積むことができました。ゲームをプレイできる環境という面では非常に恵まれたプレイヤーなんじゃないかと感じています。
――『FFTCG』はいつごろから始められたんでしょうか?
るー:もともと別のカードゲームをやっていたころから通っていた地元のショップがあったんですが、あるとき「ファイナルファンタジーのカードゲームが出るぞ!」って話題が出て、私をはじめ『FF』シリーズが好きな常連も多かったのでみんなでやろうとなったのがきっかけです。それが「chapter」シリーズのときですね。途中離れていた時期もあったんですが、「Opus」シリーズが出るぞとなったときあらためて始めてみようということで、「Opus I」から復帰した形です。
――では最後に「MASTERS 2021 FIANL」に向けて意気込みを教えてください。
るー:長く続けているのになかなか勝てないことで実力不足を感じていたんですが、今回の優勝は自分にとって大きな自信になる経験でした。
5年目でようやく立てる大舞台なので、出るからには一緒に対戦してよかったと思われるプレイをしたいと思います。
もちろん、優勝目指してがんばりますのでよろしくお願いします!
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回は「MASTERS 2021」枚方大会で優勝されたるーさんに、【カテゴリ(VIII)】型の「風氷」についてお話をうかがいました。
一言に「風氷」といっても、焦点を変えるだけでこれだけタイプの異なるデッキになるのは驚きですね。
「Opus XIII」環境では同じ属性の組み合わせでもタイプの異なるデッキが多数登場しました。今後の『FFTCG』ではデッキごとのバリエーションもさらに広いものになっていくでしょう。
次回はL6構築で開催された鳥栖大会と、スタンダードで開催された下関大会の2大会をともに「火単」で優勝したあとらさんにインタビューをする予定です。
フォーマットを問わず活躍できる「火単」の強さについてお届けしたいと思います。
それではまた次回の記事でお会いしましょう!