木谷社長に聞く!「戦略発表会2022 再臨」とその後について

12月6日に開催された「ブシロードTCG戦略発表会2022 再臨」。前回の戦略発表会と同じく、その発表後にブシロード・木谷社長へインタビューを行ない、今回の戦略発表会の振り返りや、2023年の目標などを伺ってきた!

⇒「ブシロードTCG戦略発表会2022 再臨」(特設サイト/YouTube配信:第一部第二部

◆2022年のブシロードのカードゲームはどうだった?

───まずは2022年を振り返ってみて、それぞれのカードゲームはいかがでしたか?

木谷:『カードファイト!! ヴァンガード(以下、ヴァンガード)』からですね。アニメだと「overDress編」のときはカードゲームアニメからずれた内容になってしまい、カードのほうの売り上げも落ちていました。ですが「will+Dress編」で少しずつ復活してきました。先日発売した8弾の「女神再臨」はアニメに関係ないにもかかわらず、ここ数年の『ヴァンガード』では瞬間的な売り上げは一番だったのではないでしょうか。2022年は試行錯誤から始まり、夏アニメきっかけでペースをつかんできて2023年大きく飛躍できるかなと感じました。2023年が『ヴァンガード』復活の年だと思います。それに繋げられたということで、2022年も終わってみればいい年だったなと思います。

『ヴァイスシュヴァルツ(以下、ヴァイス)』は本当に国内外を問わずマーケットを伸ばしていますね。ユーザーが増えているからなのか、こちらの想定よりも注文を頂いています。ただ、商品が売れているというよりも、増えた分が消えているというイメージです。消えたというのは、海外から『ヴァイス』を買いに来るユーザーが多いからなのでしょう。

『ヴァイス』ブランドはグローバルに人気が広がっていると感じますが、ここに『ヴァイスシュヴァルツブラウ(以下、ブラウ)』が加わったので、ブランドがより厚みを増した年かなと思いますね。来年の1月~6月に『ヴァイス』にも『ブラウ』にも強力な作品がひかえていますし、さらに厚みが出てきますよ。

12月の戦略発表会では新規作品をいっさい発表しませんでした。その理由は1月9日(月)に行なう「ブシロード新春大発表会 2023」が本番だからです。『ヴァイス』『ブラウ』参戦作品を一気に発表しますので、こちらをご期待ください。

『Reバース for you(以下、Reバース)』は以前から話しているように「差別化」というお題があるんですよね。戦略発表会でも一つだけ変わっていることをしますし、実写カードを積極的に入れたりとか中国系作品いっぱい持ってきたりとか。そういう差別化ができてるかなと思います。それと『ヴァイス』ってタイトルが結構先まで決まってるんですよ。『Reバース』はその点フットワークを軽く動けるのも特徴ですね。

『Shadowverse EVOLVE(以下、EVOLVE)』は非常に良かったと思います。国内だけでいうと『ヴァイス』くらいの売り上げになりました。リリース前に想定していた数字のほぼ上限くらいに来ていますし、大成功といってもいいんじゃないでしょうか。でも真価は1周年ですからね。来年4月が1周年ですので、そこで見極めたいですね。

───『EVOLVE』はコラボパック「ウマ娘 プリティーダービー」の勢いも大きいと感じました。

木谷:そうですね。「ウマ娘」のブースターに関しては想定通りではありました。多すぎず、少なすぎず、一番いいところの数字を出荷できたんじゃないでしょうか。

───今回の発表会の第2部の最初の方で、「ブシロードトレーディングカードコレクションシリーズ」というのが発表されました。1パック100円(税抜き)という値段もそうですし、100円ショップで販売するというのも驚きました。

木谷:これは、低価格帯の商品をこれまでとは違う売り場で販売し、ブシロードカードゲームの新しいお客さんになってもらうきっかけとして企画した商品ですね。

少し話は変わりますけど、サブカルエンタメの中で唯一売り場が広がっているのってTCGだと思います。BOOKOFFさん、TSUTAYAさんからの公認タイトルの大会申請がどんどん入ってきていて、1年で70件くらいずつプレイ用のテーブルもあるTCGショップのようになっているように見えます。それ以外のお店もあわせて、年にTCGショップは200件くらい増えているんじゃないでしょうか。そう考えると、ブシロードのカードゲームを扱ってくださるショップの割合も、もう少し上げていきたいと思いますけど(笑)。

ここ数年内のカードゲームの売り上げが一番大きくなる年は2023年だと思います。また話が変わりますが(笑)、全国にはデュエルスペースがあるカードショップって1300店舗くらいです。弊社の商品を扱っているところがだいたい900店舗くらいで、それ以外のお店も込みでと考えた数字ですが。そこで働いている人の人数って、アルバイトも含めると平均20人ぐらいでしょうか。そうすると、2万5千人くらいの人たちがカードゲームを売ることで収入を得ています。この人たちはカードゲームが売れなくなると困るわけです。これだけの店員の人数って、ほかのジャンルだとあまり見ないと思います。カードショップで働いている人たちはお客さんに商品を勧めるし、友人にも勧める、そして自分でも商品を買いますよね。

これが今、カードゲームのマーケットを広げている大きな原動力だと思います。関わっている人が多いからです。全国のカードゲームショップの店員の皆様には感謝しています。これに加えて子どもが戻ってきてくれたり、女性層が増えてくれたりすると、マーケットはさらに広がると思います。そうすると来年がピークではなく、さらに次の年につながるはずです。


◆戦略発表会の各ブランドで気になったところは……?

───では、改めて12月の戦略発表会での各ブランドごとに気になるところを伺っていきたいと思います。まず『ヴァンガード』ですが、中野区のふるさと納税に登場するということが発表されましたね

木谷:中野区にブシロードの本社があるということでお話を頂いたからですね。『ヴァンガード』を選んだのは、ブシロードのオリジナルIPだからです。ひとさまのIPをお借りしてふるさと納税というのもおかしい話なので(笑)。返礼品は普通の商品を予定していて、そこにちょっとしたプロモを付けるとかになるのかなと思います。

───続いてアニメの「will+Dress編」のSeason2が2023年1月より始まりますが、Season2はどのようになるのでしょうか?

木谷:キービジュアルがアメリカのタイムズスクエアを描いていますが、アメリカと日本の同時並行で物語は進んでいきます。戦略発表会でこのビジュアルを公開したとき、秋葉原の電気街にも見えると言われたのは、たしかに見えなくもないな……とショックでしたけど(笑)。
アメリカをもう一つの舞台にしたのは、アメリカで『ヴァンガード』を遊ばれているユーザーに向けてのサービスですね。Season1は純粋に大会を作中で描いていきました。Season2は従来のカードゲームアニメらしく、黒幕が暗躍するなかで謎を解いていくような物語になります。これまでの『ヴァンガード』のアニメっぽい感じでしょうか。

───新しくOPを担当する「すとぷり」のメンバーから、莉犬さんとさとみさんの2人も声優として参加されますよね。

木谷:Season1のOPも非常に好評でしたので、新しいOPにも期待していますし、声優としての活躍にも期待しています。2月3日(金)発売のブースター「龍樹侵攻」には、通常1パック7枚のところ+1枚して「すとぷり」コラボのトークンカードも入れていますしね。アニメと相まってこちらのブースターも楽しみにしています。

───今回の発表では1年を通じて予選大会を開催していく「デラックス2023」が発表されましたけど、決勝は個人戦で日本一のファイターを決めるというところが非常に気になりました。

木谷:年間を通じた大会をやってみたいと、スタッフから上がってきたのがきっかけですね。4月29日(土)~30日(日)開催の「大ヴァンガ祭2023」で予選が行なわれますけど、ここの予選では各レギュレーション1名ずつのトリオ戦を行ないます。ここ以外にも、「WGP」などのブシロードの公式イベントで予選を行なっていきます。

今年は地域のショップが主体となった「ちほうかっぷデラックス」というイベントをやりましたけど、これも非常によいイベントでしたので継続していきたいと思います。それに、ここでも予選が開催されます。

───『ヴァイス』についてお伺いします。今回の戦略発表会は15周年関連のイベント告知がメインでしたね。

木谷:新商品関連は1月9日(月)の新春発表会で公開しますので、少々お待ち下さい。『ヴァイス』の15周年は2月のショップ大会のPRパック配布から記念大会などを開催していきます。

───2023年で15周年を迎えるということで、『ヴァイス』のこれまでを振り返ってみていかがでしたか?

木谷:『ヴァイス』はこの15年、特別厳しいという年は実はなかったんです。作品ごとにもちろん数字は異なりますが、年間を通して『ヴァイス』全体を見ると実は2~3年目以降から大きな変化はしていません。その後、前々期から売り上げは上がってきていますけど、これはもっと早く上げることもできたなと反省しています。

───『ヴァイス』の売り上げがここ最近で上がってきた原因はなんなのでしょうか?

木谷:海外は明らかにコロナ禍によって日本のアニメが見られるようになったからですね。これが間違いなくあります。国内については、参戦作品の魅力アップとコレクション需要の高まりだと思います。

それとカードゲームのマーケット自体が大きくなっていることもあると思います。ほかのカードゲームを遊ばれている方でも、自分の好きなアニメのパックが売っていたら少しだけ買ってみたりとか。ショップが増えてお客が増えマーケットが広がれば、その分だけ『ヴァイス』は恩恵を受けやすいと思います。ほかにも、ディズニー作品が参戦したのも大きいですね。ここからPIXARやMARVELに繋がりましたから。これらの作品はアメリカでも出せるようにしたいですね。

───ディズニー関連作品はてっきり海外でも販売されていると思いました。

木谷:アジアの一部だけですね。

───発表では、15周年のプレミアムブースターを販売するという発表もされましたけど、こちらは13周年のときに発売された「ヴァイスシュヴァルツクロニクル」シリーズとは違うのでしょうか?

木谷:そうですね。15周年プレミアムブースターは、過去の作品をピックアップして、2023年仕様にしたものです。3作品くらいを予定しています。ヒントは10年近く追加弾の出ていない作品です。

───続いては『ブラウ』についてもお聞きします。まずは11月に発売されたスタートデッキの感触はいかがでしたか?

木谷:作品によって数字は異なりますが、概ね成功だったと思います。「すとぷり」などは女性が多く購入されましたけど、「ちいかわ」については男女半々よりも男性が若干多いかなという印象です。それぞれのブースターも注文が来ているので、発売が楽しみです。

───スターター発売前に伺った際は量販店からの注文も多いというお話でしたが。

木谷:作品によってかなり異なりますね。「すとぷり」なら量販店とカードショップだと2:1~3:1くらいですね。「ちいかわ」だと1:2くらいでしょうか。女性ファン層の比率が多い作品は量販店が強いですね。

───発表会で『ブラウ』らしいなと感じたのは、カードゲーム祭で行うカードローダーのデコレーションワークショップですね。

木谷:これは女性スタッフがやりたいと声を上げた企画です。『ブラウ』チームは女性のほうが多いので、今までにはないアイデアが生まれてきています。開発チームは男性の方が多いですが、なるべく遊びやすいカードゲームにしようと女性の声も取り入れたりしていますね。

開発の初期段階には私も入っていて、「カードテキストは2行まで」「スタートデッキのカードの半分はバニラにして」といったことも言っていました。カードゲームが初めてという人にとってはカードテキスト自体読むのが大変なんです。なるべく短く簡単にするように心がけています。

───続いて『Reバース』ですが、BOOKOFFのよむよむ君が発表会に駆けつけてくれたのは驚きました(笑)。

木谷:こういう企業コラボは『Reバース』以外でもお話があれば全然検討できますから。『Reバース』のフットワークの軽さは、こういうところで生きますね。それに2月には「ホロライブプロダクション」、4月には「ブルーアカイブ」とそれぞれの第2弾が発売されますし、いい波が来てると思います。

───『ヴァイス』『Reバース』。版権タイトルを扱う2つのカードゲームの場合、どういう形で参戦作品を決めているのでしょう?

木谷:それぞれのチームでアイデアを出していますけど、『ヴァイス』だと弊社のライセンスチームから話が来ることもあります。『Reバース』の場合は開発チームがより積極的に参戦作品獲得に向けて動いていますね。

ライセンスチームたちもライセンス獲得のためにいろいろと動いていますが、会議や打ち合わせ、食事会など含めてやはり対面で行なうと違いますね。コミュニケーションって9割は相手の表情や身振り手振り、その場の雰囲気とかで感じ取るのですが、オンラインだとその部分がちょっとしかわかりません。対面で会ったときに得る情報量の2割くらいかなと思っています。アニメの製作委員会とかのように、対面で行なうのは3回に1回でいいというものもありますが(笑)。これはコロナ禍のおかげで洗練されていきましたね。

───最後に『EVOLVE』についてお聞きします。今回の発表で特に気になったのが、公認店によるChampionshipの開催サポートについてと、公認ジャッジプログラムについての2点です。

木谷:「第1回公認ジャッジ試験」募集開始から1日で700人以上の応募があったりと、想定以上の方が興味を持たれていて驚きました。(応募締切時点の応募数は1,300人以上)
「公認ジャッジプログラム」はCygamesさんからの提案で生まれたものです。ブシロードのカードゲームでも初期の頃は公認ジャッジという制度をやっていましたが、今は辞めてしまったんですよね。『EVOLVE』では公認ジャッジ向上プログラムとして、勉強会などを行ない地域のコミュニティリーダー的な存在を作っていきます。

───こういう活動を通じてレベルの高いジャッジが育つと、『EVOLVE』以外のタイトルにも影響が出てきそうですよね。個人的には、ほかのブシロードカードゲームでも公認ジャッジ制度が復活してくれることを期待したいんですが……。

木谷:そうですね。可能性で言うと『ヴァンガード』ならありえるんじゃないでしょうか。ちほうかっぷのお手伝いもお願いしやすくなりますし。『EVOLVE』に関してはランキングバトルが来年から始まりますね。大会参加などに使うブシナビに新機能が追加されて、エリアごとの順位などもわかるようになります。ただ、ランキングなどを実装したからといって「競技性が高い方向へ進む」わけではありません。「競技性が高いところも対応できる」ようになったと理解してもらえれば。

───『EVOLVE』は英語版の発売も発表されましたね。

木谷:そうですね。英語版は7割くらいがアメリカでの販売になるかと思います。アメリカは3年に1回くらいのペースで、しっかりとしたカードゲームが流行るんですよ。それが2023年には来ると読んでいて、それもあってアメリカでも出したいとは最初から思っていました。

───日本ではTCG市場がここ1~2年で大きく広がりましたが、アメリカでもそうなのでしょうか?

木谷:市場規模でいうと今は日本のほうが大きいでしょうけど、アメリカも以前と比べると倍近くの規模になってると思います。アメリカのアナログゲームは『マジック』『ポケカ』『遊戯王』が上位3つで、第4位に『D&D』。第5位からはその年によってころころと変わる感じです。マーケットが拡大しているから、そこにさまざまなタイトルが入ってくる余地ができました。少し前は『ヴァイス』が第5位に入ったりもしましたし。ベスト10以内に『ヴァイス』『ヴァンガード』が入り続けるよう、弊社も頑張らないとだめですね。

───それでは最後に、2023年のブシロードの目標をお願いします。

木谷:業界内での順位を上げることです。メーカーとしては日本では第4位なので、第3位には上がりたいですね。

───本日はありがとうございました。