『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今回は第二期名人位決定戦で優勝し、二代目名人となったぱっつぁんさんのインタビューをお届けします。
◆はじめに
こんにちは!『FF-TCG』プレイヤーのたるほです。
今回は「OpusVII」環境を締めくくる「第二期名人位決定戦」を見学しにスクエア・エニックス本社に潜入してきました。
全国から強豪が集まった会場はいままでの予選大会とはまた違う緊張感のある雰囲気に包まれていました。
通常構築と作品単構築の複合フォーマットの戦いを勝ち抜き、見事「第二期名人」位に輝いたのは名古屋のプレイヤー、ぱっつぁんさんでした。
ここでは第二期名人となったぱっつぁんさんにインタビューを行ない、今期の名人位にいたるまでの道のりをうかがいましたので、その模様をお届けします。
名古屋のプレイヤーで、第二期名人位。
強豪ひしめく「名人位決定戦」において通常構築戦を全勝という驚異の勝率で駆け抜けた。コンボデッキをこよなく愛し、「楽しくなければ勝っても意味がない」と豪語する。
最近は新たな遊びの可能性を求め、非公式フォーマットコモン単構築戦を開拓中のようだ。
◆先んずれば名人を制す。作品単で勝つための構築戦の戦い方
――第二期名人位、おめでとうございます。
ぱっつぁん:ありがとうございます。
――「第二期名人戦」は昨年に引き続き2デッキ構築戦でしたが、今年は予選ラウンドの前半が構築戦、後半が作品単構築戦と昨年以上に変則的なフォーマットの大会でした。デッキ選択などどのように決めていったんでしょうか?
ぱっつぁん:今回は複合フォーマットということで、作品単に挑むにあたって、以前から強かったカテゴリーや「OpusVII」で強化されたと感じた作品をデッキにして回してみたのですが、「OpusVII」で追加された【ジョブ(暁の四戦士)】が非常に強力で、除去が少ない作品単構築戦では理想的な周りをした『FFV』のギミックを止める手段は限られており、頭一つ抜けた強さを持っていると感じました。いつもの作品単構築戦であれば、このまま『FFV』をトップメタとして考えたのですが、ここで今回の前半戦は通常の構築戦フォーマットだという点が少し引っかかり、デッキ選択を再考しました。
――どういった点が引っかかったのでしょう?
ぱっつぁん:『FFV』はたしかに強いデッキであることには間違いありませんが、プレイングより引きに依存する要素も強く、キーになるカードが引けない“事故”も多いデッキです。前半の通常構築戦を勝ち抜いてくるプレイヤーは、『FFV』のような裏目のあるデッキタイプを好んで使うのかなと考えると、自分が通常構築戦で好成績を残せることが前提となりますが、実は『FFV』デッキに当たる確率は少ないのではないかと予想しました。そのため『FFV』を除いた各作品単のデッキに対して安定した勝率を出せると考えた『FFXIV』デッキを選択しました。
――こういった舞台だからこそ、デッキの力以上に個人の実力を信用しているプレイヤーが多いと予想されたんですね。ぱっつぁんさん自身は【カテゴリ(V)】を使おうとは思わなかったんですか?
ぱっつぁん:「第二期名人戦」北信越予選で権利を獲得してから「名人位決定戦」まであまり調整の期間が長くなかったので、『FFXIII』などのように複数の構築パターンがあるタイトルは調整が間に合わないと感じたため『FFV』か『FFXIV』でいこうというのは早い段階で決めていたんですが、『FFV』は『FFIV』に対して相性が悪く、またEXバーストで切り返されてしまうという側面もあり、先ほどの“事故”の要素も含めて自分で使おうとは思わなかったです。
デッキ名:いた(第二期名人位決定戦 作品単フォーマット)
カードNo. | カード名 | 枚数 |
フォワード(21枚) | ||
【5-158S】 | 《イダ》 | 3 |
【5-159S】 | 《パパリモ》 | 3 |
【6-038H】 | 《ヤ・シュトラ》 | 3 |
【5-107H】 | 《サンクレッド》 | 3 |
【7-092C】 | 《サンクレッド》 | 3 |
【1-084H】 | 《ヤ・シュトラ》 | 3 |
【5-068L】 | 《ヤ・シュトラ》 | 3 |
バックアップ(29枚) | ||
【6-071H】 | 《クルル[XIV]》 | 3 |
【5-160S】 | 《ミンフィリア》 | 3 |
【6-079L】 | 《ミンフィリア》 | 3 |
【5-162S】 | 《アルフィノ》 | 3 |
【5-161S】 | 《アリゼー》 | 3 |
【7-136S】 | 《ヤ・シュトラ》 | 2 |
【2-093H】 | 《ラウバーン》 | 3 |
【5-120C】 | 《ルイゾワ》 | 3 |
【2-055H】 | 《カヌ・エ・センナ》 | 3 |
【6-108R】 | 《イシュガルド教皇》 | 3 |
――今回使われたデッキですが、「OpusVI」環境のときにインタビューさせていただいたてるてるさんの構築と非常に近い構築となっています。
ぱっつぁん:基本的には【ジョブ(暁の血盟)】を並べて【5-158S】《イダ》や【6-038H】《ヤ・シュトラ》で相手のフォワードをブレイクしながら攻撃を通していくというスタイルで、【ジョブ(暁の血盟)】でないカードはEXバースト持ちのカードで固める構築は変わっていません。しかし以前はまだカードの種類が不足していて、そこをEXバースト持ちのカードで埋めていましたが、「OpusVII」では【7-092C】《サンクレッド》【7-136S】《ヤ・シュトラ》の2種類の【ジョブ(暁の血盟)】が追加されカードが充実したうえで、改めてこの構築に落ち着きました。
――以前フォワードで採用されていた【6-088L】《エスティニアン》と【6-130L】《ニーズヘッグ》の枠が、そのまま【7-092C】《サンクレッド》に変わったんですね。
ぱっつぁん:その2種のカードは詰めの手段として、最初のうちはデッキに入っていました。しかし【ジョブ(暁の血盟)】以外のカードをプレイすると、こちらの展開が遅くなりゲームに勝てないことが多かったんです。【ジョブ(暁の血盟)】以外はコストにしてしまうことが基本的には正しいプレイングになります。それであれば【ジョブ(暁の血盟)】とEXバーストを持ったカードだけの構築にしたほうが役割が明確で、プレイングもシンプルになるためストレスも少なく、相性の悪いタイトルに対してもEXバースト次第でチャンスをつかめるだろうということでこの構成となりました。
実際、決勝ラウンドでプチデビさんと対戦したときは、少ないと予想した『FFV』とのマッチングになりましたが、相手の展開が悪いところにこちらのEXバーストが重なったことで相手の【7-056H】《ドルガン》の除去に成功し、そのまま勝つことができたので、苦手なところはEXバーストに任せるというこの構築でよかったなと思います。
――続いて構築戦フォーマットで使われた「風単チョコボ」ですが、これは誰もが予想していないデッキだったんじゃないかと思います。今回このデッキをチョイスされた理由をお聞きしたいと思います。
デッキ名:とり(第二期名人位決定戦 通常構築フォーマット)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(30枚) | ||
【3-049C】 | 《イザナ》 | 3 |
【5-061C】 | 《チョコボ士》 | 3 |
【1-075C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【5-060C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【4-063C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【4-062C】 | 《チョコボ》 | 2 |
【6-050C】 | 《チョコボ》 | 2 |
【5-050H】 | 《アデル》 | 3 |
【5-068L】 | 《ヤ・シュトラ》 | 3 |
【3-053C】 | 《狩人》 | 2 |
【6-044L】 | 《ジタン》 | 3 |
バックアップ(14枚) | ||
【2-050H】 | 《アルクゥ》 | 3 |
【5-067R】 | 《ミューヌ》 | 2 |
【6-046C】 | 《シド・ヘイズ》 | 3 |
【1-083H】 | 《マリア》 | 2 |
【5-053R】 | 《エコー》 | 2 |
【6-064L】 | 《デブチョコボ》 | 2 |
召喚獣(6枚) | ||
【2-049H】 | 《アスラ》 | 3 |
【7-045C】 | 《アレキサンダー》 | 3 |
ぱっつぁん:《チョコボ》デッキは「OpusIV」で【6-064L】《デブチョコボ》が登場した時から注目していて、「OpusⅥ」環境では「水風チョコボ」を愛用していたんですが、当時は「氷単」が流行っていて【3-037H】《死の天使ザルエラ》で《チョコボ》を一掃されたり【1-192S】《シド・レインズ》に除去されたりと勝ち抜くのが厳しいデッキでした。しかし「OpusVII」環境では【5-040C】《呪術師》【5-034C】《ゲスパー》が禁止された影響もあり氷属性のデッキが減り、代わりに除去が少ない「水風」のようなデッキが増えました。
メタゲーム上の立ち位置に変化があったため《チョコボ》デッキを使う価値ができただろうということで「第二期名人戦」北信越予選に「水風チョコボ」を持ち込みました。結果、氷属性が絡むデッキと3回対戦したんですがそこでの感触も悪くなく、「OpusVII」環境で《チョコボ》を選択するのはかなりいいんじゃないかと確信しました。しかし同時に「水風チョコボ」を使ううえで【6-126R】《レイラ》【4-133C】《バイキング》が強く感じない瞬間があったんです。
――【6-126R】《レイラ》【4-133C】《バイキング》は今や水属性を使ううえで基本ともいえるコンボですが、どういったところが弱く感じたのでしょうか。
ぱっつぁん:【6-126R】《レイラ》は【4-133C】《バイキング》がいて始めて活躍するカードなので、彼女を単体で引いてプレイ中にストレスを感じることも少なくありませんでした。また、このデッキには【5-067R】《ミューヌ》などを絡めてさらに【6-126R】《レイラ》【4-133C】《バイキング》のコンボを活躍させるギミックはあったんですが、それはやりすぎというか「80点で合格なのに無理やり120点を取ろうとしてデッキが歪んでいる」ような状態だなと思ったんです。それであれば水属性を抜いて「風単」でいいんじゃないのかなというのが「風単」で《チョコボ》を使うにいたったきっかけになります。
――具体的にこの環境での「風単チョコボ」の強みはどういったところにあるのでしょうか。
ぱっつぁん:「風単チョコボ」が勝てた大きな理由はやはりメタゲーム上の立ち位置がよかったという点だと思います。また同じくらい、自分に合っていたというのも大きいですね。
――では、それらの理由を1つずつうかがっていきたいと思います。まず立ち位置というと具体的にどういうことでしょうか。
ぱっつぁん:《チョコボ》デッキは少ないバックアップから【5-061C】《チョコボ士》や【6-050C】《チョコボ》を絡めて《チョコボ》を展開し、ダメージレースを先行させていくのが基本的な戦術ですが、フォワードのパワーが低いため、火属性や雷属性などのフォワードのアビリティで除去をされてしまうとアタックを通すのが困難になってしまうという弱点がありました。
しかし「OpusVII」環境では火属性と雷属性のデッキは非常に少なくなっていました。火属性や雷属性は、相手のフォワードにダメージを与えて倒すことによってアドバンテージを獲得することを強みとしている属性ですが、現在主流のカードはアビリティに選ばれない【6-044L】《ジタン》や【3-053C】《狩人》、そもそもダメージの入らない【5-068L】《ヤ・シュトラ》、選んでダメージを入れることで8000ダメージを跳ね返してくる【4-085H】《ダダルマー》や、ブレイクされてもアドバンテージを失いにくい【6-126R】《レイラ》【4-133C】《バイキング》などです。
そのため、この2属性でアドバンテージを獲得するのに適した環境とは言いにくく、東京予選で優勝した「雷単」や、決勝で対戦したカワムラさんのように「土風」にタッチする形ではいるとしても、正直使用者はかなり少ないのではないかと考えていました。さらに氷属性の減少により、除去を苦手とする《チョコボ》は相対的に使いやすくなると考えました。「水風」「土風」「水単」のデッキはいずれもバックアップを並べることを優先する遅いデッキだったので、こちらの《チョコボ》の展開を阻害されにくく序盤からダメージを与えやすかったため、除去が苦手で序盤の1点を重要視する《チョコボ》にとって追い風の環境だったといえます。
――自分に合っているデッキとはどういったところから感じたのでしょうか?
ぱっつぁん:「名人位決定戦」に臨むにあたって、今まで自分が結果を残せたデッキは何かと思い返してみると「テンポよく攻撃できてバックアップが引けなくても戦えるデッキ」という共通項があることに気づきました。《チョコボ》はアグレッシブなデッキなのでテンポよく攻撃できるのはもちろんですが、【5-061C】《チョコボ士》や【6-050C】《チョコボ》のおかげでバックアップが少なくてもフォワードを展開し続けことができ、【3-049C】《イザナ》【5-061C】《チョコボ士》からバックアップである【6-064L】《デブチョコボ》をサーチできます。またバックアップの枚数が少なくてもいいので採用するバックアップの枚数を14枚まで減らすことができ、ゲーム中盤でバックアップしか引かずに負けることが少ないというのも利点と考えました。
――バックアップを多く必要としない構成にすることで、引きすぎても引かなさすぎても事故につながるバックアップというカードの課題を解決したんですね。テンポよく攻撃するということで序盤の立ち上がりが重要なデッキだと思いますが、この辺りのプレイングで重要なことをお聞きしたいです。
ぱっつぁん: まずこのデッキでは必勝ともいえるゲームのスタートプランがあります。
・【3-049C】《イザナ》→【5-067R】《ミューヌ》→【5-053R】《エコー》から【5-067R】《ミューヌ》をアクティブにして【6-046C】《シド・ヘイズ》をプレイ→【3-049C】《イザナ》を再度プレイ
こうすることで1ターン目からフォワード1枚バックアップ3枚を展開しつつ手札を先攻で1枚、後攻で2枚キープ出来て、さらに出し直した【3-049C】《イザナ》から【6-064L】《デブチョコボ》をサーチすることで、さらに次のターンの展開も確保することができるというルートです。
ほかにも
・【2-050H】《アルクゥ》→【5-053R】《エコー》から【2-050H】《アルクゥ》をアクティブにして【6-046C】《シド・ヘイズ》
と展開することで【5-061C】《チョコボ士》を手札に残しながらバックアップを3枚展開できます。後攻の場合は【2-050H】《アルクゥ》ではなく【1-083H】《マリア》でも同じ動きをできます。【1-107L】《シャントット》などのリセットがあるデッキに対してはバックアップから展開するこちらのルートも強力です。
これ以外にもいくつか立ち上がりのプランはありますが、この2つを基本として序盤から戦力を展開してゲームを組み立てていけるのがデッキの1つの強みです。
――スタートプランが豊富ということですが、マリガン基準などはどんな風に考えられていたんでしょう?
ぱっつぁん:マリガンのキモになるのは【3-049C】《イザナ》【5-061C】《チョコボ士》【2-050H】《アルクゥ》の3枚で、
・【3-049C】《イザナ》+【5-067R】《ミューヌ》【2-050H】《アルクゥ》【1-083H】《マリア》【5-053R】《エコー》【5-061C】《チョコボ士》
・【5-061C】《チョコボ士》+【2-050H】《アルクゥ》【1-083H】《マリア》【5-053R】《エコー》
・【2-050H】《アルクゥ》+【6-046C】《シド・ヘイズ》【6-064L】《デブチョコボ》
がそろっているのが基本的なマリガン基準でした。後攻の場合はバックアップを2枚置きたいので
でキープしたりします。【5-053R】《エコー》から引いてきたなかに【6-046C】《シド・ヘイズ》【5-061C】《チョコボ士》【6-064L】《デブチョコボ》があればさらに展開できますし、万が一手札がよくなくても【3-049C】《イザナ》1枚から【6-064L】《デブチョコボ》【4-063C】《チョコボ》でヘイストを付与した【3-049C】《イザナ》で1点取るルートも取れるのでゲームスタートのプランは多くて、とにかくストレスがないんです。こういった動きの多さも水属性が抜けていった理由かなと思います。
――初手から取れる行動パターンの多さがストレスが少ないということだったんですね。《チョコボ》以外のフォワードはどうやって決定していったんでしょうか?
ぱっつぁん:さきほど話したように《チョコボ》はサイズが小さく除去されやすいので「土風」の【4-085H】《ダダルマー》に簡単に倒されてしまうのですが、その枠を【5-068L】《ヤ・シュトラ》【3-053C】《狩人》【6-044L】《ジタン》といった【4-085H】《ダダルマー》に処理されにくいカードで対抗しました。決勝のカワムラさん戦は【3-053C】《狩人》を軸に終盤まで【1-083H】《マリア》の着地のタイミングをうかがい、【3-112H】《審判の霊樹エクスデス》に注意しながらアタックを通して勝利することができました。
――「風単」といえば【5-062L】《ディアボロス》はその代名詞といえるカードだと思っていましたがこのデッキでは採用されていません。反対に【7-045C】《アレキサンダー》はかなり目にする機会の少ないカードですが、こういった召喚獣のチョイスに関してもお聞きしたいと思います。
ぱっつぁん:召喚獣に関しては、バックアップが置けていなくても使えるカードを意識していました。作品単の時も【ジョブ(暁の血盟)】以外のカードはコストにしてしまうというお話をしたんですが、「風単チョコボ」でも基本的に《チョコボ》を展開するために手札に来たカードはどんどんコストにしてしまうため、コストが重い【5-062L】《ディアボロス》などはトップドローで引いてきても使えないことがあります。なので3CP以下で使える召喚獣を探していて、【6-044L】《ジタン》と相性のいいカードが欲しいなということで最初は【7-045C】《アレキサンダー》3枚のみを採用していました。
――【6-044L】《ジタン》と相性のいい召喚獣だと【3-071H】《輪廻王カオス》も3CP以下でEXバーストもあり、相手のフォワードをコストを気にせず除去できますが、そちらではだめだったんですか?
ぱっつぁん:【3-071H】《輪廻王カオス》は【6-044L】《ジタン》とセットで使わないと大きな裏目を引く可能性があるカードなので使いたくないなと思っていました。【7-045C】《アレキサンダー》は対象の幅こそ狭いですが、環境に一定数打つべき仮想敵がいて決めた時のリターンがものすごく大きなカードなのが魅力的だなと感じました。『FF-TCG』は手札からコストを生み出せるゲームなので、使わないカードはコストにすればいいわけで、打てなくて損をすることはあまりないんですが、打った結果裏目を引くのは、コストを支払ってしまっているので損になってしまいます。なので単体で裏目を引くカードよりも、ピンポイントでも役割の持てるカードが好ましいなと思っています。
――構築段階でこだわりを持たれてたんですね。最初は【7-045C】《アレキサンダー》3枚のみ採用とのことでしたが、【2-049H】《アスラ》はなぜ採用されたのでしょう?
ぱっつぁん:これは経験則なのですが、長丁場を戦ううえでEXバーストを持つ召喚獣3枚はさすがに少ないなと思って追加しました。もちろん他にも候補はあってもう1種類の【4-052C】《アレキサンダー》や2CPの【5-049C】《アスラ》なども候補ではあったんですが、出来ることの幅が一番広いのが【2-049H】《アスラ》でした。特に氷を意識してプレイする事が多く【6-044L】《ジタン》を【5-032H】《グラシャラボラス》から守ったり、【6-064L】《デブチョコボ》を複数回起動して戦闘を優位に進めたり、最低限【3-049C】《イザナ》を回収できるので【3-049C】《イザナ》を実質1CPのカードとして使用すると考えれば悪くないのかなという考えでした。
――【5-050H】《アデル》が3枚というのも「風単チョコボ」の攻撃するぞという意志を感じる採用ですね。
ぱっつぁん:【5-050H】《アデル》は絶対3枚のカードです。というのも【5-050H】《アデル》は除去の少ないこの環境では止めることが困難なカードで、6ダメージを与えればあとは【5-050H】《アデル》で勝ちというゲームを作ることができます。そうなると相手は【5-050H】《アデル》をケアするためにダメージを5点までにおさえなければならず、【5-050H】《アデル》を見せた時点から相手のプレイに負荷をかけることができ、見せるだけで間接的なアドバンテージを得られます。存在がプレッシャーになるだけでなく、実際に使って強いカードなのでこのカードが3枚から減ることはありません。
――今回はインタビュー前の予選ラウンドで少しお話しさせていただきましたが、かなり自信を持って大会に挑まれているという印象を受けました。
ぱっつぁん:はい。今回持ち込んだデッキは2つとも自分に合ったデッキを用意できたと思っていて、特に「風単チョコボ」は調整段階でものすごく勝率がよかったので、なんだったら通常構築戦は全勝したという仮定で、先にデッキテクを書いちゃおうかな(笑)と思えるくらい仕上がりに自信がありました。ラウンドの合間にテーブルを見回してみて「水風」が多い印象を受けたので「風単チョコボ」が活躍することは確信しました。実際、午前中の構築戦ラウンドは3勝0敗で終えることができ、そして予想通り午後の作品単構築戦では『FFV』に当たることはありませんでした。
――見事予想を的中されたわけですね。
ぱっつぁん:残念ながら作品単構築戦では2敗してしまい、予選ラウンドの成績は4勝2敗でしたが午前の3勝が大きく、高い順位を維持できたため無事決勝ラウンドに上がることができました。決勝ラウンドも風属性がひしめく環境で「風単チョコボ」がきっちり最初の1勝を取ってくれたためマッチのイニシアチブを取れました。特にプチデビさんとの作品単対決は本来不利な【カテゴリ(V)】に2回挑戦することができたからこその勝利なので「風単チョコボ」はデッキとしてだけでなく、このルールを勝ち抜くのに最適なデッキ選択だったと思います。
――作品単での勝ちを盤石にするために構築戦でイニシアチブを取ろうという作戦が見事のハマったわけですね。第二期名人位にふさわしい見事なメタゲーム予想だと感じました。
◆楽しくなければ意味がない! 二代目名人位の「遊び」へのこだわり
――ぱっつぁんさんはSNSなどによくデッキリストを投稿されていますが、『FF-TCG』はいつごろから遊ばれているんですか?
ぱっつぁん:『FF-TCG』は「Chapter」時代からやってはいたのですが、当時はやったりやらなかったりで継続的にやるようになったのは「Opus」シリーズに入ってからですね。なので遊び方が割とカジュアルよりというか、自分が楽しいというデッキを好む傾向にあったんです。「Chapter」時代に組んだ無限コンボデッキが自分の中で大きな成功体験で、そのときの快感を求めて今でも新たなコンボを探しています。
今回の「風単チョコボ」は無限コンボの類ではありませんが、カードの組み合わせを考えながらプレイする楽しさがあり、使っていて楽しいという点で「風単チョコボ」とつながっています。自分が楽しいことを前提にゲームをやっているからこそ、今回の「風単チョコボ」のようなストレスのないデッキがトーナメントで使ううえで自分に合っていたのかなと思います。勝つことが楽しいと考えている方ももちろんいると思うんですが、僕はやっぱり楽しくなかったら勝っても意味がないなと思っているので。
――無限ループのようなコンボデッキと「風単チョコボ」は対極のように感じますが、「楽しく遊べる」という根幹でつながっているんですね。楽しいこと、ストレスがないことを強く意識されていますが、そういったデッキを組むにあたって気にかけていることはどんなことでしょうか?
ぱっつぁん:僕の場合は、と前置きしますが「自分でデッキを作る」ということを意識しています。例えば成績を残したデッキがあったとしてそれをそのままコピーしたデッキを正しく回すことってなかなかできないと思っていて。それこそ今回の「風単チョコボ」で【7-045C】《アレキサンダー》を採用している理由ってコピーして2、3回使ってみただけだとわからなくて抜いてしまうと思うんですが、それだと結局そのカードが採用した意図がわからないですよね。【5-053R】《エコー》を使ってできる動きにも気づかず枚数を減らしてしまうかもしれない。カードが採用された意図やそのテクニックは、デッキを作った本人にしかわからないので、レシピを拾ってきて自分に合わせてチューニングするより、自分で考えてデッキを作る工程が大事だと僕は考えています。
――たしかに僕も人のデッキを使うとなんの気無しにデッキスロットをいじって自分好みにチューニングしてしまうことが多いです。
ぱっつぁん:『FF-TCG』は本当に人間性が出るゲームだと思っていて、デッキ構築だけでなくプレイングにもその人っぽさが出てくると思います。たとえば今日の決勝でカワムラさんの【5-148H】《カムラナート》に向かって【7-045C】《アレキサンダー》をプレイしたんですが、手札に戻した【5-148H】《カムラナート》をもう一度出されて、そこから【7-129H】《ガルデス》まで展開されたら絶対勝てないなと思いながらプレイしました。それはカワムラさんが手札を大切にする“プレイヤー”で、絶対に不用意に手札をコストにしないと“信頼”していたからです。実際、カワムラさんは【5-148H】《カムラナート》を再度プレイして【7-129H】《ガルデス》をサーチすることはなかったです。これが知らない相手だったしないだろうプレイングなので、やっぱり『FF-TCG』は人間性の出る信頼のゲームなんだと思います。構築にもプレイにも人のクセが出るということですね。
――ぱっつぁんさんは独自のフォーマットとして「コモン限定構築」などもプレイされているそうですね。
ぱっつぁん:海外サイトでコモン単の非公式フォーマットで遊んでいるがいるのを見つけて、最近これで遊んで見たんですが、思った以上に色々なデッキが組めることがわかって。今回の「風単チョコボ」も実はそこで着想を得たデッキで、特に【5-053R】《エコー》を絡めたギミックも【4-067C】《風水師》を使っているなかで気付いたギミックなんですが、自分でいろいろな遊び方をしていと、そこから学べることは多いですね。
――積極的に「楽しいこと」を探していく姿勢のなかにぱっつぁんさんを名人にした強さの秘訣があるのでしょう。では最後に2代目名人位に輝いたぱっつぁんさんの今後の目標をお聞きしたいなと思います。
ぱっつぁん:とりあえず今後も《チョコボ》は使っていきたいと思っているので、ぱっつぁんといえば《チョコボ》、《チョコボ》といえばぱっつぁんと言われるようになりたいなと思っています。
――今後も新たな《チョコボ》が出るたびにぱっつぁんさんのことが頭をよぎることになりそうですね。ありがとうございました。
◆終わりに
「名人位決定戦」を制し2代目名人位を手にしたぱっつぁんさんへのインタビューでした。
「自分が楽しいこと」に徹して楽しいことを追求する姿勢は、2代目名人と呼ぶにふさわしいプレイヤーだと感じさせるインタビューでした。
今年も《チョコボ》名人からどんな《チョコボ》デッキが生み出されるのか、今から目が離せませんね。
これにで「OpusVII」環境は終わり、「OpusVIII」環境が幕を開けようとしています。
「Masters2019」や「JAPAN CUP」「Crystal CUP」など大型大会が立て続けに行われ「OpusVII」環境以上に熱い戦いが繰り広げられること間違いなしの「OpusVIII」環境、僕も最前線からインタビューをお届けできればと思っています。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。