『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS2018」伊勢崎大会で優勝したシェルク無限回収中さんのインタビューをお届け。「水風」を使い続けるスペシャリストは「Opus VI」環境をどのように攻略したのでしょうか。
◆はじめに
こんにちは!『FF-TCG』プレイヤーのたるほです!
先日開催された「MASTERS2018」伊勢崎大会に参加してきました。「氷風土モーグリ」デッキで挑んだのですが、3勝3敗と勝ち越すことができず悔しい結果となりました。
本大会はベスト4のデッキすべてに【6-126R】《レイラ》と【4-133C】《バイキング》が3枚ずつ採用され上位を水属性が占めるという、水属性の時代の到来を感じさせるものとなりました。
今回は「MASTERS2018」伊勢崎大会と「MASTERS2018」浜松大会の2大会を「水風」デッキで制したシェルク無限回収中(以下、シェルク)さんにお話をうかがい、環境が変わっても活躍を続ける「水風」についてインタビューをしてきました。
横浜のプレイヤーで、「MASTERS2018」ではすでに浜松大会で「FINAL」への切符を手に入れている「水風」のスペシャリスト。
プレイヤーネーム通り《シェルク》が好きでコレクションしていて、現在も絶賛大募集中。
今後は活動拠点が岡山に移るということで関西での活躍も期待されるプレイヤーだ。
◆環境をまたいで勝ち続ける「水風」のこだわりを聞く
――「MASTERS2018」伊勢崎大会優勝おめでとうございます。
シェルク:ありがとうございます。
――シェルクさんと言えば「水風」という印象があります。「Opus V」環境でも「MASTERS2018」浜松大会で「水風」を使って優勝されました。「水風」デッキにはどういったこだわりや思い入れがあるのでしょうか。
シェルク:実は僕、今まで『FF-TCG』をやってきて水属性を使ったデッキでした優勝したことがないんです。「Chapter」時代も「水雷」や「水単」を使ってきましたし。そういう意味では「水風」よりも水属性に思い入れがあって、積極的に使いたいなと思っています。そして「Opus」シリーズでは水属性と風属性が非常に相性がいいと感じていて、以前からずっと「水風」を使用しています。なので今回も自然と「水風」にしようと考えました。
――ひとくちに「水風」といっても多くのデッキパターンがあると思います。今回の「水風」はどういったところを意識して組んだのでしょうか?
シェルク:「Opus VI」環境になっての大きな変化は攻撃的なカードが増えたことです。今までの「水風」は【3-053C】《狩人》や【5-068L】《ヤ・シュトラ》のような除去耐性を持つカードを主力とし、それ以外のカードも【1-195S】《パイン》や【3-144L】《レナ》、【3-139C】《ナイト》など除去されてもアドバンテージを失いにくいもので固めて、序盤にバックアップを並べたあとはそれらのカードで盤面を押し返していくというタイプが主流でした。僕が「MASTERS2018」浜松大会で使ったものもそのタイプです。
水風:「MASTERS2018」浜松大会ver.
カードNo. | カード名 | 枚数 |
フォワード(22枚) | ||
【1-199S】 | 《パイン》 | 3 |
【3-053C】 | 《狩人》 | 3 |
【5-068L】 | 《ヤ・シュトラ》 | 3 |
【1-080H】 | 《バッツ》 | 2 |
【3-139C】 | 《ナイト》 | 3 |
【2-121H】 | 《アーシェ》 | 1 |
【4-133C】 | 《バイキング》 | 1 |
【4-123H】 | 《ガウ》 | 2 |
【3-144L】 | 《レナ》 | 1 |
【5-126L】 | 《暗闇の雲》 | 1 |
【2-147L】 | 《皇帝》 | 2 |
バックアップ(19枚) | ||
【1-088C】 | 《弓使い》 | 3 |
【2-050H】 | 《アルクゥ》 | 3 |
【1-089H】 | 《リュック》 | 2 |
【2-071R】 | 《リュック》 | 1 |
【1-083H】 | 《マリア》 | 3 |
【1-176H】 | 《ユウナ》 | 3 |
【4-126R】 | 《剣術士》 | 3 |
【4-134C】 | 《ブラネ》 | 1 |
召喚獣(6枚) | ||
【3-071H】 | 《輪廻王カオス》 | 3 |
【1-074R】 | 《シルフ》 | 2 |
【5-062L】 | 《ディアボロス》 | 1 |
モンスター(3枚) | ||
【4-132R】 | 《トンベリーズ》 | 2 |
【4-124C】 | 《グリーンドラゴン》 | 1 |
もちろん当時から【4-064L】《デブチョコボ》を中心とした《チョコボ》たちで序盤から積極的に攻めていき、それを水属性の召喚獣でフォローしていくタイプも存在しましたが、僕は堅実なデッキが好きで、上にあげたようなディフェンシブなかたちにしていました。しかし「Opus VI」では【6-044L】《ジタン》や【6-123L】《ミンウ》のようなアタックすることでアドバンテージを稼げるカードが登場します。
特に【6-044L】《ジタン》は【3-127R】《エーコ》でサーチができたり、【1-178R】《リヴァイアサン》や【1-176H】《ユウナ》などのフォワードを手札に戻す効果とシナジーがあるなど「水風」で使うにはもってこいのカードだったので、彼をフィーチャーし、その力を最大限活かせるようにしたのが今回の「水風」デッキです。
水風:「MASTERS2018」伊勢崎大会ver.
カードNo. | カード名 | 枚数 |
フォワード(22枚) | ||
【3-049C】 | 《イザナ》 | 3 |
【5-060C】 | 《チョコボ》 | 3 |
【4-063C】 | 《チョコボ》 | 2 |
【1-075C】 | 《チョコボ》 | 1 |
【3-053C】 | 《狩人》 | 1 |
【5-068L】 | 《ヤ・シュトラ》 | 1 |
【6-044L】 | 《ジタン》 | 3 |
【4-133C】 | 《バイキング》 | 3 |
【6-126R】 | 《レイラ》 | 3 |
【5-126L】 | 《暗闇の雲》 | 1 |
【6-130L】 | 《ニーズヘッグ》 | 1 |
バックアップ(18枚) | ||
【2-050H】 | 《アルクゥ》 | 3 |
【1-088C】 | 《弓使い》 | 2 |
【6-046C】 | 《シド・ヘイズ》 | 2 |
【4-064L】 | 《デブチョコボ》 | 2 |
【4-126C】 | 《剣術士》 | 3 |
【4-134C】 | 《ブラネ》 | 2 |
【3-127R】 | 《エーコ》 | 1 |
【1-176H】 | 《ユウナ》 | 3 |
召喚獣(10枚) | ||
【3-071H】 | 《輪廻王カオス》 | 3 |
【5-062L】 | 《ディアボロス》 | 2 |
【1-178R】 | 《リヴァイアサン》 | 3 |
【6-125R】 | 《リヴァイアサン》 | 2 |
――【6-044L】《ジタン》を使ううえで意識された点はどこでしょうか?
シェルク:【6-044L】《ジタン》のアビリティをしっかり使えるように召喚獣は【6-044L】《ジタン》との相性がいいものを選びました。特に【1-178R】《リヴァイアサン》と【6-125R】《リヴァイアサン》はできるだけ多く投入できるようにデッキのスペースを調整しました。【6-044L】《ジタン》のアビリティは強力ですが、もともとのパワーが7000とあまり高くないのでアタックするためには後押しが必要になります。
水属性のバウンスは【6-044L】《ジタン》の効果と合わせることで、
【6-044L】《ジタン》が攻撃しオートアビリティを発動する
→アビリティの解決前に【1-178R】《リヴァイアサン》か【6-125R】《リヴァイアサン》を召喚し相手のフォワードを手札に戻す
→手札に戻ったフォワードを【6-044L】《ジタン》のオートアビリティで捨てさせる
というように実質除去として使えます。これがデッキのメインギミックとなるので同様にフォワードを手札戻せる【1-176H】《ユウナ》と合わせて合計8枚採用しました。
また【6-125R】《リヴァイアサン》は手札に戻すモードだけでなく、召喚獣からのダメージを無効にするモードで【6-044L】《ジタン》を守ることができ、さらにアクションアビリティを無効にするモードも便利で1枚で対策できるカードの幅が広い、とても魅力的なカードでした。
風属性の【3-071H】《輪廻王カオス》も【6-044L】《ジタン》が攻撃しオートアビリティを発動し、相手の手札からフォワードを捨てさせる、あるいは手札にフォワードがないことを確認してから召喚することでデメリットを気にせず使えます。
――【6-044L】《ジタン》以外のフォワードはどういったところを意識して採用したのでしょうか。
シェルク:攻撃的なデッキということで、序盤からフォワード展開していけるようになるべくコストが軽いフォワードを選びました。【3-049C】《イザナ》や【6-126R】《レイラ》【4-133C】《バイキング》は、初手から積極的にプレイしていけるカードですし、【4-064L】《デブチョコボ》もバックアップとフォワードを同時に展開できるので非常に強力です。コストの軽いフォワードを多く採用することで【6-044L】《ジタン》がいなくても相手のブロッカーを手札に戻して一気にダメージを与えるという攻め方ができます。
――コストパフォーマンスの面でいうと【6-050C】《チョコボ》や【5-061C】《チョコボ士》もかなり強力に感じますが、これらは採用されなかったんですね。
シェルク:彼らも非常に強力ではあるのですが、今回僕が《チョコボ》たちをパワーの高いアタッカーとして使いたかったんです。【6-050C】《チョコボ》などはパワーよりも展開力を生かした盤面上のアドバンテージ獲得が得意なカードです。そういったカードは【6-126R】《レイラ》【4-133C】《バイキング》と役割がかぶることもあり、採用にはいたりませんでした。序盤から少ないバックアップで動くプランもあるので、手札がないときに引いてプレイしにくいカードはなるべく採用しないよう心がけました。同様の理由からバックアップがそろうまでパフォーマンスを発揮しきれない【3-133L】《レナ》【3-139C】《ナイト》も採用しませんでした。
――バックアップをしっかり置かないで戦うのは、いままでの「水風」ではあまり見ないプレイですね。
シェルク:【6-044L】《ジタン》はフィールドに出るだけで相手に除去か手札を捨てるかを迫れるカードなので1ターン目から出すことも多いです。同時に1枚バックアップを置いておけば相手がブロッカーを出してきても【1-178R】《リヴァイアサン》や【6-125R】《リヴァアサン》、【3-071H】《輪廻王カオス》などを使ってブロッカーをどかしてアタックできるので最初に来た手札によって「バックアップを並べるか」「フォワードを並べるか」「【6-044L】《ジタン》と召喚獣で攻めるか」を選択する感じです。
――攻撃的な選択肢を取れるデッキにしたことで、新たに問題となったことなどはありましたか。
シェルク:攻めに回るぶん防御面が手薄になりやすく、ブロッカーとして使えるカードが少ないことがこのデッキの弱点です。ブロッカーとして戦闘できるのが【6-044L】《ジタン》か【3-053C】《狩人》【5-068L】《ヤ・シュトラ》くらいしかないため防御に関してはもろい部分があります。そのためEXバーストを持っているカードをなるべく多く採用しました。フォワードを展開して攻めていくと手札を維持することは難しく、また「氷単」のような手札破壊を取り入れているデッキに対してもスキができやすいです。切り返しに使うカードをいつでも構えていられるとは限らないので、そういった状況はある程度割り切って防御はEXバーストに頼ろうと考えていました。
――強力なEXバーストを多く採用できるのも「水風」の魅力の一つですね。
シェルク:そうですね。また【4-134C】《ブラネ》と【6-046C】《シド・ヘイズ》は同じテキストですが、EXバースト率を上げつつ水属性と風属性がどちらからでも不足している色をサーチできるようになったのも今回「水風」の強化されたポイントの一つだと思います。ただしバックアップに関してはEXバーストを多く採用した関係でフィールドに出したあとはCPを生み出す以外の役割を持てないカードも多く、バックアップの柔軟性については課題が残ったかなと感じています。
――ブレイクゾーンに置けるアビリティを持つバックアップは【4-126R】《剣術士》と【1-088C】《弓使い》だけですね。
シェルク:ほかの候補にはブレイクゾーン対策になる【6-047C】《白魔道士》も考えましたが、このデッキにはあまり合っていないと感じました。【4-126R】《剣術士》はこのデッキでは復活させるカードの選択肢が豊富にあるので文句なく採用、【1-088C】《弓使い》は「水風」の同型対戦で相手の【2-050H】《アルクゥ》をブレイクしてパワーに差をつけるという重要な役割があったので2枚採用しました。
――1枚のみ採用のカードも特徴的な印象を受けます。【5-126L】《暗闇の雲》は複数枚採用されることが多いカードという印象がありますが、なぜ1枚のみ採用なのでしょうか。
シェルク:【5-126L】《暗闇の雲》自体は非常に強力なカードですが、5コスト以上のカードは【5-062L】《ディアボロス》や【2-026L】《ヴェイン》といった環境で主流となっているデッキに入っているカードに弱いため、なるべく数を減らそうと思い1枚のみの採用にしました。「Opus V」環境では【2-147L】《皇帝》を除去したかったので複数枚採用していましたが「Opus VI」環境では【6-130L】《ニーズヘッグ》の登場などの理由もあってまだ【2-147L】《皇帝》の採用率は高くないため対抗手段を減らしても大丈夫だろうと判断しました。
ーー【5-068L】《ヤ・シュトラ》が1枚というのも珍しい気がします。
シェルク:生き残りやすいカードという意味では【3-053C】《狩人》と役割がかぶるため1枚はサーチができて【4-126R】《剣術士》で使いまわせる【3-053C】《狩人》、1枚は召喚獣に対して強い【5-068L】《ヤ・シュトラ》というふうにわけて採用しました。この2枚に関しては環境を見て調整していけるところだと思います。また先ほどお話ししたように【6-044L】《ジタン》のために召喚獣をたくさん入れる必要があったためスペースを確保できなかったという理由もあります。
――【6-130L】《ニーズヘッグ》は強力ですが、特に後者は【6-050C】《チョコボ》や【5-061C】《チョコボ士》の不採用理由である「手札がないときに引いても使えない」カードにも思えます。
シェルク:【6-130L】《ニーズヘッグ》と【5-062L】《ディアボロス》は「MASTERS2018」横浜大会までは入っていないカードだったんですが、「MASTERS2018」横浜大会で優勝者のハラさんと対戦したとき、そのカードパワーの高さに投入していなかったことを後悔したカードだったので今回は投入しました。確かに手札が切れやすいこのデッキでは【6-130L】《ニーズヘッグ》はトップデッキしてもすぐに出せないシーンも多いカードでしたが、このカードは1ターン待ってプレイしても十分な効果があると感じたため採用しています。【5-062L】《ディアボロス》もバックアップを置かずに戦うことがある以上、常に最高のパフォーマンスを出せるわけではありませんが、バックアップをしっかり並べる展開では強力なので2枚投入しました。
◆独特なプレイヤーネームの由来と横浜勢の強さを聞く
――「シェルク無限回収中」というプレイヤーネーム、名は体を表すという感じでわかりやすいですが、結構独特というかなかなか珍しいと思います。
シェルク:『FF-TCG』って「Chapter」時代は本名で大会に参加できたんですが、途中からそれができなくなったんです。それでプレイヤーネームどうしようかなと考えたときにちょうど《シェルク》を無限回収してたので、それをプレイヤーネームにしたらみんな協力してくれるんじゃないかって思ってそのまま自分で名乗ることにしたんです。
――たしかに以前から《シェルク》を集めてらっしゃいましたね。
シェルク:僕はふだん横浜で『FF-TCG』を遊んでいるのですが、友人たちは結構その時の時事ネタとかで参加することが多いですね。閣下(※横浜のプレイヤー。「Asia Grand Championship」大阪大会で優勝し2年連続の日本代表プレイヤーとなった)もこの前「シンガポール勢」ってプレイヤーネームで参加してましたし、「モーグリ大好きさん」も各種《モーグリ》を無限回収してますしね。ちなみに僕はたまに「レフィア」って名前で参加したりします。
――皆さんメッセージ性が強いですね。今回はいつもと違い「百式精英」という名前でしたが、これはどういう意味なのでしょうか?
シェルク:これは中国語で「ツヴィエート(※《シェルク》のジョブ)」を指していて、この間横浜勢の友人からお土産で中国語版の【2-035H】《シェルク》をもらったので、それにちなんで使いました。
――コミュニティの仲の良さを感じされるエピソードですね。普段はどのように練習されたりしているのですか?
シェルク:ありがたいことに、僕たちのコミュニティには閣下がいるので、彼と対戦することが何よりも練習になってます。いつも「最強デッキができたよ」と言ってデッキを持ってきてくれるので、それに勝ち越せるデッキを探して大会に持ちこむことが多いです。実際、彼は今日本でもっとも強いプレイヤーの1人だと思っているので、彼に勝ち越せるデッキであれば自信を持って大会に臨むことができますし、彼に勝てないデッキは大会でも彼に負けるデッキなので持ち込めないですね。
――もし勝ち越せるデッキが見つからなかったときはどうするんですか?
シェルク:そのときは彼のデッキを自分なりにアレンジして使います。それで勝てないと「そのまま使えばよかったのに」って言われてしまうのでプレッシャーもありますが(笑)。
――それだけチームメンバーとして信頼されてるんですね。
シェルク:もちろん全員が僕のようなスタイルではありませんが、彼の強さが僕たちの強さにつながっていると思います。
――では、最後に「MASTERS2018 Final」に向けての意気込みを聞かせていただけますか。
シェルク:去年の「世界選手権」は、横浜勢からは閣下1人の参加で寂しい思いをさせてしまったので、今年は「MASTERS2018 Final」で優勝して、閣下とともに「世界選手権」に臨みたいと思います!
――ありがとうございました。
◆終わりに
というわけで、今回は「MASTERS2018」浜松大会と伊勢崎大会を制したシェルク無限回収中さんのインタビューをお送りしました。
お話を聞いてどんな環境でも得意のデッキを最適化して戦い抜く「水風」への強いこだわりと、横浜コミュニティの熱い友情を感じさせられました。
今後も《シェルク》の無限回収は継続するそうなので、僕も機会があればぜひ協力したいと思います。
残す「MASTERS2018」も東京大会、名古屋大会、大阪大会の3大会となりました。
いずれも2日間開催で、フォーマットも構築戦だけでなく、チーム構築戦、作品単と普段とは一風変わった『FF-TCG』を楽しめるので、最後まで楽しんで参加したいなと思います。
それではまた、次の記事でお会いしましょう!