【FF-TCG】「MASTERS2018」THE AFTER優勝者が語るシールド戦の奥深さとドラフトにおける主張の重要性

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS2018」THE AFTERで優勝した、しどさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに

こんにちは!『FF-TCG』プレイヤーのたるほです。

10月6日、7日の2日間にわたって東京のスクウェア・エニックス本社で「MASTERS2018 FINAL」「MASTERS2018 THE AFTER」が開催されました。

「MASTERS2018 FINAL」は構築戦、「MASTERS2018 THE AFTER」はシールド戦とブースタードラフト戦の混合フォーマットで行なわれ、「MASTERS2018 FINAL」ではハリガイさんが、「MASTERS2018 THE AFTER」ではしどさんがそれぞれ優勝し、11月23~25日にロンドンで開催される世界選手権への出場権を獲得しました。

「MASTERS2018 THE AFTER」優勝のしどさん。

ここでは今大会で見事に日本代表の座をつかみ取ったしどさんのインタビューをお届けします。
構築戦ではいつも独特なデッキ構築を披露してくれるしどさんが今回のシールド戦、ブースタードラフト戦をどういう視点で見たのかをうかがってきました。

「MASTERS2018 FINAL」で優勝したハリガイさんに「水単フースーヤ」についてうかがった記事はこちらからご覧ください。
同じ「Opus VI」環境のシールド戦、ドラフト戦については「ASIA Grand Championship2018」横浜大会で優勝したひこにゃんさんのインタビューと合わせて読むのもオススメです!

◆第一印象をくつがえした【カテゴリ(FFTA2)】のシールド戦での強さ

しど
大阪のプレイヤー。もともとは関東を拠点に活躍していた。
『FF-TCG』ではいろいろなカード、デッキを使って楽しむことが大事であると考え、「同じデッキは大会に持ちこまない」というのがポリシー。
好きな『FINAL FANTASY』シリーズは『FINAL FANTASY X』。特に《ユウナ》への思い入れが深いらしい。

 

――「MASTERS2018」THE AFTER優勝おめでとうございます。
しど:ありがとうございます。「Opus VI」環境のシールド戦やブースタードラフト戦は自分にとって不慣れなフォーマットだったので、自分でも「まさか優勝してしまうとは……」と驚いています。

――今回は予選ラウンドがシールド戦、決勝ラウンドがブースタードラフト戦という2フォーマットでの戦いだったわけですが、まず予選ラウンドのシールド戦を振り返って印象に残っていることなどはありますか。
しど:「Opus VI」環境のシールド戦では【6-001C】《ウォード》imageと【6-077R】《ヒュー=ユルグ》imageの【ジョブ(戦士)】のシナジーを使いフォワードのパワーを高くして戦えるカードプールが理想的だと考えていました。しかし、予選ラウンドでは土属性の枚数が少ないカードプールを引いてしまったのでこの戦略はあきらめて、除去が優秀そうなこの火、雷、氷の3属性でデッキを作ることに決めました。

しかし、除去は多かったもののシールド戦におけるデッキの柱となるフォワードどうしの戦いに向いているカードが少なく、カードプールを見た第一印象はかなり苦しい内容だなと感じたのが正直なところです。

――そんななか、予選ラウンドは6勝1敗で決勝ラウンドへ進まれましたが、どういったところに勝因があったのでしょうか。
しど:最初は苦しいと感じたものの、最初に感じた以上に除去が多く、また強力だったことが勝因だと思います。特に【5-113C】《バスタード》imageと【6-020H】《モンブラン》imageを2枚ずつ引けたのは本当に大きかったです。この環境のカードプールには【カテゴリ(FFTA2)】のカードがかなり多いため【6-020H】《モンブラン》imageは高いダメージを与えられます。これに【5-113C】《バスタード》imageと合わせることで大抵のフォワードを倒せたので、たとえパワーが低くても【カテゴリー(FFTA2)】のフォワードというだけでカードにバリューが生まれ、どのカードも見た目のスペック以上の活躍をしてくれました。

予選ラウンドではひこにゃんさんに負けてしまった試合を除いて、全試合で【5-113C】《バスタード》image【6-020H】《モンブラン》imageをそろえて勝つというパターンの試合運びができましたし、この2枚は間違いなく僕のデッキのMVPだと思います。

――フォワードを除去する手段が限られるシールド戦でくり返し除去ができるアクションアビリティは非常に強力な要素ですね。
しど:また【6-097C】《忍者》imageや【5-117C】《ラムウ》imageのような合わせ技で除去ができるカード、【6-023R】《エミナ》imageのようにダメージレースをひっくり返せるカードもあり、フォワードのパワーに頼らずゲームをできるカードも多かったです。全体的に低コストのフォワードがほとんどだったので相手の除去による被害が少なく、コストが軽いぶん除去にリソースを割くことができて【6-020H】《モンブラン》imageや【5-113C】《バスタード》imageの起動コストが負担にならなかったのも大きかったです。

『FF-TCG』では対戦相手へのダメージを与えるのはフォワードのパワーには関係ありません。今回のカードプールは「フォワード以外の要素で盤面を作ってゲームをコントロールできる」という実は構築戦のように強力なものだったんだなと、いま振り返るとそう感じられます。【カテゴリ(FFTA2)】のフォワードもしっかり枚数があり、【6-020H】《モンブラン》imageをサーチできる【5-043H】《ハーディ》もいたので安定してデッキのキーとなるシステムをそろえられるようになっていたため、第一印象こそよくなかったですが実際は70点か80点くらいの恵まれたカードプールだったと思います。また【6-088L】《エスティニアン》imageや【6-130L】《ニーズヘッグ》imageのような1枚でゲームを決められる強力なカードを相手に出されなかったという幸運もあると思います。

◆1パックの目の布石が実ったブースタードラフト戦

――続いて決勝ラウンドのブースタードラフト戦についてお聞きします。しどさんは氷水の2属性でデッキを組んでいましたが、これは事前にピック方針を決めていたのでしょうか。
しど:ピックの方針に関しては特に決めておらず、回ってきたカードを使ってデッキを組もうと思っていました。1パック目の1ピック目が【6-025R】《カヅサ》imageだったので、メインにするかサブにするかはとにかく、とりあえず氷属性を使うことを決めました。続く2ピック目で右隣のaaaaさんから【6-025R】《カヅサ》imageが流れてきたので氷属性はやらせてもらえそうだと思い、氷属性のカードの優先度を上げて「氷属性をやるぞ」と主張していくことにしました。

 

――序盤から【6-025R】《カヅサ》2枚は幸先がいいですね。水属性にはどのタイミングから参入を決めたのでしょうか。
しど:1,2ピック目がバックアップだったので、3ピック目はとにかくフォワードを取ろうというのは決めていたんですが、ここで【6-107R】《アルティミシア》imageが流れてきました。僕のなかで【6-107R】《アルティミシア》imageは非常に評価の高いカードだったので、このレベルのカードが流れてくるなら水属性はあまり人気がないのかなと思って水属性のピックを始めました。ただ、それ以降フォワードがほとんど流れて来なくて氷、水属性のバックアップばかりピックすることになって結果的に1パック目ではフォワードは4枚程度しか取ることができず「これはまずいな……」という気持ちになっていました(笑)。

 

――1パック目ではまだデッキの最終的なかたちが決まらないため、ほかの属性をやる可能性を考えて3~4属性目のカードをピックすることもあるかと思いますが、たとえフォワードが取れなくても2属性に絞るようにしたのでしょうか。
しど:できるだけ2属性で組みたいという気持ちが強くて、他の属性のカードを取るくらいだったら属性を絞って左隣の閣下さん、さらにその隣のenchabiさんに向かって「水氷を取ってますよ」とサインを送ることを意識しました。そのおかげでカードの流れが逆になる2パック目では水、氷属性のカードがしっかり回ってきて、ここで不足していたフォワードを集められてデッキが形になってきました。
3パック目は氷属性の流れがかなり悪くなり、ここでもしかしたらaaaaさんが氷属性を集めているのかもしれないなと思いながら水属性のカードを取っていきました。ここでちょっとピックが水属性に偏ってしまったのですが、4パック目でしっかり氷属性のカード流れてきてくれて、最終的に氷水の2属性でデッキを固めることができました。

――1パック目に氷と水を強く主張しておくことで2、4パック目でしっかりカードを回してもらうという作戦が功を奏したわけですね。
しど:うまくいったらいいなと思っていましたが、閣下さんとenchabiさんが自分のシグナルをしっかり受け取ってくれたのも大きかったと思います。同卓する相手が強いからこそ、お互いに足を引っ張らないようにできたというか。

――今回のブースタードラフトでは対戦前に相手のデッキをすべて確認する時間がありました。これについてはどう感じましたか。
しど:自分にとってはとてもプラスに働いてくれたと思います。このデッキチェックの時間は1分しかなかったので人によってどういった要素をチェックするかは異なると思いますが、僕はこの時間で相手の召喚獣を全部おぼえるようにしました。

――召喚獣に注目した理由はなんでしょうか。
しど:ゲームをしていて一番予想しにくい要素だからですね。構築戦だとデッキごとに入っているであろうカードはある程度予想できますが、ブースタードラフトでは想定外のカードが飛び出してきて負けてしまうこともあります。今回、決勝ラウンドはひこにゃんさん、kurosawaさん、閣下さんと対戦したのですが、ひこにゃんさん以外のデッキは戦闘に介入する召喚獣が少なく、何が入っているか全部おぼえられたので、相手のデッキに何が残っているのかカウントしながらゲームを進められました。逆に、僕のデッキには7枚の召喚獣があったので相手に読み切られず使えたというのも今回のルールではプラスに働いた要素だったと思います。

◆しどさんの『FF』愛とオリジナルデッキへのこだわり

――しどさんは『FF-TCG』を「Chapter」時代から遊んでいますが、しどさんは『FF』シリーズも当時からかなりのタイトルを遊んでいた印象があります。家庭用ゲームの『FF』シリーズへの思い入れなどはありますか。
しど:もともと父親が『FF』シリーズが好きで、家にはナンバリングタイトルや外伝的な作品を含めてたくさん『FF』がありました。そのなかで僕が最初に遊んだのは『FINAL FANATSY X』でした。ストーリーがよくて当時から今にいたるまでお気に入りのタイトルになっています。それ以外の作品は高校生になるまで手を付けていなかったのですが、高校に上がってから家にあるほとんどの作品を遊びました。「Opus VII」で収録される『FINAL FANTASY LEGENDS』や『FINAL FANTASY CRYSTAL CHRONICLES』シリーズもやってるんですが、どちらも非常におもしろいのでカード収録を機に遊んでくれる人が増えたらいいなと思っています。カードゲームの話はもちろんですが、原作となる『FF』シリーズの話をするのも好きなので。

――しどさんはプレイの拠点が関東から関西に移りましたが、普段の調整はどのようにやっているのでしょうか。
しど:基本的に遊び友達のプレイヤーとLINEを使って対戦する機会が多いですね。結構、人見知りするのであまり店舗に行って大会には出たりはしていません(苦笑)。実戦という意味ではよく1人トーナメントを開いて自分のデッキどうしで戦わせています。友達がいない人みたいでちょっと恥ずかしいんですけど、4~8個のデッキを用意して自分vs自分で総当たりやトーナメントの大会を開催して、その中でデッキの使用感など確認していく感じですね。

――デッキを1人で回すのは多くのプレイヤーがやっていることだと思いますが、1人でそれだけの数のデッキを回して模擬対戦をくり返しているんですね。手の内も思考も全部自分のものだとプレイに影響があったりはしませんか?
しど:どちらかを意図的に勝たせたいみたいに思うと差は出ると思いますけど、基本的にはフラットな気持ちでやるので、詰将棋を同時に解いているような感覚ですね。それだけが調整方法ということではなくてあくまで暇つぶしというか、遊びの一環のようなものですね。

――「MASTER2018」THE AFTERでしどさんが日本代表に入ったことで今年の代表選手がそろいましたが、調整などは一緒にされる予定ですか?
しど:もちろんご一緒できるのであれば参加したいなと思っています。普段1人で調整してるのでそういう環境で調整できるのはありがたいですね。ただ1つ問題があって、僕は自分が使いたいデッキしか使わないタイプの人間なので、調整相手として少し物足りないんじゃないかと思っていて。

――たしかに普段から独特のデッキを使っていますよね。
しど:これは自分ルールなのですが「僕は同じデッキで大会に出ない」っていうのと「オリジナルデッキしか使わない」というのを決めていて、それにそって今まで『FF-TCG』で遊んできたんです。まだ自分が知らないデッキを使いたいなと思っていて、そういう意味でのオリジナルデッキというか。たとえば自分が知りさえしなければ会場中のみんなが同じデッキを持っていてもいいんですが、とにかく常に新鮮なデッキを使いたい、またそういったデッキと対戦したいという気持ちが強いです。なので、先ほど言ったように僕は皆さんと対戦するのを楽しんで、かつ実のある練習にもなると思いますが、僕が他の方のスパーリングパートナーになれるかということを考えるとどうだろうかという気もしています。

それと、私だけ関西に住んでいるため、物理的に結構距離があるので、顔を合わせての調整というのは難しいかもしれません。こればかりは仕方のないことなので可能な範囲で日本代表の皆さんと協力しつつ、普段遊んでいるメンバーで調整を重ねていきたいと思っています。

――では最後に世界大会への意気込みを聞かせていただけますか。
しど出場する以上は優勝以外の目標はありません。もちろん海外のプレイヤーと対戦すること、彼らが持ち込んでくるだろうまだ見ぬデッキと戦うことは楽しみではありますが、目標は優勝のみです。まあ、百歩譲って準優勝でもいいですかね(笑)。

――強気なのか弱気なのかわかりませんが、同じコミュニティのプレイヤーとして応援させてもらいます。ありがとうございました。

◆終わりに

「MASTERS2018」THE AFTERで優勝し、最後の「世界選手権」への切符を手に入れたしどさんへのインタビューをお届けしました。
しどさんが世界を相手にどんなデッキを持ち込むのか、友人としても、いち『FF-TCG』プレイヤーとしても楽しみです。

日本代表選手も出そろい、明日にはいよいよ「Opus VII」環境が始まります。
「世界選手権」では日本代表のみなさんには優勝目指してがんばってほしいですね。

そして日本では「第2期名人戦」が始まります。
日本代表選手の応援だけでなく、僕を含めた『FF-TCG』プレイヤー全員が忙しい新環境が始まりますね。
僕も“第二期名人”を目指して各地の大会に出場していきたいと思います。
会場でマッチングされた際はよろしくお願いします!

それではまた、次回の記事でお会いしましょう。