『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今回は「Asia Grand Championship2018」横浜大会優勝者・ひこにゃんさんのインタビューをお届け。「Opus VI」環境のシールド戦、ブースタードラフト戦のテクニックは今週末の「MASTERS2018 THE AFTER」参加者にも役立つこと間違いなしです!
◆はじめに
みなさん、こんにちは。
『FF-TCG』プレイヤーのたるほです。
9月29日に「Asia Grand Championship 2018」横浜大会が開催されました。
予選ラウンドがシールド戦、決勝ラウンドがブースタードラフト戦という普段の構築戦とは違った実力が求められるフォーマットで行なわれ、関東の古豪プレイヤーであるひこにゃんさんが優勝を果たし、11月にロンドンで開かれる世界選手権への切符を手にしました。
ここでは、ひこにゃんさんに大会後に行なったインタビューの模様をお届けします。
「当たって砕けろ」の精神でのぞんだと謙遜しながらも、各所で光った戦略的な判断についてお話を聞きました。
◆予選ラウンドのシールド戦の手ごたえは?
――「Asia Grand Championship 2018」横浜大会優勝おめでとうございます。見事に世界選手権への道を開かれましたね。
ひこにゃん:ありがとうございます。優勝できるとは思っていなかったので、自分でも驚いています。
――まず、予選ラウンドから振り返っていただこうと思いますが、シールド戦のカードプールはいかがでしたか。
ひこにゃん:火・土・雷のいずれか、あるいは複数を軸をしたデッキが組めれば理想的だったのですが、今回はそのあたりのカードにはあまり恵まれませんでした。そのかわりに氷属性のカードが充実していたので氷属性をメインにして土・雷でサポートするかたちになりました。
――氷属性をメインにするメリットとデメリットにはどういうものがあるのでしょうか。
ひこにゃん:まずメリットは「相手のフォワードと戦闘しなくてもいい」ということですね。【6-030C】《軍用クァール》や、レアリティの高いカードになりますが【6-027L】《クジャ》、【5-029L】《オーファン》のようなカードにより、相手のブロッカーを突破することにあまり頭を悩ませなくていいのは氷属性の長所です。
また、シールド戦やブースタードラフト戦は3コストでパワー7000、4コストでパワー8000のフォワードが戦いの軸となりますが、氷属性には【6-033H】《スコール》と【6-036C】《セリス》という2コストでパワー8000になれるフォワードがいることもポイントだと思います。
――ダルにすることでフォワードどうしのぶつかり合いをさけられて、かつコストパフォーマンスにすぐれるフォワードもいるということですね。逆にデメリットは何でしょうか。
ひこにゃん:デメリットは組み合わせ前提のカードが多いということですね。たとえば【6-040H】《ラグナ》は、カードプールに【6-033H】《スコール》がいるのといないのとでは強さに雲泥の差がありますし、今回は氷属性がメインだったからあまり気になりませんでしたが、3属性目にタッチするような運用では【6-036C】《セリス》もその能力を活かせません。
――今回のデッキのキーとなったカードは何ですか。
ひこにゃん:【6-025R】《カヅサ》ですね。
バックアップを増やしながら除去ができて、かつフィニッシュ手段にもなるという非常に強力なカードです。今回、シールド戦の練習は2回くらいしかできなかったのですが、そのときから【6-025R】《カヅサ》の強さを感じていて、今回もカードプールにいてくれたので氷属性をメインにしようと決めました。もちろん【6-040H】《ラグナ》と【6-033H】《スコール》がそろっていたり、【6-036C】《セリス》も有効に使えそうだったりというのも理由です。
――こうして見るとデッキに入っている氷属性のカードはどれもいい仕事をしてくれそうなものばかりですね。
ひこにゃん:カードプール全体で【5-145L】《ヴァン》や【5-075L】《ウォル》のような爆弾カードを引けなかったので組んだときの感触はそこまでよくなかったのですが、実際にはさきほども言ったようにフォワードとの戦闘をさけたり、あるいはアビリティによる強化を背景に強気にアタックできたりといいデッキになっていたなと思います。
◆狙い通りの展開となったブースタードラフト戦を振り返る
――決勝ラウンドはブースタードラフト戦でしたが、事前にピック方針などは決めていましたか。
ひこにゃん:今回、台風の影響で本来翌日行なうはずの決勝ラウンドがその日に行なわれることになって、さらに2本先取のゲームが1本勝負になったこともあって「当たって砕けろ」的なイメージでのぞみました。予選ラウンドを突破したら夜に戦略を考えよう、くらいに思っていたので(笑)。
――では、まったくのノープランだったということでしょうか。
ひこにゃん:一応、シールド戦でも強かった【6-025R】《カヅサ》はピックの優先順位を高めにしようと考えていました。シールド戦と同じで火・土あたりが人気属性になると思ったので、そこでほかのプレイヤーとピックがかぶるのはさけようと思いました。なので氷・水あたりを中心にピックを進められたらいいなというのが狙いでした。
――人気属性をさけるのはわかりますが、自分の狙いを氷・水に絞った理由は何でしょうか。
ひこにゃん:「ほかのプレイヤーのピック優先順位が低そう」というのが理由です。氷属性は先ほども言ったように「カードの組み合わせ」も大事になるので、堅実なプレイヤーはそういったリスクをさけてくるかなと思いました。水属性に関してはデッキのベースとなるようなコモンカードが【6-114C】《神殿騎士》と【6-120C】《ナイト》くらいなのでこちらがピックの優先順位を上げれば「水属性を取っているプレイヤーがいる」と主張できるだろうと考えていました。
――徹底的に他プレイヤーとの競合をさけていったんですね。
ひこにゃん:火や土といった人気の属性はどうしても競合しがちになるので、そこに割って入っていっても「先に強いカードにたどりつけたか」といった運の要素が強くなってしまうと思っていたんです。それだったらちゃんと空いている属性を見つける、あるいは作り出すことでデッキパワーを向上させて真っ向勝負で勝ちたいと考えていました。
――完成したデッキがこちらですね。
ひこにゃん:氷属性を中心にピックをするという当初の目的は果たせたかなと思います。ただ、途中で【6-075R】《タイタン》をピックしたのですが、ここからもう少し土属性のカードの優先順位を上げたほうがよかったというのが反省点です。
氷・水のカードを取ることに夢中になっていて、最終的に氷属性なのにデッキに入っていないカードが出てきてしまったので、もう少し土属性のカードを取ることを意識できていればよかったです。2パック目くらいまで土属性のいいカードがあまり流れてこなかったので「あとでいいカードが来たら取ろう」くらいに考えていたんですが、3~4パック目でもやっぱり土のカードは流れてこなくて(笑)。選り好みをせずにもうちょっと土属性のピック順位を上げておくべきでしたね。
――代わりに【6-025R】《カヅサ》は3枚も取れています。
ひこにゃん:3枚はちょっと多すぎでした(笑)。2枚までは予定どおりだったのですが、3枚目が流れてきたときにほかに取りたいカードがなくて取ってしまいました。そのおかげで相手に使われなかったと考えればいいのかなと。
――実際にデッキが完成したときの感触はいかがでしたか。
ひこにゃん:フォワードのパワーがちょっと低くて、そこは心配でした。パワー9000のフォワードがいないんですよ。しかし実際は【6-030C】《軍用クァール》がすごく強くて、相手のパワーを気にすることなくどんどん攻められました。フォワード化するコストが0なので、常にCPを残しておきたい【6-036C】《セリス》とも相性がよくて、とても使いやすかったです。
――今回は「当たって砕けろ」の精神でブースタードラフト戦にのぞんだと言っていましたが「氷や水をやる」ということ以外にブースタードラフト戦全体で意識していたことなどはありますか。
ひこにゃん:除去>メイン属性のフォワード>フォワード>バックアップという順番を意識していました。ブースタードラフト戦では相手の強力なフォワードに対処できないとそれだけで負けてしまうので、まず除去手段の確保を目指しました。今回で言えば【6-025R】《カヅサ》ですね。
――バックアップの優先順位は最後なんですね。
ひこにゃん:13枚くらいは取りたいと思っていましたが、バックアップは3~4パック目でたくさん流れてくるのでそこまで意識してはいませんでした。すでに【6-025R】《カヅサ》も複数取っていましたし。
――13枚という数字はどんな理由でしょうか。
ひこにゃん:40枚でデッキを組むから1/3はバックアップにしたいという単純な計算です。ある程度枚数がないと除去やフォワードをコストにして展開しなくてはならなくなりますし、安定してCPを確保できるかもあやしくなってくるので。このあたりの配分は通常の構築戦とあまり変わらないですね。
あとはブースタードラフト戦では当たり前のことかもしれませんが「デッキの完成形をイメージする」とうことは常に意識していました。今回でいえば1パック目は氷属性のカードをほぼ決め打ち気味にピックして、2パック目以降で氷属性のカードが流れてくるように布石を打っていましたが、合間に【6-074C】《サボテンダー》や【6-075R】《タイタン》、雷属性の除去カードを取って2属性目、3属性目へのつなげ方を探っていました。水属性に関しても除去ではありませんが【6-110C】《幻術師》、【6-108R】《イシュガルド教皇》、【6-114C】《神殿騎士》といった「この属性をやるなら使う」レベルのカードはおさえておきました。
そうしているうちに雷属性のカードがまったく流れてこなくなったので雷属性はあきらめて、氷+水土という構成で行くことを決めました。これが2パック目の終わりくらいです。もともと土と雷という人気属性2つのカードをどっちもじゅうぶんに取れるということは考えていなくて、氷・水とそのどちらかの属性というかたちを意識していたのでこれは予想通りではありました。自分の一つ下の位置にいた閣下さんが風・雷を重点的にピックしていたということだったので、うまく住み分けができました。
あとはやはり空いている属性にいけたので、単純なカードパワーの面ではほかのデッキに負ける部分もあったかと思いますが、デッキ構築の自由度という点ではすごくいいデッキになったんじゃないかと思います。
◆世界選手権への豊富を聞く
――世界選手権への切符を手にしたわけですが、出場するにあたっての抱負を聞かせてください。
ひこにゃん:ビッグマウスかもしれませんが、優勝しちゃおうかなと思っています(笑)。
――ビッグな目標ですね! 世界のプレイヤーと戦うことに緊張などはありますか。
ひこにゃん:まだ海外に行ったことがないので、実感がわいてない部分がありますね。実際にパスポートを取ったりしたら変わるかもしれません。ただ、ほかのカードゲームを遊んでいて海外のプレイヤーとゲームをした経験はあるので、それを活かしてあまり緊張せず、のびのびと楽しんでやれたらなと思っています。
――トロフィーを持って凱旋してくるのを楽しみにしています。がんばってください!
◆終わりに
「Asia Grand Championship 2018」横浜大会優勝者、ひこにゃんさんのインタビューをお届けしました。
今週末に開催される「MASTERS2018 THE AFTER」は本大会と同じく予選ラウンドがシールド戦、決勝ラウンドがブースタードラフト戦となるので、今日聞いたことを経験値にして僕もがんばりたいと思います。
いよいよ「MASTERS2018」もクライマックス、そして今年の世界選手権にのぞむ残る2名の日本代表プレイヤーが決まります。もちろん自分がその1人になれたらいいなとは思いますが、それと同じくらい、誰が日本代表の座を射止めるのか楽しみでなりません。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!