『Shadowverse』の記事連載。今回はカードゲーマー編集部の面々による「Brigade of the Sky / 蒼空の騎士」アディショナルカードの使用感と再レビューをお届けします。
皆さん、こんにちは。
カードゲーマー編集部の編集(川)です。8月14日に「Brigade of the Sky / 蒼空の騎士」のアディショナルカードがリリースされてから2週間ほどがたちました。今回はこのアディショナルカードの実際の使用感や今後の使われ方などについて、編集部メンバーで座談会を行なったので、その模様をお届けします。
すでに環境の研究は進んでいますが、まだまだ多くの可能性を秘めているこれらのアディショナルカードの再レビューとなりますので、読んでいただいている方の参考になれば幸いです。
編集(川):カードゲーマー編集部の『Shadowverse』担当。ウィッチ、ネクロマンサー、ビショップ、ネメシスを主に担当。好きなフォーマットは2Pick。
編集(さ):編集部の『Shadowverse』担当その2。エルフ、ロイヤル、ドラゴン、ヴァンパイアを主に担当。
編集(松):編集部の『Shadowverse』好き。古いカードと新しいカードを混ぜられるアンリミテッドを中心にプレイしている。
◆ニュートラル
川:ニュートラルの追加カードは《革命の覇食帝・カイザ》ですね。
さ:バランスの取れたいいカードではありますが、構築環境で使うにはやや力不足という印象でした。今の構築環境はすごくコンセプトを突き詰めたデッキが多くていわゆるグッドスタッフと呼ばれる雑に強いカードを詰め込みました、というものはあまりないですよね。
松:ジェネラリストよりスペシャリストが求められる時代というか。
さ:2Pickではどうなんですかね。
川:2Pickではなかなかの好カードです。3/2/3という基本スペックを満たしているのでEPを使わずとも最低限の仕事はしてくれますし、盤面の取り合いが重要になるので《カイザの激辛料理》のバリューも構築より高くなります。
松:でも、このカードの重要性はほかにあって、それは「今後のリアルイベントでフードメニューになれる」ということだよ。来年の「シャドバフェス!」とかでは《カイザの薬膳料理》や《カイザの激辛料理》がフードメニューとして出るんじゃないかと思ってる(笑)。
川:ああ、それはありそうですね。
◆エルフ
川:まずレジェンドから見ていきましょう。《天喰らう異形》ですね。
松:《深き森の異形》の親戚だと思うんですが、こいつも「異形」というだけあって特異な性能をしてるよね。
川:実際、能力を発動させられるものなのでしょうか。
さ:2回発動で攻撃力が20になりますが、2回は難しいですね。1回であればそこまで難しくはなく、8PPあれば《妖精の使役者》+《フェアリー》4枚+《フェアリーウィスプ》2枚(途中で消滅させる)などでまかなえるので9ターン目に攻撃力13で出てこられます。強化できなくても9/6/4の疾走フォロワーなのでとどめの手段としては悪くありません。
川:最近の「アグロエルフ」は《翠嵐の斧使い》や《天禀の射手・メーテラ》といったカードを加えてややミッドレンジよりになっているので、この傾向が続けば《天喰らう異形》もいずれ投入されるかもしれません。では続いて《バーストショット》を見てみましょう。さ:エンハンスでプレイした際、体感だとおおよそ6~8ダメージくらい入ります。《フェアリーウィスパラー》、《妖精の調べ》、《茨の森》を1枚プレイするたびにダメージが1点増えると考えるとわかりやすいですね。
川:また《ウォーターフェアリー》を2枚プレイできていると、彼女が持ってくる《フェアリー》で+1点が狙えるので地味に重要ですよね。
さ:7点と8点では大きく違いますものね。
松:中盤でも《森の意志》のように働くのでスキのないカードではあるけど、エンハンス10というのが少し重いんだよね。せめてエンハンス9であれば少し違ったかも。ただ《フェアリー》をどのくらい手に入れられるかによって性能が変わるので、今後追加されるカード次第では化ける可能性を秘めているかなと。
◆ロイヤル
川:では続いてロイヤル。《鉄拳の獣戦士》からですね。
さ:こいつはうまくいったときとそうでないときの差が激しいカードですね。《高潔なる騎士・レイサム》を7ターン目に出せたときなどはものすごいことになりますが、当然《クイックブレーダー》を引いてしまうこともあるわけで。
松:低コストのフォロワーをニュートラル・フォロワーにしてサーチ先を絞るという使い方はどうなの?
さ:その使い方も考えられますが、ロイヤル自体がいまちょっと厳しい立場なので、戦力差を覆すキーにはなれないかなという印象です。
川:《飛空の剣士》はどうでしょう。2Pickでは場に残りやすいので、ほかのカードで強化する対象としてありがたいです。欲を言えば兵士・フォロワーならもっと強化しやすくなるのでよかったかもしれません。
さ:5コストのカードはライバルが強力なんですよね。それがこのカード最大の弱点だと思います。
松:《空の指揮官・セリア》や《ドラゴンナイツ》を押しのけての採用は難しいよね。かつて《闇を纏う暗殺者》というカードがあって専用のデッキも組まれていたけど、あのように相棒次第ではデッキになる可能性はあるんじゃないかな。
◆ウィッチ
川:では次はウィッチの《殺戮の魔女・ヴェスパー》です。これ「秘術ウィッチ」好きとしてはイラストも含めてイチオシのカードなんですが。
さ:ただ「土の印」を出すわけでなく《魔女の大釜》を出すというところが優秀です。アクセラレート時は2コストで1点+「土の印」+1ドローということになるので、すぐにドローができない点を除けば《マジックミサイル》以上の性能ということになります。
松:4コストで使ったときも《天輪のゴーレム》相当のカードパワーがあるから「秘術ウィッチ」系のデッキでは長くお世話になりそうだよね。
さ:オマケのように進化時の能力がありますよね。結構忘れて「進化したら味方死ぬじゃん!」ってなります(笑)。
川:このカードの扱いをちょっと難しくしている部分ですよね(笑)。スタッツが5/5であろうと7/7であろうと、EPを使った盤面の取り合いでは返しのターンに倒されてしまうことには変わりありません。なのでラストワード持ちとうまく組み合わせたいですが今のところいい相方がいないんですよね。《純心の歌い手》はちょっと力不足なので、今後の追加に期待です。次は《光魔法の教師・ミラ》ですね。
松:大胆なコスト軽減は《次元の魔女・ドロシー》をほうふつとさせるよね。このカードのおかげで「マナリアウィッチ」はメタの一角に食い込んだと思う。
川:彼女を使うときのポイントは、コスト軽減にマナリアのスペルを使いすぎないことです。《マナリアの黒竜》のためにマナリアのスペルは残しておきたいのでなるべく《術式の教師・ジル》などでコスト軽減をして、スペルは手に残しておきたいですね。
◆ドラゴン
川:続いてはドラゴン。まずは《終戦のドラグーン》ですね。
さ:これは単純に強いカードでもありますがドラゴンデッキのプレイングを少し変えたカードでもあると思います。
川:具体的にはどういうことですか?
さ:このカードによって《大いなる調停者・ゾーイ》をアクセラレートでプレイしなくてもよくなったんですよ。これまではアクセラレートで《大いなる調停者・ゾーイ》をプレイされたのを確認して、いつ《大いなる調停者・ゾーイ》を出されるか考えながら戦えましたが、これからはいきなり《大いなる調停者・ゾーイ》を出される可能性があるわけです。これはドラゴンデッキを使う側、使われる側の両方に影響があるんじゃないかと。
川:これまではとりあえず《大いなる調停者・ゾーイ》はアクセラレートする、という考えでしたがこれからはそうとは限らないということですね。
さ:実戦レベルのコスト軽減カードが出たことで、そのあたりの読み合いにはいろいろ変化が出てくると思います。後攻9PPで勝てるはずが9コストまで下がった《大いなる調停者・ゾーイ》によって妨害されるというシチュエーションも出てくるでしょうから。
川:もう1枚の《ポセイドン》についてはどうでしょう。
さ:これも非常に強力な1枚です。能力で出てくる《ポセイドンの兵士》が1/3守護というスタッツなのも偉いですね。
松:守護があるのはうれしいよね。
川:それだけではなく1/3であることにも意味があります。攻撃力1なので体力2のフォロワーを倒さないんですよね。対「人形ネメシス」戦では《復讐の人形・オーキス》から3/2の《マリオネット・ドゥーエ》がたくさん出てきますが、これが相討ちにならず相手の場に残るため、相討ちならば9点くらってしまうところが3点ですんだりするんです。相手にすると《復讐の人形・オーキス》を使ってこれではまったくおいしくないので展開を変えざるを得ません。
松:あえて攻撃力が低いことが重要と。
◆ネクロマンサー
川:続いてネクロマンサー。レジェンドは《グレモリー》ですね。
川:「アーカスネクロ」を大幅に強化したカードですよね。7PPで《幽霊支配人・アーカス》、8PPで《悪戯な霊魂》を2枚プレイして《ゴースト》を4体出し、エンハンスで《グレモリー》を出せば4体の1/1が3/3になったあと、《グレモリー》のぶんの《ゴースト》が出ますからいきなり13点ダメージを叩き出せます。
さ:《スカルリング》などからも同様の展開ができるので爆発力が大幅に高まりました。もともとあった《幽想の少女・フェリ》+《バイヴカハ》などのギミックと合わさってより多角的な攻めが可能になりました。「アーカスネクロ」は結構メタゲームに上がってくる存在になりそうです。
川:《降魔の操者・ダヌア》はどうですか。
さ:大人しめの性能ですが、弱いかというと全然そんなことはありませんね。実質攻撃力4とも考えられますし、体力1の相手は永遠に倒し続けられます。
松:《茨の森》や《夜の令嬢・セレス》を考えれば十分なスペックでしょう。いま彼女を無駄なく除去できる1点ダメージというのもあまりありませんしね。
◆ヴァンパイア
川:続いてはヴァンパイアから《轟雷のベヒーモス》です。
松:アンリミテッドの「アグロヴァンパイア」などで使われるんじゃないかな。アンリミテッドであればコストの軽いカード、あるいは軽くなるカードも多く、次ターンのPP減少が苦にならないし、PPの問題以外は100点満点で150点あげられるカードなのでデメリットが気にならない環境がくればローテーションでも可能性はありそう。
さ:ローテーションの「アグロヴァンパイア」は《血統の王》をフィニッシャーにしたものが主流ですが、今後のカード次第ではこちらを採用した別の形が出てくることもありそうですね。
川:《邪眼の悪魔》はどうでしょうか。
さ:さっき5コストは激戦区という話をしましたが、それと同じ理由で構築環境では難しいですね。実質ほぼ2コストのスペルとして運用しつつ、たまにフォロワーとして使うくらいの気持ちでいたほうがいいと思います。ただし進化時能力は今後全体除去として使われる可能性はあります。1~4ターン目に自傷できるカードが充実し、アグロ系のデッキが流行すればこのカードの評価は一変するかもしれません。
◆ビショップ
川:では続いてビショップ、《壊れたる神・チェキババ》ですね。
川:ビショップ版の《騎士王・アーサー》といった趣きのカードです。ちょっとコストが重いですが一瞬でものすごい盤面を作ってくれるでしょう。突進や疾走、あるいは守護を持つフォロワーを出すアミュレットの数次第では、ちょっと前の《言霊遣い・ジンジャー》のように「9ターン目これ、10ターン目勝ち」というデッキを作れるかもしれません。
さ:デッキ構築以外に特に準備もいらないカードなので、今はそこまで相方が充実していないため活躍できてはいませんが、ローテーション落ちするまでいつ化けてもおかしくありませんね。
川:《天象の風・ぺトラ》はどうでしょうか。
さ:1/1/2のいわば《ゴブリン》に能力がついたフォロワーは何体かいますが、そのなかでもずば抜けて強力な能力だと思います。これだけ簡単に味方を守れるならコンボを狙うことも難しくありません。5ターン目に《レジェンダリーファイター》、これ、1コストのスペル、1コストのアミュレットと動けば条件達成ですし、《スノーホワイトプリンセス》が絡めばもっと早く条件を満たせるかもしれません。
松:そういう大道芸的なコンボに限らなくとも、たとえば「教会ビショップ」で《ヘヴンリーナイト》で7ダメージ与えた後に彼女で守ってあげれば、守護フォロワーとして立ちはだかることはできませんが次のターンも7点ダメージが狙えます。《ヘヴンリーナイト》がもう1枚あれば、わずか2ターンで21点ダメージです。使うにせよ使われるにせよ、今後も要注目の1枚です。
◆ネメシス
川:最後にネメシスから《マル・ドッキオ》です。おもしろいカードですよね。
さ:《生命の量産》を使うことで後攻3ターン目の終了時に4/4になれます、さらに次のターン《イカロス》などを使えばどんどんとサイズアップしていけますね。ただし、単体では何もできないのでサポート必須になります。
松:爆発力と安定感のどっちを取るかで人によって好みの別れそうなデザインですよね。大会で安定して好成績を残したいという人にとってはあまり使いたくないカードかもしれませんが、逆にこのカードに強く惹きつけられる人も多いでしょう。非常に楽しい、いいカードだと思います。
川:最後の1枚は《清新なる銃設計士・ククル》です。
さ:これもとんでもないカードです。まず先攻3ターン目に《奮励の儁秀・シルヴァ》の能力で出てくるとものすごいテンポ差をつけられます。エンハンスで出して進化させても強く、相手からするとフォロワーで殴り合って盤面を取り戻すのは難しくなるでしょう。お供として出てくる《ガンパウダーミキサー・クムユ》も2/1のスタッツにランダムとはいえ3点ダメージですからね。
松:相手の最後の1体と相討ちということになれば、リーダーに3ダメージというのもすごいですよね。
川:《マル・ドッキオ》の能力がオンリーワンのおもしろさなので、これがレジェンドなのは納得なのですが、《清新なる銃設計士・ククル》もレジェンドでもおかしくないカードパワーです。このまま「人形ネメシス」が流行し続けるようなら、たとえば2/3フォロワーが再評価されたりすることもあるかもしれません。
さ:《ポセイドン》の項でも言っていましたが、環境によって決して攻撃力が高ければ高いほどいいというわけでないのが、カードゲームのおもしろさですね。
川:では最後に、今回レビューしたカードのなかでそれぞれのベストカードをあげて、お開きとしましょうか。私は《殺戮の魔女・ヴェスパー》以外ではやはり《清新なる銃設計士・ククル》をあげたいですね。アディショナルカードのリリース直後に《奮励の儁秀・シルヴァ》からの《清新なる銃設計士・ククル》をやられて、新カード強いなぁと思いましたので彼女で!(笑)。
さ:私は《終戦のドラグーン》ですね。コスト軽減によって相手が対応困難な展開に持ち込みやすくなる点がインパクト大です。それでいて単体の性能も5/5突進とじゅうぶんすぎるスペックなのが高評価ですね。
松:アンリミテッド環境のコンボ好きとしては《天象の風・ぺトラ》をあげたいかな。おもしろいコンボをサポートするだけでなく、ソリッドなデッキでも活躍できるデザインがいい。今回のアディショナルカードは強力なカードが多く、環境がまた変わっていきそうだよね。
川:次のパックが出るまで、存分にいまの『Shadowverse』を楽しんでいきたいですね!
◆終わりに
今回は編集部メンバーによる「Brigade of the Sky / 蒼空の騎士」アディショナルカードについての座談会をお届けしました。
まだまだMasterランクで悪戦苦闘しているメンバーによる考察なので抜けている部分もあるかもしれませんが、読んでいただいた方の何か参考になればうれしいです。
それではまた、次回の記事でお会いしましょう。