3月21日、22日に開催された「ブシロードTCG戦略発表会2023 永遠のマイターン」。今回も戦略発表会後にブシロード・木谷社長へインタビューを行ない、今回の戦略発表会の振り返りや、ブシロードTCGの今後の展望などなどを伺ってきた!
⇒「ブシロードTCG戦略発表会2023 永遠のマイターン」(特設サイト/YouTube配信:DAY1・DAY2)
◆2023年3月のTCG業界の動向は?
───3月21日、22日の2日に渡って開催された「ブシロードTCG戦略発表会2023 永遠のマイターン」についてのインタビューとなりますが、その前に3月にバンダイから発売された「UNION ARENA」について、木谷社長の感想をいただけますか?
木谷:当社サイドから見た感想としては、キャラクターカードゲームのマーケットを大きく広げてくれた商品だと感じています。そういう意味では感謝していますが、『ヴァイスシュヴァルツ(以下、ヴァイス)』にとっては競合製品なわけですから、その点は負けられないなと思っています。
短期間で様々な商品を出されているので、カードゲームをプレイする際のバランスが気になります。テストプレイは大変だと思いますが、例えば10タイトル出たときに各タイトル間のバランスが取れていたら、素晴らしいカードゲームになっていると思います。キャラクターカードゲームはバランスが取れているのが一番大事で、自分の推しているタイトルが全然勝てなかったらやる気がなくなってしまいますから。私が今後注目するのはその点ですね。
───続いて、2月下旬に秋葉原に『ヴァイス』専門店となる「Weiβ Schwarz Mart AKIHABARA店」が、有限会社遊縁によってオープンしましたが、その評判などは木谷社長にも届いているのでしょうか?
木谷:非常にいい反響を感じています。オープン時には何百人と列ができたりもしていました。カードキングダム秋葉原店が入っているビルの2階のテナントが空くという話があって、どうしようか考えていますということを遊縁さんから相談された際に、「それなら『ヴァイス』の専門店をやられたらどうですか? アフターコロナで海外からの人も多く来るようになるしいいと思います。こちらもお手伝いしますよ」と話させていただきました。開店後の売上も客数もいいようですし、むしろここからが本番ですよ。海外からの方がさらに日本に来られるだろうし、ライトユーザーも入りやすいお店だと思います。この雰囲気は「ブラウドッグ」(※『ヴァイスシュヴァルツブラウ(以下、ブラウ)』の公式マスコット)の効果も大きいと思います。しよ子だけだと萌えのイメージが強くなりますが、ブラウドッグがライトなイメージを出してくれているのかなと。カップルで来店される方もいらっしゃいますね。
───秋葉原駅からもすぐですし、1階にもカードが飾られていてわかりやすかったりと、非常に立ち寄りやすいお店ですよね。
木谷:これから本格的にインバウンドが再開したり国内の行き来が多くなったりすると、来店される人もかなり多くなると思いますよ。ほかの地域でもこのようなお店を開きたいというかたは、ぜひともご相談ください。ショップの名前は『Weiβ Schwarz Mart』に統一してもいいし、異なっていてもいいと思っています。
───Weiβ Schwarz Mart AKIHABARA店の運営は遊縁ですが、ブシロードが出資されたりはしているのでしょうか?
木谷:弊社から出資等は行っていません。専門店ということで販促用の素材を手配したり、開店にあたって昔の商品を多少融通はしました。ちなみにあのお店、立地面も非常に良くて、看板の価値も大きいんですよ
◆戦略発表会を振り返ってみて
───では改めて、戦略発表会のことを伺わせていただきます。今回の戦略発表会は1日目に『ヴァイス』と『ブラウ』、2日目に『カードファイト!! ヴァンガード(以下、ヴァンガード)』『Reバース for you(以下、Reバース)』『Shadowverse EVOLVE(以下、エボルヴ)』と2日に分けての発表会を開催されてみていかがでしたか? 特に1日目は、観客を入れてミニライブを行なったりと、今までにない形での発表会になったのかと思います。
木谷:まず、観客を入れて戦略発表会を開催したのは正解でした。会場に来てくださった方には発表会をしっかりと見ていただけましたし、会場内の展示スペースも写真を撮ってツイートしてくださいました。
『ヴァイス』は新規参戦タイトルの発表が一番盛り上がるタイミングです。なので、今回は、新規参戦タイトルの発表の合間合間に開発秘話のトークショーを行なったり、ライブパートを入れたり、お祝いコメントを入れたりと、バラエティー豊かにしてみました。
それに、配信の同時接続数がどのくらいになるかというのも確認したいと思っていました。同接は一番いいときで6300弱。終盤は4000を割れたりしましたけど、平均5000くらいで推移してくれたのかなと思います。3時間半くらいの発表会で平均5000はなかなかいい数字だと思います。トレンドにもずっと上がっていましたし。
発表会をバラエティ形式にしてみるという実験ではありましたが、正解でしたね。ただ2日目はその分弱くなってしまいました。『ヴァンガード』もアニメが終盤ですし。新しいアニメがスタートするとなると大きく違うんですが。それに1日目に3時間半もの配信を見たら疲れますね(笑)。
それと参戦タイトル発表と同時に、参戦タイトルの商品1カートンを抽選で1名様にプレゼントするというフォロー&RTキャンペーンを『ヴァイス』で実施しました。こちらは平均2万RTくらいで、ツイッターのフォロワーも3万ほど増えました。すごい効き目でした。
───発表会で公開された『ヴァイス』のロゴも特別感がありましたよね。ユーザーにも今年は『ヴァイス』15周年であるということが強く伝わったと思います。今後もこのような観客を入れ、ライブ等を行なうような発表会は開催されるのでしょうか?
木谷:節目節目ではこういう発表会はやっていこうと考えています。ただ、今回の発表会はWBCがあったので、そちらにより大きな話題を持っていかれたのがネックですね(笑)。
───では各タイトルで特に気になった発表をお伺いします。
まず『ヴァイス』ですが、15周年の記念施策として、ホロライブプロダクションのさくらみこさん、星街すいせいさん、ムーナ・ホシノヴァさん、小鳥遊キアラさんの4名が『ヴァイス』15周年をナビゲートするアンバサダーに就任されることが発表されました。今まで『ヴァイス』のアンバサダーは声優さんというイメージでしたので、この発表は驚きました。
木谷:日本だけでなく世界でも『ヴァイス』を盛り上げていくので、日本語だけでなく英語などの外国語を話せる方がいるというのは心強いと思います。
───ここ最近はディズニーなどの作品も『ヴァイス』に参戦してきて、一気に『ヴァイス』の世界が広がったように感じます。
木谷:そうですね。15周年という時期にうまく出せたと思います。それに今後の作品もかなり強力です。これまで2~3年に1回出せたかなと言うタイトルが今年は目白押しですから。「ホロライブプロダクションVol.2」も好評ですし、「Disney100」も非常に多くの受注が集まりました。ただ「Disney100」は受注があまりにも多くてカットせざるをえなかったのですが、それでも当初こちらが予想していた数の3倍ほどの数になりました。6月には「チェンソーマン」「リコリス・リコイル」「ウマ娘 プリティーダービー」と話題の作品が目白押しです。特に「チェンソーマン」は海外からも多く受注を頂いています。今回発表した「電撃文庫」も前評判が非常に高いですね。
───15周年の記念商品として、「灼眼のシャナ」のカードテキストや一部デザインがリニューアルして登場するのも、初期に『ヴァイス』を遊んでいた人や電撃文庫ファンには嬉しいニュースですね。
木谷:ぜひ復帰勢に手に取ってもらいたいですね。現在遊ばれている人はもちろん、今は引退してしまった人にも注目してもらえるような作品を用意しています。今年の『ヴァイス』は売上としてもかなり伸びると思いますよ。
ただ、地方ですと『ヴァイス』をちゃんと取り扱っていないお店というのもまだまだあります。だからさらに伸びる可能性は十分ありますし、『ヴァイス』はメジャータイトルなんですよという意味を示すうえでも専門店ができたのは非常に大きいと思います。
───続いて『ブラウ』についてですが、最初に発表された作品がこの時期でほとんど出揃ったかと思います。改めて『ブラウ』をリリースしてみていかがですか?
木谷:まずはプレイヤーをもっと増やしたいですね。商品を売って終わりではなく、いかに継続してゲームをプレイしてもらえるようにするかが、今の課題だと思っています。
シンプルに「このコンテンツが好き」というだけだとコレクションだけで終わってしまう可能性はあると思います。そこからカードゲームを遊ぶ第一歩となるなにかですね。それと、女性ユーザーだけでなく男性ユーザーも増やしていく必要も今後は出てくるでしょう。そうすることで『ブラウ』を遊ぶユーザー層に厚みが出てきて、そこからユーザーが増えていく流れもできてくるだろうと。『ブラウ』は各タイトルごとで好みがはっきりでるので、なかなか難しい面もありますけど。
───新規参戦として「東京リベンジャーズ 聖夜決戦編」「新テニスの王子様」が発表されましたね。
木谷:「新テニスの王子様」は弊社でアプリゲームやコンソールのゲームも出しているので、参戦を予想されていた人も多いと思います(笑)。
───次は『Reバース』についてお伺いします。『Reバース』には「差別化」というお題があるというお話でしたが、今回の発表はいかがでしたか?
木谷:『ヴァイス』でやっていないことと考えると「実写を出す」ということが一つの答えだと思います。それはしっかりとできていると思います。
───今年で『Reバース』は3周年を迎えましたが、こちらはいかがでしょう?
木谷:リリースと同時にコロナでしたし「全国講習会600」も回りきれなかったというのが非常に悔やまれます。そんな状況から始まった『Reバース』でも、よく頑張っているなと思います。
それに『Reバース』は機動力が強みですから。『ヴァイス』だと先まで商品スケジュールが決まっているので動きづらいところもありますが、『Reバース』は新しいタイトルでも素早く商品化できますし、そういう意味でしっかりと役目を果たしていますね。
───「新日本プロレス×STARDOM」のコラボブースターパックですが、2つのタイトルを1つのセットにするという試みが印象的でした。
木谷:これはトレーディングカードのほうで成功したので、『Reバース』でもやってみようということです。
───『エボルヴ』についてもお伺いします。こちらは4月で1周年を迎えますが、通常の製品に加えての「ウマ娘 プリティーダービー」とのコラボ商品の発売や、「Shadowverse EVOLVE Japan Championship」の開催なども終え、充実の1年だったのではないでしょうか。
木谷:そうですね。『エボルヴ』はゲーム性で人気を集めているタイトルで、そこに今後も力を入れていくべきと感じました。対戦環境を整えたり、イベントを開催したり、大都市だけでなく地方もケアしたりと。そういうところをしっかりと続けていけば今後も伸びていくタイトルだと思います。
───通常のショップ大会のほかに、ゲームのプレイをメインとしたショップでのエボルヴ交流会も追加されるなど、競技やカジュアルといったプレイヤーの遊ぶスタイルに合わせた『エボルヴ』のプレイ環境の提示というのが感じられました。
木谷:Ranking Battleの第2回βテストも5月1日から始まりますが、そういう部分はしっかりと整備していこうと現場もかなり頑張っています。
───公認ジャッジを募集されていましたが、その後いかがでしょうか?
木谷:第1回公認ジャッジ試験では大体1300人を超える応募があって、基準を満たし合格となった方には、順次公式大会やCS大会の公認ジャッジとしてご活躍いただいています。第2回の募集も今後行なっていく予定です。
───最後は『ヴァンガード』になります。まずはTVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード will+Dress」season2が最終回を迎えましたがその感想は?
木谷:ホビーアニメとしてよく出来た作品だと思います。ただ、もう少しアメリカをしっかり描きたかったなというのが心残りでしょうか。
それと通して見て気になった点は、カードの効果をすべて読む必要はないのかもということですね。それを説明することで爽快感が減ってしまったように思えました。ファイトの描き方が良くなってきているだけに、そこが気になりました。カードの能力や説明を忠実に再現して頑張ってくれていると思いますし、『ヴァンガード』を遊ばれている人には楽しい要素かと思いますが、ただアニメとして本作を見ている人には伝わっているのだろうか。そこは今後の課題として考えていきたいです。
───カードの話に移ります。6月と8月に発売されるブースターパックには、それぞれ青年コミック誌の「週刊ビッグコミックスピリッツ」や「ヤングアニマル」とのコラボカードが収録さることが発表されましたが、今までの『ヴァンガード』とは異なる施策のように感じました。今の『ヴァンガード』のメインユーザー層はどのあたりなのでしょうか?
木谷:平均でいうと26歳前後でしょうか。コラボする青年コミック誌2誌はもっと上の読者層ですよね。漫画家さんのイラストって、イラストレーターさんのイラストとはちょっと違うわけです。これまでの『ヴァンガード』とは違うテイストのイラストを入れたかったというところに、今回は両誌と縁があってコラボをさせていただきました。
今後は『ヴァンガード』に毎回コラボを入れていき、話題作りをしようという方針もできました。4月に発売した「仮面竜奏」の「BanG Dream!」コラボカードもその一つです。
4月2日に発表した「甲虫王者ムシキング」とのコラボも6月の「英雄激突」に収録されますし、今後もこういうコラボを続けて『ヴァンガード』のレンジを少しずつ広げていければと考えています。
少しでも『ヴァイス』の売上に近づけるようにと考えていますが、今は『ヴァイス』の伸びが圧倒的です。『ヴァイス』はこの3年間で規模が3倍になりましたから。『ブラウ』まで含めると4倍ですよ(笑)。
───少し最近のカードゲーム業界についてもお伺いしたいのですが。
木谷:カードゲーム市場自体は急成長しましたが、これは『ポケモンカードゲーム』が伸びたからというのが大きいですね。『ヴァイス』の売上規模も大きく伸びましたが、伸びしろでいうと日本よりも海外での売上のほうが大きいです。国内のシェアでいうとむしろ下がっています。
ですが攻めに転じるターンはここからだと考えていて、『ヴァイス』に関してはこれからできるところまで大きく成長させていきます。『ヴァンガード』は来年の頭が勝負の時と考えていて、そこに向けていろいろと仕込んでいるところです。ブシロードとしては今年もカードゲーム業界は伸びていくと思っています。
───本日はありがとうございました。