木谷社長に聞く!「戦略発表会2023 ヴァンガろう」とその後について

6月13日に開催された「ブシロードTCG戦略発表会2023 ヴァンガろう」について、発表会の後日にブシロード・木谷社長へインタビューを行なった。
今回の発表の振り返りや、今後の動きなどについて、さまざまなことを伺ってきた!

⇒「ブシロードTCG戦略発表会2023 ヴァンガろう」(特設サイトYouTube配信


◆今回の戦略発表会を振り返ってみて

───まずは『Shadowverse EVOLVE(以下、エボルヴ)』について伺いたいと思います。
『エボルヴ』では「アイドルマスター シンデレラガールズ」のコラボスターターデッキ&コラボパックが紹介されましたが、昨年の「ウマ娘 プリティーダービー」に続いてのコラボ商品になりますね。原作にあわせた3つの属性ごとのスターターなど、非常に力が入っているタイトルだと感じました。

木谷:「アイドルマスター シンデレラガールズ」はCygamesさんも運営に関わっているタイトルですからね。

───全アイドルのカードそれぞれに箔押しサイン仕様のカードが用意されてるなど、それぞれのアイドルの担当プロデューサーにはうれしい仕様も発表されましたね。全種類集めようとした場合はかなり大変そうですけど(笑)。

木谷:『エボルヴ』は少し売れ行きが下がったりもしましたが、プレイヤーが順調に増えていて、「GrandPrix」もそれに合わせて参加人数が増えています。また、公認ジャッジの施策も第2回の応募を予定していますし、『エボルヴ』の環境は非常に良いと感じています。プレイヤーは増えていますので、ここでコレクターにも目を向けていきたいですし、『エボルヴ』は売れる商品だということをお店さんにもアピールしていきたいと考えています。プレイヤーだけでなくコレクターも増えれば最新商品だけでなく過去弾も売れて、売上がぐっと伸びますからね。
それと「Shadowverse EVOLVE Ranking Battle」(※大会に参加したりバトルに勝利することで得られるポイントで競う、TCGプレイヤー向けサービス「ブシナビ」の新機能)も、非常に評判が良いと聞いています。やっとブシナビの実力も発揮できたかなと。『エボルヴ』では「ショップバトルランキング」「チャンピオンシップランキング」の2つの種目があります。それぞれ全国ランキングとエリアランキングの2つのランキングがあり、大会に参加するだけでもポイントがもらえます。さらに、「ショップバトルランキング」の上位に入れば特別なラバーマットが手に入ります。
全国ランキングだと大会の数が多い都心部のほうが有利なところはありますが、エリアランキングならそれはある程度解消されます。


ランキング制度というのはアプリゲームだとよくありますし、Cygamesさんとしてはそこからの発想なんだと思います。ラバーマットも豪華ですし、7月からの『エボルヴ』の大会が楽しみですね。結構参加者が増えると思いますよ。

───ラバーマットの賞品もそうですが、「チャンピオンシップランキング」ではエリアランキングの上位特典で「大型大会の本戦1回戦目の不戦勝権利」がもらえるというのも驚きました。ここしばらくのブシロードのカードゲームにはなかった特典ですよね。より競技性が増したように感じます。

木谷:お店の大会に人が集まってくれれば、過去弾やサプライなどの商品が動かないということはありません。7月になってみないと結果はわかりませんが、これで活性化してショップ大会も様変わりすると予想しています。

───『エボルヴ』は英語版が6月30日(金)に発売されましたが、こちらの主な販売地域は欧米や東・東南アジアでしょうか。

木谷:そうですね。『ヴァイスシュヴァルツ』の英語版の売上はアメリカが8割あり、『カードファイト!! ヴァンガード(以下、ヴァンガード)』では7割あります。ここから考えて、『エボルヴ』の英語版もアメリカが6~7割くらいになると思います。注文も続々と来ており、反響も目に見えて感じています。

───英語版の講習会を全世界で300回以上行なうという発表もありましたが、ヨーロッパの講習会には木谷社長も参加されるんですよね。

木谷:ヨーロッパはイギリス、フランス、ドイツをメインに講習会を行ないます。私はイギリス国内を15店舗回る予定です。

───日本の講習会と海外の講習会で違いなどはあるのでしょうか?

木谷:講習会はこちらからショップに声をかけて、やりたいと言ってくれたショップで実施します。海外にはまだ、メーカーが講習会を開くという概念がありません。こちらから講習会を開きたいと声をかけても、「なんですかそれ?」というショップの反応もあるくらいです。それにメーカーがショップを回るということも海外ではないと聞きます。リサーチのためにショップを回ることはあっても、営業で回るということはなく、それは問屋の仕事でしょうというのが海外のメーカーのスタンスのようです。階層がしっかりとわかれていますよね。
それに対して、日本だと営業を行なう問屋というのはかなり限られていますので、メーカーがショップを回って営業する必要があります。

以前は別のゲームでアメリカで講習会を行ないましたけど、そのときは200店舗でした。今回は世界中で300店舗ですから。世界中のカードゲームメーカーでこんなことやるメーカーなんてありませんよ。僕もイギリスの店舗を回るのに3000kmくらい運転することになるんじゃないかな(笑)。

───次は『Reバース for you(以下、Reバース)についてお伺いします。戦略発表会では、どのタイトルよりも早くWGP2024の開催が発表されましたね

木谷:これは現場から発表したいですという希望が上がってきたからです。『ヴァイスシュヴァルツ』『ヴァンガード』と日程が異なるということは早めに伝えておきたいですしね。

───『ヴァイスシュヴァルツ』『Reバース』の大会日程が被って『Reバース』の大会参加を諦めた人もいるという話もありましたからね。

木谷:そうですね。日程をずらしたことは良かったと思います。実際にどのくらい『Reバース』の大会参加人数が増えるのかはわかりませんが、2~3割くらい増えるかなと予想しています。

───「リコリス・リコイル」のタイトルで『Reバース』『ヴァイスシュヴァルツ』のタッグ大会が9月に開催されますが、異なるタイトルでタッグを組むイベントというのは珍しいと感じました。

木谷:6月に「アイドルマスター」シリーズ『ヴァイスシュヴァルツ』『ヴァイスシュヴァルツブラウ(以下、ブラウ)』のトリコロールファイトを行ないましたし、ほかにも『Reバース』『ヴァイスシュヴァルツ』だと、2年前にパシフィコ横浜で「ホロライブプロダクション」のカードイベントを行ないました。どちらも非常に評判が良かったですし、今後もこういうイベントは可能だったら続けていきたいと思っています。

───ほかにも発表ですと「3年3か月禁止制限なし」ということも驚きました。

木谷:今発売されているカードゲームで、ここまで長期間禁止制限カードがないというのは、とてもすごいことだと思います。『Reバース』はバランス調整がしやすいゲームだということもあると思いますけど、「禁止制限カードがない」というのも一つの売りになるんじゃないでしょうか。ユーザーもお店さんも安心感があるタイトルだと感じてくれたと思います。

以前までカードの使用制限の発表は大きな大会が終わってから行なっていました。そこで「この発表を戦略発表会の一つのコンテンツにしてほしい。そうすることで戦略発表会の注目度があがるから」と話していて、今では戦略発表会の注目要素の一つになっています。

───ショップもユーザーも気になる内容ですからね。

木谷:ショップの担当者は絶対に見ますから。◯◯に制限がかかるぞ、△△が解除になるぞって。それに昼間に戦略発表会を行なうことで、ショップからの視聴者を増やすこともできます。
ちなみに、今回の発表会で最大同接は6500人くらいまでいきました。カードゲームの生放送でここまで集まることはないですよ。1番注目されているのは新規参戦タイトルの発表ですけど、2番目はカードの使用制限の発表です。
こういう場ですと、「制限なし」という発表も一つのコンテンツになりますよね。

───『ブラウ』のコーナーで使用制限についての話が出た時、思わず身構えた人も多いと思うんです。

木谷:そこで「使用制限なしです」という発表ですから。まだ『ブラウ』が始まって1年も経っていませんし、すぐに使用制限を出していまうとユーザーやショップも不安になってきますよ。

───次は「Reバース」の新トライアルデッキについてですが、こちらは従来のトライアルデッキから仕様が変更され、TDRという新しいレアリティのカードがスタートデッキ50枚とは別に、追加で1枚追加されます。こちらは今後のトライアルデッキすべてがこの形になるということでしょうか?

木谷:今後この形になるというわけではなく、テストも兼ねてこの形になりました。「Reバース」はこれからも新しいチャレンジを続けていきます。

───『ブラウ』についてもお伺いします。戦略発表会では先日のブラウファイト in BCF2023でも多くの方で賑わっている様子が映し出されましたが、木谷社長の実感としてはいかがでしょうか?

木谷:手応えはあります……ありますが、現状だとプレイヤーをもっと増やしたいと考えています。コレクターだけじゃなくプレイヤーも増えないとゲームは育っていきません。そこで7月からはショップイベントも対戦会と交流会の2つに分けて、「対戦したい人」、「仲間と遊びたい人」と、それぞれのニーズに合う形を考えました。
あとはもう少し男性の方にも『ブラウ』をプレイしていただけたらなと。想定していたよりも男女間のプレイヤーの交流がまだ少ないようです。

───「すとぷり」「うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE」シリーズなどの女性人気の高いタイトルもリリースされて、女性ユーザーへの手応えはいかがですか?

木谷:タイトルごとにかなり違います。単純に売れている数なら「すとぷり」です。ただ、「すとぷり」の場合は売れている場所の7~8割がアニメイトです。これが今までのカードゲームにないところですね。「名探偵コナン」も売れていますが、こちらは実は海外でもかなり売れています。タイトルによって売り方、売れ方が違うので、そこが難しいところです。
9月に発売する「ヒプノシスマイク」は男性ファンも多いですし、設定もカードゲーマー向けなので期待しています。『ヴァイスシュヴァルツ』の「バンドリーグ!構築」のように、ディビジョンごとにデッキを組んで「ヒプノシスマイク」だけのカードを使った対戦会というのもできると思います。先日発売したブースターパック / Disney CHARACTERSも非常に好調で、コレクターの方が多く購入されている印象です。

───ブースターパック / Disney CHARACTERSの販売数も伸びているとのことですが、『ヴァイスシュヴァルツ』で発売された「Disney100」もかなりの販売数だったのではないでしょうか。

木谷:そうですね。『ヴァイスシュヴァルツ』でもっとも売れたタイトルの1つになりました。有名人が購入されたり、開封動画がたくさん上がっていたりと、今までの『ヴァイスシュヴァルツ』とは違うな、と感じました。「Disney100」については明確に“売れた”という実感がありました。ただ、ほかのシリーズだといつの間にか売れてるという感触です。海外から旅行に来た人が買われているのか、ちょっとよくわからないですね。
でも、こういう売れ方を見ていると、『ヴァイスシュヴァルツ』の購入者はかなり多様化してきたのかなと。
春にヴァイスシュヴァルツ15周年を記念した冊子を作ってイベント等で配布しましたけど、こういうさまざまな企業のIPを表紙に使用した冊子はなかなか作れないですよ。

───『ヴァイスシュヴァルツ』の発表ですと、「ヴァイスシュヴァルツ15周年記念ライブ」の開催はかなり驚きました。
現在はClariSLiella!Morfonicaの3組の出演が発表されていますけど、今後どのようなアーティストの出演が決まるのか楽しみです。

木谷:これも評判がよかったですね。出演者については続報を待っていただきたいですけど、ほかにも応援コメントを集めるなどしたいと思っています。これまでの作品に関わってきた人たちにお声がけして、15周年を祝うライブにしていきます

───『ヴァンガード』についてもお伺いしていきます。7月8日(土)からアニメ「カードファイト!! ヴァンガード will+Dress Season3」がいよいよ始まりますね。

木谷:そうですね。Season1~3を簡単にまとめるとSeason1は独立していて、「デラックス」というトーナメントを描いていました。Season2からSeason3はユニフォーマーズとの対決がストーリーの中心になります。Season3はこれから放送ということで詳しい話はできませんが、今年初頭の時点でDシリーズ(「overDress編」合計2期含む)は9期までの制作はすでに決定していますということを発表したとおり、この次の作品についてもしっかりと考えています。11月には情報解禁の予定です。ぜひ期待して待っていてほしいですね。
本当はもっと発表したいこともありますけど、戦略発表会だと時間が足りないんです(笑)。
来年の『ヴァンガード』は本当に楽しみにしてもらいたいです。
ただ、『ヴァンガード』の課題は新規ユーザーが始めにくくなっているということです。発表会では『ヴァンガード』を教える人、大会を開催する人を増やしたいということで、新ジャッジ制度について発表しました。募集はこれからですが、来年頭からジャッジ制度がスタートできるように動きたいと思います。

それと限定ルールを2つほど追加したいとも考えています。
一つは今イベントで試している「カードの能力なし」のルールです。7月2日(日)にカードショップ竜星のPAO立川店で64人の大会を開催しましたが、予約段階で150人以上の方にご応募いただき、大変好評でした。私のプロモがほしいだけかもしれませんが(笑)。
カードテキストが関係ないので、誰でも参加できる大会というのは非常に大きいと思います。このイベントのことを某チェーン店の社長に話したら、「カードショップの社長を集めて大会をしましょう」って(笑)。トリガーと完全ガード、数字などが分かれば遊べるので、今『ヴァンガード』から離れてる人でも簡単に遊べますから。
それに、これは講習会でも使えるルールだと思います。最初はカード能力を見ずにゲームの動きを体験してみて、2周目のプレイでそれぞれのカード能力を解説してゲームを覚えてもらうということができます。
もう一つは「2024年限定構築」といった形で、その年に発売されたカードのみでデッキを組むルールです。全国大会を開くほど大きなルールにはなりませんが、毎年1月にスタートデッキを発売するというサイクルを作ることで、新規の人でも気軽にゲームを始めたり大会に参加したりといった可能になると思います。
これらは低年齢や初心者向けのルールを想定しています。年は小中学生層の開拓もしっかりと行なっていきたいなと。

───ジャッジ制度の話題が少し出ましたが、そちらについてもお聞きできればと。

木谷:以前にもブシロード公認ジャッジの制度はありましたが、今回はまず『ヴァンガード』で新ジャッジ制度を進めてみたいと思います。すでに『エボルヴ』がジャッジ制度を実施しており、改めてジャッジ制度を始めることに意味があると感じています。
今は昔よりもデュエルスペースの数が増えています。5月の連休中に九州のお店を回りましたけど、宮崎県に128席のスペースがあるお店が2軒もありました。全国で見るとこの規模のお店がかなりの数あると思います。このスペースを有効に使うべきだと強く感じました。
ジャッジ制度が始まれば、こういうお店のスペースを借りて大会を開くといったことができるようになるでしょうし、大会で人が集まればお店の売上にも繋がりますから。

───ここからは発表会から話題が変わりますが、ここ数年でカードゲームを取り巻く状況も大きく変わってきたと思います。今後のカードゲーム業界はどう変わっていくと思いますか。

木谷:まずは『ポケモンカードゲーム』を除いて、一つのタイトルだけでやっていく会社というのは厳しくなると思います。だからこそ、各社新しいカードゲームを出してきましたし、これからも出てくると思います。ただ、メーカーとしては新しいカードゲームを出したいと思っても、カードゲームを作れる開発会社が圧倒的に少ないのが現状です
それとカードゲームというジャンルは、ショップが圧倒的に進化しています。問屋はここ30年近くやっていることに大きな変化はありません。メーカーも進化していますが、自社に開発部署を持っているところはほとんどありません。弊社は開発が半ラインくらいあって、やろうと思ったら開発もできます。ただ全体を通してみるとカードゲーム業界はマーケットが大きい割には遅れているなと感じますね。

───メーカーが開発部署を作らないという理由は何でしょう?

木谷:外注したほうが安いということがあると思います。それとメーカーの上の方がカードゲームの開発を理解できていないんじゃないでしょうか。カードゲーム中心の仕事をして偉くなったという人はあまり聞きませんし、自社に開発を持とうという発想に至らないのかなと思います。
弊社はそろそろ開発部署をしっかり持たないといけないと考えています。テストプレイでAIを活用できるようになれば、開発が一気に楽になりますよ。

今はショップの数も非常に多くなりましたが、カードゲームの種類はそんなに増えていません。ただマーケット自体は大きいので、今後はインディーのカードゲームが増える余地は十分にあると思います。
それもあって、来年の「カードゲーム祭」では出展を広く募ろうと考えています。海外からの出展も期待したいですし、今後「ブシロードカードゲーム祭」から「カードゲーム祭」という名前のイベントにして、プラットフォーム化していくことも検討中です。

───「ブシロードカードゲーム祭」についてもお伺いしたいと思います。来年は他社のカードゲーム関連メーカーが出展可能なイベントを企画中とのことですが、来年はどのようなイベントになるのでしょうか?

木谷:カードゲームのイベントは出展料等を多く取れるわけでもないので、正直に話すとイベントとしては大赤字です。今年の「ブシロードカードゲーム祭」を見ても、入場料にショップの出展料、物販の売上を足しても、イベント単体だと1億円以上の赤字なんです。
でも、毎年恒例の大規模なカードゲームの販促イベントとして重要な役割を担ってきています。だからこそ来年はいろいろなメーカーの出展を募り、そこのファンの方が会場に来てくれることで、イベントをより盛り上げていきたい。そうやって盛り上がればそれが次のイベントに繋がって大きくなっていくはずですから。
今年は来場者数が1万5千人でしたけど、来年は2万人の来場者を目指します。以前は「大ヴァンガ祭」単体で2万人を超えたこともありますし、3万人、4万人と人が集まるイベントに育てていきたいですね。

───ゲームマーケット等でオリジナルのカードゲームを出されている方たちが出展されたら、カードゲーム好きにも楽しいイベントになりそうですよね。ブシロードさんのカードゲームをプレイしていない人でも、そういうフックがあるとイベントに行ってみたくなると思いますし。
来年のカードゲーム祭も楽しみですが、今年のカードゲーム祭を振り返ってみていかがでしたか?

木谷:来場者数等は目標に到達できたイベントになりました。去年が2日間で8000人くらいでしたけど、今年は倍くらいの方が来場されましたから、十分ですね。今年は2日目に広い会場を借りましたけど、来年はこの広いスペースを2日間借りましたので、2万人の来場者があっても十分なスペースかなと思います。

───『エボルヴ』の話題のときに軽く海外について伺いましたが、海外のブシロードカードゲームについて教えてください。

木谷:会社全体のカードゲームの売上のうち、約4割が海外です。日本語版のカードはアジアで、英語版のカードは欧米で売れています。海外の方が出荷の多いタイトルも出てきていますし、『ヴァイスシュヴァルツ』から9月に発売される「電撃文庫」も海外から非常に多くの注文が入っています。日本語版のカードの海外からの注文としては、これまでで一番大きい数字になりそうです。「Disney100」もそうでしたけど、一つのタイトルにいろいろな作品が入っているのが好きな方が多いのかなと感じました。

───これまでカードゲームに参戦していなかった作品が入っているというのも、ファンとしては大きいのかなと思います。

木谷:作品ごとに作家やイラストレーターのファンが付いているので、それが一つのタイトルに集まったら……ということも大きそうですね。

───アニメについてもお伺いします。6月29日に「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」が初回第1話~第3話まで一挙放送しましたが、7月に入る前に3話分を放送したというのは、どういう狙いなのでしょうか?

木谷:まずは第3話まで見てほしいからです。今回はほとんど予備知識を入れずに、素直な気持ちで作品を見まして、第2話を見終わったところすぐに第3話を見たくなりました。主役のバンドメンバー5人とほかのキャラクターたちの関係性がおもしろいのですが、位置関係が少し難しく感じたりもしました。そこで3話まで一気に放送し、キャラクターを紹介するCMをどんどん出していくので、そこで作品に興味を持ってもらうようにしていきます。

アニメをヒットさせるのっておもしろいだけじゃだめで、放送時期なども大事。オリジナルコンテンツでヒット作を作るのは、今の時代、本当に難しいですね。
『ヴァンガード』も今は持ち直しましたけど、一時期が本当に大変だったので、オリジナルコンテンツの難しさをひしひしと感じています。
アニメもですけど、カードゲームも同じく、ヒットさせることって非常に難しいですよね。『ヴァイスシュヴァルツ』はキャラクターカードゲームですが、これは作品間のバランス調整が非常に大事です。
ほかにも、開発が気を抜くと、どんどん難しい方向へと舵を切りがちです。新しい人にカードゲームを始めてもらいたいとこちらは思っているのに、ある程度タイトルが続いていくとどんどんゲームが難しい方向へ行ってしまう。開発者だけだとその流れを止めるのがなかなか難しいんです。
店回りをしているスタッフから意見があったりするなど、その流れを止めようとする動きもありますので、それらの意見を吸い上げて開発に釘を刺しておくことも、私の役目だと思っています。
5月の連休中は九州にあるショップを30店舗、視察させていただきました。
宮崎や鹿児島で『ヴァンガード』のコミュニティがあることを知りましたし、こういうコミュニティが広がれば、再び『ヴァンガード』が大きくなると感じました。
そうやってショップから直接意見を聞き、それを開発に伝えることで、意見に説得力が出てきます。

───それでは最後に、今後のカードゲーム業界の展望などをお伺いできますか。

木谷:今までのカードゲームは開発があってマーケティング(営業・宣伝)があって、それでよかった。でも今は製造ラインの確保に奔走し、さらに今後は物流の2024年問題も控えています。弊社のカードは東日本で製造していますが、それを関西の問屋に納品して、東京のショップは関西の問屋から仕入れるわけです。これが非常にもったいない。それだったらもう、関西の問屋は関東にも大きな営業所を作るべきです。
ただ、そのような物流の問題も抱えながらも、ここ何年かでチェーン店が地方に進出して店舗数も増えていますし、若い経営者のショップも増えています。新しいお店は人気ゲームの商品を調達するのが大変だと思いますが、そこはブシロードにとってのチャンスとも考えています。ブシロード商品をしっかりとお店に置いてもらえるように提案してゆき、しっかりと新規の公認店、取扱店を増やしていきます。カードゲームのマーケットは広がっているのは確かですから、カードゲーム業界の未来は明るいと考えていますし、ブシロードが最前線に立って未来を明るくしていけるようヴァンガっていきます!

───期待しています! 本日はありがとうございました。