【FFTCG】最速を捨てて蘇る稲妻 ~「日本選手権2023 Summer」津大会優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「日本選手権2023 Summer」津大会で優勝した正義さんに「火雷【XIII】」デッキについて聞きました。

◆はじめに
みなさん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

今回から再び「日本選手権 2023」優勝者インタビューをお届けします。
お話をうかがったのは「日本選手権 2023 Summer」大阪大会と津大会で連覇を果たした正義さんの「火雷【XIII】」についてです。

「火雷【XIII】」は環境最速を定義するアグロデッキとして、現環境でも注目を集めていましたが、スタンダードではメタゲームの多様化したトーナメントを勝ち切れず、最近は【17-090R】《イクシオン》を擁する「氷雷」が台頭してきた影響で、やや下火傾向にあるデッキでした。しかし津大会ではそうした弱点を克服し、再び王者に返り咲くこととなりました。

今回は、「火雷【XIII】」復活までの道のりをお伝えできればと思います。
それではさっそく始めていきましょう!

◆有利不利の認識に疑問を持ち「火雷【XIII】」を再構築
――「日本選手権 2023 Summer」津大会優勝おめでとうございます。
正義:ありがとうございます。

――正義さんは1週前の大阪大会でも優勝しており、連覇の快挙を果たしています。大阪大会では現在流行している「氷雷」での優勝でしたが、津大会はそんな「氷雷」に対して一般的に不利とされている「火雷【XIII】」を使用しての優勝でした。メタゲーム的には逆風ともいえる環境ですが、どういった経緯があって今回のデッキ選択に至ったのでしょう?

正義:今回「火雷【XIII】」を使った経緯ですが、これは大阪大会の準決勝でのヒチウさんとの対戦で、自分でも「火雷【XIII】」を使ってみたいと感じたことがきっかけです。

大阪大会で自分は「氷雷」を使っていて、その試合では【15-024R】《オーファン》のEXバーストに助けられ運よく勝利を収められましたが、ヒチウさんの「火雷【XIII】」のプレイングは的確で、世間一般で言われている「氷雷」対「火雷【XIII】」において「氷雷」有利と言われている認識が実は間違っているのではないかと感じさせるものでした。この経験をもとに自分なりに構築を発展させて持ち込んだのが、今回の「火雷【XIII】」でした。

●デッキリスト:「火雷【XIII】」(「日本選手権 2023 Summer」津大会優勝 フォーマット:スタンダード)

カード番号 カード名 枚数
フォワード(31枚)
【19-138S】 《ライトニング》 3
【1-007R】 《ガドー》 3
【18-013R】 《ファング》 3
【19-129S】 《ヴァニラ》 3
【10-004H】 《カイアス》 2
【19-136S】 《ノエル》 3
【19-137S】 《ホープ》 3
【19-135S】 《シド・レインズ》 3
【13-124C】 《ノエル》 2
【19-124L】 《ヤ・シュトラ》 3
【19-108L】 《ジタン》 3
バックアップ(10枚)
【7-017H】 《ミース》 2
【13-014R】 《ラーケイクス》 3
【13-085R】 《ルミナ》 2
【16-104R】 《リーブ》 3
召喚獣(9枚)
【12-002H】 《アマテラス》 3
【3-020H】 《フェニックス》 3
【19-130S】 《バハムート》 3

――僕も基本的には「氷雷」有利という認識なのですが、ではこのデッキのどういった要素が正義さんの認識によるものなのでしょう?

正義:それは【19-108L】《ジタン》を採用しているという点です。


「火雷【XIII】」は【19-138S】《ライトニング》を中心とした【カテゴリ(XIII)】のフォワードによる攻撃性能の高いデッキですが、バックアップを展開しないため除去で盤面を崩されてしまうとゲームへの復帰が難しいという弱点がありました。特にこのデッキの主力が集まっているコスト2・コスト3のフォワードを一掃できてしまう【17-090R】《イクシオン》が苦手で、このカードを自然に採用できることが「氷雷」の「火雷【XIII】」に対するひとつの強みでした。

この弱点に対して【19-108L】《ジタン》のオートアビリティで相手の手札を確認し、脅威となるカードを除外するというアプロ―チは非常に効果的だと感じました。この効果は手札の枚数を減らせているわけではないので、単純な数字としてのアドバンテージを稼いでいるわけではありませんが、どれだけ手札が残っていたとしても状況を打破できないことには意味がありません。また【19-108L】《ジタン》自身が生き残り続けるかぎり継続的に相手の手札に干渉できるため、相手からすると【19-108L】《ジタン》がフィールドに出た時点で、【17-090R】《イクシオン》が手札にあったらすぐにキャストしなくてはなりませんからね。

火と風の多属性カードである【19-108L】《ジタン》は「火雷【XIII】」と属性が一致していませんが、「火雷【XIII】」には【1-007R】《ガドー》や【10-004H】《カイアス》といったコストの踏み倒し手段があり、【カテゴリ(XIII)】のフォワードを展開しながら【19-108L】《ジタン》を使えるという点でもデッキとかみ合っていました


――【19-108L】《ジタン》を採用したことで、フォワードの展開が阻害されにくくなり、デッキ本来のプランを通しやすくなったというわけですね。しかし序盤のフォワード展開と【19-108L】《ジタン》のプランの両立は実際難しいのでは? という印象も受けます。

正義:その点でいうと私の想定しているゲームプランでは、「火雷【XIII】」のセオリーである1ターン目の【19-129S】《ヴァニラ》+【19-137S】《ホープ》というスタートは考慮していません


――それは意外ですね。どういったゲームプランを考えられているのでしょうか?

正義:基本的に立ち上がりとなる1ターン目は【19-129S】《ヴァニラ》か【19-137S】《ホープ》をどちらか1体だけ出し、2ターン目に【19-108L】《ジタン》で安全確認しつつ、【カテゴリ(XIII)】のフォワードでのアタックは【19-138S】《ライトニング》を含め2体だけという想定で考えています。

こうすると【19-138S】《ライトニング》のポテンシャルを発揮しきることはできませんが、少なくとも1ドローはできるので【19-138S】《ライトニング》にかけた分のコストは回収できますし、フォワードが生き残りやすくなることで、後続のターンに【19-138S】《ライトニング》で詰める動きがとりやすくなります。序盤から最大限の動きを狙わなくても、最終的なキルターンは変わらないので、このデッキのゲームプランでは立ち上がりをややミッドレンジ気味に想定しています。

――なるほど。それではここからは個々の採用されているカードについてお聞きしていきたいと思います。

正義:まず【カテゴリ(XIII)】のパッケージについてですが、デッキの核となる【19-138S】《ライトニング》、【19-129S】《ヴァニラ》、【19-137S】《ホープ》、【19-136S】《ノエル》、【18-013R】《ファング》はそれぞれ3枚ずつの採用です。これについては今さら私から話すこともないかと思います。

次に【1-007R】《ガドー》と【10-004H】《カイアス》は先ほど話したように【19-108L】《ジタン》をフィールドに送り込む手段として採用しています。【10-004H】《カイアス》は原案となったデッキには採用されていませんでしたが、コスト4、パワー9000というスタッツが【17-090R】《イクシオン》や【15-082H】《ヘカトンケイル》といった対「火雷【XIII】」を見据えるうえでの除去カードの範囲から外れるため生き残りやすかったり、最近はやり始めたアグロ系の「水単」の除去が【1-178R】《リヴァイアサン》などバウンスに寄っていることから、除去されてもデメリットを受けにくいことが追い風となり、非常に使用感がよかったため、自分の構築では2枚採用としています。

【19-135S】《シド・レインズ》はカードのスタッツだけで見ればアグロ向きのカードではありませんが、現環境では【19-128L】《ウォーリアオブライト》や【18-054L】《ガラフ》、【18-116L】《セフィロス》といった単体で「火雷【XIII】」対策となるカードが多く、これらのカードに対して隙を見せられないという意識から3枚採用としています。


――意外に感じているのが、【13-124C】《ノエル》の採用です。確かに相性自体は悪くありませんが、フォワードの展開を重視するこのデッキでは【19-136S】《ノエル》とカード名が重複しているのは小さくないデメリットではないでしょうか?

正義:【13-124C】《ノエル》の採用意図は【3-020H】《フェニックス》とのシナジーを考慮した結果です基本的に「火雷【XIII】」は攻め性能こそ高いものの、防御性能はからきしで、一度相手に攻め入られると切り返す手段がほとんどありません。そのため、ミラーマッチなどで「あと1ターンあれば攻めきれるのに……」といった負けパターンも少なくないのですが、そういった局面で【3-020H】《フェニックス》を合わせることで、勝つための1ターンを獲得できます

【13-124C】《ノエル》はそんな【3-020H】《フェニックス》でブレイクゾーンから蘇生させるカードのなかで、もっとも高いポテンシャルを秘めているカードです。


フィールドに出たときフォワード2体に2000ダメージを与えてダルにすることで相手の打点を大きくずらせる点は特に優秀で、現在「火雷【XIII】」メタとして採用されている【18-054L】《ガラフ》+【16-136S】《アーロン》のセットを無効化できる点は明確にこのカードにしかできない芸当です。


【3-020H】《フェニックス》と合わせて4000ダメージが与えられるという点では、先ほどの【16-136S】《アーロン》のほか、このデッキの天敵のひとつである【15-011L】《パロム》と【15-119L】《ポロム》を経験値カウンターが乗る前に倒せるといった役割もあります。ヒチウさんのデッキのこうした要素に注目しつつ、これらの強みをより伸ばしたいということで、【3-020H】《フェニックス》も3枚に増量しました。

また、デッキリストを改めて見ていただくとわかると思うのですが、このデッキは雷属性のカードをかなり絞っています。これは火属性のキャストを安定させるためにできるかぎりスロットを削減した結果なのですが、多属性である【13-124C】《ノエル》は当然、火属性の枚数を維持しつつ雷属性の頭数も兼ねてくれます。前述のとおり、できるだけブレイクゾーンから出したい【13-124C】《ノエル》の運用ともかみ合っている、非常に優秀なコスト要員となるカードです。このほかにも【10-004H】《カイアス》のオートアビリティで出しつつ【10-004H】《カイアス》にヘイストを与える動きでブロッカーを越えつつ攻められる点など、デッキのさまざまなカードとシナジーを生むカードでした。

――デッキの苦手分野を補いつつ、デッキの基盤も支えてくれるカードということですね。これは目から鱗でした。ヒチウさんのデッキと違う点といえば、【カテゴリ(XIII)】である【19-005C】《サッズ》や【19-007C】《ドッジ》は採用されていないですね。

正義:【19-005C】《サッズ》と【19-007C】《ドッジ》のパッケージの強みとして、この2枚から展開し、【18-013R】《ファング》を絡めることでコスト2のフォワードを手札を消費せずキャストできるようになることが挙げられると考えていたのですが、この2枚をキャストするということは、本来使いたかった火属性のカードをコストにしてしまっているのではないかという考えから採用を見送ることにしました

先ほど話したように、火属性をキャストしやすくするために雷属性を絞った構築を目指しているなか、こうした要素はデッキの方向性と異なるのではないかなと思っています。

またこのパッケージからスタートするゲームは、デッキのアグロプランを伸ばしてくれますが、私が目指している若干ミッドレンジを意識したデッキの方向性ともずれている気がします。

――たしかに【19-005C】《サッズ》は初手の【19-129S】《ヴァニラ》、【19-137S】《ホープ》の脅威度を高めてくれますが、ゲームが長引くほどその脅威は薄れていきます。ですが【19-005C】《サッズ》、【19-007C】《ドッジ》のパッケージは採用していないものの、バックアップは10枚と「火雷【XIII】」としてはかなり多くのスロットを割いていますね。

正義:そうですね。先ほども話したようにバックアップが置けていると【18-013R】《ファング》のバリューが上がるので、可能な範囲で置きたいと思っています。キーカードをサーチできる【18-014R】《ミース》と【13-085R】《ルミナ》は重ね引いて手札でだぶつくことを嫌って2枚採用としていますが、カード単体のバリューが高い【16-104R】《リーブ》と【13-014R】《ラーケイクス》はそれぞれ3枚としています。フィールドに出た後、アクティブになる機会が少ないというデメリットは共通していますが、【10-004H】《カイアス》を考慮すると複数回フィールドに出せる機会も多いので、試合中に複数引けたときのバリューを買っての採用です。

◆「火雷【XIII】」にさらなる進化はあるのか?
――「火雷【XIII】」は構築に差が出にくく、メタゲームにおいてもアグロデッキという大きな括りで考えられがちで、プレイの介在する余地が少ないデッキという印象でしたが、フォワードを展開するターンや数といったわずかな差で、ここまで戦えるようになるというのは正直驚きました。

正義:実際、大会当日も「氷雷」にきっちり勝ち切ることができたので、単純にこれまで言われていた相性どおりのデッキではないのではないかと自分でも感じています。現在はさらに研究も進んで「氷雷」相手にはあえて後攻を取るほうがいいのではないかという議論もあり、環境の終盤ではありますが、メタゲームの関係性を大きく変える可能性もあると考えています

――大阪大会の「氷雷」での優勝からの、津大会の「火雷【XIII】」での優勝と、環境の変遷を体現するかたちでの連覇でしたね。

正義:「氷雷」もこちらの座談会記事をきっかけに使ってみようと思ったデッキだったので、周りのプレイヤーからいい影響を受けられた結果だったと思います。

――正義さんにとってはノリに乗ったシーズンだったと思います。次なるシーズンでの活躍にも期待がかかりますね。では最後に「日本選手権 2023」決勝大会に向け一言いただければと思います。

正義:ありがたいことに「悪夢より来たる」環境では連覇という結果を残すことができたので、「英雄の夜明け」環境もよい成績を残せればと思います。あとは大会に出る先で、みんなでおいしいごはんを食べたいですね。

――ありがとうございました。大会後の食事会は次回もぜひ行きましょう(笑)。

◆おわりに
今回は「日本選手権 2023 Summer」大阪大会・津大会で連覇を果たした正義さんに、環境に一石を投じた新型「火雷【XIII】」のお話をうかがいました。構築やゲームプランの小さな差に着目し、メタゲームのあり方を大きく変えるすばらしいアプローチだったと思います。この変化がスタンダードにどんな影響を与えるか、残る諏訪大会の結果にも注目です。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!