『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS 22-23 THE AFTER」で優勝した、かきさんのインタビューをお届けします。
◆はじめに
みなさん、こんにちは!
『FFTCG』公式記あ事ライターのたるほです。
前回の「MASTERS 22-23 FINAL」優勝者インタビューに引き続き、今回は「MASTERS 22-23 THE AFTER」の優勝者インタビューをお届けします。
両大会の様子は公式YouTubeチャンネルのアーカイブから視聴できますので、あわせてチェックしてみてください。
「MASTERS 22-23 FINAL」
「MASTERS 22-23 THE AFTER」
「MASTERS 22-23 THE AFTER」は全国の「MASTERS」予選大会で上位入賞したプレイヤーが参加できる大会で、僕も前日から引き続き最強の称号を勝ち取るべく参加していました。
予選ラウンドを運よく全勝で1位通過し、臨んだ準々決勝の相手は今回の優勝者でもあるかきさんで、こちらもベストな手札で立ち上がったものの、かきさんの3連続EXバーストの前にあえなく敗退、ベスト8という結果で終わってしまいました。2日連続で悔しい結果となってしまいましたが、これも一つの結果ということで受け入れ進んでいきたいと思います。
今回は準々決勝で僕を破り、そのまま頂点まで駆け上がったかきさんにインタビューを行ない、優勝の喜びと、頂点に至った「火雷【XIII】」についてお話をうかがいました。
◆トーナメントを駆け抜けた雷光。かきと「火雷【XIII】」
――「MASTERS 22-23 THE AFTER」優勝おめでとうございます。
かき:ありがとうございます。
――まずは率直に「MASTERS 22-23 THE AFTER」を優勝した今のお気持ちを教えてください。
かき:これまで『FFTCG』を続けてきたなかで優勝というものとはあまり縁がなくて、「Opus」シリーズに入ってからはショップイベントを含めても優勝の経験はものすごく久しぶりのものでした。今回の「MASTERS 22-23 THE AFTER」も、『FFXIII』好きの友人がトップ8賞品のプレイマットを欲しがっていて、その人のために上位入賞できればいいな、くらいのモチベーションで参加していたんです。「勝つぞ!」という意気込みではなかったので、「うれしい!」よりも「あらまあ」という驚きの感情が先に来ているというのが正直なところです。
●「火雷【FFXIII】」(「MASTERS 22-23 THE AFTER」優勝 フォーマット:L3構築)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(38枚) | ||
【19-138S】 | 《ライトニング》 | 3 |
【19-129S】 | 《ヴァニラ》 | 3 |
【19-131S】 | 《ファング》 | 1 |
【18-013R】 | 《ファング》 | 3 |
【17-132S】 | 《ゼムス》 | 1 |
【16-011L】 | 《スコール》 | 3 |
【16-012R】 | 《朱雀》 | 3 |
【19-137S】 | 《ホープ》 | 3 |
【19-136S】 | 《ノエル》 | 3 |
【19-135S】 | 《シド・レインズ》 | 3 |
【18-137S】 | 《アラネア》 | 3 |
【18-074L】 | 《ギルガメッシュ》 | 3 |
【16-096R】 | 《白虎》 | 3 |
【18-122H】 | 《ヴァニラ》 | 3 |
バックアップ(3枚) | ||
【17-012R】 | 《ティファ》 | 3 |
召喚獣(7枚) | ||
【17-014R】 | 《バハムート》 | 3 |
【18-005C】 | 《サラマンダー [FFT]》 | 1 |
【18-084C】 | 《ラムウ》 | 3 |
モンスター(2枚) | ||
【18-008H】 | 《2ヘッドドラゴン》 | 2 |
――ご自身でも予想外の結果になったということですね。ですが今回使用されたデッキは「火雷【XIII】」と、しっかりとメタゲームを見定めたデッキ選択だったと感じます。「カスタムスターターセット FINAL FANTASY XIII」で収録された強力な【カテゴリ(XIII)】のパッケージを主軸としたデッキで、前週に行なわれた「MASTERS 22-23」東京大会でも優勝しており、今大会でも特に注目されていたデッキの1つだったかと思います。まずはかきさんが「MASTERS 22-23 THE AFTER」で「火雷【XIII】」を使おうと決めた経緯について聞かせてください。
かき:L3構築のデッキについては「カスタムスターターセット FINAL FANTASY XIII」の新カードが強力だと感じていて、もともと自分自身アグロデッキが好きだったこともあり「MASTERS 22-23 THE AFTER」には【19-138S】《ライトニング》を軸とした「火氷」「火雷」「氷雷」のいずれかのデッキで参加しようと考えていました。
そんななか「MASTERS 22-23」東京大会の前日に友人ら数人と「MASTERS 22-23 THE AFTER」に向けてL3で遊ぼうと集まったときに、しどさん(※「MASTERS 22-23 FINAL」でも準優勝した、『FFTCG』第3期名人としても知られるプレイヤー)から「アグロデッキを使うなら安定感がある「火氷【XIII】」がおすすめだよ」と聞き自分で使ってみたところ、非常に使用感がよく手になじむものでした。
――安定感というのは「火雷」や「氷雷」と比較しての話かと思いますが、具体的にどういった点に魅力を感じたのでしょうか?
かき:「火氷【XIII】」の魅力は、【17-015H】《バハムート・ウォロー》、【17-035R】《バハムート・ペイシオ》、【17-036R】《バハムート・レイシオ》の存在による安定性の高さで、【カテゴリ(XIII)】のキャラクターが充実することはもちろん、【19-138S】《ライトニング》軸デッキの共通の天敵である【17-090R】《イクシオン》に対して後続をサーチし戦線を維持できる点にあります。【16-032H】《セラ》のようにアドバンテージを稼げるフォワードもいるため展開力もあり、自分の好きなデッキだったので、大会直前までは「火氷【XIII】」を使うつもりでいました。
それ以降は特に調整を行なうこともなく、「MASTERS 22-23 THE AFTER」の前日まで過ごしていたのですが、大会前日の日付が変わるころに、ふと「どうせアグロデッキを使うなら、よりヘイストや除去が充実している「火雷」型の構築のほうが自分に合っているな」という思いが心をよぎりました。そこであらためて「火雷」型にしようと思い立ち、今回使用した「火雷【XIII】」に行き着いたという流れです。
――大会前夜に天啓が降りてきたということですね。ヘイストや除去が多いのが「火雷【XIII】」の特徴ということですが、具体的にどういった強みがあるのでしょう?
かき:基本的に【19-138S】《ライトニング》、【19-129S】《ヴァニラ》、【19-137S】《ホープ》がワンパッケージで強力でありつつ、【18-013R】《ファング》や【19-136S】《ノエル》といった【カテゴリ(XIII)】の面々が充実しているのが「火雷」型の魅力です。
そのなかで特に【19-129S】《ヴァニラ》のスペシャルアビリティ「ウィーガ」がめちゃめちゃ強くて、「火氷【XIII】」の段階から感じていたことなのですが、「これを1回打っただけで盤面の状況がすごく変わるな」という印象がありました。【19-129S】《ヴァニラ》はサーチが終わればパワー7000とフィールドであまり脅威となるカードではないのですが、「ウィーガ」を使えば相手のフォワードに与えるダメージが倍になるため手札1枚でフィールドのフォワードすべてが格上のフォワードと相打ちできるようになったり、【16-011L】《スコール》や【17-014R】《バハムート》が複数体除去を狙えるようになったり、【18-084C】《ラムウ》の除去できるリーチが伸びたりと、「ウィーガ」を2回使ってもいいですし何かとの合わせ技で相手の盤面に強く干渉できるようになるのが非常に強力でした。
それでいて、コスト軽減ができる【18-013R】《ファング》や単純に【19-129S】《ヴァニラ》よりパワーの高い【19-137S】《ホープ》に除去が向かうため、【19-129S】《ヴァニラ》自身が相手目線では除去の優先順位で低くなりやすいのも【19-129S】《ヴァニラ》の強さを後押ししてくれた要素だと考えています。
スペシャルアビリティの発射台として生存率の高い【19-129S】《ヴァニラ》に目を付け、より「ウィーガ」が狙えるよう【18-122H】《ヴァニラ》まで採用したのが今回の「火雷【XIII】」の構築のポイントです。
――確かに土と雷属性の【18-122H】《ヴァニラ》であれば、最低限コストとしての役割を残しつつスペシャルアビリティの弾として採用することが可能ですね。
かき:実は【18-122H】《ヴァニラ》にはもう1つ役割があって、それが【18-074L】《ギルガメッシュ》とのセットアップでの使用を見据えての採用です。
基本的に【18-074L】《ギルガメッシュ》はミラーマッチで相手の【19-138S】《ライトニング》、【18-013R】《ファング》、【19-136S】《ノエル》といったコスト2のフォワードを除去する目的で採用されていると思うのですが、【19-138S】《ライトニング》に加えて【18-122H】《ヴァニラ》まで採用されているこのデッキでは、コスト3のフォワードの除去までは無理なく狙えて、場合によってはコスト4のフォワードまで狙えるようになります。
これにより「火氷【XIII】」の【17-015H】《バハムート・ウォロー》、【17-035R】《バハムート・ペイシオ》、【17-036R】《バハムート・レイシオ》といったパッケージや【18-107L】《アクスター》、「氷雷」の【18-116L】《セフィロス》や【18-019R】《ヴァイス》、ミラーマッチの【19-129S】《ヴァニラ》や【19-137S】《ホープ》などの対処が容易になります。
「火雷【XIII】」と対面するとき、相手の頭の中には「【19-138S】《ライトニング》をいかに対処するか」「【19-138S】《ライトニング》を対処するカードはどれくらいコストをかけて処理されるか」という思考があると思うのですが、【19-138S】《ライトニング》と【18-122H】《ヴァニラ》の存在でその計算を狂わせられる【18-074L】《ギルガメッシュ》は非常に強力でした。
デッキを形にした段階では2枚採用だったのですが、ミラーマッチではお互いにダメージが進みやすく、2回アタックできる効果も使いやすくなるので、それならさっさと引きたいから3枚採用しようと考えすぐに増量しました。
――【カテゴリ(XIII)】パッケージに注目しつつも特に【19-129S】《ヴァニラ》にフォーカスしたデッキづくりを心がけたということですね。
かき:はい。「火雷【XIII】」の持つゲーム構造って、大体の展開がなるべく早いターンから【19-138S】《ライトニング》でアタックしてダメージレースを仕掛けつつドローしてゲームの流れをつくり、相手がやっと追いついて【19-138S】《ライトニング》を除去したとしても相手は受ける姿勢になっているのでそこに後続のアタッカーや除去を追加して立て直す隙を与えず攻め続け、相手が受けに回り続けることでこちら側には徐々に攻めに使える手札が生まれるので、最後にそのリソースを【18-137S】《アラネア》や【18-120H】《ティファ》に注ぎ込んで勝つというものなんです。なので、このデッキではとにかく後続が途切れないように、基本的に【18-122H】《ヴァニラ》以外のカードはアタックできるか除去ができるかの2つの役割のカードだけを採用して、引いたカードは全部攻めに使えるかたちにしています。
――なるほど。では続いて、個々のカードについてお話を聞いていきたいと思います。まず【19-131S】《ファング》、これも「カスタムスターターセット FINAL FANTASY XIII」からの新カードですが、採用は1枚にとどまっていますね。
かき:【19-131S】《ファング》は2枚採用している方が多い印象ですが、個人的には【18-013R】《ファング》を絶対に置きたいので、【17-014R】《バハムート》とのセットでの運用などは一切考えていません。
ただ【19-129S】《ヴァニラ》を出したとき、火属性のCPが欲しいタイミングで【19-131S】《ファング》をサーチするとデッキの中身が弱くなってしまうので、心置きなくコストにできるスロットとして1枚採用しているという感じです。なので、キャストするタイミングはほとんどないものと割り切って採用していました。
――アグロデッキということで【16-011L】《スコール》も3枚の採用となっています。
かき:もとから意図していた【19-129S】《ヴァニラ》で「ウィーガ」を打つ構築の都合上、一度スコールがアタックできれば相手の盤面が壊滅すること、対「氷雷」を考えたときに【18-019R】《ヴァイス》がアンタッチャブルなブロッカーになると若干突破が厳しくなるのですが、そこで【16-011L】《スコール》がアタックできれば誰でも【18-019R】《ヴァイス》と相打ちをとれるようになることが強力なフォワードでした。実際、決勝の3本目も【16-011L】《スコール》がアタックしたことで後続の【19-137S】《ホープ》が【18-019R】《ヴァイス》と相打ちできて盤面をこじ開けられました。
ヘイスト+ダメージのバラマキができるというかゆいところに手が届くフォワードだったので、次回環境のL3構築で採用できなくなることがもっとも悔やまれるカードだと思っています。
――【18-137S】《アラネア》と【19-135S】《シド・レインズ》はアグロデッキとしてはコストが重めのカードではありますが、これらも3枚ずつ採用されていますね。
かき:【18-137S】《アラネア》はEXバースト込みでオートアビリティが強力であることはもちろん、相手に【19-135S】《シド・レインズ》を出されたときに先制攻撃を持つフォワードがいないと【16-011L】《スコール》などでも突破できなくなってしまうことを意識して3枚採用しました。仮に先制攻撃がなくても採用枚数自体は変わらなかったとは思うのですが、これがあることで【18-137S】《アラネア》のバリューが非常に高くなったのは間違いありません。
【19-135S】《シド・レインズ》はヘイストがないぶん、【18-137S】《アラネア》と比べて若干使いにくさを感じる部分もあったのですが、【17-091L】《エクスデス》や【18-054L】《ガラフ》といった「火雷【XIII】」で対処しにくいコスト4のフォワードを一撃でサクッと倒せるコスト参照の除去として必要だなと考え採用しました。正直、【18-013R】《ファング》があることを考慮してもかなりコストの重いフォワードではあるのですが、相手のパワーに関係なく除去できるというカードはそれだけで価値があると考えています。【17-132S】《ゼムス》の採用理由も同様で、4枚目の【19-135S】《シド・レインズ》として採用しました。
――かきさんの構築でもう1つ特徴的かなと感じているのが【16-012R】《朱雀》と【16-096R】《白虎》の採用です。
かき:最初に「火雷【XIII】」を考えた段階では、このスロットにはEXバーストとして【18-007C】《セルフィ》や【17-094C】《ガリークランのシド》、【18-077R】《シド・ソフィア》といったバックアップを候補に考えていたのですが、1人回しをしつつEXバーストが発動する状況を考えたときに、これらのカードがEXバーストするタイミングで、回収できるカードがブレイクゾーンにないのではということに気が付きました。
また、そもそも1ターン目からフォワードを展開してアタックしようというデッキにとって、バックアップを展開すること自体が強い行動ではありません。
たとえば『FFTCG』ではコスト2のバックアップをキャストするためにはコスト用のカードと出すカードで手札が2枚必要となり、実質4CPかかるのですが、それだけコストをかけたにもかかわらず、フィールドに出たターンには何もしません。
次のターンにバックアップがアクティブになり、初めて1CP生み出すことができるのですが、最初にかけた4CPを取り返すまで5ターンかかってしまいます。
ですがこのデッキは5ターンで相手を倒すデッキなので、バックアップを置くことに意味がないなと考えたとき、フォワードでありサーチによってEXバーストの役割を確実に果たせる【16-012R】《朱雀》と【16-096R】《白虎》が適任だろうと考え採用に至りました。
もちろん【16-012R】《朱雀》と【16-096R】《白虎》に期待していた働きは、ただEXバースト要員という点に留まりません。
【19-137S】《ホープ》や【19-129S】《ヴァニラ》があるとはいえ、「火雷【XIII】」と対峙するプレイヤーは【19-138S】《ライトニング》を目の敵にして対策してくるので、【カテゴリ(XIII)】パッケージで安定して攻められるかというと実際には難しい面もありますが、そういった状況でも【16-012R】《朱雀》と【16-096R】《白虎》はアタック時にダメージを与えたり、ブロッカーをダルにして突破力を与えてくれるという役割を持っています。
お互いをサーチしあえる補完関係にあるため除去されても後続の確保が容易で、実質的にかかるコストも2CPという実はアタッカーとして破格の強さを持つフォワードといえます。この2枚は、デッキが【19-138S】《ライトニング》に依存しきらず戦ううえできわめて重要なパッケージだと考えています。
――結果的にデッキのバックアップは【17-012R】《ティファ》3枚のみが採用されたかたちとなったわけですね。
かき:【17-012R】《ティファ》に関してもバックアップとしては捉えていなくて、【18-137S】《アラネア》や【19-135S】《シド・レインズ》と同質のカードだと考えています。なので単純に【17-012R】《ティファ》がコスト6パワー8000のフォワードだったとしても使いましたし、同じテキストのモンスターだったとしても使いました。たまたまカードタイプがバックアップだったというだけですね。相手のオートアビリティで除去されないという点がこのデッキにおける【17-012R】《ティファ》がバックアップであることの唯一のメリットで、バックアップとしてCPを生み出す役目は期待していませんでした。
――実質的にはバックアップを採用していない構築になっていると。次に召喚獣についても聞きたいのですが、【カテゴリ(XIII)】のギミックを使ったデッキでは【19-130S】《バハムート》を採用するケースが多いと思いますが、かきさんの構築では【19-130S】《バハムート》は採用されておらず、【17-014R】《バハムート》が3枚採用されています。これは先ほどの【19-129S】《ヴァニラ》で話していた内容を考慮してのことでしょうか?
かき:もちろん【19-129S】《ヴァニラ》と相性がいいというのもあります。それに加えて【19-130S】《バハムート》は元のコストが5で、たしかにコスト軽減して2CPで使えれば強いのですが、そういった状況では【カテゴリ(XIII)】のフォワードが3体並んでおり、フォワードのパワーが高くなっているので【19-130S】《バハムート》で除去しなくてもパワーで押し切ることが可能です。逆にこちらのフォワードが除去され【19-137S】《ホープ》1体だけになってしまったみたいな状況で、バックアップを置かないデッキが手札3枚をコストに【19-130S】《バハムート》をキャストするのか? と考えたとき、それはあまりにも苦しいんじゃないかなと思いました。
また対「氷雷」とのマッチアップで、相手ターンに手札を0枚にしたいタイミングが絶対にあると考えたのも【17-014R】《バハムート》を採用した理由の1つです。
おそらく「氷雷」はアグロデッキへの対抗策として【18-019R】《ヴァイス》と【16-038H】《ビブロス》を展開し手札破壊をしてくることだろうと想定しており、そのタイミングで【17-014R】《バハムート》で【18-019R】《ヴァイス》を除去しつつ手札を0にできれば相手が意図していた2体をダル凍結してブロッカーも立てるというプランを崩しつつ、相手が手札を捨てさせるために使ったリソースを全部空費させられると考えました。
このほかにも【16-011L】《スコール》など組み合わせて強いパターンも多く、これらを総合的に考えたとき、「火雷【XIII】」で採用するなら絶対【17-014R】《バハムート》のほうがデッキに合っていると思い【17-014R】《バハムート》を3枚採用しました。
【18-005C】《サラマンダー [FFT]》についても、【19-129S】《ヴァニラ》や【16-011L】《スコール》との相性のよさから採用しています。ただこちらは組み合わせ前提のカードかつ奇数コストなので、あくまで1枚採用に留めています。
【18-084C】《ラムウ》は主に【19-138S】《ライトニング》に対する切り返しを意識して採用しています。また「火氷【XIII】」の【17-035R】《バハムート・ペイシオ》がこちらの高パワーフォワードと簡単に相打ちをとりつつ後続をサーチしてくるので、そこで有利にトレードされないように意識していたのも採用の1つの理由です。環境に存在する有力なフォワードのなかにパワーの低いものが多いことや、ほかの手段と合わせての除去のしやすさもありかなり重宝したカードです。
◆やりたいことを貫く胆力がもたらした勝利
――今回かきさんは「MASTERS 22-23 THE AFTER」という大舞台を「火雷【XIII】」で駆け抜けたわけですが、個人的に大きなトーナメントになるほどアグロデッキが安定して勝ち切るのは難しいと思っていて、このような場で今回の「火雷【XIII】」のような尖りきったデッキ選択をできるかきさんの胆力には脱帽しています。攻め一辺倒に特化したデッキを使うことに僕は躊躇してしまうのですが、そういったプレッシャーなどはなかったのでしょうか?
かき:“胆力”という言葉は当日もいろいろな方に言われたんですが、メタゲーム的にも「氷雷」が多いと予想していたので【17-090R】《イクシオン》を3枚採用しているデッキも多いと踏んでいました。ただ、根本的なスタイルとして私は“自分の使いたいデッキを、自分のやりたいプレイングで使う”ことが一番好きで、日和って自分のプレイを曲げるくらいなら、やりたいこと全部やって負けたほうがマシだと考えています。
たとえば「火雷【XIII】」を握った以上【17-090R】《イクシオン》が苦手になるのは明白ですが、こちらが手札破壊などの対策を講じない以上、打たれたら負けという局面はどうしても存在するし、日和ってプレイしても相手の手札から【17-090R】《イクシオン》がなくなるわけではありません。
むしろ時間がたつほど【17-090R】《イクシオン》を引かれてしまうリスクは高くなっていくし、【18-116L】《セフィロス》や【18-073H】《ガルーダ [III]》といったカードを引かれる可能性も増していきます。それなら初手から攻めにオールインするのがもっともリスクが少ない選択肢なので、そこに賭けて自分のプレイを全うしたかったのです。
このデッキを使うと決めた時点で、全力で殴りきるんだと決めていて、相手にビビッて自分のプレイスタイルを緩めて負けたら、全部出し切って負けるよりも絶対に後悔するのでそれは絶対にやめようと決めていました。
――僕を含め、プレイヤーなら誰しもがリスクの少なく見えるプレイに逃げたくなることはあると思いますが、そこで自分を曲げることを一番嫌っていたと。たしかに今のお話を聞くと、論理的にも消極的なプレイをしないことのほうが「火雷【XIII】」においてもっともリスクの少ない行動を選択できていると感じます。そういったポリシーや胆力は今回の優勝という結果に如実に現れていると思います。僕は準々決勝でかきさん相手にEXバーストを3枚めくられて負けてしまいましたが、お話を聞いたうえで思い返してみると、それを見越して勝つための最善手を打たれたからこそ、あの結果が生まれたのだとあらためて感じますね。
かき:あの試合では確か後攻1ターン目に【19-136S】《ノエル》のヘイストアタックからゲームを始めたと思うのですが、普通なら【19-136S】《ノエル》は【19-138S】《ライトニング》とセットで使うことを想定していますし、その前提で考えればあのプレイは一見正しくないように映ったかもしれません。ただあの場面、あの手札でなんとか勝ちを拾おうとしたときにあれがベストだと考えてのプレイでした。
――結果的にこちらもダメージレースに乗っからなければならなくなり、その結果のEXバーストだったということですよね。それを見越してEXバーストの枚数を増やした構築だったわけですから、やはりあの試合、負けるべくして負けたのかなと思います。
かき:こう言うとあまり気持ちよく感じない方もいるかもしれませんが、私自身あまり勝ちたいという欲を持って『FFTCG』をプレイしているわけではないんです。もちろん勝てばうれしいですが、それは自分の使いたいデッキを使ってやりたいプレイをした副賞のようなものだと思っていて、それができるのであれば結果が全敗であってもかまわないと思っています。それこそ前週の東京大会は【18-055R】《クルル》のフルアート版が使いたいから残り47枚は何にしようかというところから作り始めたデッキを持ち込んでいました。
今回も【19-129S】ヴァニラの「ウィーガ」にフォーカスしたときに思いついた【18-122H】《ヴァニラ》と、それと相性のいい【18-074L】《ギルガメッシュ》のコンボ、そして【16-012R】《朱雀》と【16-096R】《白虎》のデッキとのシナジーを試したくて「火雷【XIII】」を選択したわけで、やりたいことをやった結果、それが勝ちにつながることと重なっていたからこそ勝利できたんだと思います。
一時期は勝ちたい気持ちで『FFTCG』に取り組んでいたこともあったのですが、それだけだとどうしても勝てなかった大会がつまらないものになってしまうことが多かったので、今はそうではない『FFTCG』の魅力を楽しむことに全力で取り組んでいます。今だったら描き下ろしのフルアートカードだけでデッキを組んでみたり、大会後みんなで食事に行ってプレイヤー同士の交流を深めたりなどが楽しいですね。
――無欲、というよりは欲の在り処が勝利ではないということですね。では最後にあらためて「MASTERS 22-23 THE AFTER」優勝という結果についてや、今後について一言いただいてもよろしいでしょうか?
かき:いままで正直強いプレイヤーということにそれほど興味がなくて、Twitterでつながっていなかった方も多かったのですが、今回優勝したことで新しいプレイヤーとの交流が生まれたのが非常にうれしかったですね。私自身、初心者交流イベントを主催しているので、そういう意味でも今回の優勝は今後にもつながっていく契機だったと思います。ただ、もちろんこれはひとつの結果として、今後も自分の使いたいデッキややりたいプレイに忠実に、自分なりに『FFTCG』を楽しんでいければと思っています。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回はみごと「MASTERS 22-23 THE AFTER」優勝を果たしたかきさんにインタビューを行ない、シーズン納めの大会を走り切った「火雷【XIII】」についてお話をうかがいました。
自分を曲げないというかきさんの断固たる意志と、それに応えるだけのポテンシャルを発揮した「火雷【XIII】」というデッキの強さが生み出したみごとな結果だったと思います。
あらためてかきさん、「MASTERS 22-23 THE AFTER」優勝おめでとうございます。
さて「MASTERS 22-23 FINAL」&「MASTERS 22-23 THE AFTER」も終わり、次なるブースターパック「悪夢より来たる」の発売が迫ってきました。4月からは「日本選手権 2023 Spring」も控えており、今後も『FFTCG』の盛り上がりは収まることはなさそうです。
こちらの大会も引き続きインタビューを通じて注目選手や注目デッキをお届けしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
次回は「悪夢より来たる」の注目カードをご紹介したいと思いますので、そちらもぜひお楽しみに。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!