【FFTCG】大会こそもっとも優れた修業の場 ~「MASTERS22-23」千葉大会優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS 22-23」千葉大会を「【火土水】リディア」で優勝したひれひれ(∵)さんのインタビューをお届けします。

◆はじめに
みなさん、こんにちは!『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
今年も『FFTCG』の一大タイトルである公式トーナメント「MASTERS」が始まりました。
「MASTERS 22-23」は全国24か所で予選が開催され、各予選の優勝者は2023年に開催される予定の「MASTERS 22-23 FINAL」、上位入賞者は「MASTERS 22-23 THE AFTER」への参加権を手にします。

今シーズン初の開催となった「MASTERS 22-23」千葉大会は、その前週に開催された「第四期名人位決定戦」の結果を受けて、「風単【キャスト】」や「風氷」といった風属性を主軸にすえたデッキや「【モールズの夜会】」などがメタゲームの中心になるのではないかと予想されました。そして、蓋を開けてみると今大会では「【モールズの夜会】」に対して相性がよいとされる風属性がベスト8のデッキの実に半分に採用されているという結果となりました。

そんななかで優勝したのは、昨年末の「MASTERS 2021 THE AFTER」の王者でもあるひれひれ(∵)さん。除去が手薄という風属性デッキの弱点をついて、システムフォワードを中心にした「火土水【リディア】」を選択して勝ち上がり、決勝戦では前評判で相性が悪いとされるえあさんの「氷土」相手にも勝利し、優勝を果たしました。

今回は、いち早く「MASTERS 22-23 FINAL」への切符を手にしたひれひれ(∵)さんにインタビューを行ない、新環境のスタンダードフォーマットを勝ち抜いた「火土水【リディア】」のお話をお聞きしました。


◆献身とリスペクトが生んだ「火土水【リディア】」
――「MASTERS22-23」千葉大会優勝おめでとうございます。
ひれひれ(∵):ありがとうございます。

――「MASERS22-23」は通常のスタンダードフォーマットとしては「反撃の雄たけび」環境で初となる公式トーナメントで、前週に行われた「第四期名人位決定戦」の2デッキスタンダードとは異なる視点でのデッキ選択が必要なトーナメントだったと思いますが、ひれひれ(∵)さんは、今回なぜ「火土水【リディア】」を選択されたのでしょうか?

ひれひれ(∵):現在、私が勤めている「グランドパンダキャニオン(東京・秋葉原にあるカードショップ)」では、ありがたいことに『FFTCG』を始める新規プレイヤーの方が多く、スタッフとしてそういったお客さまと『FFTCG』をプレイするにあたって、メジャーなデッキのなかで自分の周りに使用者が少ない「火土水【リディア】」を用意することで、より多くのデッキを体験する機会になればと考えたのが、今回構築に至った理由の一つです。

また「第四期名人位決定戦」のとき、関東以外の地域のプレイヤーと食事をする機会があり、そのときriruさん(和歌山のプレイヤー。「MASTERS2021 FINAL」、「MASTERS2021 THE AFTER」の両大会で準優勝している)から「火土水【リディア】」を勧められたことも構築の動機になりました。

――riruさんのコミュニティは「火土水【リディア】」を熱心に調整しているという印象はありますね。「第四期名人位決定戦」では同じコミュニティの方が「火土水【リディア】」を使用して予選ラウンドを突破されていましたし、実力は折り紙付きのデッキだと思います。構築で影響を受けた面も多いのでしょうか?

ひれひれ(∵):今回は自分のオリジナルな要素を組み込むことはせず、riruさんにお聞きした構築と、「第四期名人位決定戦」で初代“『FFTCG』名人”のハリガイさんが使用していたリストをリスペクトして、デッキを作らせていただきました。具体的には、バックアップの構成はハリガイさんの構築を、召喚獣とフォワードはriruさんとハリガイさんの構成を参考にカードを選択しています。

●デッキリスト:「火土水【リディア】」(「MASTERS 22-23」千葉大会優勝 フォーマット:スタンダード)

カード番号 カード名 枚数
フォワード(15枚)
【15-083L】 《リディア》 3
【17-065H】 《アシェラ》 1
【15-011L】 《パロム》 3
【10-132S】 《ティナ》 1
【15-119L】 《ポロム》 3
【16-136S】 《アーロン》 2
【17-123L】 《ミンウ》 2
バックアップ(10枚)
【7-069C】 《コルカ》 2
【11-012C】 《タツノコ》 1
【13-006C】 《ザンデ》 1
【3-143C】 《レオノーラ》 2
【10-112H】 《サラ》 3
【11-128H】 《セーラ姫》 1
召喚獣(25枚)
【10-068C】 《クーシー》 3
【17-070R】 《タイタン》 2
【9-068H】 《ドラゴン》 3
【16-074C】 《サボテンダー》 2
【15-014H】 《ブリュンヒルデ》 3
【12-002H】 《アマテラス》 3
【3-020H】 《フェニックス》 1
【1-172C】 《モーグリ》 2
【4-128C】 《コヨコヨ》 1
【12-097H】 《シルドラ》 2
【15-105C】 《レモラ》 3

特に、バックアップの選択は感銘を受けた要素で、無駄のない選択をされていたので、そのまま採用させていただきました。なかでも土属性のバックアップとして【7-069C】《コルカ》imageを2枚だけ採用しているのが非常に理にかなっていると考えています。

実際にデッキを使ってみるとわかるのですが、「火土水【リディア】」では基本的に【15-083L】《リディア》image以外で土属性のCPを必要とすることはありません。土属性の召喚獣は入っていますが、それらは【15-083L】《リディア》imageのアビリティでキャストすることができるからです。土属性になりえるカードとして【17-120H】《セーラ姫》imageも入っていますが、基本的には【13-093H】《サラ》imageでサーチして火属性のバックアップとして展開する前提で採用をしています。土属性のバックアップには【15-083L】《リディア》をサーチでき、それをキャストするCPも確保できる【7-069C】《コルカ》imageのみを採用し、水属性と火属性がベースのデッキ構築とするのは非常に合理的だと感じました。


――「火土水【リディア】」はバックアップ10枚前後の構築が多いですよね。これは「土水【ドーガ】」や「火単【ブラスカ】」、「水単【ティーダ】」のような召喚獣を多用するデッキと共通する特徴ですが、どういった理由からバックアップの比重が下がっているのでしょうか?

ひれひれ(∵):このデッキのバックアップが少ない理由は、そのままズバリ【15-083L】《リディア》imageの存在です。このカードが、このデッキにおける追加のバックアップの役割を果たしているからです。

【15-083L】《リディア》imageは1ターンに1度、自身に置かれたカウンターの数以下の召喚獣をキャストできるアビリティを持っており、このアビリティを毎ターン使うことで疑似的に継続したCPの確保が可能です。カウンターを増やせばより高いコストの召喚獣をキャストできるようになるのも、枚数が増えるほど毎ターン使えるCPが増加するバックアップと同じと言えます。毎ターン召喚獣をキャストできる構築にすることで、【15-083L】《リディア》imageを疑似的なバックアップとして運用しているのが、この「火土水【リディア】」というデッキの本質と言えるでしょう。

このデッキではCPを支払って召喚獣をキャストする機会が少なく、採用されているほとんどのフォワードはキャストにかかるコストが2CPだけなので、展開するバックアップは2枚あれば十分ということで、ここまでバックアップの枚数を絞れています。

――フォワードと召喚獣に関しては、ハリガイさんとriruさんのデッキを参考にされたということですが、それぞれのデッキから参考にした要素を教えてください。

ひれひれ(∵):両プレイヤーとも共通して【1-172C】《モーグリ》imageを3枚採用していたので、ここは間違いないだろうと思いました。ただデッキを組むにあたって、プレミアム仕様の【1-172C】《モーグリ》imageが1枚足りず、代わりに【4-128C】《コヨコヨ》imageを採用しています。結果として大会中に手札が1枚の状況で【4-128C】《コヨコヨ》imageをキャストして2枚引き得をしたシーンが2回あったので、これは採用していてよかったなと思いました(笑)。


ハリガイさんの構築からは【3-020H】《フェニックス》imageも参考に採用させていただきました。火属性の召喚獣は【11-012C】《タツノコ》imageからサーチが可能なので、1枚採用しているだけで選択肢の幅が広くなります。【16-136S】《アーロン》imageを含め除去されたカードを出し直せるのに加え、2000ダメージが【15-011L】《パロム》image、【15-119L】《ポロム》imageと噛み合いがいいため、手札にあると安心感があるカードでした。

他にも【13-006C】《ザンデ》imageと合わせて大型のフォワードを除去するために使うこともあり、【15-083L】《リディア》imageのアビリティで使う召喚獣のなかでも非常にバリューの高いカードでした。


riruさんの構築からは【12-097H】《シルドラ》imageと【17-070R】《タイタン》imageを採用しています。【12-097H】《シルドラ》imageを採用することのメリットは、デッキがとれるプランの最大値を高めることができる点にあります。

例えば1ターン目に【15-083L】《リディア》image+【15-011L】《パロム》imageとキャストし、リディアのカウンターを4つに増やしてアビリティで【12-097H】《シルドラ》imageをキャスト、【15-119L】《ポロム》imageとバックアップをサーチ、そのまま2ターン目にサーチしてきた【15-119L】《ポロム》imageをキャストすれば2ターン目には【15-011L】《パロム》imageの経験値カウンターを3つまで成長させ、以降8000ダメージを与えられるようになります。


ここまでうまくいくことは稀ですが、こうした爆発的な展開ができるかできないかはデッキのポテンシャルに大きく影響します。

風属性デッキに対しては、さらに2ターン目にサーチしてきた【13-093H】《サラ》imageをそのまま展開し、【11-128H】《セーラ姫》imageをサーチすることで3ターン目にも明確なゲームプランを用意することができます。

この場合、手札は【11-128H】《セーラ姫》image1枚でターンを渡してしまうので、一見隙が大きいように感じますが、すでにフィールドにはこちらのデッキのエースである【15-083L】《リディア》image、【15-011L】《パロム》image、【15-119L】《ポロム》imageの3体が並んでおり、どれか1枚を止めても逆転できないため、そこまで展開できた時点で勝ったといっても過言ではありません。

さらに、中盤以降は【17-123L】《ミンウ》image【16-136S】《アーロン》imageをそろえて盤面を一気に固めることができるのですが、これも【12-097H】《シルドラ》imageの使い方として非常に強力でした。


また「火土水【リディア】」は展開したフォワードにカウンターを貯めて成長させる必要があり、除去されてしまうといちからカウンターを貯め直さなければならないため、フィールドに出したフォワードを守るカードが重要です。【1-110C】《タイタン》imageでブレイクを防ぐこともできますが、同時に複数のフォワードをダメージから守れる点で【17-070R】《タイタン》imageは非常に優れたカードでした。


フォワードとしては、riruさんオススメの【17-065H】《アシェラ》imageも採用しています。このカードはデッキの方向性が近いミラーマッチに強いカードです。ただし、バックアップ2枚でゲームをしていくこのデッキの構造と、奇数コストの【17-065H】《アシェラ》imageは運用面で相性が悪い部分もあり、その点には注意が必要ですね。

◆現環境における「【火土水】リディア」の立ち位置
――環境的には「火土水【リディア】」はどういったポジションのデッキになるのでしょうか?

ひれひれ(∵):先ほどお話ししたように、このデッキにおける【15-083L】《リディア》imageはバックアップの役割を担うカードです。【15-083L】《リディア》imageを除去されてしまうとデッキの足回りが一気に悪くなってしまうため、フォワードを直接ブレイクする雷属性や、火属性の軽減できないダメージによる除去が強い環境では活躍しにくいのですが、現在の「反撃の雄たけび」環境は、相手の除去ではなく自分の盤面を充実させて戦いの主導権を握る風属性を中心としたメタゲームが展開されているため、「火土水【リディア】」は相対的に有利なポジションについているデッキだと考えています。

また、使用する前はプレイングが難しいデッキだと考えていたのですが、今大会を通じて「火土水【リディア】」というデッキは、【15-083L】《リディア》image・【15-011L】《パロム》image・【15-119L】《ポロム》imageにカウンターを貯めて成長させることを目標にプレイをするので、プレイヤーに求められるプレイスキルの比重はそれほど高いデッキではないと感じるようになりました。逆に、プレイでどうにかできる範囲を越えて不利なデッキに対してはとことん勝てないという、デッキ間の相性が強く出るデッキでもあるため、メタゲーム上優位なタイミングを適切に読み取って使用する必要があるとも思いました。

――「【火土水】リディア」は万能タイプではなく局地戦用といったデッキであり、今回は風属性中心のメタゲームと読んで大会に持ち込んだということですね。

ひれひれ(∵)結果的に「火土水【リディア】」が環境にマッチしていて優勝することができた、というのが正直なところだと思っています。メタゲームを予測してこのデッキを千葉大会に持ち込んだわけではなく、今回の選択理由は、先ほど述べたもの以外に私自身の使えるデッキのバリエーションを増やす修行の場になればという思いがありました。

以前にもお話しさせていただきましたが、私は自分が触れているカードゲームの大きなイベントでベスト8に入賞することを目標にしています。この目標を継続して達成していくためには、自身のスタイルにあったデッキだけを使い続けるのではなく、幅広いデッキタイプで戦える実力をつける必要があると考えています。

特に、普段アグロデッキを好む自分としては使う機会の少ないコントロールデッキを使ってみようという思いから、今大会では「火土水【リディア】」を使用しようと決めました。ただ一点「火土水【リディア】」について誤解していたことがあり、フォワード展開が重要なこのデッキはコントロールというよりはアグロの側面が強いデッキだということに大会を通じて気付きました。そういう意味では自分のスタイルにもあっているデッキ選択になりましたね(笑)。

――今回いち早く「MASTERS FINAL」への参加権を獲得されましたが、今後の「MASTERS 22-23」や「MASTERS 22-23 FINAL」への目標があれば教えてください。

ひれひれ(∵):先ほどお話ししたとおり、今は自分にとっての修業期間だと考えています。なので、今シーズンはいろいろなデッキに挑戦しつつ各地の「MASTERS」に参加していきたいと思いますので、対戦いただく方はよろしくお願いします!

――ありがとうございました。

◆おわりに
今回は「MASTERS 22-23」千葉大会で優勝されたひれひれ(∵)さんへのインタビューでした。

自らを高めるデッキ選択をしつつ快進撃を続けるその実力が「MASTERS 22-23 FINAL」でどのように大成するのか、注目のプレイヤーですね。

僕は千葉大会の決勝トーナメントでひれひれ(∵)さんに完敗してしまったので、どこかでこの借りを返したいと思います。

今後各地で開催される予選大会では、全国の強豪プレイヤーがその頂点を目指してしのぎを削る熱い戦いを繰り広げていくことでしょう。もちろん僕も「MASTERS 22-23 FINAL」出場を目指し、各地の大会へ足を運ぶつもりです。

次回、9月25日(日)に開催される「MASTERS 22-23」神戸大会は「反撃の雄たけび」環境初となる「L3構築」フォーマットでの開催です。
スタンダードからカードプールがグッと狭まり、限定された選択肢のなかからどんなデッキが生み出されるのか、期待しながらその結果を待ちたいと思います。

それではまた次回の記事でお会いしましょう!