『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「自宅名人戦 クリスタルの支配者 Series」で好成績を残し続けている黄金世代のYABさんのインタビューをお届けします。
◆はじめに
皆さん、こんにちは!『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
来たる4月3日(日)に「自宅名人位決定戦」が開催されます。
この大会はDiscordでの「自宅名人戦 クリスタルの支配者 Series」の第1~3回大会の優勝者および総合成績上位者が参加できるイベントで、この参加権を得るために「自宅名人戦」に取り組んできたプレイヤーの方も多かったのではないでしょうか?
僕もなんとか総合成績上位に入り、「自宅名人位決定戦」への出場権を手にすることができました。
出場権を得られるとは思っていなかったので自分でも驚いていますが、参加する以上は最高の成績を残せるよう全力で取り組んでいきたいと思います。
さて、今回はそんな「自宅名人戦 クリスタルの支配者 Series」の第3回大会で優勝された黄金世代のYABさん(以下、YABさんと呼ばせていただきます)にインタビューを行ないました。
昨年末の禁止・制限改定により大きく影響を受けた「土水【ドーガ】」が「土水【リディア】」デッキとして復活するまでの道のりをお届けしていこうと思います。
それではさっそく始めていきましょう!
和歌山のプレイヤー。
「自宅名人戦 クリスタルの支配者 Series」ではすべての大会で2位以上の結果を残すなど、このシリーズで特に活躍が目覚ましい。
第3回大会では「土水【リディア】」を使い、みごと優勝を果たした。
「自宅名人位決定戦」ではどのような成績を収めるのか、特に目が離せないプレイヤーだ。
◆新戦力が加わり、生まれ変わった「土水」の新しいかたち
――「自宅名人戦 クリスタルの支配者 Series」第3回大会優勝おめでとうございます。
YAB:ありがとうございます。
――YABさんは「土水【リディア】」を使って優勝されましたが、第2回大会でも同じデッキで2位と好成績を残されていています。「土水【リディア】」が非常に高いポテンシャルを持つデッキであることは疑いようがありませんが、まず「土水【リディア】」とはどういったデッキなんでしょうか?
YAB:簡単に言ってしまえば、これは【13-120H】《ドーガ》なきあとの「土水【ドーガ】」といえるデッキです。
――「土水【ドーガ】」といえば昨年12月の禁止・制限の制定で【13-120H】《ドーガ》が禁止カードになり、コンセプト段階から構築が難しくなったと考えられていましたが、それと同様のコンセプトのデッキということになるのでしょうか?
YAB:「土水【ドーガ】」はたしかに【13-120H】《ドーガ》の禁止と【13-119L】《ソフィ》の制限で大きな影響を受けましたが、もう1つの軸である【14-128H】《マシュリー》はいまだ健在で、召喚獣を主体としたデッキで現在も活躍しています。
そこで【13-120H】《ドーガ》に代わるデッキのエンジンとして【15-083L】《リディア》を軸にすることで復活したのが「土水【リディア】」です。
●「土水【リディア】」(「自宅名人戦?クリスタルの支配者 Series」第3回大会優勝 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(16枚) | ||
【15-083L】 | 《リディア》 | 3 |
【11-064L】 | 《アーシュラ》 | 3 |
【2-091C】 | 《ヤン》 | 2 |
【9-115R】 | 《ポロム》 | 3 |
【13-118C】 | 《セーラ[MOBIUS]》 | 2 |
【13-119L】 | 《ソフィ》 | 1 |
【14-116H】 | 《マシュリー》 | 2 |
バックアップ(8枚) | ||
【7-069C】 | 《コルカ》 | 1 |
【13-093H】 | 《サラ》 | 3 |
【3-143C】 | 《レオノーラ》 | 1 |
【11-108C】 | 《エーコ》 | 1 |
【11-120H】 | 《ブラネ》 | 1 |
【11-128H】 | 《セーラ姫》 | 1 |
召喚獣(26枚) | ||
【12-002H】 | 《アマテラス》 | 3 |
【1-172C】 | 《モーグリ》 | 3 |
【4-128C】 | 《コヨコヨ》 | 3 |
【9-114C】 | 《不浄王キュクレイン》 | 3 |
【10-068C】 | 《クーシー》 | 1 |
【9-068H】 | 《ドラゴン》 | 3 |
【12-097H】 | 《シルドラ》 | 3 |
【12-068H】 | 《フェンリル》 | 1 |
【12-108C】 | 《レモラ》 | 3 |
【14-113R】 | 《リヴァイアサン》 | 3 |
実はこのデッキには原案があり、現・世界チャンピオンであるKurosawaさんの配信でこのアーキタイプを知ったのが今回このデッキを使うきっかけでした。
その配信のなかでKurosawaさんが「第3期名人位決定戦」の振り返りとして、大会で使用していた「土水【リディア】」を紹介していたのですが、その中で「特に苦手とする相手がいない、すべてのデッキに対して五分以上の勝負をすることができる。」という趣旨のコメントがありました。それが本当なら魅力的だなと感じ、実際に自分で使ってみることにしたというのがこのデッキとの出会いです。
そしてプレイしてみると、まさに言われていたとおりで、プレイングは難しいもののどんな相手に対しても不利を感じずに戦えるデッキであり、Kurosawaさんの言葉に嘘はなかったと実感しました。
これは「自宅名人戦?クリスタルの支配者 Series」の第2回、第3回大会の結果がそれを物語っていると思います。
――確かに2大会を通して、準優勝・優勝という流れはデッキの強さを裏付けるには十分すぎる結果ですね。もちろんYABさん自身「自宅名人戦 クリスタルの支配者 Series」においてすべての大会で2位以上という成績を残しているので、プレイヤーとしての実力があることもその一因だと思いますが、いったいどういった要素がこのデッキの強さになっているのでしょうか?
YAB:このデッキの強みは、対戦相手のデッキに応じてあらゆるゲームスピードで戦うことができる点です。
たとえば相手がコントロールならこちらは最序盤からフォワードを展開して相手に準備する隙を与えず戦うことができますし、逆に相手がアグレッシブなデッキであればどっしり構えた展開で応戦できるというふうに、相手のゲームスピードにあわせてゲームプランを選ぶことができます。この高い柔軟性が「土水【リディア】」の強みだと考えています。
そして、それを可能にしているのがデッキの軸である【15-083L】《リディア》を中心とした【11-064L】《アーシュラ》、【2-091C】《ヤン》などの【カテゴリ(IV)】のギミックです。
フォワードを大量に展開しながら、一気にリディアの成長カウンターを6個に増やし、高コストの召喚獣をコストを支払わずキャストすることでアドバンテージも獲得できるようになるというのが非常に強力です。
【15-083L】《リディア》は単体でも成長カウンターを2個獲得できるので、【1-172C】《モーグリ》や【4-128C】《コヨコヨ》と組み合わせて、序盤からドローを繰り返してキーカードを探しに行きつつ、ブレイクゾーンに召喚獣を送り【14-128H】《マシュリー》のアクションアビリティのコストを準備できます。
コストを支払わずキャストできるので、こちらの手札が0枚の状態で【4-128C】《コヨコヨ》をキャストし、ただで2ドローするなどのテクニックも使いやすく、ほかの召喚獣と組み合わせつつ一気にリソースを稼げるのも優秀です。
また、カウンターさえ置けてしまえば序盤からでも召喚獣を踏み倒してキャストできる点や、相手ターンにもアビリティが使える点は【13-120H】《ドーガ》にはない【15-083L】《リディア》独自の強みです。
【1-172C】《モーグリ》や【4-128C】《コヨコヨ》を繰り返しキャストすることで【13-120H】《ドーガ》以上にドローを重ねることができるので、デッキのキーパーツにアクセスするスピードも速いです。
また、対コントロールなどではこちらのフォワード展開をさばく全体除去に対する回答として【12-002H】《アマテラス》が採用できるようになった点も大きいですね。
――冒頭で話していたように、まさに【13-120H】《ドーガ》なしの「土水【ドーガ】」と表現していたとおりのデッキですね。それではプレイ方針についても教えてください。
YAB:序盤に目指す動きは【13-093H】《サラ》から【7-069C】《コルカ》をサーチし、【15-083L】《リディア》か【13-118C】《セーラ[MOBIUS]》につないでいく動きです。
そのため、初手のキープ基準になるのは【13-093H】《サラ》と、高いサーチ能力を持つ【12-097H】《シルドラ》となります。
【13-119L】《ソフィ》が制限されたことでサーチの重要性が上がり、【12-097H】《シルドラ》はさらに役割が増えました。
――【7-069C】《コルカ》からのサーチは【15-083L】《リディア》の優先度のほうが高いと思っていましたが、【13-118C】《セーラ[MOBIUS]》を優先するのはどういった理由からでしょうか?
YAB:手札に【1-172C】《モーグリ》、【4-128C】《コヨコヨ》などドローでデッキを掘り進めるカードがない場合は【13-118C】《セーラ[MOBIUS]》を優先し、次のターンにキャストすることでドローを進めていくことが多いです。
【15-083L】《リディア》の重要度はもちろん高いのですが、円滑にドローを進めてデッキを回していくことが結果的に【15-083L】《リディア》の爆発力を上げることにつながります。
――召喚獣ですぐドローを進めていけるなら【15-083L】《リディア》、ほかに引くカードがない場合は単体でドローできる【13-118C】《セーラ [MOBIUS]》という使い分けになるわけですね。スタートはそういう形で切るとして、フィニッシュまでの道のりはどうなるのでしょうか。
YAB:最終的には【13-119L】《ソフィ》や【14-116H】《マシュリー》でフィニッシュしていくのはこれまでどおりですが、【11-064L】《アーシュラ》から【2-091C】《ヤン》を出し【15-083L】《リディア》の成長カウンターを6個にすれば採用しているすべての召喚獣を【15-083L】《リディア》のアビリティでキャストできるようになるうえ、【2-091C】《ヤン》自身もパワー7000のブレイブ持ちで運用できるので【2-091C】《ヤン》はゲーム序盤から攻勢に出るうえで優秀なカードです。
――Kurosawaさんの「土水【リディア】」にインスピレーションを受けたデッキということですが、構築の面では第2回大会、第3回大会と少しずつアップデートがされています。それぞれのカードがどういった経緯で採用されていったかお聞きしてもよろしいですか?
YAB:第2回大会のときは、Kurosawaさんのデッキリストと49枚同じデッキを使っていました。
●「土水【リディア】」(「自宅名人戦?クリスタルの支配者 Series」第2回大会使用 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(17枚) | ||
【15-083L】 | 《リディア》 | 3 |
【11-064L】 | 《アーシュラ》 | 3 |
【2-091C】 | 《ヤン》 | 2 |
【3-144L】 | 《レナ》 | 1 |
【9-115R】 | 《ポロム》 | 3 |
【13-118C】 | 《セーラ[MOBIUS]》 | 2 |
【13-119L】 | 《ソフィ》 | 1 |
【14-116H】 | 《マシュリー》 | 2 |
バックアップ(8枚) | ||
【7-069C】 | 《コルカ》 | 1 |
【13-093H】 | 《サラ》 | 3 |
【3-143C】 | 《レオノーラ》 | 1 |
【11-108C】 | 《エーコ》 | 1 |
【11-120H】 | 《ブラネ》 | 1 |
【11-128H】 | 《セーラ姫》 | 1 |
召喚獣(25枚) | ||
【12-002H】 | 《アマテラス》 | 3 |
【1-172C】 | 《モーグリ》 | 3 |
【4-128C】 | 《コヨコヨ》 | 3 |
【10-068C】 | 《クーシー》 | 2 |
【9-068H】 | 《ドラゴン》 | 3 |
【12-097H】 | 《シルドラ》 | 3 |
【12-068H】 | 《フェンリル》 | 2 |
【12-108C】 | 《レモラ》 | 3 |
【14-113R】 | 《リヴァイアサン》 | 3 |
?Kurosawaさんのデッキとの1枚だけの相違点は、原案では3枚採用されていた【12-068H】《フェンリル》を1枚【3-144L】《レナ》と入れ替えてあるという点です。【13-119L】《ソフィ》をブレイクゾーンから復活させられるのはもちろん、水属性の【ジョブ(王女)】、さらに【カテゴリ(V)】なので【12-097H】《シルドラ》や【13-093H】《サラ》などのサーチ先として優秀だろうと考え、1枚は採用したいと考えていました。
そして第3回大会では、さらに自分なりにアップデートしたデッキリストで参加しました。
ここで大きな違いになるのが【9-114C】《不浄王キュクレイン》の採用です。
第2回大会で採用していた【3-144L】《レナ》を不採用にし、さらに【10-068C】《クーシー》と【12-068H】《フェンリル》を1枚ずつ減らして3枚採用しました。
この採用の背景として、第2回大会のあと「水風【FFX】」と対戦したとき負け越してしまったということがありました。
というのも「水風【FFX】」は高い展開力から【16-138S】《ワッカ》にリールカウンターを貯め「オーラカスピリッツ」で除去してくる動きが強力で、【15-083L】《リディア》が成長カウンターを貯める前に除去されてしまい、デッキがコンセプトどおりに動かせなかったのです。
これを解決できるカードはないかと探したところ、【9-114C】《不浄王キュクレイン》で【16-138S】《ワッカ》のアビリティを消してリールカウンターを貯めさせないことで対策できると考えたのが、このカードを採用した大きな理由です。
もちろん【16-138S】《ワッカ》だけでなく、ミラーマッチで相手の【15-083L】《リディア》を止めたり、大会中は対戦相手の【14-042L】《雲神ビスマルク》のアビリティを消すことで大きく勝利に貢献してくれたシーンもあったりと、ゲームへの影響力が大きいフォワードを1枚で対処できるのが非常に強力でした。
その影響もあり【9-114C】《不浄王キュクレイン》のスロットを確保するために、【10-068C】《クーシー》は採用枚数を減らしています。
もともと便利なカード枠として採用していましたが、言い換えれば明確な使用意図があって採用したカードではないため、1枚あれば十分だろうと判断し枚数を絞りました。
――【12-068H】《フェンリル》は原案のデッキからはかなり枚数が減ってしまいましたね。
YAB:そうですね。ただ「土水」というデッキを使う都合上、相手もある程度【12-068H】《フェンリル》意識してバックアップを展開してくるので、効果的に【12-068H】《フェンリル》をキャストできる機会も多くありませんでした。そのため今は枚数を減らしていますが、「【12-068H】《フェンリル》が減ってきている」という認識が広まることで光・闇属性のフォワードが採用されやすくなってもいるので、さらに逆を突いて多めに採用するのもアリだとは思っています。
ただ、これは個人的な話なのですが、私はデッキをFoilカードで統一しており、デッキに採用するカードはFoilカードで、もしフルアートバージョンがあればフルアートカードで採用したいというこだわりがあります。
ですが、フルアート仕様の【12-068H】《フェンリル》を1枚しか持っておらず、【12-068H】《フェンリル》を2枚以上採用するとフルアート仕様のカードがあるのに通常のFoilを使わなければならず、デッキの芸術点が落ちてしまうのです。
これは私のポリシーに反してしまうので、それであれば1枚採用のみでいいかなという気持ちから1枚というのが正直なところです(笑)。
――そのこだわりは僕もすごく共感できます。やっぱりデッキをFoilで統一させるときは可能であればフルアートカードで統一させたいですよね。
YAB:実は【11-064L】《アーシュラ》も通常のFoilしか持っていないのですが、こちらはデッキの都合上採用しないわけにはいかないので泣く泣く通常版を使っています。
なかなか集まりにくいカードではあるのですが、ゆくゆくはこのカードもフルアート仕様のものにしていきたいですね。
――それでは、最後に「自宅名人位決定戦」に向けてコメントをいただければと思います。
YAB:「自宅名人位決定戦」もがんばって成績を残していければと思います。
また、【11-064L】《アーシュラ》と【12-068H】《フェンリル》のフルアートを募集していますので、もし持ってるよって方がいればぜひ教えていただければうれしいです。
――ありがとうございました。僕も同じくFoilカードを集めているので何かあればご協力させてください!
◆おわりに
今回は「自宅名人戦 クリスタルの支配者 Series」第3回大会で優勝されたYABさんへのインタビューで、禁止・制限を乗り越えみごと復活を果たした「土水【リディア】」をご紹介いただきました。
原案となるデッキは世界王者Kurosawaさんのコミュニティで開発されたものということで、もともとのポテンシャルの高さはもちろんですが、それをさらに昇華し好成績を残したYABさんのプレイヤーとしての腕前も流石と言えます。
そんなYABさんですが、4月3日に開催される「自宅名人位決定戦」では1回戦(準々決勝)で僕との対戦が決まっています。
もちろん僕も負けるつもりはありませんが、強敵相手ということで今から緊張しています。
また「自宅名人位決定戦」の様子は大会当日に公式Discordサーバーのボイスチャットで観戦することができるので、興味がある人はぜひチェックしに来てください。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!