『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週はたるほさんがL3構築フォーマットで行なわれた「第1回自宅名人戦」で見事優勝したしどさんに、L3構築環境のポイントやそれを意識して作られたデッキについてお話をうかがいます。
◆はじめに
みなさんこんにちは!『FFTCG』プレイヤーのたるほです。
今回は前回に引き続き、「L3構築」のイベントとなった「第1回自宅名人戦」の話題をお届けしようと思います。
L3構築の詳しいルールについてはこちらをご覧ください。
現在は「Opus IX」「Opus X」「Opus XI」のカードを使ってデッキを構築することができます。
これまでに発売された全部のカードが使用可能な「スタンダード(以前の通常構築)」に比べると、新しい「Opus」が発売されるたびに使用可能なカードの1/3が入れ替わるというシステムにより常に新鮮なメタゲームを楽しめるうえ、始めたばかりで最近のカードしか持ってないよというプレイヤーでも気軽に楽しむことができます。
それでは前回お知らせしたとおり、新フォーマット「L3構築」が採用されたオンライン上のイベント「第1回自宅名人戦」で見事優勝したしどさんにインタビューを行ない、強豪プレイヤーが考える「L3環境」への展望について聞いてきました。
「ゲーム開発課Blog」の大会レポートはこちらからご覧ください。
しど
関東のプレイヤーで、『FFTCG』界きっての多属性デッキビルダー。2018年には日本代表として世界選手権にも出場している。
「3属性までは事故らない」と豪語する彼が「L3構築」でも自慢の得意の多属性デッキで活躍。
最近プライベートでは『FINAL FANTASY VII REMAKE』にハマっているらしい。
◆気分はソルジャー!「氷土雷VII」ミッドレンジを紹介!
――「第1回自宅名人戦」優勝おめでとうございます。
しど:ありがとうございます。
――早速デッキについてお聞きしたいと思います。
しど:今回は『FINAL FANTASY VII REMAKE』が発売されて僕もプレイし始めたので、そちらのモチベーションを上げるためにも『FF7R』のカードが使いたいなということで【11-127L】《クラウド》を軸に据えた「氷土雷」を使いました。
「氷土雷VII」(第1回自宅名人戦:優勝)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(33枚) | ||
【11-127L】 | 《クラウド》 | 3 |
【10-028L】 | 《暗闇の雲》 | 1 |
【11-024L】 | 《ウーマロ》 | 2 |
【11-027R】 | 《カダージュ》 | 3 |
【11-033R】 | 《ゲンティアナ》 | 1 |
【11-040C】 | 《ヤズー》 | 2 |
【11-042C】 | 《ロッズ》 | 2 |
【9-062H】 | 《ヴィンセント》 | 3 |
【10-136S】 | 《シャントット》 | 3 |
【11-071L】 | 《ティファ》 | 2 |
【9-084H】 | 《カイン》 | 1 |
【11-090L】 | 《クジャ》 | 3 |
【11-097H】 | 《ニックス》 | 3 |
【11-102C】 | 《リベルト》 | 3 |
【11-138S】 | 《セフィロス》 | 1 |
バックアップ(16枚) | ||
【9-039C】 | 《ロック》 | 3 |
【9-103R】 | 《イドラ》 | 1 |
【11-133S】 | 《ケットシー》 | 1 |
【11-068R】 | 《クレイラス》 | 3 |
【11-069H】 | 《シドニー》 | 2 |
【9-098C】 | 《リーブ》 | 3 |
【10-086C】 | 《アルド》 | 1 |
【10-104R】 | 《ランペール》 | 2 |
召喚獣(1枚) | ||
【9-068H】 | 《ドラゴン》 | 1 |
――デッキリストからしてピーキーな多属性デッキを好むしどさんらしいなと思いますが、今回使用された「氷土雷」はどういった経緯からできたデッキなんでしょうか?
しど:「L3構築」自体はわたしもまだそれほど対戦できていないのですが、カードプールをパッと見て思ったのが「脅威となるフォワードを対処できないとあっという間にやられてしまう」環境だなというのが第一印象でした。
具体的には【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》、【9-057L】《ヤズマット》、【11-063L】《リッツ》といった継続的にアドバンテージを稼いでくるフォワードがいて、これらを1、2ターン放置してしまうと詰む可能性が高いです。
なので、そういったカードを使う側に回るか対処する側に回るかという選択肢のなかで、私は今回対処する側に回ろうと考えました。
フォワードを対処するデッキ=除去が強いデッキを使おうということで、氷属性の【11-024L】《ウーマロ》と雷属性の【11-097H】《ニックス》、光属性の【11-127L】《クラウド》の3本軸でデッキを考え、【11-127L】《クラウド》を使うなら【11-071L】《ティファ》も使いたいなということで組んだのが今回の「氷土雷」になります。
――『FF7R』に触発されたというだけあって【カテゴリ(VII)】のカードがふんだんに搭載されていますね。【11-027R】《カダージュ》、【11-040C】《ヤズー》、【11-042C】《ロッズ》など「Opus XI」で収録された【ジョブ(思念体)】のギミックも採用されています。
しど:元々【11-027R】《カダージュ》、【11-040C】《ヤズー》、【11-042C】《ロッズ》は私のなかでとても評価の高いカードでした。
【11-027R】《カダージュ》は氷属性のデッキではおなじみの【4-038L】《セリス》とよく似たアビリティを持ち、フィールドに出たときに相手のキャラクターを1体凍結させることができます。
序盤からバックアップを凍結させて相手のテンポを乱したり、フォワードを凍結してダメージレースを逆転させたりと非常に強力で、このアビリティを活用できた試合は余裕をもって勝つことができたという印象です。
このデッキでは【11-071L】《ティファ》を採用しているので【カテゴリ(VII)】のカードをデッキ内に無理なく増やせるという親和性もありました。
「L3構築」の現在のカードプールは【1-107L】《シャントット》などのような全体除去も少なく、展開した【11-027R】《カダージュ》たちを一度に処理されてしまう手段が限られているので、躊躇なく展開していける環境というのもこれらのカードの強さを後押ししてくれました。
――土属性からは【11-071L】《ティファ》に加えて【9-062H】《ヴィンセント》も採用されています。【10-136S】《シャントット》、【10-104R】《ランペール》とのコンボはスタンダード環境でもよく見ますが、3枚投入とは思い切った感があります。
しど:【9-062H】《ヴィンセント》は【カテゴリ(VII)】であること、【10-104R】《ランペール》や【10-136S】《シャントット》とのコンボがあることに加え、重ねて引いたときスペシャルアビリティで【10-023H】《ウネ》を対処できるこのデッキ唯一のカードということで3枚採用しています。
このデッキでは【11-127L】《クラウド》と【9-098C】《リーブ》からサーチしてくることもできるため、スペシャルアビリティや【10-136S】《シャントット》とのコンボも使いやすいだろうという狙いがありました。
――【10-136S】《シャントット》の話も出ましたが、【10-104R】《ランペール》のコンボではバックアップをブレイクする手段として【9-084H】《カイン》や【10-028L】《暗闇の雲》の名前もよく聞きます。しどさんのデッキでも採用されていますが、どちらも1枚採用と【9-062H】《ヴィンセント》に比べて枚数は控えめですね。
しど:【10-028L】《暗闇の雲》はすごく評価していて、今の「L3構築」の環境では【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》をアビリティを発動させずに対処できる数少ないカードなので、2枚採用するのも視野に入るカードだと思っています。
ただ、お恥ずかしい話、このデッキ自体を大会の1時間前に組んだので【10-028L】《暗闇の雲》が見つからず、1枚しかデッキに入れることができなかったんです(笑)。
【9-084H】《カイン》は他の2種類と比べて、アクティブ状態のフォワードに対してもプレイしていけるというメリットがあるんですが、3属性デッキだと必ず雷属性のバックアップを2枚プレイできるわけではないので、手札から雷属性を要求されることもありこのデッキでの2枚以上の採用は難しいかなということで1枚だけ採用しました。
――【11-024L】《ウーマロ》は除去の要の1つというお話でしたが、2枚なのは少しコストが重いからでしょうか?
しど:実は【11-024L】《ウーマロ》も、いま2枚しか持っていなくてですね……(笑)。もう1度このデッキを使うとしたら間違いなく3枚採用するべきカードです。
さっきお話ししたとおり、大会の直前に形にしたのでデッキの中に足りないカードやふわっとした理由で採用したカードが何種類かあります。
例えば【11-033R】《ゲンティアナ》はダル状態でフィールドに出たフォワードのオートアビリティを止めることができるので【10-023H】《ウネ》対策で採用しました。
また【カテゴリ(VII)】ということで【11-138S】《セフィロス》も採用していますが、どちらも大会を通してこのデッキで活躍するカードではないなと感じました。
逆に想定以上に活躍した例で言うと【11-022C】《イドラ》は2枚目の【11-133S】《ケットシー》が見つからず採用したカードなんですが、ブレイクゾーンからの回収が思ったより強く、EXバーストも持っているのでとても役立ちました。
【9-098C】《リーブ》との兼ね合いから【11-133S】《ケットシー》2枚で考えていたスロットですが、【9-098C】《リーブ》では【9-062H】《ヴィンセント》をサーチすることが多かったため、結果的には1枚ずつで正解だったなと感じています。
――この「氷土雷」ですが、よく見るとフォワードの比率がかなり高く、バックアップや召喚獣がかなり抑えられていますね。バックアップに至っては16枚と、1・2属性でまとめられた通常のデッキだとしてもなかなか絞られた枚数だと思います。
しど:もともと僕のなかで、3属性だからバックアップの枚数を増やそうという考え方はないんです。
このデッキでは【9-039C】《ロック》、【11-068R】《クレイラス》、【9-098C】《リーブ》といったバックアップをサーチできるバックアップが9枚採用されていますし、【11-127L】《クラウド》からも【11-133S】《ケットシー》や【9-098C】《リーブ》をサーチできるので枚数は抑えめでも十分に回るかと思います。
今までやったことがないので今回もあえてやりませんでしたが、このデッキならバックアップを15枚にしても実は問題ないと思っているくらいです。
――召喚獣は【9-068H】《ドラゴン》が1枚のみですが、これもかなり枚数を絞っての採用ですね。
しど:「L3構築」環境の召喚獣は強力ですが状況を選ぶものが多いという印象で、最初に言った「脅威となるフォワードを対処できないとあっという間にやられてしまう」環境には合っていないと考えていました。
最初は【9-068H】《ドラゴン》も採用していなかったんですが、この「自宅名人戦」の練習でとある「カオス」デッキと対戦したことがあり、そのときに経験からお守り代わりに1枚採用しています。
今回はL3構築ということもあり、スタンダードに比べてサーチなどでパーツを集める手段も限られるため、コンボ的なデッキはカードがそろう前に押し切られてしまう可能性が高いと予想しました。
なので、複数のカードを組み合わせて戦うテクニカルなデッキを仕上げるよりも、グッドスタッフでスペックの高いフォワードをどんどん展開していくほうが適していると考えました。
そのため召喚獣はほとんど採用せず、フォワードに振り切った構築を目指してデッキを組んでいます。
――今回「L3構築」で遊んでみて感想などいかがでしたか?
しど:「L3構築」での初めての大会ということもあり、手探りだったところも多いので、振り返ってみるとあれこれデッキの正解不正解に気付きましたが、デッキ自体はかなりポテンシャルを感じるものができたと思います。
環境に関しては予想どおり 【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》が強かったので、今回除去が強いデッキを使ったのは正解だったと思います。相手も【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》の強さを確信しているので、持っていたら必ず出してきますし、火属性のデッキを見たらそれを見越して除去を握っておくことが大事な環境だなとあらためて思いました。
また、今回対戦したなかだと【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》を【10-045C】《ウンサーガナシ》で守っていくデッキが非常に強力でした。こちらは除去するために【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》を選んでいるので、10000ダメージを与えられてしまうんですよね。
これは今後メタゲームの一角を担っていく可能性のあるデッキだと思うので、対処する側のデッキもなにかモンスターに対する解答を用意しておく必要があると思います。
それと多くのデッキで見かけたのが【11-102C】《リベルト》と【11-097H】《ニックス》でした。この組み合わせはわかりやすく強いパッケージなので、今後も「L3構築」環境の雷属性のデッキでは見続けることになるでしょう。
ほかにも雷属性には【11-090L】《クジャ》などの強い除去能力持ちカードがいるので、特に人気の色として活躍すると思います。
「L3構築」ではこのように【11-015L】《ブラスカの究極召喚獣》や【ジョブ(王の剣)】、【ジョブ(思念体)】など明確に強いギミックが存在しますが、個々のカードパワーやギミックだけに頼るのではなく、限られたカードプールからどうやって50枚全部が強いデッキを組んでいけるかというのが課題となると思います。
多属性デッキは単属性のデッキより広いカードプールからそれぞれの属性の強いカードをしっかりと採用できるので、カードパワーに妥協することなく50枚しっかり強いデッキを組むことができます。
もちろん【10-008L】《ザンデ》など属性を寄せることでリターンが大きくなるカードもあるので、この考え方がすべてではありませんが、今後「L3構築」での鍵となるデッキ構築の考え方だと思っています。
◆人見知りでも自宅で気軽に『FFTCG』
――「自宅名人戦」は『FFTCG』の歴史の中でも特徴的なイベントですが、実際参加してみてどうでしたか?
しど: 最近はイベント自体が自粛されている中で「Opus XI」環境で遊べる機会があるというのはありがたいなと思います。もちろん大型イベントがないのは寂しいですが、こればかりはしょうがないことなので。
また現在の状況を抜きにしても、Discord内で大会がありいろいろな人と遊べるというのは、人見知りで普段はなかなかショップ大会などに行かない自分にとっては、自宅で気軽に大会に参加できるのもメリットかなと思っています(笑)。
なかなかフリー対戦などは勇気がいりますが、大会ということになれば話は別ですからね。
もともと身内で遊ぶ際にLINEの通話機能を使って対戦していたこともあり、Discordを使っての対戦は簡単に始めることができました。今後もこういったイベントにはどんどん参加していこうと思います。
いまはこういった状況ですが、騒ぎが収束した後もこういった形で『FFTCG』が楽しめる環境が続くのはいいことだと思います。もちろん、直接会って対戦できるのが1番楽しいですけどね。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回は「第1回自宅名人戦」で優勝されたしどさんへのインタビューでした。
「L3構築」でも得意の多属性デッキで戦うしどさんの姿勢は流石の一言ですね。
しどさんも言っていましたが、Discord対戦は気軽にいろんな人と対戦できるので、始めたてでまだコミュニティがない人でもすぐに対戦することができます。
開発スタッフの方へのルールについて質問できたり、定期的にイベントも行なわれているので、興味はあるけどまだ対戦したことがないという人も気軽に始めてみてはいかがでしょうか?
今後のスケジュールが気になる方はこちらをご覧ください。
次回は5月3日(日)に「L3構築」で行なわれます(受付は当日12:45まで)。
それではまた次回の記事でお会いしましょう!