『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週はライターのたるほさんによる12月24日施行の禁止改定後の環境について考察をお届けします。
◆はじめに
みなさんこんにちは!『FFTCG』プレイヤーのたるほです。
なんと、私たるほ、先日12月12日の「MASTERS 2021」川崎大会で優勝することができました。
前週の姫路大会に続いて連覇です!
「MASTERS」のような公式トーナメントを連覇できたのは、長い『FFTCG』人生のなかでも初の経験だったので、非常にうれしかったのと同時に今後に向けた大きな自信につながりました。
当日対戦いただいた皆さん、運営していただいたスタッフの皆さん、大会中応援してくれた皆さん、大会後メッセージをくれた皆さん、あらためてありがとうございました!
川崎大会で使用したデッキは、L6構築だった姫路大会で使用した「火単」からバックアップの【14-012C】《コウジン族》を【6-011C】《朱雀兵》に入れ替えてスタンダード仕様に変更したものなので、詳しくは前回の記事をご覧ください。
ここからは年末に開催される「第3期名人位決定戦」に向け、全力で取り組んでいきたいと思います。
そこで今回は、スタンダードで先日発表された【13-120H】《ドーガ》、【14-118H】《シュテル・リオニス》、【5-067R】《ミューヌ》の禁止、【13-119L】《ソフィ》の1枚制限の制定を受け、今月末の「第3期名人位決定戦」および1月以降の「MASTERS 2021」に向けて、施行後の環境がどのようなものになっていくかを考察していきます。
それでは、さっそく始めていきましょう!
◆禁止・制限が環境に与える影響
まずは今回の禁止・制限カードの制定が環境にどういった影響を与えるのかを考察していきます。
①特定のデッキタイプの衰退
今回の禁止・制限カードの制定で直接的な影響を受けるデッキは、主に「土水ドーガ」、「風単チョコボ」、「土単モンク」だと考えています。
なかでも「土水ドーガ」は、デッキのエンジンである【13-120H】《ドーガ》が禁止、フィニッシャーである【13-119L】《ソフィ》が制限され、デッキの根幹となるカードが規制されることで、コンセプトの段階からデッキの構築が不可能になってしまいます。
「土水ドーガ」がいなくなることで、これまで猛威を振るっていた【14-116H】《マシュリー》も環境から数を減らすことが予想されます。
ただ、【14-116H】《マシュリー》の強力さは多くのプレイヤーの方も知るところだと思いますので、【14-116H】《マシュリー》が活躍する新たな舞台を用意できるかは、今後のデッキビルダーの腕が試されるところです。
次に「風単チョコボ」ですが、デッキの根幹である【14-042L】《雲神ビスマルク》と【9-051R】《デブチョコボ》こそ残っているものの、【5-067R】《ミューヌ》の不在により以前ほどの爆発力を出すことは難しく、【14-118H】《シュテル・リオニス》に支えられていたダメージ除去への耐性が失われたことで、これまで有利とされてきた「火単」をはじめとする火属性のデッキとの相性関係は逆転したと言えます。
もちろん【5-067R】《ミューヌ》、【14-118H】《シュテル・リオニス》を使うことなく勝利することもあったため、今後再びメタゲームに絡んでくる可能性はありますが、少なくとも【チョコボ】が生み出す圧倒的な展開力を活かすことができる相方が再び発見されるまでは、しばらく活躍の機会は減りそうです。
「土単モンク」は、前述の2デッキほどではないものの今回の規制の影響を強く受けています。
フィニッシャーである【13-119L】《ソフィ》が制限されたことで、デッキの再現性と安定性が低下し、純粋なデッキパワーはこれまでに比べてワンランク下がってしまったという印象です。
しかし【モンク】ギミックはサーチ手段、回収手段が豊富であり、【9-068H】《ドラゴン》のような直接ブレイクゾーンに干渉する手段がないデッキに対しては、依然として強力なデッキとして立ちはだかるのではと考えています。
また「土単モンク」には「レギスループ」というコンボによる勝利手段が存在します。
これまでは「土水ドーガ」「風単チョコボ」の影響から環境が高速化していたため、準備に時間がかかるループコンボを達成することが困難でしたが、相対的に環境が低速化するであろう禁止・制限施行後の環境ではコンボの準備に十分な猶予があるため、これまで以上に環境に影響を与えるデッキとなる可能性は十分にありそうです。
②ゲームスピードの低下とアタックの重要性の変化
これまでの環境では「土水ドーガ」「風単チョコボ」の使用率はトップを誇り、「MASTERS 2021」の会場でこれらのデッキを見かけない大会はなかったほどです。
これらのデッキの共通点は、“強力なドローソースの存在”と“バックアップの展開に依存しないタフなデッキ構造”を持つことです。
バックアップを必要としないデッキの活躍は環境を高速化させ、除去に特化し徹底した“待ち”の戦略をとる一部のデッキを除き、多くのデッキにとってバックアップの展開を前提としたデッキ構造とゲームプランはそれ自体が弱点になるほどに先鋭化していました。
今回の禁止・制限の制定でこうしたデッキが規制されることで、バックアップを展開するゲームメイクに猶予が生まれ、中速以降のゲームレンジを持つデッキが動きやすくなります。
加えて【13-119L】《ソフィ》が制限されることで、【12-068H】《フェンリル》の採用率も低下することが予想されるため、例えば【10-023H】《ウネ》のようなバックアップを軸にしたデッキも復権してくる可能性があります。「クリスタルの支配者」で登場した新ギミック「クリスタル」も、獲得するためにバックアップを展開する必要があるので、今後はより見かける機会が増えることになるでしょう。
また、環境が高速化したことで高まっていたEXバーストの需要にも変化がありそうです。
「土水ドーガ」の強力な打撃力の対策として、現在は【12-108C】《レモラ》や【14-113R】《リヴァイアサン》といった強力なEXバースト効果を持つカードを採用し、【10-125H】《リヴァイアサン》で意図的にこれらのEXバーストを発動させるというのは現在の環境で使われているポピュラーな戦術の一つです。
ほかならぬ 「土水ドーガ」自身もこれらのカードを取り入れ、お互いEXバーストを踏むか、踏ませるかという駆け引きを行なっています。
ですが前述のとおり、この戦術は序盤の高い打撃力を防ぐために考案されたものなので、今回の制定で「土水ドーガ」がいなくなることで、必ずしもEXバーストを踏ませなければ勝つことができないというゲーム展開も減少するでしょう。
もちろんEXバーストが破格のバリューを生み出すことは本質的に変わりませんが、これらのカードは高コストのものも多く、通常どおりキャストするとほかのカードに比べバリューが得にくいという側面もあります。
ゲームレンジが長くなることで、EXバーストを意識してのプレイや、EXバーストを対策するカードを採用する余裕が生まれることで、それに傾倒したデッキも自然と数を減らしていくでしょう。
また、アタックすることでバリューを生み出すカードにも変化があると考えられます。
「土水ドーガ」、「風単チョコボ」でそれぞれ採用されていた【14-116H】《マシュリー》と【14-118H】《シュテル・リオニス》は攻めの手段になるだけでなく、相手のアタックを封じることにも長けているカードでした。
そのため、「火土アバランチ」のように複数のフォワードを並べてからのパーティーアタックを主軸に添えたデッキは、パーティーアタックを封じられやすく活躍が難しい状況でした。
しかし、今回の制限改定でそういったカードがかなり動きやすくなります。
「火土アバランチ」は【14-121L】《バレット》のおかげでかなり早いタイミングからパーティーアタックを仕掛けられるうえ、ダメージ除去への耐性とヘイスト付与のアビリティによって、後述する「火単」などにも優位性が持てることから、妨害手段が減る今後は一戦級の活躍をしそうです。
「クリスタルの支配者」では【15-036H】《セリス》や【15-128L】《ノクティス》など、さらにパーティーアタックを強化するカードも登場したことで、さらに見る機会が多くなるギミックだと思います。
③「クリスタルの支配者」からの刺客
「クリスタルの支配者」では、フィールドに居座ることで強力な影響を与えるシステムフォワードが数多く登場しました。
なかでも多くのプレイヤーによって注目されているカードが【15-119L】《ポロム》です。
毎ターン、コスト5以下のフォワードからアビリティを失わせるだけでなく、自分のターンを終えるごとに成長しパワーが増えていくため、速やかに対処しないと手が付けられないフォワードになってしまいます。
姉弟の【15-011L】《パロム》がいることで2倍のスピードで成長するので、これを活かした「火水」デッキなども考案されていて、禁止・制限施行前の現在でも活躍していることから今後の環境でも台頭してくることが予想されます。
先ほどの「火土アバランチ」のように特定のフォワードのアビリティを軸に戦うデッキは【15-119L】《ポロム》1枚で簡単に追い詰められてしまう可能性があるため、こうしたシステムフォワードを速やかに除去できるかがデッキ構築をするうえでの課題になるでしょう。
これらのシステムフォワードに対して有効なデッキを挙げるとするならば、それは「火単」をはじめとする除去に特化したデッキです。
もともと除去の枚数の多さを武器に「土水ドーガ」へ対抗すべく登場した「火単」ですが、規制後の環境では【15-119L】《ポロム》のような素のパワー自体は低いシステムフォワードの活躍が予想されることと、弱点であった【14-118H】《シュテル・リオニス》の禁止も追い風となり、今後さらに活躍の機会を広げるデッキだと思われます。
また、バリエーションの一つである【侍】型の「火単」も、【11-003R】《カイエン》のストッパーであった【14-118H】《シュテル・リオニス》の禁止と【14-116H】《マシュリー》の減少、強力なオートアビリティによる除去を持つ【14-014C】《侍》や【15-006H】《カイエン》の登場による強化を受け、今後復権してくることが予想されます。
構図としては「脅威を並べる側」対「除去で対応する側」というかたちでこれまでと変わっていないようにも思えますが、脅威を並べる側の展開力および継戦能力が低下することによって、これらの中間に当たるデッキや別角度からの勝利を目指すデッキが現れてくるのではないでしょうか。
◆各属性の注目カードをピックアップ
ここからは今後の環境で個人的に注目しているカードをそれぞれ紹介していこうと思います。
火属性
【15-006H】《カイエン》
【侍】型の「火単」の新たな切り札です。
【11-003R】《カイエン》と同時に使えないのは悩ましいところですが、それを差し置いても採用する価値のある1枚といえます。
単体での除去性能も高いうえ、ダメージを5点以上受けていればさらにフォワードを1体除外できるので、【侍】デッキでなくとも火属性のすべてのデッキで活躍のチャンスがあります。
除去手段をダメージに依存する火属性にとって、除外による確定除去というのもありがたいポイントです。
氷属性
【15-037L】《ティナ》
「土水ドーガ」を継ぐ召喚獣主軸のデッキとして、活躍を期待しているカードです。
「クリスタルの支配者」にはほかにも【15-083L】《リディア》という召喚獣に焦点を当てたカードもあるため、「土氷」を軸にした新しいアーキタイプが生まれるかもしれません。
【14-116H】《マシュリー》との相性ももちろんいいので召喚獣軸の「土氷」は研究のしがいがありそうです。
風属性
【14-042L】《雲神ビスマルク》
「風単チョコボ」が規制されはしたものの、デッキのエンジンである【14-042L】《雲神ビスマルク》はいまだに健在。
「クリスタルの支配者」で登場した【15-045H】《エッジ》が除去を肩代わりしてくれるのでこれの維持が容易になったのが追い風で、これまで以上に高いコントロール性能を得たと考えられそうです。
「Opus XIV 〜クリスタルの深淵〜」環境初期に活躍したスタンダードな「風単」や、「クリスタルの支配者」でさらなる強化を得た「水風空賊」などで今後も頻繁に見かけるカードとなるでしょう。
土属性
【15-084L】《ロベルアクベル》
新ギミック「クリスタル」を活かした1枚。
クリスタルさえ確保できれば、フォワードでもモンスターでもブレイクできるうえ、バックアップの回収効果により継続したアドバンテージソースにもなれるフォワード。
水属性の【15-124H】《リルム》と合わせて、クリスタルを獲得しつつ各種オートアビリティを使い回す構築など目指していきたいところです。
現状はクリスタルの獲得手段がまだ足りていない印象ですが「土単」愛好家としては【14-064R】《キトン》と合わせて“無限”「夢幻三段」を狙う構築にもロマンを感じます。
雷属性
【5-099H】《イルーア》&【13-079L】《ベヒーモス・K》
「火単」などの除去に特化したデッキが隆盛すると考えると、それに対して選ばれない、もしくは選ぶことにデメリットがあるフォワードのバリューが高まりそうです。
これらのカードはヘイストを持つので、相手がバックアップを展開する前に攻勢に出ることができたり、除去される前に一定の役割を遂行できる点も評価できます。
特に【13-079L】《ベヒーモス・K》は、フォワードによる除去にプレッシャーがあるだけでなく【15-119L】《ポロム》などに対してもある程度耐性があるため、積極的に採用していきたいところです。
ただし、雷属性はアドバンテージを獲得する手段が他の属性に比べて手薄な印象があり、除去に特化したデッキと対峙して勝利までに必要なリソースを確保できるのか、その点が構築のミソとなりそうですね。
水属性
【15-119L】《ポロム》
前述のとおり、禁止・制限の施行後の環境ではこのカードに対する相性差が、そのままデッキの相性関係に反映されると感じているカードです。
仮に対処されたとしても【3-144L】《レナ》や【15-126R】《レナ》などで復活させることも容易で、維持しやすいのがポイント。
幸い成長前ならパワーが低く、どんなデッキであっても対処することはそれほど難しくないので、意識しておけば1枚にしてやられることは少ないはずです。
光・闇属性
【15-128L】《ノクティス》
環境の変化によりアタックしやすくなったこと、パーティーアタックを軸としたギミックが増えたことで可能性を感じさせる1枚です。
制定後を想定して少し使ってみたのですが、一度動き出すと止まらない印象を受けるので、今後はビートダウン寄りのデッキで広く使われることになると思います。
個人的には、フォワードが除去されにくくヘイストを持ちやすい雷属性と組み合わせて使ってみたいと感じました。
◆おわりに
今回は12月24日から施行される禁止・制限カードの制定の影響と、それに伴うスタンダード環境の変化について考察をしてきました。
現時点での僕の考察をまとめると、
・「土水ドーガ」「風単チョコボ」などが規制されることで、バックアップを置く余裕が生まれ環境が低速化し、多くのデッキが動きやすくなる
・デッキが多様化することで、EXバーストによるカウンターを狙うデッキの需要が低下
・「クリスタルの支配者」で登場したシステムフォワードによって、除去の重要性が増す
と考えています。
とはいえ、まだまだ考察が行き届いておらず、机上論である要素も多いかと思いますので、来週の記事ではさらにデッキを深堀りし、禁止・制限カード施行後の環境を見据えて調整を進めたデッキをいくつか紹介し、使用感などをお伝えしていきたいと思います。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!