『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS2021」高松大会、姫路大会を優勝した「火単」について、インタビューとコラムで解説します。
◆はじめに
みなさんこんにちは!『FFTCG』プレイヤーのたるほです。
最新ブースターパック「クリスタルの支配者」が発売されましたね!
今回からこれまで使われてきた「Opus」の表記が外れ、タイトルのみがセット名として付けられるようになりました。これまでの『FFTCG』の歴史のつながりを感じる「Opus」表記も僕は好きでしたが、実物を手に入れてみるとシンプルでコンセプトが前面に出た印象を受けるタイトルも新鮮でいいですよね。
みなさんはどちらが好みでしょうか?
今回の新要素「クリスタル」は、これまでの「CP(クリスタルポイント)」とは異なるリソースの概念で、カードの効果によって獲得し、これを消費することで効果を発動するギミックです。
使用するのに複数のカードを使うことが多いため、これまで以上にカードどうしの関わりが重要になるコンボ性の強い要素という印象を受けました。
まだまだ未開拓の要素なので、これから開催されていく「MASTERS 2021」や「第3期名人位決定戦」でどんな活躍をしていくのか注目です。
僕はそんな新環境を最速で楽しもうと、「クリスタルの支配者」発売後最初の公式トーナメントとなった「MASTERS 2021」高松大会と姫路大会に遠征し、姫路大会では念願であった「MASTERS 2021」優勝、そして「MASTERS 2021 FINAL」への出場権を獲得することができました。
今回は姫路大会で僕を優勝に導いてくれた「火単」について、製作者であり前日の高松大会の優勝者でもある居ないヒトさんへのインタビューを交えながらご紹介していこうと思います。
それでは、さっそく始めていきましょう!
居ないヒト
広島のプレイヤー。
デッキ作りのモットーは“「強いカード」ではなく「必要なカード」を選択する”こと。
その手腕で作り上げた「火単」は自身が優勝した「MASTERS 2021」高松大会のみならず、徳島大会、姫路大会でも実績をあげている。
まさに西日本を代表するデッキビルダーと言えるだろう。
◆打倒「土水ドーガ」、「火単」誕生の軌跡
――まずは「MASTERS 2021」高松大会優勝おめでとうございます。デッキをシェアしてもらって、僕も翌日の姫路大会で優勝することができました。
居ないヒト:ありがとうございます。お互い無事優勝することができてよかったですね。
――どこかで優勝したいとずっと思っていたので、うれしかったです。「Opus XIV」環境からはDiscordなどを通じて広島のプレイヤーの皆さんと一緒に調整して、今回は「火単」のデッキを共有しましたが、「火単」については製作者である居ないヒトさん直々にデッキ紹介をしていただきたいと思います。今回の「火単」はどういったコンセプトで、どういった経緯から作られたデッキなんでしょうか?
居ないヒト:このデッキは「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」環境のL6構築で、「土水ドーガ」に対抗するデッキとして考えました。
もともと私は、「Opus XIV」環境のL6構築は「土水ドーガ」が最強のデッキであると考えていて、私自身も「MASTERS 2021」では「土水ドーガ」を使うべく、調整を重ねていました。
そんななか、大体50〜60戦ほど対戦をした段階で、「土水ドーガ」というデッキはお互いの習熟度が上がるほど、デッキ切れによる決着がつくことが多いなと感じるようになりました。
そこで、このデッキ切れによる決着を意図的に発生させることができれば、「土水ドーガ」に対抗していけるのではないかと考えて製作したのが、この「火単」になります。
●「火単」(「MASTERS 2021」高松大会 優勝 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(21枚) | ||
【10-132S】 | 《ティナ》 | 3 |
【13-002L】 | 《アクスター》 | 2 |
【13-017H】 | 《レイン》 | 3 |
【13-129S】 | 《フィリア》 | 2 |
【13-130S】 | 《ランジート》 | 2 |
【14-006R】 | 《焔神イフリート》 | 3 |
【14-011H】 | 《豪神スサノオ》 | 3 |
【15-006H】 | 《カイエン》 | 2 |
【11-130L】 | 《セフィロス》 | 1 |
バックアップ(18枚) | ||
【3-018C】 | 《ビビ》 | 1 |
【6-011C】 | 《朱雀兵》 | 3 |
【10-012C】 | 《風水師》 | 3 |
【10-131S】 | 《エース》 | 1 |
【11-004C】 | 《クー・チャスペル》 | 3 |
【11-012C】 | 《タツノコ》 | 1 |
【12-016C】 | 《ブレイズ》 | 3 |
【14-001C】 | 《アマルジャ族》 | 3 |
召喚獣(11枚) | ||
【2-002C】 | 《イフリート》 | 2 |
【12-002H】 | 《アマテラス》 | 3 |
【12-005C】 | 《イフリート》 | 3 |
【13-012R】 | 《バハムート》 | 3 |
●「火単」(「MASTERS 2021」姫路大会優勝 フォーマット:L6構築)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(21枚) | ||
【10-132S】 | 《ティナ》 | 3 |
【13-002L】 | 《アクスター》 | 2 |
【13-017H】 | 《レイン》 | 3 |
【13-129S】 | 《フィリア》 | 2 |
【13-130S】 | 《ランジート》 | 2 |
【14-006R】 | 《焔神イフリート》 | 3 |
【14-011H】 | 《豪神スサノオ》 | 3 |
【15-006H】 | 《カイエン》 | 2 |
【11-130L】 | 《セフィロス》 | 1 |
バックアップ(18枚) | ||
【10-012C】 | 《風水師》 | 3 |
【10-131S】 | 《エース》 | 1 |
【11-004C】 | 《クー・チャスペル》 | 3 |
【11-012C】 | 《タツノコ》 | 1 |
【12-016C】 | 《ブレイズ》 | 3 |
【13-006C】 | 《ザンデ》 | 1 |
【14-001C】 | 《アマルジャ族》 | 3 |
【14-012C】 | 《コウジン族》 | 3 |
召喚獣(11枚) | ||
【12-002H】 | 《アマテラス》 | 3 |
【12-005C】 | 《イフリート》 | 3 |
【13-012R】 | 《バハムート》 | 3 |
【15-014H】 | 《ブリュンヒルデ》 | 2 |
――直接的に相手のデッキを減らすカードは採用されていませんが、具体的にどういった手段でデッキ切れを狙うのでしょうか?
居ないヒト:「土水ドーガ」は、デッキの主役である【13-120H】《ドーガ》自身が強力なドローエンジンであり、【13-120H】《ドーガ》のために採用されている召喚獣もドローやサーチの効果を持つカードが多いため、こちらから何かアクションを仕掛けなくてもデッキの枚数は自然と減っていきます。
なので、相手のフォワードをすべて除去して、攻め手をなくしてしまえば、そのまま相手のデッキ切れまで持ち込めると考えました。
また「土水ドーガ」は【14-116H】《マシュリー》でこちらのフォワードを手札に戻してダメージを通してきますが、採用するフォワードをすべて除去につながるカードにすることで【14-116H】《マシュリー》によるフィニッシュを抑制することができると考えました。
【13-017H】《レイン》や【13-130S】《ランジート》は「火単」ではおなじみのカードですが、使っていくなかで特に強いと感じたのは【14-006R】《焔神イフリート》でした。
初めてカードを見た段階では、手放しに「強い」と評価できるカードではないと思っていたのですが、実際にデッキにしてみると【14-001C】《アマルジャ族》との組み合わせで「土水ドーガ」の【13-118C】《セーラ[MOBIUS]》と【14-111R】《美神ラクシュミ》を同時に処理できるなど、除去に特化した構築ならではの強さを発揮してくれました。
「火単」では【14-003R】《イルーア》が採用されることがありますが、私の構築では採用していません。
【14-003R】《イルーア》はダメージを与えるタイミングが「アタックしたとき」なので、アタックする前に【14-116H】《マシュリー》で手札に戻されてしまうと目的を達成できないというリスクを抱えているからです。
代わりに「Opus XIV」環境では【12-010C】《戦士》を採用するなど構築面での工夫をしました。
とはいえ【14-003R】《イルーア》を採用すべきではないという話ではなく、例えば対「火単」などを想定するのであれば、【14-003R】《イルーア》のヘイストが活きてくるので、何を仮想敵と考えるかで選択していけばいいと思います。
同じく広島勢のkenさんは、デッキの思想をすべて知ったうえで【14-003R】《イルーア》を採用し、みごと11月の徳島大会を優勝されたので、あくまで好みの問題かなと思っています。
――「クリスタルの支配者」の登場によって変更された要素はありますか?
居ないヒト:現在【12-010C】《戦士》のスロットは「クリスタルの支配者」で登場した【15-006H】《カイエン》に変わっています。
【15-006H】《カイエン》自身が9000ダメージを与えられるため、パワーの上がった【13-120H】《ドーガ》や手札を5枚持っているときの【14-111R】《美神ラクシュミ》にもバックアップを展開しないうちから対処できるので、【ジョブ(侍)】にデッキを寄せなくても十分活躍が期待でき、ダメージを5点以上受けていると相手のフォワードを除外できるので1枚で2体のフォワードを対処できます。除去手段をダメージに依存する「火単」にとっては除外による除去というのもありがたいです。
また、これは新カードではありませんが、現在採用されている【11-130L】《セフィロス》は「クリスタルの支配者」発売以降に採用したカードです。
もともとは【14-116H】《マシュリー》を採用していましたが、召喚獣を多めに採用しているとはいえ【14-116H】《マシュリー》の恩恵を受けられるほど多くはない点と、スタンダード環境ではこのデッキの苦手とする【14-118H】《シュテル・リオニス》を採用するデッキも多く、そうしたデッキに対抗するカードとして採用しています。
相手からのダメージを許容しつつバックアップを並べるゲームメイクや、【13-129S】《フィリア》や【13-006C】《ザンデ》など自らダメージを受ける手段もあるので、【11-130L】《セフィロス》自身が出せないという展開にはなりにくく、非常に強力なカードでした。
また召喚獣に関しては、【2-002C】《イフリート》を採用しています。
もともと「Opus XIV」環境では【14-111R】《美神ラクシュミ》を対処できる除去として【1-023R】《ブリュンヒルデ》を採用していましたが、コスト3というのが思いのほか取り回しが悪く、【14-116H】《マシュリー》をピッタリ除去できる6000ダメージという点を買って採用しました。
――《イフリート》といえば、最初にデッキを見たときに【12-005C】《イフリート》を見て、EXバーストはあるものの正直そこまで高コストのカードを採用して大丈夫かな? という印象を受けました。ですが、実際姫路大会では非常に使用感がよくて驚いた1枚でした。
居ないヒト:基本的にバックアップを並べた後も、相手の除去すべきフォワードがいなければこちらからはフォワードを展開せず、超過した手札を捨ててでもバックアップをアクティブにしたままでターンを返すプレイングが多く、そういった場面で相手ターンに9000ダメージを与えられる【12-005C】《イフリート》は優秀な選択肢でした。
もちろんEXバーストしたときは1枚で盤面を返す力もありますし、単純なカードパワーではなくデッキへの親和性という点でほかの召喚獣にはない魅力があります。
また、スタンダードの観点では【14-118H】《シュテル・リオニス》に届くダメージが出せるというのも評価できます。
【14-118H】《シュテル・リオニス》を使うデッキの代表格である「風単チョコボ」は、基本的に「待ち」に特化した戦術を取るデッキですが、対「火単」相手には《チョコボ》を除去されることを嫌って攻勢に出てくるプレイヤーも少なくありませんでした。
そうしたプレイをされたときに、たまたまめくれた【12-005C】《イフリート》で【14-118H】《シュテル・リオニス》を倒し、勝てる試合も少なくなかったです。
――【14-003R】《イルーア》の不採用や、【12-005C】《イフリート》の採用など、居ないヒトさんの構築は、必ずしもカードパワーの高いカードだけを採用するわけではないんだなと感じました。
居ないヒト:私はカードを採用するとき「強いカード」ではなく「必要なカード」を採用しようということを信条にデッキを組んでいます。
「強いカード」は魅力的な選択肢を提示してくれますが、その選択肢が必ずしも勝利につながるというわけではありません。
強いカードと、それらを使っての選択肢を見誤らない強いプレイヤーであれば、そういったカード選択をするべきだと思いますが、私は自身を決して強いプレイヤーではないと考えているので、カードが私に適切なプレイを示してくれるような、勝利のために「必要なカード」でデッキを組もうと考えているのです。
極端な話、自分にしか扱えない「最強のデッキ」ではなく、どんなプレイヤーが使っても勝つことができる「理想のデッキ」を目指してデッキを作っています。
――今回、僕も直接デッキについて話したり、対戦を見るなかで、居ないヒトさんの「火単」に対する考え方を学ぶことができたこともあり、姫路大会では自分では初めて使いながらも手になじむ感じをおぼえました。
「土水ドーガ」を仮想敵として作られた「火単」ですが、(12月24日に施行される)スタンダードでは【13-120H】《ドーガ》の禁止と【13-119L】《ソフィ》の1枚制限、L6構築では【13-120H】《ドーガ》の禁止を受け、これまでとは立ち位置も変わってくると思います。制定後の「第3期名人位決定戦」や1月以降の「MASTERS 2021」では「火単」はどういった変化があると考えていますか?
居ないヒト:仮想敵である「土水ドーガ」がいなくなることもあり、【14-116H】《マシュリー》を強く使えるデッキが減ることが予想されるため、前述の【14-003R】《イルーア》が使いやすくなると考えています。
継続した除去が確保できるうえ、単体で攻撃を仕掛けられる強力なアタッカーが増えるので、デッキ自体のポジションは変わってもデッキパワーが向上し、今後も活躍していけると思います。
ただし、同じく【14-116H】《マシュリー》に活躍の機会を阻まれていた「火土アバランチ」などのアタックをすることでアドバンテージを得るデッキも復権してくることが考えられます。
「火単」は除去カードの多さで相手のアタッカーを封じているデッキなので、ヘイストを軸にしたデッキに対して不利な側面があり、今後はそういったデッキに対しての対応を考えていく必要があるかなと感じています。
なので、「火単」の立ち位置としてはヘイストを持つフォワードが採用されないコントロールデッキなどに対する抑止力になりつつ、メタゲームの要所で活躍していくデッキになると思います。
――ありがとうございました。
◆たるほのワンポイント「隙あらばデッキテク語り」
ここからは私から、広島勢との調整や大会当日の実戦のなかで学んだ、「火単」のデッキテクを紹介していこうと思います!
今回プレイしていて特に重要だなと感じたのは以下の3点です。
①コストが余ることを恐れない
「火単」を使っていて、よく遭遇するのがこんな場面。
「相手のフィールドに除去するフォワードがいないのに、こちらは手札が余ってバックアップもアクティブ状態。手札超過で捨てるのはもったいないし、フォワードを出すべきだろうか?」
答えはNOで、このデッキで採用しているフォワードは、すべて除去につながるカードなので、意味もなくフィールドに出してしまうと残る手札の質が下がる恐れがあります。
もしそのフォワードが、手札でもっとも必要ないカードであれば出してしまうのも一つの手ですが、より優先度の低いバックアップなどが余っているなら無理して展開せず、あえてそのままターンを終了する勇気も必要です。
コストを残したままターンを渡しても召喚獣を使って動くことは可能なので、必ずしもコストを使い切らなくてもよいことは覚えておきましょう。
②アタックする意味とリスクを吟味する
通常『FFTCG』はダメージレースを進めるためアタックを行ないますが、相手のドロー過多によるデッキ切れを勝ち手段の一つにする「火単」では、アタックをする優先度はかなり低く、十分安全な体制を作るまでは本来アタックすべきではありません。
ですが、例えば【13-017H】《レイン》でフォワードを除去したり、相手のデッキを減らすためにやむなくアタックする必要がある場面も存在します。
そういった場面では、アタックをするリスクとリターンを見極め、本当に必要なアタックなのか考慮して行動するよう心掛けました。
③相手のデッキをカウントする
デッキ切れを狙うときに重要になるのが、自分と相手のデッキの枚数の差です。
しかし、ゲーム途中からデッキの枚数を気にしだしても、一度ついたデッキ枚数の差は簡単には覆りません。
何より、試合中ずっと山札の枚数を気にしていてはプレイに集中できないですし、時間がかかり試合自体が終わらない(両者敗北で負けてしまう)可能性もあります。
そこで僕が注目したのが、ゲーム中に使用したデッキを減らすカード=サーチやドローをするカードの数です。
これを覚えておくだけでも、どちらのデッキが先に切れるかわかりますし、逆転するために何回アタックする必要があるかなど、その後のプレイにも役立ちます。
特にバックアップによるサーチやドローで山札の枚数が動きやすい序盤は、デッキの枚数に差がつきやすいタイミングなので、ここである程度デッキ枚数の差を把握しておき、ゲームを進めると余裕を持ってプレイすることが可能になります。
この他にも細かなテクニックなどありますが、まずはこの3点を気にかけてプレイすると「火単」の方針が見えてきやすいかと思います。
◆おわりに
今回は、僕を「MASTERS 2021」姫路大会優勝へと導いてくれた「火単」について、製作者である居ないヒトさんへのインタビューと、僕が大会を通じて意識したプレイテクをテーマにご紹介してきました。
「火単」はシンプルながら、『FFTCG』の除去コントロールの基礎が詰まったデッキなので、今回の結果で興味を持ってくれた方もぜひ一度使ってみることをオススメします。
無事「MASTERS 2021 FINAL」の権利を獲得できたので、ここからは12月25・26日に開催される「第3期名人位決定戦」に向けデッキを調整していこうと思います。
「第3期名人位決定戦」は2デッキスタンダードという特殊フォーマットで行なわれますが、【13-120H】《ドーガ》や【14-118H】《シュテル・リオニス》の禁止などを受けて、どんなデッキが活躍するかも注目ですね。
今後開催される「MASTERS 2021」の結果にも注目しつつ、気になるデッキをご紹介していければと思っているので、そちらもぜひ楽しみにお待ちください。
それではまた次回の記事でお会いしましょう!