【FFTCG】「2デッキスタンダード」の難しさとおもしろさを語る!

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週はライターのたるほさんが「第四期名人位決定戦」で採用されている「2デッキスタンダード」について解説します。

◆はじめに
みなさん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

9月10・11日にかけて開催される「第四期名人位決定戦」が迫ってきました。
全国の予選大会を勝ち抜いたメンバーから、今年を代表する“『FFTCG』名人”が決まる一大大会。
僕もとっておきのデッキを作って“名人”襲名を狙っていきたいと思います。

そんな「第四期名人位決定戦」ですが、この大会では通常の公式トーナメントとは少し異なる「2デッキ制(2デッキスタンダード)」の対戦形式が採用されています。

プレイヤーはAとBの2種類のデッキを用意し、予選の1~3回戦はAデッキ、4~6回戦はBデッキというように2つのデッキを使ってトーナメントを戦います。フォーマットはスタンダードです。

今回は、この「第四期名人位決定戦」を存分に楽しんでいただけるように、現環境における「2デッキスタンダード」について解説していきたいと思います。

「デッキ2個作るだけでしょ?」と思われるかもしれませんが、たとえばどちらを序盤に使うAデッキに設定するか、また、そのデッキはほかのプレイヤーがAデッキに設定してきそうなデッキに有利かなど、普段の大会と比べて「デッキの配置」とでもいうべき要素があり、さらに、ここに2デッキ制固有の構築ルールが加わって、これがなかなか奥深いのです。

「第四期名人位決定戦」に出場される方はもちろん、そうでない方も「自分だったらどういうデッキをチョイス、配置するか?」ということを考えつつ、読んでいただければと思います。

◆「2デッキスタンダード」の構築ルールとその影響
「2デッキスタンダード」はその名のとおり、スタンダードのデッキを2つ用意して対戦を行ないます。
「名人位決定戦」では慣例として「2デッキ制」が導入されており、第1回大会、第3回大会でも、この「2デッキスタンダード」が採用されました。

基本的な構築ルールや禁止・制限カードを含めたカードプールは、スタンダードのルールに準拠していますが、通常のスタンダードとは異なるポイントとして、

「同ナンバーのカードはデッキA、デッキBいずれか一方にしか入れることができない。」

という独自のルールが存在します。
このルールによって、トーナメントにおいて重要な「ベストデッキで大会に臨むこと」へのハードルが非常に高いものになっていると感じています。

個人的にトーナメントという場におけるベストデッキとは、

・デッキのポテンシャルが十分に高められた構築であること
・メタゲームで優位なポジションを確立していること

という2つの条件を満たしているデッキだと考えています。
まず「デッキのポテンシャルが十分に高められた構築であること」についてですが、たとえばデッキAで「火単【侍】」を使うとします。


このデッキは火属性のみで構築され、さらに採用されるほとんどのカードが【侍】ということで、一見するとデッキBで使用するカードプールをそれほど圧迫するようには見えません。

しかし、「火単【侍】」には必ずと言っていいほど【12-002H】アマテラスが採用されています。


【12-002H】《アマテラス》はこれだけで火属性を使う理由になるほどのカードですが、同じカードを両方のデッキに採用できない「2デッキスタンダード」では、片方のデッキでしか使用できません。

このためデッキAに「火単【侍】」を選択した場合、デッキBでは火属性を使ったデッキを選択するメリットが薄くなり、仮に採用したとしてもそのデッキが十分なポテンシャルを発揮することは難しくなってしまいます。土属性における【9-068H】《ドラゴン》なども近い存在と言えるでしょう。

この「特定の属性の採用理由になりえるカード」をめぐる葛藤は「2デッキスタンダード」でのデッキ構築における難題としてプレイヤーを常に悩ませてくれます。

これを解消するもっともシンプルなアプローチが「使用する属性が重複しない2デッキを選択する」というものです。たしかにこれなら、それぞれのカードプールの選択肢を存分に使うことができます。
たとえば「火単【侍】」と「風水【空賊】」のような構成にすれば、カードプールの問題はほぼ解決できます。

ただ、ここで問題になるのが「メタゲームで優位なポジションを確立している」デッキが構築できるか?ということです。

『FFTCG』ではデッキごとに相性があり、その時々の状況によって活躍するデッキとそうでないデッキが別れます。普段なら相性からメタゲームを想定したデッキ構築をするわけですが、今回は自分も相手もデッキAとBでいわば“異なるカードプール”でデッキを構築しています。なので、普段どおりのメタゲーム読みで“環境的に優位なデッキ”を構築するのは難しいと言わざるを得ません。

さらに、ここに個々のプレイヤーのタイプや好みも影響してきます。アグロが得意なプレイヤー、コントロールが得意なプレイヤー、コンボデッキに長けたプレイヤーと、プレイヤーのタイプはさまざまです。

各デッキが持つ特徴は、こういったプレイヤーの性質を反映するものでもあるため、仮に属性が重複しないベストな2デッキを作り上げることができたとしても、そのデッキのポテンシャルをプレイヤーが100%発揮しきれるかはまた別の問題ですよね。プレイヤーによっては、単純なデッキパワーよりも自身の実力を発揮しやすいデッキを優先して選んでくる人もいるでしょう。

ここまでをまとめると、

カードが重複しない強いデッキを2つ作れるか?

というのが第一関門で、

そのデッキはほかのプレイヤーが持ってくる2つのデッキに有利に戦えるか?

というのが第二関門。そして、

その2デッキは自分のプレイスタイルに合っているか、ポテンシャルをしっかり引き出せるか?

という最後の関門があります。
1つのデッキを研ぎ澄ませていく通常の大会と異なり、この「2デッキスタンダード」での戦いは、まさに“『FFTCG』名人”の称号を懸けた大会にふさわしいフォーマットだと言えるでしょう。難しいですが、プレイヤーとして燃えるポイントでもありますね。

 

◆「2デッキスタンダード」の観点からカードプールを見てみよう
ここからは属性ごとに、カードプールが「2デッキスタンダード」においてどういった役割や強みを持つのかをチェックしていきましょう。

【火属性】
火属性はアイデンティティとも言える【12-002H】《アマテラス》が存在し、スタンダード環境では「火単」や「火水」など、さまざまなデッキで採用されているため、今回の「第四期名人位決定戦」でも非常に人気となりそうです。「火単【侍】」のように単属性での構築も可能なので、もう1デッキとのカードプールの調整をしやすいこともあり、デッキの組み合わせの自由度はとても高いと考えられます。

「反撃の雄たけび」環境でも活躍が噂されている「【モールズの夜会】デッキ」は火属性を使用したデッキでありながら【12-002H】《アマテラス》を採用しない構築も存在するため、2デッキとも火属性を採用した構築を狙うことも難しくないでしょう。


【氷属性】

【14-116H】《マシュリー》が禁止カードになったのを受けて、このカードと召喚獣に依存したアグロデッキは衰退したと考えているプレイヤーは多いようです。

結果、環境予想としてはやや遅めのコントロールが中心になると考察されていますが、対コントロール戦におけるリソース勝負でスポットが当たるのが、手札破壊が強力な氷属性です。

想定されるデッキは「反撃の雄たけび」で強化された「火氷【VI】」、対コントロールに強い「風氷」、「光の使者」環境の終盤で活躍し始めた「土氷」などが考えられます。

どれも非常に強力な選択肢となりますが、なかでも「風氷」は人気どころの火属性・土属性と被らずデッキを構築できるため、多くのプレイヤーの選択肢に入るでしょう。

【風属性】
【14-042L】《雲神ビスマルク》を主軸に複数のパターンでデッキが組めるのが魅力の属性。
前述の「風氷」はもちろん、「風単」や「風水」は同じ組み合わせのなかにも複数の構築パターンがあり、構築によって幅広いデッキに対応可能です。

風属性のみで一定のポテンシャルが保てるため2デッキ目として構築しやすく、多属性化しがちな土属性を1デッキ目に使用する際の相方としても優秀だと思います。

反面、【14-042L】《雲神ビスマルク》をはじめひとつのデッキにエースとなるカードが集中しやすい属性になるため、両方のデッキを風属性メインにするのは厳しいでしょう。

【土属性】
土属性は「2デッキスタンダード」の優等生であり問題児とも言える属性です。

土属性のメリットとして、デッキを多属性化させやすい点が挙げられますが、言い換えれば他の属性の重要なカードを使ってしまうため、2デッキ目の選択肢を狭めてしまうことになります。

最近は「火土水【リディア】」や「【モールズの夜会】デッキ」のような土属性を主軸とした多属性デッキが活躍しているため、デッキパワーを集中させるか分散させるか、このジレンマに悩まされることになりそうです。

「反撃の雄たけび」では【17-076H】《マトーヤ [I]》が登場し、【1-107L】《シャントット》を使わなくても全体除去ができるようになったため、2デッキともに土属性を採用することも可能になり、選択肢が広がったぶん、この属性をどう扱うかが大きな分岐点となりそうです。


【雷属性】
「光の使者」環境ではあまり中心的なポジションになることはなかったものの、「反撃の雄たけび」の新規カードで大幅に強化され、いま注目度が高まっている属性です。

なかでも【17-091L】《エクスデス》は、一度条件を達成できればこれまでにない制圧力を発揮できるフィニッシャーです。

加えて【17-096H】《黒衣の男》による継続したアドバンテージの獲得など、これまで雷属性が苦手としていた要素も補われ、既存の【ジョブ(黒魔道士)】のギミックなどと合わせた活躍が期待できます。

今月からスタートする「MASTERS 2022」などでは「土雷【黒魔導士】」や「水雷【レオ】」といったデッキの活躍が期待されていますが、「2デッキスタンダード」ではやはり属性の組み合わせが重要になるため、強いからといって安易にこれらのデッキを採用するわけにはいかないのが悩みどころです。強化された要素を既存のデッキに加えるのか、それとも新カードを中心にデッキを組むのか、プレイヤーの選択が気になりますね。


【水属性】
アドバンテージを稼げるカードが多くEXバーストも豊富で、コントロール志向のプレイヤーに人気の属性。

召喚獣が強力な属性でもあるため【14-116H】《マシュリー》の禁止による影響も懸念されますが、「【モールズの夜会】デッキ」や「風水【空賊】」などで補助的に作用する属性としての役割も持っており、多くのデッキでの活躍が期待されます。

前述の「水雷【レオ】」や「風水【FFX】」など重要カードがさほど被らない構築も多く、2デッキともに使用しても属性としてのポテンシャルを損なうことなく運用が可能だろうと考えています。


◆おわりに
今回は「第四期名人位決定戦」のフォーマットである「2デッキスタンダード」について、お話をさせていただきました。

トーナメントレベルのデッキを2つ作るということが単純に難しいうえ、通常のスタンダードと比べてデッキ構築や属性の取捨選択もあり、メタゲーム考察なども複雑で、“『FFTCG』名人”への道のりの険しさを体現したようなルールです。僕も「第四期名人位決定戦」に向けてデッキを考える日々ですが、現時点でまだまだ正解がわかっておらず、大会に間に合うのか? という不安はぬぐえません(笑)。

ただ、だからこその楽しさもある非常に魅力的なフォーマットなので、今回参加されない方も、ぜひ一度「2デッキスタンダード」での構築に挑んでみることをおすすめしたいです。

「第四期名人位決定戦」後にはこの連載でもインタビューなどを通じて、ほかのプレイヤーがどういう思考でデッキ選択をしたのかなどもお伝えしていければと思いますので、そちらも楽しみにお待ちください。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!