【FFTCG】環境終盤に「モールズの夜会」が大暴れ! ~「MASTERS22-23」名古屋大会優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS22-23」名古屋大会で優勝した正義さんのインタビューをお届けします。

◆はじめに
みなさんこんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
いよいよ終盤戦を迎えている「MASTERS 22-23」ですが、今週も優勝者インタビューをお届けしていきたいと思います。

今回お届けする大会の舞台となったのは愛知県名古屋市。中部地方最大の都市であり、古くは三種の神器のひとつである草薙剣を祀る熱田神宮の鳥居前町で、尾張徳川家の城下町として栄えた歴史を持つ街です。現在は日本最大の工業地帯である中京工業地帯の中枢も担い、また国際貿易の窓口である名古屋港があるなど、歴史・工業・貿易などさまざまな分野で現在の日本を支える都市でもあります。

もはや『FFTCG』プレイヤーの間ではおなじみとなったIMYホールでの開催となった名古屋大会ですが、この日は「力の復活」のL3構築環境が始まって以来の事件が起こります。なんと、ベスト4に出そろったすべてのデッキが「モールズの夜会」となったのです

この異例のトーナメントをプレイヤーたちが見守るなか、決勝戦のカードは正義(まさよし)さん対マキナんさんの対決。

初戦はバックアップの展開が遅れてしまった正義さんをマキナんさんが刺す展開で勝利し、2戦目は互角の展開を進めるなか【16-067L】《エアリス》の登場によりパワーで圧倒した正義さんが勝利。迎えた最終戦は、初戦の写し鏡のようにバックアップ展開が遅れたマキナんさんを正義さんが逆転する形で勝利し、正義さんが優勝を飾りました。

今回はみごと優勝された正義さんに、L3構築でこだわって使い続けてきたという「モールズの夜会」についてインタビューしてきましたので、そちらをお届けしたいと思います。

◆イラストレーションの魅力からスタートした「モールズの夜会」デッキ
――「MASTERS 22-23」名古屋大会、優勝おめでとうございます。
正義:ありがとうございます。

――今回正義さんが使用されたデッキは「モールズの夜会」でした。【ジョブ(モールズの夜会)】は「光の使者」で登場したテーマで、登場以降トーナメントシーンで活躍を続けています。L3構築ではデッキの要となる【16-065C】《アンバー》が禁止されており制約の多いデッキという印象もあるなか、名古屋大会ではTOP4がすべて「モールズの夜会」という驚きの結果も話題を呼びました。まずは今回正義さんがこのデッキを選択した経緯を教えてください。

正義:ごく個人的な趣味の話になるのですが、僕は獣人キャラクターが好きで、「モールズの夜会」のメンバーである【16-059C】《ペツォッタ》や【16-099C】《メラルド》のイラストにとても魅力を感じていました。そこで、これらのカードを使った「モールズの夜会」デッキで「MASTERS 22-23」を優勝したいと思い、これまで練習を続け、神戸大会・広島大会にも参加してきました。


――『FFTCG』はゲーム性だけでなく、カードイラストにも魅力的なものが多いですよね。活躍させたくなるイラストレーションの魅力というのはすごく共感できます。ただゲーム的な観点でいうと現在のL3構築で唯一禁止カードの影響を受けているデッキであるため、そのハンデがあったかと思います。それを踏まえて構築やカード選択についてお話しをうかがおうと思います。

●「土火風【モールズの夜会】」(「MASTERS 22-23」名古屋大会優勝 フォーマット:L3構築)

カード番号 カード名 枚数
フォワード(31枚)
【16-080H】 《マダム・エーデル》 3
【16-121R】 《べスビア》 3
【16-099C】 《メラルド》 3
【16-022R】 《アウィン [FFBE]》 2
【16-059C】 《ペツォッタ》 2
【16-067L】 《エアリス》 2
【16-051L】 《セシル》 3
【18-035R】 《アルクゥ》 2
【16-002H】 《エース》 2
【18-111L】 《バッシュ》 3
【18-110H】 《ザンデ》 2
【18-119C】 《チェリンカ》 2
【18-124C】 《ビリー・ボー》 2
バックアップ(16枚)
【16-075R】 《シンジュ》 3
【16-062C】 《レキサ》 3
【16-003C】 《エルビス》 3
【18-056C】 《ケットシー [XI]》 3
【17-076H】 《マトーヤ [I]》 2
【17-049C】 《シド・ポレンディーナ》 2
召喚獣(3枚)
【16-074C】 《サボテンダー》 3

正義:【16-065C】《アンバー》が使用できないのは、単純に採用できる【ジョブ(モールズの夜会)】の種類が少なくなり、サーチ手段がないことで再現性がなくなり安定した展開が難しいことなど、影響が大きいです。今回、デッキ構築のうえでまず意識したのもまさにその点でした。


――具体的にどういった構築を意識したのでしょう?

正義:【16-065C】《アンバー》の不在による影響がもっとも大きいのが、【16-075R】《シンジュ》へのアクセスができなくなることです。ご存じのとおり【ジョブ(モールズの夜会)】は6属性にまたがるテーマなので、安定した各属性のCP供給が必要不可欠です。そこで本来であれば【16-065C】《アンバー》からの【16-075R】《シンジュ》サーチで立ち上がるというのが鉄板の動きですが、【16-065C】《アンバー》が禁止されているL3構築ではこの動きを狙うこと自体が不可能です。


そこで採用したのが「力の復活」で登場した【18-111L】《バッシュ》です。

フィールドに出たときにダメージを1点受けることで火属性か土属性のキャラクターをサーチできるため、現在のL3構築で【16-075R】《シンジュ》にアクセスできる貴重なカードです。

また、能動的にダメージを受けられるので、【18-056C】《ケットシー [XI]》のフィールドアビリティとも相性がよく、これにより安定したCPの供給にもつながります。


また、火属性にはバックアップの【16-003C】《エルビス》が存在するため、火属性の採用枚数を多くするのも理にかなっています。

ですが構築上、属性ごとのカードを採用できるスロットに限りがあるので、火属性の比率を高めることにも限界があると考え、キャスト以外に【18-111L】《バッシュ》を出す手段が必要だと考えました。

そこで次に注目したのが【16-051L】《セシル》です。オートアビリティで手札からコスト4以下のキャラクターをフィールドに出せる効果は、【18-111L】《バッシュ》と相性がいいことはもちろん、【ジョブ(モールズの夜会)】もコスト4以下に集中しているためデッキ単位で相性がいいカードです。

また【16-051L】《セシル》採用することで、【16-051L】《セシル》をサーチできる【17-049C】《シド・ポレンディーナ》を自然と採用できるのも、奇数CPの動きの幅が限られるL3構築では大きなメリットです。

風属性にもバックアップである【16-062C】《レキサ》がいるため、火属性と同じく風属性の採用枚数を多くする意義もあるため、土属性を主軸に火属性・風属性で脇を固めた構築を目指しました。


――それでは個別のカードについてもお話を聞いていきたいと思います。まず【ジョブ(モールズの夜会)】のメンバーですが、バックアップの【16-075R】《シンジュ》、【16-003C】《エルビス》、【16-062C】《レキサ》が3枚、フォワードでは【16-121R】《べスビア》、【16-099C】《メラルド》とまとめ役の【16-080H】《マダム・エーデル》が3枚、【16-022R】《アウィン [FFBE]》が2枚と、ここまではテンプレートな「モールズの夜会」の採用枚数だと思います。ここに【16-059C】《ペツォッタ》が2枚採用されていますが、このあたりの採用意図などをうかがってもよろしいでしょうか?

正義:もちろん最初に話したように【16-059C】《ペツォッタ》のイラストが好きというのもあるのですが、やはり【16-065C】《アンバー》を採用できないことで【ジョブ(モールズの夜会)】の総数が不足しているというのはデッキの1つの課題だと考えました。

【16-022R】《アウィン [FFBE]》が2枚採用なのは、土/火/風属性のいずれのコストにも換算できないためですが、むしろその分も【16-059C】《ペツォッタ》を採用して展開できる【ジョブ(モールズの夜会)】の総数を増量するのはスタンダード以上に重要です。

また、奇数の行動が少ない「モールズの夜会」デッキにおいて、バックアップが3枚の局面できれいにコストを使い切るのは難しいのですが、これも【16-059C】《ペツォッタ》によってコストを使い切りつつ展開できる確率がぐっと上がります。

そういう意味でも【16-059C】《ペツォッタ》はフォワードのコスト効率がいい「モールズの夜会」の強みをより引き出してくれるカードだと感じました。

――6属性にまたがるデッキというだけあり、【18-111L】《バッシュ》以外にも多属性カードが多く採用されていますが、これらのカードについてもお話を聞きたいです。個人的には土/雷属性の【18-124C】《ビリー・ボー》が採用されているのが特徴的に感じます。


正義:「モールズの夜会」デッキは【16-080H】《マダム・エーデル》を中心にコスト効率のよいフォワードがそろっており、ブレイクゾーンからこれらのカードを回収してキャストを繰り返すことのバリューが高いと考えていました。【18-056C】《ケットシー [XI]》や【17-076H】《マトーヤ [I]》などもそうした狙いもあり厚めに採用しています。

特に現在のL3構築はモンスターを主軸にした構築が活躍していますが、モンスターの特徴としてフィールドに出たとき能動的にアドバンテージを稼げるカードが多くないため、お互いにフォワード展開を繰り返すならアドバンテージの総量でこちらが勝るはずなので、そういった点で優位にゲームを進められるのではとも考えました。

また仮想敵の一角である「水単」は除去性能が高いデッキですが、1ゲーム中に行える除去の回数にはどうしても限界があります。

フォワードを回収できるフォワードである【18-124C】《ビリー・ボー》は「水単」のような除去デッキに対し、息切れせずフォワードの展開を継続できる点が魅力でした。

パワー8000という数値も優秀で、のちほどお話しますがこのデッキは【ジョブ(モールズの夜会)】や【16-051L】《セシル》のパワー8000ラインを【16-067L】《エアリス》で10000まで伸ばしてアタックしやすくすることを意識しているので、同じくパワー8000である【18-124C】《ビリー・ボー》もアタックに参加しやすいフォワードということで重宝しました。

とはいえ雷属性のCPは【16-099C】《メラルド》や【18-056C】《ケットシー [XI]》など限られたカードからしか捻出できないため、枚数は控えめに2枚採用としています。

――モンスターデッキのお話も出ましたが、【18-119C】《チェリンカ》は「土雷」や「氷雷」を意識しての採用でしょうか?

正義:そうですね。デッキの主軸を「土火風」としているので、コストに当てるカードとしても優秀ですが、現在の環境で見ると1ゲームで1度は使用したい機会があると考えたので、今回は2枚採用にしています。


――コストという観点では【18-110H】《ザンデ》も優秀な新カードですね。

正義:【18-110H】《ザンデ》はブレイクゾーンで起動できるアクションアビリティを持っているので気兼ねなくコストにできるという点でも使いやすいカードでした。

このアビリティは強力な反面リスクも大きく、【18-096C】《リヴァイアサン》で対策される可能性もありますが、このデッキでは【16-022R】《アウィン [FFBE]》で指差し確認してから使うことができるので、比較的安全に狙っていくことができます。

また【16-051L】《セシル》と相打ちし、強引に盤面を崩しにきた相手に対して【18-110H】《ザンデ》を合わせることで一方的に有利な状況を作れたりと、大会を通して活躍の機会の多いカードでした。


――さきほどアタックを通すために【16-067L】《エアリス》を採用しているとお話されていました。これについても教えてください。

正義:現在のL3構築環境では【18-073H】《ガルーダ [III]》や【18-086H】《アーシェ》のようなパワー9000のフォワード、もしくは【18-081H】《メリュジーヌ》+【17-095C】《クオン》のような組み合わせでパワーを9000にする手段を意識したデッキが多く、こうしたデッキが相手だとパワー8000のフォワードを中心に採用した「モールズの夜会」ではアタックがしにくくなるだろうと感じていました。そこで【16-067L】《エアリス》はフォワード全体のパワーを常時+2000してくれるため、こうした状況の打破に貢献してくれると考えて採用しました。


【16-067L】《エアリス》自身はコスト2でパワー5000とサイズが小さく除去されやすいものの、【16-051L】《セシル》と合わせて使うことで相手は【16-067L】《エアリス》を選ぶと【16-067L】《エアリス》同等のコストを追加で要求されることになり、効率よく除去しようとすると【16-051L】《セシル》→【16-067L】《エアリス》の2ステップを踏まなければならず1テンポ除去が遅れるため、除去をけん制しながら使うことができます。

また環境に多い召喚獣の【17-090R】《イクシオン》も本来はクリティカルなカードなのですが、コスト4のフォワードが主体の「モールズの夜会」デッキ相手に【17-090R】《イクシオン》を構えられることは少なく、コストなどでブレイクゾーンに置かれたのを確認してから【16-067L】《エアリス》を出せるシーンも多かったです。

【16-067L】《エアリス》自身のアビリティで、除去されても3ターン後にはフィールドに戻ってくるので場持ちがよく安定して戦線を支えてくるカードで、大会当日は「モールズの夜会」のミラーマッチも多く、想定したメタ読み以上に活躍してくれました。

――なるほど。環境が固まってきたことで意識すべきパワーラインもある程度固定されてきていたということですね。【18-035R】《アルクゥ》も【16-067L】《エアリス》同様フォワード全体のパワーを+2000できるカードですが、こちらもそうした役割を期待して採用されたのでしょうか?


正義:【18-035R】《アルクゥ》はアビリティを発動するためにフィールドに4属性以上を必要とするのですが、これを有効にするためには最低でも【18-035R】《アルクゥ》を含む3体以上のフォワードをコントロールしている必要があり、効果を発揮するころにはかなりこちらに有利な展開になっていたことも多く、あえて【18-035R】《アルクゥ》のアビリティに頼る必要はない状況になっていることが多かったです。

もちろん使えれば強い効果ではありましたが、それを前提としていたわけではなく、どちらかといえばEXバーストで手札を増やせる可能性がある風属性のカードという点を評価し、デッキの安定性を意識して採用したカードでした。

パワーを上げる役割のカードとしては、どちらかというと【16-002H】《エース》にそういった期待をして採用していました。こちらはアタックしたときに誘発するアビリティではあるものの、多属性カードが1枚あればパワー+2000が可能です。

また、フィールドに出たときのオートアビリティで手札を公開するときも、多属性が多い「モールズの夜会」デッキであれば手札2枚で9000のダメージが期待できるため、このデッキではパフォーマンスをいかんなく発揮できるカードでした。


――「モールズの夜会」自体がアドバンテージを獲得しやすいデッキなので、ダメージを増やすのもかなり容易そうですね。除去といえば【16-074C】《サボテンダー》をデメリットなしで使えるのも「モールズの夜会」の強みかと思います。

正義:はい。もちろんデメリットなしで使っても強いですし、このデッキでは【18-111L】《バッシュ》や【18-056C】《ケットシー [XI]》といったDamageアビリティを持つカードを使いたい状況も多いため、自発的にダメージを受けられる【16-074C】《サボテンダー》は重宝しました

デッキによっては終盤使えなくなってしまうため採用をしぼることも多いですが、このデッキではデメリットを気にしなくていいため3枚フルで採用できるのも強かったです。総じて状況に応じた選択肢の広さが光る1枚でした。


――バックアップについてそれぞれの採用意図はすでにうかがいましたが、スロットが固定化されているぶん、種類を絞って採用されていますね。

正義:基本的に目指したい展開としては、【16-075R】《シンジュ》、【16-062C】《レキサ》、【16-003C】《エルビス》の【ジョブ(モールズの夜会)】3種に加え、【18-056C】《ケットシー [XI]》まではマストだと考えていたので、バックアップはあと1枚置ければ十分と考えていました。【17-049C】《シド・ポレンディーナ》と【17-076H】《マトーヤ [I]》は自発的にフィールドから退けることもできないため、そこは割り切って考えています。

◆拮抗する試合のなかで光った個性の導いた勝利
――名古屋大会はベスト4がすべて「モールズの夜会」という驚きの結果でしたが、ほかの方の「モールズの夜会」と差がつく要素はなにかあったと感じますか?

正義:名古屋大会では環境的に「モールズの夜会」に追い風が吹いていたというのも間違いなく感じており、今回ベスト4が「モールズの夜会」で占められたという結果は妥当なものだと思っていますが、そこで自分が優勝できたのは運がよかったからだとも感じています。

私は大会を通じて合計で7回ミラーマッチを経験したのですが、結果は4勝3敗とギリギリ勝ち越せている程度です。

「モールズの夜会」は【ジョブ(モールズの夜会)】以外のスロットにその方の個性が出るので、どの方の構築にも自分にはない強みが反映されていたと思います。

しいて言うのであれば、やはり【16-067L】《エアリス》の活躍が大きく、積極的にアタックできる状況を作ってくれたことで勝利に貢献してくれたと感じています。

――無事「MASTERS 22-23 FINAL」の権利を獲得されましたが、最後に一言いただいてよろしいでしょうか。

正義:『FFTCG』は「Chapter」シリーズから続けてきたのですが、個人的には初の「MASTERS FINAL」出場が決まりうれしいです。これまで友人が参加するなか自分は見ている側だったので、今回は「これぞ正義(ジャスティス)」と言えるようなデッキで挑みたいと思っているのでよろしくお願いします。

――ありがとうございました。

◆おわりに
今回は「MASTERS 22-23」名古屋大会で優勝された正義さんにインタビューを行ない、イラストレーションの魅力を出発点にこだわって使い続けてきたという「モールズの夜会」デッキについてお話をうかがいました。

会場のメタゲームと非常にかみ合っていたのはもちろんですが、ゲーム性だけではない『FFTCG』の魅力を楽しみつつ優勝という結果に結びつけられたのは、一プレイヤーとしてうらやましく、またとてもすばらしいことだと感じました。

正義さん、あらためて優勝おめでとうございます。

さて、次回も引き続き「MASTERS 22-23」の優勝者インタビューをお届けしていきたいと思います。予選大会も最終盤に差しかかるなか「カスタムスターターセット FINAL FANTASY XIII」の登場でL3構築の環境に激震が走っているとのことなので、そちらの様子をお伝えできればと思います。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!