1月6日に開催された「ブシロード新春大発表会 2024」について、後日ブシロード・木谷高明社長へとインタビューを行なった。
今回は新シリーズも始まりますます盛り上がる『カードファイト!! ヴァンガード』と、期待の新作カードゲーム『DREAM ORDER』を中心にお話を伺ってきた!
◆2023年の振り返りと2024年に向けて
───まずは2023年を振り返ってみていかがでしか?
木谷高明社長(以下「木谷」):2023年は『ヴァイスシュヴァルツ』(以下『WS』)15周年があり、これが一番大きいですね。『カードファイト!! ヴァンガード』(以下『ヴァンガード』)は「コロコロコミック」での連載が12月から始まりましたし、年明け1月13日からは、アニメの放送が開始しました。
『ヴァンガード』に関しては2年くらいかけて準備してきており、先日発売になったクイックスタートデッキも売れ行きは好調です。2月9日(金)発売のブースターパック「運命大戦」も「overDress」編の第1弾よりも初回受注が集まっているので、これで『ヴァンガード』を上昇トレンドにできるかなと思います。講習会にも小学生や女性の方も来ていただいているようで、客層が広がっているのを感じています。
当初の目標だった、今いる人に続けてもらいつつ、復帰勢にも来てもらい、さらに子どもと女性を増やすという目標は今のところ達成できているのではないでしょうか。
昨年前半は『WS』15周年でイベントや展示を実施しましたし、大きいタイトルも続きましたので非常に良かったと思います。後半は『ヴァンガード』の準備といった年でした。水面下で準備していたものとしては、新春大発表会で発表した4月20日(土)に発売する『プロ野球カードゲーム DREAM ORDER』(以下『DREAM ORDER』)です。今年は『ヴァンガード』の復活と『DREAM ORDER』の開幕。この2つが今年の大きなテーマです。
それと国内ではありませんが年末に『WS』の中国語簡体字版をリリースし、年末年始で「ソードアート・オンライン 10th Anniversary」「バンドリ! ガールズバンドパーティ! 5th Anniversary」「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 feat.スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」の3タイトルが発売されました。こちらは年間8タイトルくらい出す予定です。より一層、世界に対してブシロードTCGをアピールしていく年になると思います。「Bushiroad EXPO」という名前で海外で開催していたイベントの数もかなり増やしますし、まだ訪問したことのない国にも訪れます。グローバル展開は昨年以上にやる形になります。
───今年の「Bushiroad EXPO」はどのような国で行なう予定なのでしょうか?
木谷:アジアが中心になる予定です。インドネシアに中国の上海、フィリピン、インド、オーストラリア、ほかにもUAEのアブダビやイタリアでも開催予定です。昨年アメリカで行なったような講習会ツアーを東南アジア中心にやる可能性もありますし、アメリカのイベントにも力を入れていこうと考えています。
昨年は後半が若干TCGがおやすみモードになってしまいましたけど、今年は2月から一気に攻める形になります。2~6月の展開を楽しみにしていてください。
───昨年末は「カードファイト!! ヴァンガード Divinez」(以下「Divinez」)の発表やコロコロコミックの新連載「スカイライド」を含めて、非常に反響が大きかったと思います。カードショップでは「Divinez」主演の宮田俊哉さんの影響で『ヴァンガード』を手に取っている方もいらっしゃいましたし。
木谷:そうですね。それに女性や子どもが来店されると、お店の方も驚くんですよ。復帰しようかと迷っていた人にも、そういう光景が復帰の後押しになりますし、今『ヴァンガード』の輪が広がっている最中だと思います。カードゲームの中堅タイトルは団子状態で、大きく調子が上がっているものはありません。そこから『ヴァンガード』が抜け出すのに、2月のブースターはきっかけになりえるだろうと思います。
───『ヴァイスシュヴァルツブラウ』(以下『ブラウ』)は発売から1年以上経過しましたが、こちらはいかがですか?
木谷:『ブラウ』は難しいですね。「ちいかわ」のように男女問わず非常に多く売れた商品もありますが、一番売れた商品は「すとぷり」で、その売上の8割はアニメイトさんからです。これは今までのブシロードTCGにはない結果ですが、果たしてカードゲーム層の拡大になっているのか様子を見ているところです。お店の方からは、女性ユーザーを増やそうとしているのはブシロードだけだと思っていただいているようで、そこは非常にありがたいですね。
目次
■新春大発表会を終えて
───1月の「ブシロード新春大発表会 2024」はいかがでしたか?
木谷:昨年は1部と2部を完全に分けましたが、今回は続けて開催しました。かなりの長丁場で6時間のイベントになりました。今回のイベントで一番反応があったのは、冒頭に持ってきた『ヴァンガード』でした。「バンドリ!」はイベント終盤に持ってきてみなさん疲れてしまったのか、もう少し反応が欲しかったところです。発表会は21時ころまで行ないましたけど、19時以降は世の中にさまざまなコンテンツが出始める時間になるので、それに埋もれないよう来年以降は開催時間を早めるというのも検討する必要があるなと感じました。13時に始めて19時に終わるとかですね。それでも、前半の発表にはこちらの想定以上の反応はありました。同時接続者数も8,000人以上になったパートも多くありましたし。
ただ『DREAM ORDER』が今までのブシロードから見ると場違い感があって(笑)、そこで同接は下がりましたね。これは事前告知なしでの発表だったのでしょうがないというか、プロ野球のカードゲームというのは誰も想像していなかったと思うので。
───新作カードゲームの発表を行なうこと自体は伝わっていましたけど、内容はまったく予想できませんでした! 発表会では「Divinez」第1話の先行上映も行なわれましたけど、こちらはいかがでしたか?
木谷:評判は良かったと思います。今回のアニメは王道のホビーアニメになっていますから。今はホビーアニメというものが減っている状況ですし、これからはなおさらだと思います。カードゲームアニメが好きだという方には自信をもってオススメできるアニメになっているかなと思っています。
───そのほか、今回の発表会についてはいかがでしたか?
木谷:やっぱり発表会の時間が長いので、見ている方は疲れてしまうのかなと思います。ちゃんと発表を見せようと思うと6時間くらい必要なので、難しいところです。ただ、お正月時期の開催なので、ほかにコンテンツがない時期ではあります。新商品も1月中旬まではありませんし、そういう中での発表会なので話題をしっかり取ってくれるものにはなっていると思います。
■4年ぶりの完全新作カードゲームとなる『プロ野球カードゲーム DREAM ORDER』
───発表された『プロ野球カードゲーム DREAM ORDER』について、反響などはいかがですか?
木谷:反響自体はよいと思います。ただ、まだカードゲームプレイヤーの中の、野球好きな人にしか広がっていないのかなと。発表した時点ではもう少し広がってくれるかなと期待していましたが、そこは若干考え方が甘かったです。
本来の予定ですとプロモーションを4月に集中していたのですけど、前倒しでプロモーションを始めていき、世の中に対して少しずつインプレッションを増やしていく必要があるなと。そこから『DREAM ORDER』に興味を持ってくれる人を増やす必要があります。お店さんからの予約は入っているようで、久々の新作ということもあって期待していただいているところも大きいと感じています。サプライの評判も良くて、『DREAM ORDER』を遊ばない人でもサプライには興味を持ってくれるという人は結構いると思います。
───数あるホビーのなかでも、野球が好きな方は非常に多いですよね。
木谷:本当に多いですよ。コアユーザーは約2,000万人ぐらいいると言われていますから。球場への来場者は年間2,500万人もいますし。イベントのIPとしては圧倒的にNo.1だと思います。ただ、そういう人たちにちゃんと『DREAM ORDER』を届けられていないというのが問題なんです。
プロモーションを2月から前倒しで行なっていきますので、TVCMを流したり交通広告を打ったりして、『DREAM ORDER』自体へのインプレッションを増やしていきたいですね。まだ現物がないため伝わりにくい部分があるのは否めませんが、現物が出回ったら一気に広がると思います。
すでに一部の方には現物をお見せしたりしていますが、『DREAM ORDER』自体の評判はゲーム性含めて良い評判を頂いています。開幕戦がスタートして実際のプロ野球が始まったら、そこから今年のプロ野球の情報を集めるという人もいるでしょうし、そのときに『DREAM ORDER』というプロ野球のカードゲームがあるぞとすぐ伝わる状態にはしたいですね。
アニメで言えば、まだアニメ放送が始まっていない状況ですから。プロ野球が開幕したら、週に何本(何試合)放送しているのかって。試合数でいうと、1シーズン約7ヶ月間で合計858試合もあるわけです。今はシーズンオフですけど、開幕したら野球ファンは絶対に『DREAM ORDER』を目にしますよ。『DREAM ORDER』を持っているファンは、他のファンにカードを見せるじゃないですか。そうすると、「このカードは何?」となって話題は広がりますし。
───中日ドラゴンズの「オフィシャル・ゴールドスポンサー」になられたのも、カードゲームファン、野球ファンの両方にとって非常に大きなニュースでしたよね。
木谷:『DREAM ORDER』発表などよりも、このニュースが一番大きく野球ファンへ広がったニュースですね。これが一番の販促になりました(笑)。
ちなみに中日ドラゴンズだけではありません。弊社の担当は毎週のように北海道から福岡まで回っていますし、今後の発表も楽しみにしていてください。
───『DREAM ORDER』についてもう少し伺いたいのですが、そもそもプロ野球をテーマにしたカードゲームを開発する経緯について教えてください。
木谷:あらゆるスポーツの中で、野球が圧倒的にカードゲームに向いていると思うからです。野球は攻守に分かれているので、ターン制のカードゲームと非常に相性が良いです。カードゲームには『DREAM ORDER』と名前がついていますけど、自分なりの打線(デッキ)を考えるのも楽しいわけです。野球以上にスポーツでアナログのカードゲームに向いているものがあるのかはまだわからないですね。
それと、プロ野球をテーマにしたゲームは、権利的な都合でなかなかできないと思っていたら、弊社でも作れると知ったことも大きいですね。弊社でも作れるならやるしかないだろうと。
弊社には野球好きの人も多くいて、社内の野球部ではIT健保の大会にも出ていてベスト8になった経験もあります。ゴルフよりも野球をプレイしている人が多い会社というのは、なかなか珍しいと思いますよ(笑)。それに、野球部には入っていなくとも、見る専門の野球ファンの数もかなりいます。
───では、プロ野球テーマにしたカードゲームの企画を立てて動き始めたのはいつごろなのでしょうか?
木谷:2022年の年末ぐらいには動いていましたね。権利の取得や素材集めみたいなことを始めて、本格的にゲームの開発を始めたのは春ぐらいからでしょうか。ですから、意外と時間はかかっていないですね。動き始めてから発表までが1年ちょっとといったところで、発売まで含めるとだいたい1年半です。カードゲームは意外とリードタイムが短いんですね。
───商品の仕様についてもお伺いしますが、スタートデッキは各球団ごとに合計12種類発売されたり、ブースターもセ・パのリーグごとに発売されるなど、非常に特徴的な仕様になっています。最初からボリュームがかなりある商品ですよね。
木谷:プロ野球ですからね(笑)。スタートデッキに関しては、売れ方に地域差がかなり出ると思います。地元に球団がある地域は、その球団の商品が売れるでしょうし、カードショップの方もそれを見越した商品展開をされるんじゃないでしょうか。ぜひ「トレード」という形でも楽しんでほしいと思います。
───どういったチームを組んで遊んでいけるのかも気になります。
木谷:まずは、その年の各球団のチームを組む遊び方が主流になるかと思います。それ以外にもオールスターを組むこともできますし、2年以降はオールタイムの各球団やオールスターでのチームも組んで遊べるようになります。どういったフォーマットが人気になるかはまだわからないので、発売後のユーザーからの反応も見て、いろいろと考えていきたいですね。
本作は地方ごとの大会でもかなりメタというか人気球団は変わってくると思っているので、今までにない地域性が出てくるカードゲームになるのではないでしょうか。
ヒットの判定はサイコロと判定表で行なうのですが、判定表を独自に作って遊ぶことも可能なのかなと思います。例えば、父親が自分の判定表を弱くすることで子どもと一緒に遊べるようにしたり、お店が独自の判定表を作ってイベントを企画したりといったこともできるのかなと。
───サイコロで判定を行なうということは、ライトユーザーでもガチ勢に勝てる瞬間も出てきたりして楽しそうですね。
木谷:ちなみにサイコロに関してはアプリを制作しているので、実際にサイコロを用意しなくても問題ありません。ほかにも判定表とサイコロを導入したことによるメリットがゲームとは別にあります。それはゲームの処理を判定表まかせにすることによって、カードに書かれるテキストや数字を少なくできたということです。判定表がないとすべてをカードに入れることになり、そうするとカードの写真が小さくなってしまいます。判定表とサイコロの導入は、非常に秀逸なシステムだと思います。サイコロを使うカードゲームは今後増える可能性もあると思っています。
───『DREAM ORDER』ですが、想定ターゲット層についても教えて下さい。
木谷:売上のメインターゲットに関しては、いわゆるカードゲーマー層よりも、30代40代の野球ファンじゃないでしょうか。親子で遊ぶことを考えると、一桁代から60代も十分購入層としてはいると思います。60代も狙えるカードゲームというのは、そうそうないと思いますよ。
───ゲームのプレイ時間はどのくらいなのでしょうか?
木谷:1ゲームが3イニングで20~30分くらいです。それ以上かかると、お店のイベントも大変になりますし。とはいえ9イニングをじっくり勝負したいという人もいらっしゃると思うので、そういう遊び方ももちろんできます。上述したアプリのほうでは3イニングの点数管理ができますし、イニング数を変更も可能です。
───商品展開も楽しみですよね。オールスターに日本シリーズ、WBCのようなイベント合わせの商品も期待したくなりますし。
木谷:まずは4月の商品発売ですね。そこから通常商品のほかにどのような商品が望まれているのかを見極めつつ商品を企画していきます。通常のカードゲームと違うのは、プロ野球にはオフシーズンがあることなので、そういう時期の商品をどう企画していくのかとかも考えないといけません。優勝チームの特別仕様の商品を企画するというのもおもしろいかもしれませんね。
───たしかに(笑)。どんな商品展開があるのかも楽しみにしています!
■新シリーズ「Divinez」がスタートした『ヴァンガード』
───それでは次に『ヴァンガード』についてもお伺いできればと思います。まずはクイックスタートデッキが先日、6種発売されました。こちらの反応はいかがでしょうか?
木谷:価格を700円にして、全部の国家を出したということもあって、こちらを求めてくれている人はかなり多いです。なかでも売れているのは、アニメで主人公たちが実際に使った、ケテルサンクチュアリ、ドラゴンエンパイアのデッキ、それとリリカルモナステリオのデッキですね。それでもまんべんなく売れてくれていると思います。デッキを1個だけ買う人もいれば、6種全部買ってくれる人もいて、平均で2個ずつくらいは買っていただけていると思います。新規ユーザーはかなり増えている印象ですね。
───今までリリカルモナステリオは単独商品で出していましたが、今回ブースターの国家に加えたというのは、なにか狙いがあるのでしょうか?
木谷:新シーズンが始まってここからスタートですよという意味で、まずは6国家全部入れようという意図です。
───アニメの「Divinez」はいかがですか?
木谷:評判はいいですよね。私も楽しんで観ていますけど、新シーズンになってさらにおもしろくなったなと感じています。インタビューの序盤でも話しましたけど、王道のホビーアニメになっていますので、ぜひ多くの方に見てほしいなと思います。
───「overDress」以前のシリーズは惑星クレイの世界が物語に介入してきましたけど、「カードファイト!! ヴァンガード overDress」(以下「overDress」)以降はカードの声が聞こえる等の間接的なところになっていましたが、今回はかなり直接的な介入があって、今までとは毛色が違うなと感じました。
木谷:そこに戻したんです。ファンタジーアニメなところに戻しました。「overDress」はリアル志向なところが強くて、カードファイトじゃなくて殴り合いとかもしてましたから。そもそも制作スタジオがホビーアニメを作るのが初めてだったので、最初はなかなか慣れがありませんでした。そこで「overDress」2期の中盤くらいから、すべてのシナリオ打ち合わせに私も参加してホビーアニメになるように、例えば「毎回カードファイトをしてくれ」など、話し合いをしていきました。「カードファイト!! ヴァンガード will+Dress」1期は私からプロットを出して、トーナメント形式の試合をしてくれとお願いしました。登場人物たちがカードファイトをする理由を説明するのは意外と難しいのですけど、トーナメントの場合は基本的に全員が優勝を目指しているので、理由をあまり説明しなくても話は進みますから。
「Divinez」では”運命大戦”という形で戦いを描いているので、こちらも非常に伝わりやすいですよね。主人公が戦う目的も妹の病気を治すためというのも、共感を得やすいのかなと思います。リアルでもそうですけど、自分のためよりも人のためのほうが人は頑張れるじゃないですか。仕事でも自分1人のためよりも、家族のためのほうが頑張れますし。カードゲームでも俺は俺のために強くなるというよりも、誰々を救うために勝つしかないというほうが、見ている人にも頑張る理由が伝わりやすい。
───「Divinez」第2話では丁寧にカードとルールの紹介をされていて、この話を見るだけでも、『ヴァンガード』はこういう遊びなんだなというのが伝わってきました。
木谷:それも今回やりたかったことの一つです。本当は前作でもやるべきだったんですけど、それがようやくできました。ちなみに第2話では、能力を一切なしにしてゲームをしてくれというお願いもしました。エネルギーだけはどうしようもできないのでそのままですけど(笑)、トリガーやカウンターブラストなどは一切やめてほしいと。初めての人はなにもわからないので、まずは単なる動きだけの説明で十分だからと。
アニメに限った話ではないですが、同じものに関わっていると徐々にライトユーザー視点がなくなってしまいます。担当者は毎日同じものを見ているので、お客さんが面倒くさい・わかりにくいと思っていることも当人にとっては当たり前のものになってしまいます。自分はそんなことわかってるわけですし、それを前提に話を進めてしまいます。説明をしてほしいと思っても、すでに昔やったことだから、もうみんな知っているでしょうと。「名探偵コナン」で毎回なぜコナンが小さくなったのかと説明しているじゃないですか。もう20年以上もアニメをやって、毎年映画もやっているのに必ず説明していますよね。これは、初見の人はなぜコナンが小さくなったのかがわからないからです。「コナン」のスタッフはそこのところを非常によくわかっていて、だから常に新しいユーザーを取り込むことができているのだと思います。本当は「Divinez」の第1話からやるべきでしょうけど、新設定という新しい人間関係を描く必要もあったので、なんとかティーチングに入るまでは描いてもらいました。
───能力なしのファイトというと、昨年木谷さんが参加されたイベントでも同じように能力なしのレギュレーションのものがありましたが、そういうイベントも参考にされたのでしょうか?
木谷:はい。実際に遊んでみて、カードテキストやトリガーなしでも成り立つということを実感できたからですね。こういうレギュレーションのイベントは、カードゲーム祭でもやってみたいですね。
───クイックスタートデッキも能力自体がシンプルなのはそういった理由でしょうか。
木谷:そうです。ここから『ヴァンガード』を始めるのに非常に良くできたデッキになっていると思いますし、こちらの商品は今年1年を通して売れてくれる商品にもなっていると思います。コロコロコミックと大体同じ価格なので、子どもが親に買ってもらうにも抵抗の少ない値段ですから。ほかにも、毎年1月にこういう新規の人向けのデッキを発売するのはありかなと考えています。ほかにも新規や子ども向けに、今年度出た商品のみを使った大会というのも考えてみたいですね。
───今年は特に新規ユーザーを増やしたいという意気込みが伝わる展開をされていますが、そこについてはなにか大きい理由はあるのでしょうか?
木谷:新規ユーザーを獲得したいというは常に思っていることではあります。ただ今回は、新規を増やしつつ復帰勢に帰ってきてもらうのがテーマで、そこにカードとアニメとコロコロをすべて連動させることができたので、ここしかないだろうというタイミングが生まれました。それにカードゲームというは一度上がると2年ぐらいは上昇傾向が続きますから、特に今回は力を入れています。目標は『ヴァンガード』を今の倍のユーザー数にはすることです。アニメは話数が進むにつれて盛り上がりますし、コロコロから子どももどんどん入ってくると思います。まずは5月のカードゲーム祭りが一つの到達点になると思いますが、今年は『ヴァンガード』の比率は例年より増えると思いますよ。大会の参加人数も増えてきているので、各地域で開催されるちほうカップをはじめ、全国的な大会を大中小、各種増やしていくのも目標です。これは大会の景品が豪華なものになったのも一因でしょうけど、やはり『ヴァンガード』が上り調子になってきたということが大きいでしょうね。
■過去のブシロードTCGも遊べる「カードゲーム祭2024」
───「カードゲーム祭2024 in 東京」についてもお伺いします。今年のイベントでは、以前に発売していたブシロードTCG5ブランドの大会も開催されるということで、ユーザーからの期待もかなり大きいと感じていますがいかがでしょうか?
木谷:非常に大きい反響でこちらも驚いています。特に『フューチャーカード バディファイト』(以下『バディファイト』)はすごいですね。
───「フューチャーカード バディファイト 10th ANNIVEASARY カードセット」という10周年記念商品が出るというのもありますからね。
木谷:10周年記念商品は最初に受注したときは一瞬でなくなっていまい、追加受注も行ないましたけど、それもなくなってさらに追加しました。
───ユーザーの反応を見ていると、商品展開が終了したカードゲームでも継続して遊ばれている方たちがいて、「今の環境」の話をしていたりするんですよね。
木谷:非常にありがたい話ですよね。『Chaos-TCG』とかは来年新商品出してみたら?といった話題も出たりしましたね(笑)。昔のカードゲームをこうやって掘り起こすことで、ユーザーも喜んでくれることがわかりましたし、メーカーとしての姿勢を感じてもらえたら嬉しいですね。
ちなみにカードゲーム祭では、個人的に購入してきた、タイのほうで新しい展開がスタートしている『バディファイト』の構築済みデッキを展示する予定なので、ファンの人はぜひ楽しみにしてください。
───いまブシロードTCGを遊んでいない人でも、こういうイベントがあるならカードゲーム祭に遊びに行ってみようかなと思えますし、今後も継続していただけると嬉しく感じます。
木谷:今年の開催を受けて、来年はどういった形にするのかも考えていこうと思います。まったく同じにするのではなく、年ごとでテーマを決めたり、今年ラインナップに含まれなかったものを追加したりといったことでしょうか。
───カードゲーム祭についてですが、北九州でも開催される理由について教えていただけますでしょうか。
木谷:中部や関西ではなく北九州というのは、たしかに意外かもしれません。ただ、関西や中部の方は東京へのイベントにはまだ行きやすいですし、WGP等の大きいイベントもあります。ではなぜ北九州なのかというと、まずは九州に力を入れたいと考えているのが一つです。なぜなら九州は出生率がほかの地域より高くて、景気も良い地域です。そういう現状や期待も込めて、北九州でもカードゲーム祭を実施することを決めました。
───カードゲームとは少し離れますが、ブシロードゲームズ設立1年を迎えて、こちらはいかがでしょうか? 今回の発表会ではコンシューマ向けのゲームを多く発表されたのが印象的でした。
木谷:アプリ系は僕らでは太刀打ちができなくなってきているのが現状かなと思います。『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のような自社IPで強いやつは継続できると思いますが、それ以外のものはコンソールで勝負したほうが良いと考えています。『カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ』も発売から1年以上経過していますが、今でも売れていますし、DL版含めての累計販売数は5万6千本を超えていて、今年中には6万本を超えると思います。
『少女☆歌劇 レヴュースタァライト 舞台奏像劇 遙かなるエルドラド』も期待されているゲームだと思います。こちらはシナリオに期待されているというか、劇場版と繋がる物語なので、映画を見た人が買いたいと思ってくれるゲームになると思います。
───それでは最後に、2024年のブシロードの目標についてお願いします。
木谷:まずは『ヴァンガード』を上昇気流に乗せること。それと『DREAM ORDER』を成功させること。この2つに尽きます。
さらに加えて言うのなら、オカダ・カズチカ退団後の新日本プロレスの今後です。オカダ選手がいなくなってちょっと落ち着いちゃったねと言われるのは嫌ですから、かえって盛り上げたいと思っていますし、私自身は実は盛り上がると確信しています。なぜかというと、上の大きな存在がいなくなると、下の人が目立つようになって景色が変化していきます。この景色が変わることが大事だと思っていて、新日本プロレスというブランドがあるので、トップ選手が抜けたから新日本プロレスを見なくなるという人はいません。そこでいかに新しい景色を見せられるかが重要です。主役が交代していくので見ていて楽しいんですよ。だから3月以降の新日本プロレスは盛り上がると思いますよ。
───本日はありがとうございました。