『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「第五期名人戦」北信越予選で優勝したえあさんのインタビューをお届けします。
◆はじめに
みなさん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
全国で開催されてきた「第五期 名人戦」の予選大会も終盤を迎えています。
2月3日に開催された北信越地区予選では、今シーズン上位の常連だったえあさんが悲願の初優勝を飾りました。
今回のインタビューではえあさんに、永らくともに戦い自身を初優勝に導いた「火土水【光の戦士】」についてお話をうかがったので、そちらをお届けしようと思います。
それでは、さっそく始めていきましょう!
◆光の戦士は環境を照らすのか?「火土水【光の戦士】」
――「第五期 名人戦」北信越地区予選、優勝おめでとうございます。
えあ:ありがとうございます。
――今回えあさんが使用したデッキは「火土水【光の戦士】」でした。このデッキタイプは昨年5月に行なわれた「Standard Championship 2023」でありかさんが準優勝したのを皮切りに、最近では「第五期 名人戦」東海地区予選でわらび餅抹茶さんが優勝を納めるなど、形を変えながらめきめきと頭角を現してきた印象があります。えあさん自身も「第五期 名人戦」の近畿地区予選・東海地区予選で上位に入賞しており、今環境で使い込んでいるデッキかと思いますが、「火土水【光の戦士】」を使い続けている理由はなんでしょう?
えあ:もともと「火土水【光の戦士】」は長く使い続けてきたこともあり、思い入れのあるデッキなのですが、「運命を超えて」環境の最初期に行なわれた「世界選手権 2023」でも活躍しており、現在のメタゲームでも通じるポテンシャルがあると確信し調整を続けてきました。
●デッキリスト:「火土水【光の戦士】」(「第五期 名人戦」北信越地区予選優勝 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(17枚) | ||
【19-128L】 | 《ウォーリアオブライト》 | 3 |
【12-128L】 | 《ファリス》 | 1 |
【18-111L】 | 《バッシュ》 | 1 |
【19-108L】 | 《ジタン》 | 3 |
【19-119L】 | 《ウネ》 | 3 |
【18-012L】 | 《ファリス》 | 3 |
【19-102L】 | 《レフィア》 | 3 |
バックアップ(20枚) | ||
【13-015C】 | 《ルーネス》 | 3 |
【3-059H】 | 《タイクーン王》 | 3 |
【13-055C】 | 《イングズ》 | 2 |
【18-055R】 | 《クルル》 | 3 |
【11-072R】 | 《デシ》 | 3 |
【12-099R】 | 《セーラ[FFL]》 | 3 |
【21-119H】 | 《レナ》 | 3 |
召喚獣(13枚) | ||
【12-002H】 | 《アマテラス》 | 3 |
【10-068C】 | 《クーシー》 | 3 |
【9-068H】 | 《ドラゴン》 | 3 |
【9-114C】 | 《不浄王キュクレイン》 | 3 |
【14-113R】 | 《リヴァイアサン》 | 1 |
――具体的にどういった要因からその確信を持つに至ったのですか?
えあ:「運命を超えて」環境は次の2つの理由から「火土水【光の戦士】」デッキにとって追い風が吹いています。
・【12-002H】《アマテラス》が非常に有効な環境であり、「火土水【光の戦士】」が【12-002H】《アマテラス》を無理なく採用できるデッキであること。
・環境の速度の質が変わり、苦手なデッキが数を減らしたこと。
この2つです。
――それぞれについて聞かせてください。まず【12-002H】《アマテラス》についてですが、このカード自体が登場からずっと影響力を持ち続けているカードですが、これまで以上に影響力が大きくなったということでしょうか?
えあ:はい。その大きな要因が【21-121L】《ウォーリアオブライト》の登場です。フィールドに出たときデッキからコスト3のキャラクターをフィールドに出すオートアビリティを持つ【21-121L】《ウォーリアオブライト》の登場により、「運命を超えて」環境ではゲーム序盤からキャラクターを大量展開できる「火氷水ウォーリアオブライト」がメタゲームのトレンドになりました。これに伴い、現在の環境ではオートアビリティを無効化する【12-002H】《アマテラス》の価値もこれまで以上に高くなっています。
そのうえで、【12-002H】《アマテラス》が与える8000ダメージでは【21-121L】《ウォーリアオブライト》を倒すことができません。本来であればフォワードを倒せない【12-002H】《アマテラス》はさほど強力ではないのですが、【21-121L】《ウォーリアオブライト》に対してはむしろ倒せないことを利用して【21-121L】《ウォーリアオブライト》をフィールドに残し、2枚目の【21-121L】《ウォーリアオブライト》をキャストさせないという強みを作ることができます。
――【12-002H】《アマテラス》でオートアビリティを無効にしつつ、【21-121L】《ウォーリアオブライト》がフィールドに残ることがむしろ有効に働いているということですね。
えあ:そうです。これが1つ目の要因です。
――では次に2つ目の要因についてお聞きしたいと思いますが、環境の速度の質が変わったというのは具体的にどういうことでしょう?
えあ:「火土水【光の戦士】」は、【19-128L】《ウォーリアオブライト》をキャストするためのコストがバックアップからのCPに限定される条件や、【19-102L】《レフィア》のアクションアビリティのコストとしてフィールドの【ジョブ(光の戦士)】が多く必要になるデッキの性質上、準備のためのターンを必要とするデッキです。そのため序盤の余裕を許してくれない「火雷【XIII】」のようなデッキに対して脆いという弱点があります。
また同じくバックアップの準備が必要なデッキで、最大出力が「火土水【光の戦士】」を上回る「風単」に対しても不利という位置づけのデッキです。
以前までの環境ではこれらのデッキが一定数存在しており、安定してトーナメントを戦い抜くことが難しいデッキだと考えていましたが、「運命を超えて」では「火氷水ウォーリアオブライト」の台頭で「火雷【XIII】」や「風単」といった「火土水【光の戦士】」の苦手とするデッキがかなりシェアを落としました。
「火氷水ウォーリアオブライト」は確かにキャラクターを展開するスピードという意味で高速デッキに分類されるのですが、リーサルまでのスピードで考えるとそれほど速いデッキというわけではありません。同じく「運命を超えて」環境で活躍している「氷水グリーヴァ」のようなデッキも同様です。
結果的に環境全体で見た場合のゲームスピードは上がったものの、トップスピードが落ち「火土水【光の戦士】」にとってもっとも戦いやすい速度帯の環境になったことが、2つ目の要因になったと考えています。
――いずれの要因においても、環境の起点になった【21-121L】《ウォーリアオブライト》の存在が根底にあるわけですね。今環境でえあさんが高いアベレージを上げているのも、この考察の正しさの裏付けと言えそうです。
えあ:ありがとうございます。ただ今回優勝できたのは、環境の推移に合わせた細部の調整が北信越地区予選のメタゲームにピタリとはまった結果だとも感じています。
――環境の推移に合わせたというのは、どういった仮想敵を想定していたのでしょう?
えあ:今回の構築は【19-108L】《ジタン》によりフォーカスした構築を目指しており、東海地区予選で優勝したわらび餅抹茶さんのデッキアイディアをそのままリスペクトしたものになっています。【19-108L】《ジタン》そのものの採用枚数を増量するとともに、【3-059H】《タイクーン王》を採用することでバックアップから風属性のCPを供給しやすくし、【19-108L】《ジタン》をキャストするチャンスを増やしています。またその副産物として【19-128L】《ウォーリアオブライト》のキャストもしやすくなっています。
【19-108L】《ジタン》にフォーカスした理由として、「火土水【光の戦士】」の天敵である【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》のコンボを搭載したデッキが増加傾向にあったという背景があります。
基本的に「火土水【光の戦士】」対「土水カオスアーク」のマッチアップでは、「土水カオスアーク」側が手札に【19-105H】《アーク》を貯めこみ【16-129L】《カオス》のキャストに合わせて一気に【19-105H】《アーク》を打ち込むバリューターンを作ることで、形勢を大きく優位に傾けるというのがセオリーです。
しかしこれは裏を返せば、フォワードを2体以上展開せず【16-129L】《カオス》をキャストする隙を与えないことで、バリューを発揮するターンを作らせないゲームメイクができるということです。
そこで対「土水カオスアーク」戦ではまず【19-108L】《ジタン》をキャストし、相手の【19-105H】《アーク》を除外したうえで、以降のフォワード展開を安全に行なえるようなプレイを意識するようにしました。その結果としてデッキが【19-108L】《ジタン》にフォーカスした構築に推移していきました。
――たしかに【19-108L】《ジタン》にフォーカスすることで【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》に強くなるというのは理に適っています。しかしその代償として、バックアップを20枚も採用するというデッキの歪みが生まれているようにも感じますね。
えあ:先ほども話したとおり「火土水【光の戦士】」は性質上バックアップのスロットを減らすことができないデッキなので、バックアップを増やしたからといって既存のバックアップはなかなか減らせません。
ただ「運命を超えて」環境で起こったメタゲームの変化により、【1-107L】《シャントット》でないと対応できなかったゲームスピードのデッキが減ったことで、このスロットを【3-059H】《タイクーン王》に回すことができました。
また環境の研究が進み仮想敵が絞られたことで、採用すべきカードが明確になり、カードパワーを根拠に採用していた、例えば【18-130L】《フリオニール》のようなカードにスロットを割かなくてもよくなったのが今回のデッキ構築の一助となりました。
――リストを見たとき、かなり洗練されていると感じました。そのなかにあって個人的に気になっているのは【18-111L】《バッシュ》、【12-128L】《ファリス》、【14-113R】《リヴァイアサン》の1枚採用のカード3種です。これらのカードにはどういった採用理由があるのでしょうか?
えあ:まず【18-111L】《バッシュ》ですが、デッキのなかでは珍しく、バックアップが少ない状況でも運用できるカードです。そのうえでこのカード自身がバックアップのサーチ要員にもなるため採用しています。
調整過程では採用しない構築も試したりしたのですが、このカードがあることで最悪【11-072R】《デシ》1枚からでもゲームをスタートできるなど、デッキに存在することの価値があまりにも高かったため、1枚だけでも採用すべきだと判断しました。
次に【12-128L】《ファリス》ですが、このデッキはスロットの多くをバックアップに割いている都合上、しわ寄せとしてフォワードのスロットが圧迫されてしまっています。
フォワードのスロットが限られるということは、そのカードをサーチできるチャンスも限られるということで、特に【3-059H】《タイクーン王》と【12-099R】《セーラ[FFL]》の共通のサーチ対象である【18-012L】《ファリス》はサーチする機会が多いものの後半戦に向けできるだけデッキに残してきたいシーンも多かったため、同名かつ多属性でコストに使いやすい【12-128L】《ファリス》が必要になりました。
最後に【14-113R】《リヴァイアサン》ですが、実は対【16-129L】《カオス》+【19-105H】《アーク》においてとても有効で、相手が【16-129L】《カオス》でこちらのフォワードのコントロールを奪いつつ後続に【19-105H】《アーク》を当てようと構えてくる局面で、こちらのフォワードを手札に戻しつつ【16-129L】《カオス》をデッキの1番下に送るというカウンターができます。
【19-119L】《ウネ》を使う都合上、土属性か水属性の召喚獣の枚数をある程度確保しておきたいという思いがあったため、EXバーストを持ち、バリューの高い【14-113R】《リヴァイアサン》を1枚お守りとして採用しました。
――状況こそ選びますが、たしかにクリティカルな仕事をするカードですね。【19-119L】《ウネ》の採用はそれほど珍しくないですが、セットとして見られがちな【17-138S】《ローザ》が採用されていないなど、従来の構築に比べてあまり重く見ていないように感じますね。
えあ:【19-119L】《ウネ》は基本的に早期ターンでの着地を想定しておらず、ミラーマッチなどで相手のバックアップを手札に戻しつつゲームのテンポをこちらに取り戻すカードという位置づけで採用しています。
基本的に「火土水【光の戦士】」はバックアップさえそろっていなければ単体で除去をできるカードは多くないので、その間に生き残った【19-119L】《ウネ》にアドアンテージを稼いでもらおうという目算です。
もちろん状況によって早く出す局面もあるかもしれませんが、それはバックアップを引けず本来のゲームプランで戦えない場合のサブプラン程度に考えていました。
◆開花を確信し努力を重ねた果ての初優勝
――実は、僕がえあさんと初めてお会いしたのは『FFTCG』以外のゲームをプレイしていたときなんですが、えあさんはそのゲームでも全国レベルのプレイヤーとして活躍されていました。『FFTCG』を始められてからも、周囲のプレイヤーが驚くほどの努力で実力を伸ばされていると聞いていましたが、優勝という結果を残すのに苦労などはありましたか?
えあ:僕は『FFTCG』を始めるのが周囲のプレイヤーと比べてかなり遅かったので、キャリアが浅く実力差もあったと思います。ですが、『FFTCG』は全国区の大会でも常連と言われるプレイヤーが勝ち続けているゲームだと聞いていたので、努力を続けることで勝てるようになるという確信があり、努力することに対して前向きであれるゲームでした。
今回かねてからの目標だった優勝という結果を残すことができ、あらためて努力が実を結ぶゲームだと確認できたのはうれしかったです。
――えあさんのカードゲーマーとしての実力は本物だと思っていたので、僕もえあさんが優勝したことはとてもうれしいです。これから「第五期名人位決定戦」という全国の舞台が待っていますが、最後に目標をお聞きしてもいいですか?
えあ:北信越地区予選に限らず「運命を超えて」環境はシーズンを通して調子がいいと感じているので、上がり調子のときだからこそ勝ちたいと思います。
最後まで調子のいいシーズンだったと思えるように最後まで気を抜かず、足元の石につまずかないよう気を付けて臨みたいですね(笑)。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回は「第五期 名人戦」北信越地区予選で優勝されたえあさんにインタビューを行ない、使い込んできた「火土水【光の戦士】」についてお話をうかがいました。
周囲の強豪プレイヤーも認める超努力型プレイヤーが、初優勝で箔をつけ「第五期名人位決定戦」に挑みます。
大会当日はえあさんの努力が結実するのか、今から楽しみですね。
「第五期 名人戦」も残す予選は東京地区予選のみ。今週末、ついに第五期名人位の候補が出そろいます。
最後の椅子につくのはどのプレイヤーなのでしょうか?
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!