『Shadowverse』の記事連載。今回から6週にわたって、現在「RAGE Shadowverse Pro League」に所属する選手へのインタビューをお届けします。第1回となる今回は、プロリーグに所属しながら「Shadowverse World Grand Prix 2018」にも出場する、まさに日本を代表する『Shadowverse』プレイヤーである横浜F・マリノスのみずせ選手にお話をうかがいました。
「RAGE Shadowverse Chronogenesis」優勝、「RAGE Shadowverse Starforged Legends」5位入賞など、アマチュア時代から数々の入賞歴を持つ若き強豪プレイヤー。
RAGE Shadowverse Pro Leagueの2ndシーズンからは横浜F・マリノスに所属しプロプレイヤーとなった。
◆家族の理解を得られ、晴れてプロプレイヤーに
――みずせ選手はプロリーグの2ndシーズンから横浜F・マリノスに所属し、プロプレイヤーとなりました。1stシーズンでもプロを目指されていたのでしょうか。
みずせ:プロリーグのことが告知されたときからプロになりたいという気持ちはありました。しかし学業のこともあり、家族に相談したら反対されてしまったので、そのときはプロリーグへの応募をあきらめました。
ですが、1stシーズンの盛り上がりを見たことで家族も考えを変えてくれて、自分を後押ししてくれるようになったので2ndシーズンのプロプレイヤー募集に応募したところ横浜F・マリノスさんに縁があって所属させていただくこととなりました。
――プロプレイヤーとなったことで日常生活などでの変化はありましたか。
みずせ:自覚という点で大きな変化があったと思います。私は今年の3月に開催された「RAGE Shadowverse Chronogenesis」で優勝したことで、SNSなどでフォローしていただける機会なども増えました。しかし、これまでは「野良の何か強いヤツ」という見られ方だったと思いますし、自分でも自身のことを何者でもないと考えていました。
それがプロプレイヤーとなったことで明確に「見られる側」になりました。プロリーグでの戦いは配信され、多くの方が観戦しています。そこで恥ずかしいプレイはできませんし、また日常生活においても「野良の何か強いヤツ」から「横浜F・マリノスのみずせ」になったことで、自分の振る舞いは自身だけでなくチームメイトやチームのスタッフにも影響するようになりました。それがプレッシャーになっているというわけではありませんが「しっかりしなくてはならないぞ」という気持ちが自分のなかに生まれたのを感じています。
――みずせ選手はSNS上でもユーザーさんとプレイングについての復習をしたり応援メッセージに対して回答するなど、よくコミュニケーションを取られていますよね。
みずせ:プレイングなどの情報交換については、もちろんチーム内での研究内容などをお話しすることはできませんが、フォロワーさんから有益なテクニックを教えてもらえることもあり、助かっています。応援についてはプロプレイヤーとなった今では、これまで以上にありがたく思います。本当はもっとコミュニケーションを取りたいと思うくらいなのですが、まだ日によって態度が変わってしまったりすることもあり、このあたりはもっと意識をしっかり持ちたいと考えています。
◆みずせ選手の、そして横浜F・マリノスの『Shadowverse』への向き合い方を聞く
――プロプレイヤーとなったことで『Shadowverse』との向き合い方で変わったことなどはありますか。
みずせ:より計画的にプレイするようになりました。それは対戦中にというだけでなく、『Shadowverse』を起動するときに「今日は2Pickでこのリーダーを練習しよう」とか「ローテーションのデッキを3枚入れ替えて、別のカードの使い勝手を試そう」といったように目的を持つようになりました。
――「プレイ」に「トレーニング」の要素が加わるようになったわけですね。
みずせ:そうですね。そして、これにはプロリーグ独自の環境も影響しています。個人で「RAGE」などの大会に出場するときはBO3に合わせて2デッキを研究すればいいのですが、プロリーグではBO3が2戦あるためデッキが4つ必要です。概ねどの環境でも3つくらいは強いデッキが見つかるのですが、プロリーグではここから4リーダー目を見つけなくてはなりません。それにはより多くの調査、研究、練習が必要不可欠です。限られた時間を有効活用するため、日々の練習に目的を設定することが重要になります。
先ほどSNS上でのコミュニケーションの話がありましたが、チーム外からもたらされる情報が大事なのもこのプロリーグ独自の環境が影響しています。一見力不足に見えるリーダーやデッキ、戦略にも光るものがあることは少なくありません。ローテーションはまだしも、アンリミテッドになるとなかなかすべての要素を調査し尽くすことは難しいですからね。
――同じ構築戦であってもローテーションとアンリミテッドは違いますか。
みずせ:大きく違います。ローテーションについては何とか全容を見渡すことが可能ですが、アンリミテッドは正直に言ってカオスです(笑)。自分たちのデッキを4つ決めるのはもちろん、そのうえで相手チームが使ってくる3デッキ目、4デッキ目を正確に予想することは困難を極めます。それだけアンリミテッドがまさに“アンリミテッドな”環境であるということでもありますが。
――プロチームとして、どのような環境に対しても無手で挑む、運に任せて突撃するということはできないと思います。チームではアンリミテッドの混沌に対してどのように向き合っているのでしょうか。
みずせ:読みきれない環境への対応策というのは大きくわけて2つあります。1つは安定したデッキを選ぶことです。いわゆる「丸い」構築というものですね。特別有利そうなデッキはないかもしれないけれど、何もできず負けてしまうことはないだろうというデッキです。そして、もう1つが尖ったデッキを使うことです。いわば「ハマれば強い」デッキで、特定の相手には勝てますが天敵も存在し、相手チームの選択次第で明暗がはっきりわかれます。
私たちはこの2つのやり方をなるべく精度を高く使いわけていきたいと思っています。たとえば11月11日に行なわれた第3節では後者の戦略を採用し、私が「セラフビショップ」と「ミッドレンジロイヤル」、チームメイトの水煮選手が「ミッドレンジネクロ」「フェイスドラゴン」を採用し、2Pickでの勝利をあわせて2勝1敗で勝利することができました。
この「セラフビショップ」と「ミッドレンジロイヤル」は対ネクロマンサーを意識しての採用でしたが、BO-IN選手が使っていたのが「フェイスドラゴン」「天狐ビショップ」で見事に外されてしまい、内心では焦っていましたが(笑)。
横浜F・マリノスは2ndシーズンから誕生したチームなので、まださまざまなデータを集めている途上にあります。リーグに所属するほかのチーム、プレイヤーの傾向を把握することはもちろんですし「自分たちに何ができるのか」ということもまだ探っている状態です。そのなかで、必ずしもすべてを見通せるわけではない環境に対しても精度の高い対応ができるようになりたいと思います。
◆もう1つの戦い、「Shadowverse World Grand Prix」について
――みずせ選手はプロリーグで戦いながら、12月には「Shadowverse World Grand Prix 2018」にも出場されます。この両立は大変かと思うのですが、いかがでしょうか。
みずせ:その2つは自分のなかでは切り分けて考えています。プロリーグはプロリーグですし、「Shadowverse World Grand Prix 2018」は私個人の戦いです。いまの私はプロリーグに所属するプロプレイヤーですから、まずはプロリーグでの勝利がもっとも優先される目標となります。とはいえ「Shadowverse World Grand Prix」も規模、参加プレイヤーのレベルともにとても大きく、高いものなのも間違いありません。これについては1人の『Shadowverse』プレイヤーとして楽しみにしているイベントですし、可能な限りの準備をして臨みたいと思っています。
――準備の進捗はどのくらいでしょう?
みずせ:うーん、40%くらいでしょうか(笑)。準備ももちろんですが、1戦1戦が非常に濃密な戦いとなるので集中力を切らさずにいたいですね。この大会も間違いなく自分のプロプレイヤーとしての今後の戦いに影響する、大きな糧になると思っているので悔いなくプレイしたいです。
――出場選手のなかで注目している、あるいはライバル視しているプレイヤーなどはいらっしゃいますか。
みずせ:NineVoice選手ですね。「RAGE Shadowverse Dawnbreak, Nightedge」でこの選手が見せた構築、プレイングの力量はすごかったです。今回もどんなデッキを持ってくるのか、要注目のプレイヤーだと思います。
(編註:NineVoice選手は同大会において「ジンジャーウィッチ」から《言霊遣い・ジンジャー》を減らした独創的なデッキで西日本予選を勝ち上がった)
◆『Shadowverse』プレイヤーへのメッセージ
――では最後にご自身のこれからの戦いへの意気込みや、『Shadowverse』プレイヤーへのメッセージをいただけますか。
みずせ:自分の強みは「揺れずに正着手を取れること」だと思っています。これからプロリーグや「Shadowverse World Grand Prix 2018」など大きな戦いが続きますが、大舞台で必要以上に緊張することなく自分の強みを活かして結果を出していきたいと思いますので、横浜F・マリノスともども応援をよろしくお願いします!
――ありがとうございました。