【Shadowverse】白悠咲美のコラム:そのサイコロに6の目はあるか? -ES 地方大会 Season3 参戦レポート-

『Shadowverse』の記事連載。今回は白悠咲美さんが「Shadowverse ES 地方大会2019 Season3」神奈川大会に向けて行なった調整法のコラムをお届けします。

こんにちは。白悠咲美です。
今回は、先日参加した「Shadowverse ES 地方大会 2019 Season 3」神奈川大会 の事前準備や調整方法についてレポートをお送りします。

◆ブランクからの復帰
7月20日に開催された「RAGE Shadowverse 2019 Autumn」以降、私は『Shadowverse』から少し距離を置いていました。他にも遊びたいゲームがたくさんあるためです。私には“下手の横好き”という言葉がぴったりで、常に複数のゲームを並行して遊んでおり、メインとなるゲーム1つ、サブとなるゲームを複数、という形で取り組んでいます。

「RAGE」前は『Shadowverse』をメインに遊んでいましたが、「RAGE」以降はサブとしてたまに遊ぶ程度にしていました。そんななかで、今回地方大会に運良く当選できたため、改めてメインとして取り組むことに。参加するには最善を尽くして勝ちたいですからね。
さて、約1月ぶりに『Shadowverse』に帰ってきました。最初にやるべきことはなんでしょうか。それは、現在の自身の状況を確認することです。

状況確認1:「RAGE」以降の知識がない
「RAGE」には「エイラビショップ」と「機械ウィッチ」を持ち込みました。その時は実力が及ばずday1で敗退してしまいましたが、「RAGE」の結果を見るに「エイラビショップ」+「機械ウィッチ」という選択自体はベストだったと思っています。ただ、それ以降は情報を追っておらず、「RAGE」以降の環境の推移は把握できていません。

特筆するべきは、間に2回環境が大きく変化するイベントが発生していることです。一つは7月30日に実施された既存カードの上方修正、もう一つは8月22日のアディショナルカード追加です。どちらも環境に大きなインパクトを与えるには十分な内容で、「RAGE」と地方大会の間に二回の環境変化を挟んでいることを考えると、ものすごい勢いで進化する『Shadowverse』の世界では、既に前回の「RAGE」までの知識が時代遅れになっていることは容易に想像できます。

状況確認2:時間があまりない
地方大会までは二週間弱ほどあります。とはいえ、1日24時間使い切れるかというと当然そんなことはなく、使える時間はせいぜい1日1時間といったところでしょう。そのため、使える手持ち時間の合計は15時間ほどで、この時間をうまく活用して練習する必要がありました。

以上二点の状況を理解したところで、最大限勝率を伸ばす方法を考えましょう。

RAGE以降の知識がない
⇛古い石器時代の環境と武器で物事を考えても意味がありません。時間の無駄です。世界は既に、カード能力の変更により青銅器の時代へ、そしてアディショナルカードによって鉄器の時代へと突入しています。ともすれば、まずはじめにやるべきは、知識を鉄器時代まで進化させることです。鉄器時代に適応したうえで、ベストな武器を選択するべきです。

時間があまりない
⇛理想であれば毎日12時間ランクマッチをしたいところですが、それほどの時間は取れません。できる限り練習効率を最適化したいのは言うまでもないでしょう。
ただ、新しいデッキを少し練習したところで常に『Shadowverse』をプレイしている熱心なプレイヤーに力量で負けてしまうでしょう。そのため、可能であれば「RAGE」のための練習で得た知見を使い回せる「エイラビショップ」「機械ウィッチ」をそのまま使うことで、少しでも勝率に下駄を履かせられればと考えました。
もちろん、二度の環境変化を経て両デッキが陳腐化してしまっていれば他デッキを使わざるをえませんが、基本的な方針として「エイラビショップ」「機械ウィッチ」を継続して使う、としました。

まとめると、最初のアクションとしてやるべきは「時代遅れの状態から進化する」ことです。その上で「手持ちの石器が鉄器の時代でも対抗できることを祈る」。これこそが私が大会で唯一勝てる作戦だと考えました。


◆状況確認を経て調整を開始

有識者の記事を熟読する
知識を進化させるための最初のアクションは、当時活躍している上位プレイヤーの執筆した記事を熟読することです。幸いなことに、『Shadowverse』では使用したデッキやプレイヤーの思考を言語化して発信する文化があります。
上位プレイヤーの執筆した記事をかたっぱしから目を通すことで、「石器時代から鉄器時代までに何が起きたか」「青銅器時代では何が強かったか」「鉄器時代では何が強いのか」といった知識を吸収します。

この時に意識することは二つ、「複数のプレイヤーの記事を読むこと」と「点ではなく線(流れ)を意識して読むこと」です。カードゲームの環境の変化は人間の歴史と同じであり、一つの視点から書かれた内容だけを読むと、歴史の輪郭を正確に掴むことはできません。

また、勝ち急ぐあまり「点」、この場合であれば「最新の鉄器時代で強い武器はこれ!」といった記事だけに目を通すこともオススメできません。自身のいた時代を起点として、どのようなイベントが発生し、それによって環境はどのように変化したのかを一歩一歩追うべきです。点ではなく、それまでの歴史をちゃんと追っていれば、「鉄器時代」のその先、例えば「ビーム兵器」の時代に進んだ際に、それまでの歴史の流れに延長線を引くことでビーム兵器時代がどうなっていくかを先読みすることができます。

ということで、ひたすら記事を読みました。その結果、次のような時代の流れになっていることが分かりました。

A:石器時代(RAGE期)
「エイラビショップ」と「機械ウィッチ」の2つが鉄板の選択。
「エイラビショップ」に強い《カラミティブリンガー》を軸にした「機械復讐進化ヴァンパイア」もいる。

B:青銅器時代(カード能力変更後)
ドラゴン、ネクロ、ネメシスのカードが強化された。これにより「AFネメシス」が環境トップに台頭。ドラゴンとネクロに大きな躍進は見られていない。
「AFネメシス」、「エイラビショップ」、「機械ウィッチ」の三国時代に突入。盤面処理に長けた「AFネメシス」に対抗するデッキとして、潜伏フォロワーによる一撃必殺が可能な「リオード潜伏ロイヤル」が流行の兆しを見せ、またヴァンパイアもまだ勢力を維持している。

C:鉄器時代(アディショナルカード追加後)
アディショナルによって恩恵を受けたデッキが「機械エルフ」と「潜伏ロイヤル」。
どちらもリーダーの体力を直接狙うデッキであり、対「AFネメシス」への強さから台頭し始めている。既存のデッキも対「AFネメシス」を意識しており、ビショップであれば《安息の領域》、「機械ウィッチ」であれば《飢餓の一撃》を採用しはじめている。

環境は「AFネメシス」を中心としているが、ビショップやウィッチも依然としてTier1デッキ。ヴァンパイアもそれなりにいる。

「RAGE」期と比べると「AFネメシス」、「機械エルフ」、「潜伏ロイヤル」の3デッキが環境上位に食い込んでいます。幸運なことに「RAGE」期に使用した「エイラビショップ」と「機械ウィッチ」も、時代の進化に合わせてアップデートを行なうことで、変わらずTier1デッキにいるようです。
「AFネメシス」というデッキタイプが私は昔から非常に苦手で、これを使って大会を勝ち抜くことは困難である点も加味し、地方大会で使用するデッキはアップデート版「エイラビショップ」&「機械ウィッチ」でほぼ確定しました。

グランプリで練習を重ねる
状況確認、環境把握を経て使用するデッキがほぼ決まったため、次は練習です。
練習は主に「潜伏ロイヤル」と「機械エルフ」を「グランプリ」フォーマットで使用することで行ないました。
使用する可能性の高いビショップ&ウィッチではなく、エルフ&ロイヤルを使用している理由としては、相手にした時のプレイを把握するためです。

対戦ゲームにおいて勝利に大きく近づくカギは「対戦相手のされたくないプレイ」をすることです。
この「されたくないプレイ」を知るためには、自身で実際に使ってみるのが手っ取り早いです。どのようなデッキなのか、どのようなプレイを苦手とするのかを肌で感じるため、グランプリで実際に使用しました。もしこの2デッキがとても強ければ、大会の使用デッキに変更してもいいでしょう。

次に、ランクマッチではなくグランプリフォーマットをメインにして対戦した理由ですが、これは“グランプリが最も多様性の大きい競技的なフォーマット”だからです。ランクマッチはポイントの近い人間とマッチングする仕組みのため、対戦相手はマスターランクからグランドマスターランクのプレイヤーに限定されます。

一方で、グランプリはDランクからグランドマスターランクまで全てのプレイヤーとマッチングされます。確かに、ランクの高いプレイヤーのほうが強いとされるデッキ、正しいとされるプレイを行いやすい傾向にあるとは思います。そして、私自身もグランドマスターランクのプレイヤーではあるため、比較的正しいとされる選択を取りやすくはあるでしょう。
しかし、「正しいとされる」プレイや「強いとされる」デッキとばかり触れていると、自身の思考が固定化されてしまいます。思考の優劣は質ではなく引き出しの数だと私は考えています。事実、ランクマッチよりグランプリのほうが対戦相手から想定していないカードをプレイされ驚かされることがよくあります。
グランプリで様々なプレイヤーと対戦することで、思考の引き出しを増やすことができ、実際の大会でも様々なケースを想定することができるようになります。

また、グランプリはランクマッチと比較して勝利による報酬が大きいため、1試合あたりの試合時間が短くランクを上げやすいことがあまり長所になりません。そのため、「早いデッキ」「遅いデッキ」問わず、対戦相手の考える「強いデッキ」がより選択されやすい傾向にあるでしょう。

……といった感じで、ひたすらグランプリでエルフとロイヤルを回しました。まず、デッキの強さの感触としては「強いけどウィッチやビショップから変更するほどではない」というものでした。
「機械エルフ」は「『エイラビショップ』相手に戦えるアグロデッキ」、「潜伏ロイヤル」は「『AFネメシス』に大きく有利なデッキ」と役割はあるものの、想定外のデッキと当たってしまうとあっさり負けてしまうため、様々なプレイヤーの思惑が交差する地方大会において、相手が自身の思うようなデッキ選択をしてくれるだろう、と考えるのは都合がいいと言わざるを得ません。

また、グランプリを通じてエルフやロイヤルがビショップウィッチにされたくないプレイを少し掴むことができ、ビショップやウィッチでエルフロイヤルと対戦しても問題はないと感じたため、使用デッキをビショップとウィッチで確定させることにしました。


◆BO3で調整を仕上げ、大会へ

持ち込むデッキが確定したため、最後の一週間は「ログインボーナス」と称して1日1回友人とルームマッチでBO3の対戦を行いました。そこで、マイナーアップデートが入ったビショップ、ウィッチ同士のミラーマッチの知識を更新したり、効果すらよく分かっていなかったカード《安息の領域》にまつわるテクニックを伝授してもらいました。

さて、準備は以上です。やれることはやりました。
あとは追い風が吹くことを祈るだけですね。

使用デッキ

予選(スイスドロー7回戦)
R1 WB oo
R2 WB oo
R3 WB oo
R4 WV oxo
R5 WB oo
R6 WB oo
R7 WB oo
1位抜け

プレーオフ(シングルエリミネーション)
QF シードのためbye
SF WB oo
GF NmW oo

なんとまさかの優勝!!

ゲームカウント18-1という自分でもびっくりのスコアで優勝することができ、副賞として次の「RAGE」のDay2招待枠を獲得することができました。

振り返り
正直出来すぎな結果ですが、振り返りを行ないます。
今回の勝因は、一言で言えば「運に恵まれた」になるでしょう。

・特定のキーカードに依存するビショップとウィッチという両デッキにおいて、ほぼ全ての試合でキーカードを引き込めていたこと。
・マッチアップの大半が「RAGE」期の知識を流用しやすい「ビショップ、ウィッチのミラーマッチ」であったこと。
・ミラーマッチにおいても、お互いキーカードを引けている、もしくはお互いキーカード引けていないというゲーム展開が多く、一方的な試合展開がほとんどなかったこと。
・と思いきや、こっちだけキーカードを引いてイージーウィンという試合も何回かあったこと。
などなど、とにかく追い風がビュウビュウ吹いており、風に乗って飛ぶだけで勝ち進むことができました。

そんななかで、振り返りとしてよかったことを挙げるとすれば、「身の丈にあった練習をした」という点でしょうか。
時間と知識にビハインドがあるなか少ない手札で勝つために、「既存のデッキがそのまま強い」ことに注目し、そのデッキを使い続けることにより最小限の練習で最大限の成果を得ることができました。
もちろん、残り時間を「AFネメシス」の練習に費やすことで、プレイヤーとしての力量が大きく向上する、という側面を捨ててしまっていることも事実ですが、今回は「大会で勝つ」ことが主目的なため、その目的に向かって効率的な練習を行なうことができたと考えています。

重要なことは、設定とした「目的」に対して「正しい練習」を行なえているかどうかです。大会の「目的」が「『AFネメシス』を上手く使う」であれば、グランプリでエルフやロイヤルを使用することは「正しい練習」ではありません。「AFネメシス」をランクマッチで使い続けることが時間効率の良く優れた練習方法となるでしょう。

「大会で勝つ」という目標を達成する際に重要なことは「運が良いときに勝てるようにする」ことです。

大会は基本的に優勝者、準優勝者が恩恵の大半を享受する「ウィナーテイクオール」方式が採用されています。そのため、安定して勝ち越すことに意味はなく、必要なことは流れが良いときに大勝することです。これを私は「6の出るサイコロ」と勝手に呼んでいます。6の目とはつまり優勝のことで、5以下は何の意味もありません。この時、全ての目が5のサイコロを持ち込むよりは、残りが1の目だとしても一つだけ6の目があるサイコロを持ち込むべきです。

今回であれば、ビショップ、ウィッチしか使えない→勝つためにはビショウィッチが活躍するのに賭ける、といった形ですね。

ゲームにおいて、プレイヤーは常に選択を迫られ続けます。プレイング、カード採用、デッキ選択、などなど。勝負どころでの選択は常にハラハラするものです。そんな時、ついつい「丸い」選択肢を選びたくなるでしょう。そんな時、ちょっとだけでもそのサイコロは6が出るのかを考えてみると良いかもしれません。良い感じの勝負をした末に負けるぐらいなら、ほぼ負けだが細い目を通して勝ちに行く、というのもまたゲームの面白さではないでしょうか。

「6の出るサイコロを振る」、これがほんとのロックンロール、、、なんてな!!

それでは。また次の機会に。