【Shadowverse】白悠咲美のコラム:大型大会へ向けたデッキ調整のやり方

『Shadowverse』の記事連載。今回も白悠咲美さんがご自身の体験をもとにデッキ調整録を公開します。旧環境の話ではありますが、デッキ調整への取り組み方はこれからの『Shadowverse』でも役に立つはず。ぜひご覧ください。

みなさんご無沙汰しております。白悠咲美です。
前編
からだいぶ経過してしまいましたが、「RAGE」調整録後編をやっていきます。
大会に向かって調整を行なうチームやプレイヤーの皆さんの参考になれば幸いです。

それでは、どうぞ。

◆前回のあらすじ

時は「OOT」環境、当時は「自傷ヴァンパイア」一強であった。《姦淫の信者》と《スコルピオ》を採用したアグロ型が隆盛するなか、筆者は「RAGE」を勝ち抜くため《姦淫の信者》を不採用とし、ドローソースを厚めに取り安定感を増した構築とすることで、デッキの強さはそのままにミラーマッチでも明確な優位が取れたと手応えを感じていた。

1つ目のデッキは「自傷ヴァンパイア」でほぼ決まりとなる一方で、2つ目のデッキがなかなか決まらず苦労していた。
候補として「原初ドラゴン」、「ギガキマウィッチ」、「ミッドレンジロイヤル」、「アーカスネクロマンサー」など。これらのデッキを一通り回したが、どれもしっくりはこなかった。「RAGE」まで残された時間は1週間。一体どうなっちゃうの!?

 

◆流行のデッキに対抗するために

多少の違いはあるとはいえ「自傷ヴァンパイア」が仮想敵として明確であるため、ここからは強いデッキではなく、「自傷ヴァンパイア」に勝てるデッキを探すことにしました。当時の仮想敵は以下のようなリストでした。

このリストに対し、次の順番で作業を行うことで、対策デッキを考えます。

① デッキの特徴を挙げる。

② ①で挙げた特徴に対して、相性の良い要素を挙げる。

③ ②を達成できるカードを探す。

④ ③のカードを軸にしつつ、②の要素を多く満たせるようにデッキを組む。

やっていることは実に単純で「弱点を探そう」、それだけです。
ひとつ注意しなければいけないのは、カード単位での対策をしようと考えないことです。
カード単位での対策は局地的に勝利ができるだけで、デッキの対策にはなっていません。

デッキはカード単体ではなく、各カードが結びついてできた構造によって成り立っているため、デッキの対策を考えるにはまず構造を理解するところから始めます。
構造を理解することで、見えてきた構造に対して優位な構造を考えたうえで、その構造を満たせるようにカードを選択してデッキを作ります。

早速実際にやってみましょう。

①デッキの特徴を挙げる
アグロ型の自傷ヴァンパイアは主に3つの長所を持ちます。

A-1 優秀な低コストフォロワーと単体除去
A-2 《フラウロス》、《姦淫の絶傑・ヴァーナレク》、《狂恋の華鎧・ヴィーラ》といったコスト不相応の動きをする強力なフォロワー
A-3 《闇喰らいの蝙蝠》や《鋭利な一裂き》などの強力な本体火力

それぞれ簡単に解説します。

A-1 優秀な低コストフォロワーと単体除去
《姦淫の信者》→《スコルピオ》or《姦淫の従者》のロケットスタートから、相手の出してきたフォロワーを《絡みつく鎖》、《邪眼の悪魔》で除去することで恐ろしい勢いで相手の体力を減らすことができます。また並行して自傷回数を稼ぐことができます。

A-2 《フラウロス》、《姦淫の絶傑・ヴァーナレク》、《狂恋の華鎧・ヴィーラ》といったコスト不相応の動きをする強力なフォロワー。
複数回数の自傷から直接召喚される《フラウロス》、進化した《狂恋の華鎧・ヴィーラ》、効果発動条件を満たした《姦淫の絶傑・ヴァーナレク》など、条件付きではありますがコスト不相応のカードを多く有しており、序盤の攻勢からこれらのカードに繋いで盤面を制圧することができます。

A-3 《闇喰らいの蝙蝠》や《鋭利な一裂き》などの強力な本体火力
守護フォロワーや除去カードで盤面を制圧されたとしても、ヴァンパイアはそれだけでは負けません。闇蝙蝠を筆頭に疾走フォロワーや本体火力スペルも有しており、守り切ったとホッと一息ついた相手に最後のダメ押しを与えます。

これらの戦術は、基本的には上から順番に行なわれますが、どれかひとつ相手が防御を失敗すればそのまま勝利に繋がる強力な戦術です。また、一般的なアグロデッキと違い、戦術の軸が多角的であることも特徴です。

次に「自傷ヴァンパイア」の短所を考えます。

B-1 全体除去カードが少ない
B-2 自傷カードによって自然と体力が減る
B-3 デッキの固定枠が多い

同じくそれぞれ簡単に解説します。

B-1 全体除去カードが少ない
「自傷ヴァンパイア」は単体除去は優秀ですが、サイズの小さいフォロワーを除去するカードは《邪眼の悪魔》の進化時効果だけ。あったとしても《デモンストーム》が1枚程度と非常に限定的です。

B-2 自傷カードによって自然と体力が減る
デッキのコンセプトの都合上、相手に攻められていなくても体力をどんどん消費していきます。一部回復カードも採用されていますが、それでも消費量の方が多く、10点以上の体力を自ら失うこともたびたびあります。

Bー3 デッキの固定枠が多い。
自傷カードやフィニッシュ用カードなど、デッキの構造を成立させるための必須カードの枚数が多く、特定のカードを減らしてしまうとデッキ全体のバランスが崩れてしまうため、特定のデッキを意識した対策カードの採用がしづらいです。
また、相手からするとデッキの中身がほぼ知られている状態のため、相手の意表をつくこともしづらいです。「RAGE」はデッキ非公開制の大会ということもあるため、こういった要素も欠点となります。


以上が、「自傷ヴァンパイア」の長所・短所となります。
まとめると、ひたすら自傷しながら盤面を制圧し、相手が対処できなければそのまま押しきり、仮に対処されたとしても中盤以降は対策困難なフィニッシュカードで残りの体力を削りきることのできる強力なデッキだが、デッキのカードはほぼバレており、全体除去が少なく自身の体力がどんどん減っていくデッキということになります。

② ①で挙げた特徴に対して、相性のよい要素を挙げる
ここからは上記A-1~A-3、B-1~B-3の特徴に対し、相性のよい要素とは何かを考えていきます。長所に対しては対抗できる要素、短所については弱点を攻略できる有効な要素を考えます。

A-1 優秀な低コストフォロワーと単体除去
序盤から攻撃的な動きをしてくるため、こちらも低コストのフォロワーやスペルを採用して対処していく必要があります。単体除去が強力なため、可能であればフォロワーよりスペルである方が望ましいです。
除去という意味では低コストのフォロワーを一掃できる全体除去も魅力的であるため採用したいところですが《姦淫の信者》や《スコルピオ》といった攻撃時に自傷するフォロワーたちに自傷回数を稼がれてしまうこと、また後続の要素で直接体力を狙ってくることを考えると、全体除去より単体除去の質に焦点を当てたほうがいいでしょう。

A-2 《フラウロス》、《姦淫の絶傑・ヴァーナレク》、《狂恋の華鎧・ヴィーラ》といったコスト不相応の動きをする強力なフォロワー
通常のフォロワー進化では有利なトレードができないことが多いため、強力な単体除去カードが必要です。また《フラウロス》には消滅カードで回復能力を無効化したり、《狂恋の華鎧・ヴィーラ》であればダメージ減少が関係のない《熾天使の剣》などが有効です。

A-3 《闇喰らいの蝙蝠》や《鋭利な一裂き》などの強力な本体火力
本体火力に対しては、回復能力を持つカードや、受けるダメージを減らすカードが有効です。

B-1 全体除去カードが少ない
低コストのフォロワーを複数体展開する動きが有効になります。

B-2 自傷カードによる体力が減る
直接打点となる疾走持ちのフォロワーや、場のフォロワーの攻撃力を上げるカードが有効です。

B-3 デッキの固定枠が多い
プレイングやマリガン面において、裏目となることが少なかったり、構築においても上記要素がブレる可能性が小さいため、想定していた対策が有効に機能する可能性が大きいです。

 

③ ②を達成できるカードを探す
②で挙げたヴァンパイアに有効な要素を見てみると、一つの共通点が見えてきます。それは低コストフォロワーを複数体展開することです。低コストフォロワーを複数展開することで、序盤の相手の攻勢を食い止めライフを守るとともに、相手の全体除去が少ない弱点を付いてそのまま自傷で減ったライフを削りきることができます。低コストフォロワーは一種類あれば良いというものではないため、低コストフォロワーの層が厚いリーダーを選択するといいでしょう。

とはいえ、低コストフォロワー1体1体は攻撃力があまり高くなく、打点としては大きくありません、可能であればフォロワーを全体的に強化するカードが欲しいところです。欲をいえば、ヴァンパイアの強力な単体除去を回避するために潜伏能力を持っており、さらに欲をいえばドレインのような回復能力を持っているとうれしいですね。そんな都合のいいカードが果たして存在するのでしょうか・・・? いるわけないと思いますが、カード全体を探してみましょう。

 

いました

 

前編の次回予告に登場した黒い女こと《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》です。

 

展開した低コストのフォロワーの攻撃力を強化することはもちろん、「欲をいえば……」で書いた潜伏もドレインも持っています。そして、10ターン目以降は追加のフォロワーを探すドロー能力を持っており、低コストフォロワーの展開で失ったリソースを取り戻すこともできます。

最高のカードを見つけることができました。しかし、デッキの基軸をなすカードがデッキに3枚だけというのはデッキが安定しません。ギルネリーゼほど必要な条件に適合したカードがもう1種類あるとは到底思えません。可能であれば《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》をデッキから確定でサーチできるカードがあればよいのですが・・・。

 

いました。

 

《蒼の少女・ルリア》です。元々は『グランブルーファンタジー』の背景設定をなぞり、エンハンス能力で《プロトバハムート》をデッキからサーチしてアクセラレートで使用、本人はダメージ無効能力で生存というカードだと思われますが、まさかの《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》とのシナジー。
また、《蒼の少女・ルリア》本人も単体除去耐性が高く、横並べ戦略に大きく貢献するのはもちろん、相手の《姦淫の信者》に対して《蒼の少女・ルリア》を出した場合、相手は2コストの除去カード1枚だと倒すことができないため《姦淫の信者》を安定して倒せるなど、いぶし銀の活躍を見せてくれます。

低コストフォロワーを展開して、デッキに6枚換算の《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》で強化する。

これが「自傷ヴァンパイア」に有効な戦略だと考えました。

 

④ ③のカードを軸にしつつ、②の要素を多く満たせるようにデッキを組む
この2カードは幸いどちらもニュートラルのカードのため、全リーダーが採用することができます。ここからは、どのデッキが“ルリアギルネリーゼ”と相性がいいかを考えます。ヴァンパイア以外の全リーダーを順番に試しましたので、それぞれ所感を述べます。

エルフ
横並べといえばエルフ。
横並べだけは得意でヴァンパイアには有効だったが、横並べをすることしかできないため、ほかのリーダーにあまり有効ではなかった。また、横並べをすることしかできないため、《フラウロス》、《狂恋の華鎧・ヴィーラ》、《邪眼の悪魔》などで強い盤面を作られると、横並べしかできないので対処できず負けてしまうこともしばしば。
有利である可能性はありましたが、確実に勝てるとはいえず、BO3でヴァンパイア以外を採用している参加者もいると考えると、あまり使いたいとは思いませんでした。

ウィッチ
「ギガキマ」&《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》を試しました。微妙でした。《スノーマン》以外とのシナジーがまったくなく、スペルブーストをどんどん貯めていきたいデッキで7コストを払ってまで《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》を出したくないことと、《キングスノーマン》がそもそも7コストで出すターンが重なってしまうなどがあり、あまり強いとは思えず没に。
ただし、ウィッチは進化権が余りやすいため、《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》にEPを使ってそのターン中に回復できることは評価できる点でした。

ビショップ
「天狐」&《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》。もともと回復能力を有していること、《神の盾・ブローディア》や《安息の領域》のようにダメージをカットするカードもあること、《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》の効果で《天狐の社》の誘発が可能なことから最高の組み合わせか? と最初は思ったものの、1つ目の低コストフォロワーの横並びの条件をまったく満たしておらず、相手の体力を一向に減らせないまま《闇喰らいの蝙蝠》を2連打されるゲームが多かったので没としました。

ネメシス
「リーシェナネメシス」&《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》。低コストフォロワーが多く《破壊の絶傑・リーシェナ》の《白き破壊のアーティファクト》での回復や《虚数物体》でのダメージ減少など、有効な要素が多いです。場にフォロワーがいなくても、《操り人形》を《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》で強化することで盤面に対処することができ、強いシナジーも感じました。

しかし「リーシェナネメシス」というデッキそのものが《破壊の絶傑・リーシェナ》を早い段階でドローできるかという要素に依存しすぎており、対「ヴァンパイア」でも早期に《破壊の絶傑・リーシェナ》を引けていれば勝てることと、逆に《破壊の絶傑・リーシェナ》を引けていなければ“ルリアギルネリーゼ”をしても勝ちきれないことを考えると、対「ヴァンパイア」に強い構造ではあるのですが、デッキの安定性に難を感じてしまい、「RAGE」で使用するのはためらわれました。

ロイヤル
「ミッドレンジロイヤル」&《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》。横並びが得意なロイヤルに“ルリアギルネリーゼ”を加えることで、不安定だった回復要素を十分に確保することに成功……と思ったのですが、この「ミッドレンジロイヤル」というデッキ、“ルリアギルネリーゼ”の代わりに抜くカードがありません。

低コストフォロワーを単純に《蒼の少女・ルリア》に差し替えてしまうと、《騎士王・アーサー》の効果が弱くなってしまいますし、3コスト以上のカードはどれもミッドレンジロイヤルの強さを支えているカードのため、どれかを不採用にしてまで“ルリアギルネリーゼ”を採用することは難しいと考えました。

また、横並べといえばロイヤルというイメージをなんとなく持っていたのですが、いざ回してみると「ミッドレンジロイヤル」は点で戦う動きと面で戦う動きの二軸を持つデッキのため、《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》の強さが不安定ということも気になりました。特筆するべき点としては《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》+《黄金の靴》により、進化権を使うことなく3点回復ができます。

ネクロマンサー
「アーカスネクロマンサー」&《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》。もともと2種類の1コストフォロワーに加え《スカルリング》、《心眼の双葬女・レディグレイ》、《冥界の番犬・ケルベロス》など横並びが得意なカードを多く持つネクロマンサーに“ルリアギルネリーゼ”のパッケージを投入してみました。

もともと回復できるカードを有しているデッキのため、《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》の進化権を使わずともライフが十分に保たれること、《蒼の少女・ルリア》が《幽霊支配人・アーカス》と相性がよいこと、《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》も《幽霊支配人・アーカス》や《幽想の少女・フェリ》の相性がよいことから、カード単体だけでなくデッキの構造単位で強固なシナジーを形成しており、第一回横並べ“ルリアギルネリーゼ”選手権1位に輝きました。


 

◆最終的に選択したデッキ

“ルリアギルネリーゼ”デッキを一通り研究していたら、デッキ登録の制限時間が来てしまいました。悩んだ末、持っていく80枚は次の2デッキを選択。

「自傷ヴァンパイア」と「原初“ルリアギルネリーゼ”ドラゴン」です。

 

選択理由

「自傷ヴァンパイア」
仮想敵としている「自傷ヴァンパイア」に対し構成で有利が取れています。
ドラゴンも回復カードがないため有利です。

仮想敵としているアグロ構成の「自傷ヴァンパイア」に対し有利が取れるとされていた、「ミッドレンジロイヤル」や「ミッドレンジネクロマンサー」と対戦する場合でも、《邪眼の悪魔》と《姦淫の絶傑・ヴァーナレク》を有効活用し、ゲームを長引かせる動きをすることで有利が取れます。

ウィッチやビショップなどのゲームを急がないデッキに対しては大幅有利です。

総じて、全デッキに有利~大幅有利という明確な最強デッキだったため「自傷ヴァンパイア」を選択しました。

「原初“ルリアギルネリーゼ”ドラゴン」
「自傷ヴァンパイア」と一般的な「侮蔑ドラゴン/原初ドラゴン」の相性は、ドラゴン側がヴァンパイアの苦手とする回復カードや横並べカードを持っていないため、構造的に不利と考えました。そのため最初は候補にあがりませんでした。

しかし、ドラゴンの持つ盤面対処能力は、ヴァンパイアに有利とされているロイヤルやネクロに対し非常に有効でもあります。

また、デッキの強さについても《侮蔑の絶傑・ガルミーユ》や「侮蔑」と名のつくカードは用途が広く、今までの「ランプドラゴン」にありがちだった序盤のターンのパスがほぼ発生せず、ドラゴンを除く全リーダーに対して有利に戦うことができます。

しかし、やはり環境に最も多いとされているヴァンパイアに対して不利というのは大会を勝ち抜くうえで厳しいと考えたため、前述したヴァンパイアに強い要素を可能な限りすべて詰め込みます。
他リーダーとの相性は少し悪くなったものの、対ヴァンパイアの相性を有利とはいわないまでも戦える程度にまで改善することができたと思ったため、ヴァンパイアには戦える、それ以外には有利ということで、第2の最強デッキとして「原初“ルリアギルネリーゼ”ドラゴン」を選択しました。


個々のカードの採用/不採用のポイント

選択肢1:《デビルシープ》or《姦淫の翼》?
これについては明確に《姦淫の翼》のほうが優れていました。
初期にリストを構築した際も、当時使用不可となっていた《姦淫の翼》の代替として《デビルシープ》を採用しています。

《デビルシープ》は、回復と2コストフォロワーという2つの役割をこなしますが《姦淫の翼》は自傷、回復、打点と3つの役割を持っており、この3つは「自傷ヴァンパイア」において非常に重要な要素でもあるため《姦淫の翼》を優先するべきです。

大会では《姦淫の翼》が使用可能だったのですが、リストでは《デビルシープ》から変更なしとしています。理由としては、時間がなかったからです。
《姦淫の翼》の解禁はリリースから一週間弱、「RAGE」の数日前だったかと思いますが、リリース数日でリストが完成し、ある程度プレイングの指針も決めてしまったあとでの解禁だったため、2つ目のデッキを作成することを優先して、《姦淫の翼》に差し替えたヴァンパイアを試さないことにしたためです。

確かに《姦淫の翼》に差し替えてプレイを補正することで、より完成度を100点に近づけられたのかもしれませんが、そのために2つ目のデッキを50点にしてしまっては本末転倒で、時間がない今回の大会においては正しい判断だったと思います。

選択肢2:《銀氷のドラゴニュート・フィルレイン》は何枚?
よく3枚確定とされていたカードですが、メインターゲットとしている「ヴァンパイア」の《スコルピオ》と《姦淫の従者》に一方的にトレードされることはゲームの敗北に直結するため、元々は0枚採用としていました。しかし、1/3というスタッツや《銀氷の吐息》による除去が唯一無二のものというのも事実のため、デッキ提出15分前に1枚だけ入れました。

選択肢3:《銀氷のドラゴニュート・フィルレイン》のスロットには何を入れる?
《銀氷のドラゴニュート・フィルレイン》は1枚だけという一方で、《スコルピオ》や《姦淫の従者》と相打ちができ、かつエンハンスによって常に横並べ戦略を実現できる《オルカの大渦》は3枚採用しました。
《竜の託宣》→《オルカの大渦》という動きは、3ターン目にして《竜の託宣》のテンポロスを取り戻すことができる強力なアクションであり、《原初の竜使い》との相性がすばらしいのも見逃せません。

選択肢4:《ドラゴスネーク》投入の是非
こちらも「ヴァンパイア」に対して早期に盤面を制圧しライフを守ることを意識して採用しています。
単純に“侮蔑”関係のカードとの相性もよく、《ドラゴスネーク》+《侮蔑の炎爪》のコンボは多くのデッキに有効な動きです。PP加速よりも盤面の制圧を重視するのがデッキのテーマだったため、《斬竜剣士・ロイ》を減らして投入しました。

選択肢5:“ルリアギルネリーゼ”パッケージの投入
各クラスでの“ルリアギルネリーゼ”を比較したあと、最後の最後に天啓が降ってきました。
実際に試してみると「原初ドラゴン」は横並べ戦略が得意なため、《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》との相性は良好です。また、PP加速や《侮蔑の絶傑・ガルミーユ》の能力などで7PPに到達するまで進化権を残しやすく《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》進化により5点回復をじゅうぶん狙える点も優秀でした。

こうして、ネクロマンサーほどではありませんがドラゴンと“ルリアギルネリーゼ”の相性がよいことがわかったため採用に至りました。
ただし「原初ドラゴン」はドラゴン・フォロワーを可能な限り多く採用したいデッキなので、採用枚数は《蒼の少女・ルリア》1枚、《飢餓の絶傑・ギルネリーゼ》2枚におさえました。

◆いざ大会、そして振り返り

day1 ooooo    5-0
day2 xooooox 5-2

 

最終戦、勝てばプレーオフ進出というところでしたが惜しくも負けてしまいました。
大会を終えて、各分野ごとに振り返っての点数付けをしましょう。

デッキ構築:93点
どちらも強力ながら当時の主流から少し軸をズラした構築を組めたため、かなりよかったと思います。

デッキ選択:90点
ドラゴン、ヴァンパイアというTier1デッキ2つという持ち込みはいつだって間違いが起きません。特定のデッキへの相性も重要ですが、デッキのポテンシャルそのものに対する視点も最後まで忘れることがなかったのでこの点数としています。

プレイング:4点
あまりマッチアップ単位の練習を行なっていないため、息を吸うようにミスを連発していました。

マリガン:0点
何も考えてなかったので、ほとんどその場で考えてやってました。

 

よかった点
①自分の得意領域が分かってきた
ここ1年で、私の得意領域は環境分析とデッキ構築に特化しているという気づきを得たため、今回のRAGEは私の得意と思っている部分を信頼してみることにしましたが、今回の結果を見るに大きくは間違っていなさそうです。

②100点を目指さないようになった
もともと、私はデッキ構築なども最後の1枚までこだわりたい性格だったのですが、現実問題として時間の制約もあるため、最近は「その二択はたいしたことじゃないからどっちでもいいよ」と割り切ることができるようになってきました。結果として、90点を91点にするために使っていた労力を他の部分を0点から80点に引き上げることに使うことができるようになったと感じています。今回は特に本当に時間がなかったこともあり、大事な判断以外は結構雑でも結果にあまり影響は与えないなという気付きも得ることができました。

悪かった点
①プレイングやマリガンといった練習をあまりにもやらなかった
今回、時間がなかったといえばないのですが、練習というものはほとんどやらず、ひたすらデッキやデータとにらめっこしていたため、いざ大会当日となって実際にデッキを使ってみると想定していなかったシチュエーションになってプレイングミスを連発したり、そもそもマリガンを何も考えてなかったので試合ごとにマリガンの方向性が大きく変わったりと、練習不足というにもおこがましいレベルで練習不足が露呈していました。そもそもプレイングもマリガンも苦手な領域というのもあります。得意領域を伸ばすのは良いのですが、苦手領域にも少しは目を向けるべきだと感じました。


◆終わりに

いかがだったでしょうか。今回の「自傷ヴァンパイア」は自信作といえば自信作だったのですが、一般的なリストと大きく乖離していたこともあり、本当にこのリストが強いのか当日まで半信半疑ではあったのですが、終わってみればかなりよいリストだったのでホッとしています。

「OOT」環境を題材に私の調整録をお届けしましたが、この記事が競技プレイを目指す人の参考になれば幸いです。
今後も、不思議なデッキで大会に出てはレポートを書いていこうと思いますので、ご期待ください。

それでは!