『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。「JAPAN CUP NAGOYA」特集第2弾となる今回は、今大会で優勝したダンカンさんのインタビューをお届けします。
皆さん、こんにちは。カードゲーマー編集部の編集(川)です。
「JAPAN CUP NAGOYA」レポート、第2回となる今週は本大会で優勝したダンカンさんのインタビューをお届けします。
前回の記事とあわせてお楽しみください。
また、今回はせっかく超のつく強豪プレイヤーにお話をうかがう機会ということで大会の感想ではなく「Opus VIII」の環境分析や「2デッキ制」と「ブースタードラフト戦」といった普段とはちょっと違うフォーマットにおけるデッキ選択や指針などについてたずねてみました。
今後もまだまだ続く「MASTERS2019」や今月末に開催される「CRYSTAL CUP」に参加するプレイヤーの皆さんはぜひチェックしてみてください。
ダンカン
普段は閣下というプレイヤーネームで活動している。
日本人で唯一2年連続で日本代表入りを果たしているプレイヤーで「MASTERS」や「ASIA GRAND CHAMPIONSHIP」などでの優勝経験も多く、これまでに獲得したトロフィーは優に10を超える。
好きな『ファイナルファンタジー』のタイトルは『FFX』。
◆「Opus VIII」環境と2デッキ制における「選択肢」
――「JAPAN CUP NAGOYA」優勝おめでとうございます。
ダンカン:ありがとうございます
――今回は2デッキ制の構築戦とブースタードラフト戦の混合フォーマットでの大会でした。それぞれの対戦形式についてお話しをうかがいたいと思います。
まず構築戦ですが「土風」と「火氷」を選択されていましたが、このデッキ選択理由についてお話しいただけますか。
ダンカン:いまの「Opus VIII」環境では、もしデッキを1つ選べと言われたら「土風」を選択するでしょう。それくらい「土風」には単純なデッキパワーがあると考えています。なので「土風」を使うことはすぐに決まりました。
次にその相方となるデッキですが「土風」が1勝をもたらしてくれると考えると、残り2戦のうち1つを勝てばよく、かつそのうち1回は先手を取れることになります。それならば爆発力があり、押し切って勝てることがことがあるアグレッシブなデッキとして「火氷」がいいだろうと判断しました。強い「盾」と強い「矛」を持って挑んだという感じです。
また「火氷」は以前から使っていて慣れていたというのも理由です。今回はブースタードラフトの練習もしなくてはならなかったので、構築戦の練習時間をそこまで多く確保できないだろうとも考えていました。
――バランスを考えると「盾」「矛」の組み合わせが2デッキ制では最良でしょうか。
ダンカン:「矛」「矛」の組み合わせも人によっては選択肢にあがると思います。
2デッキ制のマッチで勝つには、
・勝→勝
・負→勝→勝
・勝→負→勝
の3パターンがあります。
「後手で勝ち→後手で勝ち」の連勝パターン以外は必ずどこかで先手を取れるので、そこで確実に「矛」デッキを使いたいなら「矛」「矛」もありかなと。
――大会に出てみて、ほかのプレイヤーの選択などはどうでしたか。
ダンカン:「土風」が思ったより少ないなという印象を受けました。「土風」は強いとはいえ非常に難しいデッキで、慣れていないと時間切れによる両者敗北などにもなりやすく、そういった点から「土風」を「使う」のではなく、「倒す」という選択をされた人が多かったのかなと。
――先ほど「土風」のデッキパワーが高いと言っていましたが、実際に「土風」を倒すというのは可能なのでしょうか。
ダンカン:今大会の時点では、2デッキ制で両方のデッキを対「土風」戦の相性を五分以上にするのは難しかったと考えています。私の選択も「土風」ミラーマッチは五分、「火氷」対「土風」はやや不利です。
ただ「土風」は序盤の展開でもたつくことがあり、アグレッシブなデッキに押し切られることもあります。そういった面では「チョコボ」などはいい選択肢だったと、決勝戦でぱっつぁんさんと戦っていて思いました。
――ダンカンさん自身は今大会で「土風」を使っていてどうでしたか。
ダンカン:「土単」に一度負けましたが、それ以外はおおむね期待通りに勝ってくれました。
――「土単」はデッキとしてはどうでしょうか。
ダンカン:【1-093H】《ヴァニラ》や【5-079H】《カルコブリーナ》で【8-136L】《常闇のヴェリアス》に耐性があり、【1-117R】《ヘカトンケイル》で【5-082C】《採掘師》や【5-091H】《星の神子》をブレイクできるためアンチ「土風」性能の高いデッキです。
基本的にはゆっくり動くことが多いですが『FFXV』パッケージに寄せて爆発力を持たせることも可能で、【7-069C】《コルカ》のサーチもあるためカスタムの幅も広く、環境に合わせてかたちを変えられます。
単属性デッキですが結構器用なデッキで、これから活躍するかもしれません(編註:このインタビューの5月12日に開催された「MASTERS2019」諏訪大会では「土単」が優勝しています)。
――「土風」がデッキパワーという面では頭一つ抜けているものの、デッキ自体の難しさや序盤にもたつくことがあるという独自の弱点、プレイヤーの工夫などによって圧倒的王者として君臨できているわけではない、というのが現在の「Opus VIII」環境ということですね。
ダンカン:そうです。しかしアンチデッキに対しても、展開しだいで何とかなってしまうのもまた「土風」の強みでもありますが(笑)。
【5-091H】《星の神子》→【6-058R】《モーグリ [XI]》→「スペシャルアビリティ『引き出す』」→【5-082C】《採掘師》……という流れをバックアップを整えながらオマケのようにできるデッキはほかにないでしょう。
そう考えるとやはり「土風」の一番の弱点は「難しい」ということですね。
たとえばバックアップが4枚あって、そのうちの1枚が【5-091H】《星の神子》。手札には6コストのフォワードとほかに何枚かのカードがある。
そのとき6コストのフォワードは【5-091H】《星の神子》のアビリティで出すべきか、それともバックアップ4枚と手札からの2CPでコストを支払って出すべきか、なんて状況はよく起きるにもかかわらず状況ごとに正解は異なり、いくらでも悩めてしまいます。
ほかにもバックアップやブレイクゾーンに干渉してこない相手とのゲームでは問題ありませんが、相手が何らかの手段を持っていそうな場合に【5-082C】《採掘師》をどう使うべきか。そもそも序盤に「相手は干渉手段を持っているのか?」をどう判断するかなど、「選択肢の多いカード」を使うがゆえに「正しい選択肢を選ぶ」という行動が必要になります。
――使いこなせれば強いけれど、難しいところもあるということですね。
ダンカン:前回のインタビュー記事でAlexさんも言っていましたが「Opus VIII」は非常に強力なセットで、たくさんのアーキタイプが強化されています。
私は今大会までは「土風」がベストデッキだと考え、それを中心に環境を想定していましたが「JAPAN CUP NAGOYA」ではいろいろなデッキが活躍していたので、自分に合ったデッキを選んでそれを磨いていくことが報われる環境なんだなと考えるようになりました。
◆「Opus VIII」ブースタードラフト戦のテクニックを聞く
――続いてブースタードラフト戦についてお話しをうかがいたいと思います。
ダンカン:この記事が載るときには「CRYSTAL CUP EARTH」(5月末に開催される日本代表プレイヤーを決める混合フォーマットの2Dayトーナメント。詳細はこちら)がまだですよね。ウソ情報流そうかな(笑)。
――やめてください(笑)。ブースタードラフトの練習は結構しましたか?
ダンカン:ブースタードラフトは「過去環境から積み上げてきたノウハウ」よりも「現環境での実戦経験値」が大事だと考えているので、時間を取ってふだん一緒に遊んでいるプレイヤーと練習しました。
――練習で重視していたことは何でしょうか。
ダンカン:カード評価を定めるということですね。今大会では構築戦ラウンドでの成績に応じてブースタードラフトで同卓するプレイヤーが決まります。構築戦で勝った場合は周囲も強いプレイヤーばかりになりますが、その際に大事なのは自分の両隣にいるプレイヤーと協調することです。
そのためにはほかのプレイヤーと同じ目線でいなくてはなりません。
そうでなければ上のプレイヤーが送ってきたシグナルを察知できませんし、同様に下のプレイヤーに自分が正しいシグナルを送れません。
『FF-TCG』は光と闇をのぞくと6属性ですから「自分の上、自分、自分の下」の3人で2属性ずつをわけあうのが理想といえます。まず正しくカードを評価できるようになり、自分の両隣のプレイヤーと無言のコンタクトを取れるようになることが大事だと思っています。
――それがまず競技的なブースタードラフト戦の土俵に立つために必要なことだというわけですね。ほかに練習において重要なことはありますか。
ダンカン:ほかのプレイヤーのフィードバックを妄信しないということですね。一緒にブースタードラフトをやったプレイヤーの意見は無視はできませんが、実際に自分で使っていないカードを「これは強かった」と言われて、それを鵜呑みにしてしまうのは危険です。
あくまで自分で使ってみての感触を大事にするべきです。
ブースタードラフトの練習がたくさんできる環境はそれ自体が貴重なので、まわりのプレイヤーには感謝していますが、それと評価をどう定めるかは区切るべきだと考えます。
――まず練習をちゃんとして、そのなかで自分が得たものをベースに環境理解を進めていくのがブースタードラフトへの根本的な取り組み方というわけですね。それを踏まえて「Opus VIII」のブースタードラフトについて、環境の特徴や強い属性などについてお話しいただけますか。
ダンカン:一番簡単で、かつ一番重要なのは「火属性をなるべくやる」ということだと思います。単純にプレイアブルなカードが多く卓内の許容人数も自然と増えます。そして2つの点でほかの属性よりも優れている点があります。
まず1つは【8-017C】《ブリュンヒルデ》の存在です。
「Opus VIII」では複数の属性に除去ができる4コストの召喚獣が追加されました。なので、これまでの環境よりも除去が強く、仮に大型フォワードがいてもブロックとの合わせ技などで除去されやすくなっています。
――5コストのカードを出しても4コストのカードで除去されてしまうというわけですね。
ダンカン:なので、逆に3コストで強力なカードの価値があがっています。3コストのカードに4コストの除去を使わせれば1コストぶん得します。
そこで【8-017C】《ブリュンヒルデ》が重要になります。3コストのカードを3コストで除去すればテンポ面での損はありませんからね。
そして、もう1つの火属性が強い点が「ダメージの積み重ねによる除去」のやりやすさです。
レアリティがRまでの比較的取りやすいカードだけでも【8-004R】《イロハ》や【8-019C】《マッシュ》、【8-022R】《レイン》など継続的にダメージを与えられるものが複数あります。
しかも、このカードたちはどれも2コスト、3コストの基準となるパワーを満たしており、立派にアタッカーを務めることができます。
特に【8-004R】《イロハ》の、ダメージを+1000するフィールドアビリティが強力で、【8-019C】《マッシュ》と【8-005C】《エドガー》がそろっていれば【8-019C】《マッシュ》のオートアビリティで4000+1000、【8-004R】《イロハ》で1000+1000の合計7000ダメージを与えられ、これだけでパワー7000のフォワードを倒せます。
レアリティがH以上のカードも粒ぞろいで、またプレミアム版限定になりますが【8-138S】《ヒエン》はアタック時に味方全体のパワーをあげてくれますし、【8-139S】《リセ》もわけがわからない強さを持っています。
――火属性が抜きん出た強さを持っていて、それゆえに複数のプレイヤーがピックすることになっても大丈夫ということですね。
ダンカン:「絶対に火属性をやる」と決めてしまうのはよくないですが、強力な属性であることは間違いありません。
――ほかに「Opus VIII」ブースタードラフトの知見があればお聞きしたいのですが。
ダンカン:これもまた、間接的に火属性が強いという話になるのですが、相手とにらみあうようなデッキだと【8-032R】《シヴァ》をくらって終わってしまうことがよくあります。なのでブレイブを持った強いフォワードで相手のアタックを抑制するといった戦略は通じにくいですね。
そういった事情と、さっき言った4コストの召喚獣がないという点で土属性はちょっと敬遠したい属性になっています。
しかし、それを逆手に取った「土雷」独占ピックという必殺技もあります。『FFL』のカードをかき集めるパターンですね。レアリティH以上のカードの出方に依存するのでいつでも狙えるわけではありませんが、できてしまった場合は最強です。
――風属性、水属性はどうでしょうか。
ダンカン:水は強い、風は弱めという印象です。
――風属性は【8-046R】《アレキサンダー》や【8-056R】《デスケイズ》などの除去、3コスト7000、4コスト8000のフォワードもいるので強いのかなと思っていました。
ダンカン:カード1枚1枚の性能は悪くないのですが、風属性にしては足回りが悪いという評価です。ただカードを出すだけ、というような。
【8-061C】《フィーナ》や【8-050C】《オニオンナイト》もパワーの基準値は満たしていますが、結局バックアップをアクティブにするだけなので、バックアップをたくさん出すことが少ないブースタードラフトではアビリティを活かしきれず、能力のないフォワードのような使い方になってしまいがちです。
あと、個人的に【8-056R】《デスゲイズ》は落とし穴のようなカードだと思っています。
除去したと思って安心していると【8-063R】《マトーヤ》や【8-131C】《リルム》を出されたり、あるいはEXバーストしたりで突然相手にフォワードが増えてしまうことがあるんです。【8-111R】《アレキサンダー》なども天敵ですね。
ブースタードラフト戦は通常の構築戦に比べてよりシビアなダメージの与え合いになるので、そこに不確定要素を持ち込んでしまうカードとして個人的な評価は低めです。
――水属性は評価が高いということですが。
ダンカン:【8-130C】《リヴァイアサン》と【8-123H】《ニコル》の存在によって「水単」を狙うバリューが高いという点が1つあります。【8-120C】《占星術師》も「水単」であればさらに強く運用できます。
また、火属性と『FFIX』シナジーに寄せたデッキを作れる点も評価できます。こちらはレアリティの高いカードが複数必要になりますが【8-118H】《スタイナー》や【8-016H】《ビビ》は『FFIX』に寄せるほどバリューアップしますからね。
また、特にシナジーなどを考えなくとも【8-114H】《クイナ》や【8-129R】《ライオン》は強く、全体的に安定した属性です。
――各属性に対する評価をいろいろお話しいただきました。ブースタードラフト全体の話に少し戻りますが、今回からパックを5つ使うようになったことは今後のブースタードラフトにどう影響を与えるでしょうか。
ダンカン:すごくいいことだと思います。まず単純にピックに幅を持たせられます。4パック制だと全部で48枚しかカードが取れないなかで40枚のデッキを組む必要がありましたからね。
また、余裕ができたということは、ほかのプレイヤーへのシグナルも送りやすくなります。
たとえば自分のパックから出た2コストのバックアップが1周して9手目に戻ってきたとします。これまでだったら取らないという選択肢はありませんでした。
もちろん、今でもバックアップは取っておくに越したことはありませんが、あえて取らないことで「この属性はやらないよ」とシグナルにすることもできるようになりました。
――5パック制になったことで、デッキ構築だけでなくピックの段階でもいい変化があらわれているということですね。
◆終わりに
――では最後になりますが、今年も日本代表を目指すプレイヤーとして一言メッセージをいただけますか。
ダンカン:もちろん、今年も日本代表入りは狙っていきます。というか日本代表には「なります」。
一昨年と去年、日本代表として世界のプレイヤーと戦いましたが、世界には私よりも強いプレイヤーがたくさんいます。
なので日本代表を狙う人は「日本のなかでは誰が強い」とかではなく「世界を取りにいく」気持ちで今後の「MASTERS2019」や「CRYSTAL CUP」に挑戦してほしいなと思いますし、私自身もそういうスタンスでのぞみます。
今年こそ世界王者のトロフィーを日本に持ち帰るべく、一緒にがんばりましょう!
――ありがとうございました。