【FF-TCG】猛練習に裏打ちされた勝利 ~「MASTERS2019」千葉大会 優勝者インタビュー~

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今回は「MASTERS2019」千葉大会を予選ラウンド、決勝ラウンドともにで無敗の成績で駆け抜けて優勝したひーとさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに

こんにちは!『FF-TCG』プレイヤーのたるほです。

「Opus VIII」環境、いよいよ始まりましたね!
「Opus VIII」のカードにはインスピレーションを刺激されるものが多く、普段はあまりデッキを自作せず大会などで結果を残したデッキをアレンジして使うことの多い僕も、発売からの2週間で10個もデッキを試作してしまいました。
そして、そのうちの1つで「MASTERS2019」千葉大会に出場して結果は5勝2敗の15位でした。なかなか感触もよかったので今月末の「JAPAN CUP NAGOYA」などでも使い続けてみる予定です。

今シーズンはぜひとも「MASTERS2019」などの大型大会で結果を残して、優勝者にインタビューするのではなく、優勝者として記事を書くという野望を叶えたいと思います。そしてもちろん、最終目標は世界選手権ですね!

今回は「Opus VIII」発売後、国内では初の大型大会となった「MASTERS2019」千葉大会で優勝されたひーとさんのインタビューをお届けします。

ひーと
東京のプレイヤー。
『FF』シリーズのコンシューマータイトルを全制覇したほどの根っからの『FF』ファンだとのこと。
特に「FFVI」「FFVII」「FFX」への作品愛が強く、「作品単」構築でゲームをするときはこれらのタイトルでデッキを組んでいる。

 

◆《ダダルマー》に頼る時代は終わった? 生まれ変わった新生「土風」

――「MASTERS2019」千葉大会、優勝おめでとうございます。

ひーと:ありがとうございます。

――今回の「MASTERS2019」千葉大会は「Opus VIII」発売後、国内では初めての大型大会ということで注目度も高いものでした。そのなかでひーとさんは「土風」を使い、予選ラウンドを含め全勝で優勝と圧巻の成績を残しました。さっそく今回使われた「土風」デッキについてお話しをうかがいたいと思います。まず、このデッキが生まれた経緯をお話しいただけますか。

●「ウリエンジュ」だと思ってた(「MASTERS2019」千葉大会:優勝)

カードNo. カード名 枚数
フォワード(17枚)
【3-056H】 《ジタン》 3
【5-068L】 《ヤ・シュトラ》 2
【8-060L】 《フィーナ》 2
【4-085H】 《ダダルマー》 3
【5-086L】 《セシル》 2
【5-163S】 《ウリエンジェ》 2
【5-148H】 《カムラナート》 1
【8-136L】 《常闇のヴェリアス》 2
バックアップ(18枚)
【5-059R】 《セミ・ラフィーナ》 3
【6-058R】 《モーグリ [XI]》 3
【1-089H】 《リュック》 2
【6-047C】 《白魔道士》 1
【5-082C】 《採掘師》 2
【5-091H】 《星の神子》 3
【6-064H】 《アジドマルジド》 1
【6-079L】 《ミンフィリア》 1
【1-107L】 《シャントット》 1
【1-184H】 《カオス》 1
召喚獣(9枚)
【5-062L】 《ディアボロス》 2
【1-117R】 《ヘカトンケイル》 3
【5-019L】 《フェニックス》 2
【3-112H】 《審判の霊樹エクスデス》 1
【8-135H】 《アーク》 1
モンスター(6枚)
【4-058C】 《サボテンダー》 3
【5-071R】 《レヤック》 1
【5-079H】 《カルコブリーナ》 1
【8-080C】 《プーマ夜光》 1

ひーと:このデッキは「Opus VII」環境末期の第二期「名人戦」予選大会や「名人位決定戦」でカワムラさんやKurosawaさん(編註:どちらも「名人位決定戦」ベスト4に進出した強豪プレイヤー。Kurosawaさんは2017年の日本代表でもある)が使っていた「土風」デッキをベースに「Opus VIII」のカードでアップデートしたものです。
また海外のデッキリストを見ていたら【8-136L】《常闇のヴェリアス》imageや【8-080C】《プーマ夜光》imageなど「これも投入してよさそうだ」と思うものがあったので、それらを加えて調整しました。

――「土風」というと「Opus V」くらいの時期から存在した「土風ダダルマー」とでも言うべき中~低速のミッドレンジデッキと、第二期「名人戦」の時期に台頭してきた、さらにコントロールに寄せた「土風コントロール」の2種があると思います。カードゲームではよく「新環境の最初は攻めるデッキが有利」と言われますが、今回後者の型を選んだ理由はなんでしょうか。

ひーと:「土風ダダルマー」はデッキ内の除去を【4-085H】《ダダルマー》imageと【4-058C】《サボテンダー》imageのコンボを軸に盤面を制圧していくデッキですが、名前の通りデッキの除去を【4-085H】《ダダルマー》imageに依存する構築になっています。

それは強力な手段ではあるのですが「土風ダダルマー」は長い期間活躍してきたデッキなので、構築でもプレイングでも対策されています。特に「Opus VIII」では【8-049L】《エアリス》imageという明確なアンチカードも登場しました。なので【4-085H】《ダダルマー》imageのギミックは最小限にし、彼に依存しすぎない「土風」になる必要があると考えた末に、コントロール要素をより厚くする型がいいと判断しました。

――今までの「土風」から一歩進んだコンセプトを求めたということですね。具体的にどういったコンセプトでデッキを考えられたのでしょう?

ひーと:コンセプト自体はとても単純で【3-056H】《ジタン》imageで相手のプランを崩しつつデッキを確認し、そこから相手の出方を見て、除去を当ててコントロールしていくというものになります。フォワードの展開を優先してくる相手には【1-107L】《シャントット》imageや【6-064H】《アジドマルジド》imageと【8-135H】《アーク》imageのコンボで全体除去を行ない、大きなフォワードでじっくりと仕掛けてくる相手には【8-136L】《宵闇のヴェリアス》で除去してさばいていくというように、その相手ごとに適切な除去方法を選んでプレイします。

元のカワムラさんたちのレシピでは【5-019L】《フェニックス》imageが3枚入っていて、【3-056H】《ジタン》imageや【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageに加え、【7-129H】《ガルデス》imageを復活させることで中盤戦を戦うことを想定していると思いました。それに対してこの「土風」では【5-019L】《フェニックス》imageの役割を中盤をさばくカードではなく、最後の重要な局面で【3-056H】《ジタン》imageや【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageを復活させるためのカードと位置づけ、中盤は【8-135H】《アーク》imageや【3-112H】《審判の霊樹エクスデス》imageなどの全体除去に頼って切り返すイメージでプレイしました。

・これまでの「土風」
《ジタン》や《ヤ・シュトラ》など→相手が対応→《フェニックス》で復活させさらにリソース消費を迫る→フィニッシュ
・ひーとさんの「土風」
《ジタン》や《ヤ・シュトラ》など→相手が対応→《アーク》や《審判の霊樹エクスデス》で盤面を制圧→フィニッシュの直前に《フェニックス》で復活させ反撃の芽をつむ

 

【5-062L】《ディアボロス》imageも元々3枚採用していましたが、【8-136L】《常闇のヴェリアス》imageが出たことで中盤の除去合戦に強くなり、使用する頻度が減ったので採用は2枚となっています。もともとバックアップを並べ終わった終盤に活躍するカードですし【6-064H】《アジドマルジド》imageで回収することもできるのでこの枚数でも足りないと思うことはありませんでした。

――【8-136L】《常闇のヴェリアス》imageが加わったことで【4-085H】《ダダルマー》imageや【5-062L】《ディアボロス》imageに頼らず中盤戦で除去ができるようになった点も強化された部分というわけですね。

ひーと:はい。また「Opus VIII」で加わったカードでは【8-060L】《フィーナ》imageも強力で、序盤は【6-126R】《レイラ》image【4-133C】《バイキング》imageなどの横並べの対策となり、終盤では【4-085H】《ダダルマー》imageと【4-058C】《サボテンダー》imageと組み合わせて複数のフォワードに9000ダメージを与えることができる、単体でもコンボでも強力なカードでした。【5-091H】《星の神子》imageのアビリティで出せるのも「土風」とは相性がいいポイントです。

――【4-085H】《ダダルマー》imageに依存しない型ではあるものの、【4-085H】《ダダルマー》imageと相性のいいカードも増えているわけですね。ほかに、新カードでは【8-080C】《プーマ夜光》imageも海外のデッキを参考にして投入したとのことですが、これはいぶし銀の活躍をするカードだなと感じます。

ひーと:【8-080C】《プーマ夜光》imageはコストも少し重めのカードで、ぱっと見では強さが伝わりにくいかもしれませんが【6-079L】《ミンフィリア》imageと組み合わせることで何度も使いまわせるデッキの潤滑油になり、召喚獣やモンスターにスロットを取られがちな「土風」とは非常に相性がよかったです。

――【8-136L】《常闇のヴェリアス》imageや【8-060L】《フィーナ》imageのようなフィールドに出たときに仕事をしてくれるカードが増えたぶん、フォワードに変換できるカードの価値が上がっているわけですね。「土風」といえばバックアップのバリューの高さも強さの1つですが、今回はどういった考えでこういう構成にされたのですか。

ひーと:参考にしたカワムラさんたちのレシピからの大きな変更点としては【1-089H】《リュック》imageが3枚から2枚になったことでしょうか。もとのレシピでは盤面をコントロールしきったあと【1-089H】《リュック》imageで相手のデッキを先に0枚にして勝つことも多くありました。しかし【8-136L】《常闇のヴェリアス》imageが入ったことでフォワードでアタックすることによる勝ち筋も太くなったこともあり枚数を減らしました。除去が豊富になったことにより相手のフォワードを壊滅させてアタックにいける展開も多く、これまで以上に柔軟に勝ち筋を狙えるデッキになったと感じました。

――「土風」はコントロールデッキということもあり、立ち上がりのプレイングも難しいという印象ですが、ゲームのスタートプランなどはどのように考えているのでしょうか。

ひーと:理想はもちろん【5-059R】《セミ・ラフィーナ》imageと【5-091H】《星の神子》imageがそろっていることですが、この2枚に限らず初手に2枚バックアップがあればスタートできます。それがなかなか難しかったりするのですが(笑)。常にバックアップ2枚から始められるわけではないので、バックアップをサーチできる【5-148H】《カムラナート》imageを入れたり、バックアップ1枚から動ける【3-056H】《ジタン》imageを投入したりとバックアップ1枚でも動き出せるように工夫しています。

――今回「MASTERS2019」千葉大会に出るにあたり、「Opus VIII」環境はどんな環境だと予想していましたか。

ひーと:「土風」の立ち位置としては、さきほども言いましたが【8-049L】《エアリス》imageという【4-085H】《ダダルマー》imageに対して非常に相性がいいカードが出たり、もともと【3-123R】《暗黒の雲ファムフリート》imageで【4-085H】《ダダルマー》imageを対処できた「水単」が、さらに【8-130C】《リヴァイアサン》imageを獲得したりと、【4-085H】《ダダルマー》image頼みの戦法は苦しくなった印象がありました。

しかし、逆に【3-056H】《ジタン》imageのような小さいフォワードを対処しやすいカードが減ったり、【8-136L】《常闇のヴェリアス》imageが効きやすいフォワードが多かったりとそれ以外の部分は大会当日の環境に対して効果的なカードが多かった印象です。特に【8-136L】《常闇のヴェリアス》imageはフォワードが並ばないこちらのデッキに対しても有効なので、今回はそこを意識して【5-079H】《カルコブリーナ》imageを採用しました。

――自身で使っているからこそ、【8-136L】《常闇のヴェリアス》imageが使われたときのイメージを持ってデッキ構築の段階で意識していたんですね。そのほかの属性で注目していたカードなどはありましたか。

ひーと:「Opus VIII」では【8-036C】《セッツァー》imageがかなり強力なカードで、序盤から【4-048L】《ロック》imageのフィールドに出たときの手札破壊アビリティが狙いやすくなり、【8-037R】《セリス》imageや【8-024C】《ウーマロ》imageなどフォワードのラインナップも増えたため【カテゴリ(VI)】軸の「火氷」デッキがそれなりにいるのではないかと予想していました。「火氷」という観点では【8-043H】《ラスウェル》imageも非常に強いと思っていて、今後は【8-043H】《ラスウェル》image入りの「火氷」はもっと増えるんじゃないかと思っています。
【カテゴリ(VI)】軸のデッキでいえば「水氷」は新しいデッキが生まれるんじゃないかとも予想しています。【8-036C】《セッツァー》imageで【4-123H】《ガウ》imageを何度も使えるので、モンスターを軸にしたデッキには可能性を感じています。

また、実際大会に出てみて【カテゴリ(XV)】のカードが想像以上に強かったのが印象的でした。【8-079H】《ノクティス》imageは成功すると一気にフォワードを展開できますし、【8-072R】《イグニス》imageのスペシャルアビリティや【8-074H】《グラディオラス》imageの展開力などフォワードがどれも粒ぞろいで、今回私の「土風」ではかなりディフェンシブな土属性の使い方をしましたが、攻撃的な土属性の使い方も考えていかなければと思いました。まだまだ自分の知らない強いカードが埋まっているなというのが、大会を通しての感想です。

◆調整は「百人組手」の精神で

――ひーとさんは「Chapter」時代からのプレイヤーということで、長く『FF-TCG』を遊ばれています。普段はどういった環境で対戦しているんでしょうか?

ひーと:基本的に「友人たちと一緒にひたすら対戦数をこなしていく」というのが私のスタンスです。「百人組手」や「1000本ノック」のようにひたすらゲームをこなしています。

「Opus VII」環境くらいからバックアップの強さが顕著になり「このバックアップが置かれたらこうしよう」とか「このバックアップの枚数だったらこう動こう」というように、相手のバックアップ状況に合わせて自分の行動の選択を迫られることが増えました。そういった状況に対応するために回数をこなして経験を積むことは今『FF-TCG』で勝つうえで重要なことだと思います。今回の「土風」でもそうですが、バックアップが奇数か偶数かで最適な動きも変わってきますし、特にお互いのバックアップの“枚数”を意識し、できることとできないことを判断してプレイすることが重要だと考えています。

――対戦回数を重ねることで類似したシーンで最適解をだせるようにトレーニングをする、いわゆるケーススタディがひーとさんの強さの秘訣につながっていると。

ひーと:実際、今回優勝に結びついた一因として「【6-058R】《モーグリ [XI]》でサーチするカードの選択を間違えなかった」という点があると思っているのですが、これは練習の成果だと言えるんじゃないかなと思います。

――たしかにそれはお話を聞くだけではなかなか見えてこない部分かも知れませんね。

ひーと:この「土風」は非常にプレイングの難しいデッキなので練習量がものを言うところはあると思います。フォワードでアタックして勝ちやすくなったとは言いましたが、それでも勝つまでにはかなり時間がかかります。判断を迷っていたら時間切れによる両者負けもありえます。
そのため相手の状況もそうですが、自分のCPを毎ターンどう動けば綺麗に使いきれるのかなどは経験で得られる知識の蓄積が重要で、数をこなすのはやはり大切です。今回は時間がないなからっちょ君(編註:「MASTERS2019」千葉をワンツーフィニッシュしたプレイヤー)をはじめ、練習に付き合ってくれた友人の存在も大きかったなと思います。

――なるほど。ひーとさんがデッキを組む際に心がけていることなどあれば教えてください。

ひーと:初動の強いバックアップがあることが特に大事だと思っています。今回であれば【5-082C】《採掘師》imageと【5-059R】《セミ・ラフィーナ》imageがそれにあたります。フォワードが強いのはもちろんですが、強いバックアップがあるのは今の『FF-TCG』の重要な要素だなと。

――ひーとさんのいう強いバックアップとはどういったカードを指すのでしょう?

ひーと:奇数と偶数の動きをどちらも取れるカードは強いと思っています。例えば3CPのサーチ能力持ちのバックアップなどはそれにあたりますね。また【1-089H】《リュック》imageなど毎ターンCPを無駄にすることなく使いきれるカードも価値が高いと考えています。

――毎ターン無駄なくCPを使い切れるというのが、大事にされているポイントなんですね。では最後になりますが今シーズンの目標などあればお聞かせください。

ひーと:そうですね。夢は大きく日本代表……と言いたいところではありますが、リミテッドがまだまだ練習できていないのでまずはより強いプレイヤーになるべくブースタードラフトからがんばっていきたいと思います。

――ありがとうございました。

◆終わりに

『MASTERS2019』千葉大会で優勝されたひーとさんへのインタビューでした。
発売からまもない期間で、「Opus VIII」環境に適合した「土風」を生み出した裏側には「百人組手」にたとえられるような努力と練習量が隠されていました。
僕もぜひ一度、ひーとさんによる「1000本ノック」を受けてみたいなと思いました。

「Opus VIII」環境も始まったばかり。ひーとさんも言っていましたがこれからまだ見ぬデッキがどんどん出てくるでしょう。
僕もまた各地の大会にお邪魔して、まだ見ぬ強いプレイヤーとまだ見ぬデッキに迫っていきたいと思います。

それでは、また次の記事でお会いしましょう!