【FFTCG】勝利に必要なのは「一貫性」 -CRYSTAL CUP WIND優勝者インタビュー-

『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週はシンガポールで開催された「CRYSTAL CUP WIND」の優勝者、Jason Zheさんのインタビューをお届けします。

◆はじめに

こんにちは!
『FFTCG』プレイヤーのたるほです。

先日シンガポールで「CRYSTAL CUP WIND」が開催されました。
タイ・バンコクでの「CRYSTAL CUP WATER」に引き続き、やる気満々でシンガポールに旅立ってまいりました!
今回はそのレポートをお届けします!

と言いたいところでしたが……なんと空港を間違えるという大失態!
人生2回目のシンガポールは、その地を踏むことすらできませんでした。
みなさんも旅行に行く時は空港を間違えないよう気をつけてくださいね!
成田と羽田、似てますものね。

このままでは今までの努力も浮かばれない。なんとかシンガポールへの爪あとを残したい。
ということで今回は「CRYSATAL CUP WIND」で優勝を果たし、3年連続で世界選手権への出場権を手にしたJason Zhe選手にお願いして、インタビューをさせてもらいました。
世界の強豪プレイヤーの強さの一端が、この記事から伝われば幸いです!

▲Jason Zhe選手(写真右)。

Jason Zhe
オーストラリアのプレイヤー。
3年連続の世界選手権出場を決めたトッププレイヤーの1人で、今期の「CRYSTAL CUP」も参加すれば必ずトップ8以上に入る実力者。豪胆な印象を持つプレイヤーだが、冷静で「一貫性」を重視したデッキ選択とプレイスタイルに徹する。

 

◆シンガポールの覇者、3度目の世界へ

――優勝おめでとうございます。バンコクでは「風単」、メルボルンでは「水風」、シンガポールでは「風単」を使っていましたね。それぞれのデッキの選択理由とその変遷を教えてください。
Jason:私は「水風FFCC」デッキを数か月プレイしていて、デッキにはかなり自信がありました。このデッキは【1-198S】《ヴァルファーレ》imageと【8-060L】《フィーナ》imageや【7-054L】《チェリンカ》imageと【7-044H】《アルハナーレム》imageなどの組み合わせで、たやすくフォワードをブレイクすることができます。

「Opus IX」では【9-115R】《ポロム》imageが登場して、【1-198S】《ヴァルファーレ》imageがさらに使いやすくなりました。なので、元々バンコクでは「水風」を使おうと考えていましたが、Joshua Freeman-Birch(イギリスの強豪プレイヤー)の製作した「風単」で何度かテストをしてみて、「風単」には一貫性があり、私のプレイスタイルに非常によく合っていることがわかりました。

そして「風単」には、テストで氷属性に対して非常に強力だった【9-059R】《レム》imageなどを採用するための十分なデッキスペースもありました。 それでバンコクでの「CRYSTAL CUP WATER」の2日前に「風単」を使用すると決めました。
しかし、大会の直前にデッキを決めたため十分にテストをしておらず、【8-060L】《フィーナ》imageなど現在のメタゲームにおいて重要なカードを採用していないリストで挑み、トップ8という結果で終わってしまいました。

◆CRYSTAL CUP WATER使用:風単

カードNo. カード名 枚数
フォワード(31枚)
【4-060R】 《シャアラ》 2
【2-066R】 《バルフレア》 1
【3-056H】 《ジタン》 3
【5-068L】 《ヤ・シュトラ》 2
【7-054L】 《チェリンカ》 3
【9-045H】 《エッジ》 3
【3-066R】 《バルバリシア》 3
【7-046R】 《ヴァータ》 3
【7-128H】 《ユーリィ》 3
【9-056H】 《メーガス3姉妹》 3
【9-059R】 《レム》 2
【1-080H】 《バッツ》 3
バックアップ(16枚)
【1-088C】 《弓使い》 1
【5-067R】 《ミューヌ》 1
【7-044H】 《アルハナーレム》 2
【8-047C】 《ウァルトリール》 1
【8-057C】 《忍者》 2
【9-055C】 《フラン》 2
【7-043C】 《アーチェス》 2
【5-053R】 《エコー》 2
【8-058R】 《ノルシュターレン》 3
召喚獣(3枚)
【5-062L】 《ディアボロス》 3

そして「CRYSTAL CUP WATER」の結果から「風単」は、守りに回った展開が少し苦手だということがわかりました。
基本的には相手より先行するゲーム展開を目指すわけですが、より速いデッキに対してはそうもいかず、攻めるだけでなく相手の展開への対処も考慮しながらプレイしていかなければなりません。

メルボルンでの「CRYSTAL CUP FIRE」では、オーストラリアの強いプレイヤーたちは攻撃的な「火氷」「氷単」「水氷」などのデッキを使ってくるだろうと考え、大量のEXバーストと【1-198S】《ヴァルファーレ》imageのような優れた除去カードがあり、より守りに特化した「水風」を使用しました。

◆CRYSTAL CUP FIRE使用:水風

カードNo. カード名 枚数
フォワード(24枚)
【9-115R】 《ポロム》 3
【1-199S】 《パイン》 3
【2-063R】 《パイン》 2
【3-056H】 《ジタン》 3
【5-068L】 《ヤ・シュトラ》 1
【7-054L】 《チェリンカ》 3
【7-128H】 《ユーリィ》 3
【1-080H】 《バッツ》 3
【8-060L】 《フィーナ》 3
バックアップ(16枚)
【1-089H】 《リュック》 3
【1-177R】 《ユウナ》 3
【5-067R】 《ミューヌ》 1
【7-044H】 《アルハナーレム》 2
【7-043C】 《アーチェス》 2
【2-137H】 《メルウィプ》 1
【5-053R】 《エコー》 1
【6-048C】 《シンラ》 2
【8-122R】 《謎のじいさん》 1
召喚獣(10枚)
【1-198S】 《ヴァルファーレ》 3
【3-123R】 《暗黒の雲 ファムフリート》 2
【2-133R】 《不浄王キュクレイン》 2
【5-062L】 《ディアボロス》 3

しかし、残念ながら私の予想は外れ、地元の強豪選手の多くは「風単」をプレイしていました。
「水風」は十分な強さを持っていましたが「風単」と比べると一貫性がなく、適切なタイミングで特定のカードを多く必要とします。 EXバーストが適切なタイミングでヒットしたり、【1-177R】《ユウナ》imageや【1-089H】《リュック》imageを序盤からプレイできたときには「水風」は非常に強力なデッキですが、すべてのゲームでそれが達成できるわけではありません。

特に大会の決勝ラウンドでは、1つの不運なゲームがトーナメントからの敗退に繋がります。残念ながら、トップ8のゲームではあまり運がなかったようで「CRYSTAL CUP FIRE」も再びトップ8止まりという結果になりました。

――風属性を使うというところはブレなかったんですね。

Jason:私の友人、Jamie Faulknerは「氷単」をプレイするべきだと強く推していました。 私は「氷単」もテストしましたが、あまりデッキとのシンパシーを感じませんでした。
「氷単」は早い段階で【4-038L】《ロック》と【3-033L】《ジェネシス》imageを出してアグレッシブにプレイするか、【1-195S】《セラ》imageと【7-034L】《セフィロス》imageでスローゲームをプレイするかのどちらかで、いわばギャンブルをする必要があります。

相手についての情報を持たずに決定を下すのは好きではありません。また、私はダル凍結絡みのアビリティがあまり好きではありません。 一時的に対戦相手の盤面を止めて、EXバーストが発動しないように祈るよりも、より多くのリソースを獲得し、うまく使用することで勝ちたいのです。そのため、風属性を使うという点は揺らぎませんでした。

3連戦の最後となるシンガポールの「CRYSTAL CUP WIND」では、強くて一貫性のあるデッキを使用する方がいいと判断し、再度「風単」を選択しました。

「CRYSTAL CUP WATER」で使用した「風単」は、直前に手にしたこともあって最適なビルドではなく結果はふるいませんでした。「風単」のパフォーマンスを引き出しきれていなかったわけです。しかし適切なデッキ構築をして、しっかりとしたプレイをすれば「風単」は何に対しても勝つことができると信じていました。

◆CRYSTAL CUP WIND使用:風単

カードNo. カード名 枚数
フォワード(30枚)
【2-066R】 《バルフレア》 1
【3-056H】 《ジタン》 3
【5-068L】 《ヤ・シュトラ》 2
【7-054L】 《チェリンカ》 3
【8-049L】 《エアリス》 1
【9-045H】 《エッジ》 2
【3-066R】 《バルバリシア》 2
【7-046R】 《ヴァータ》 3
【7-128H】 《ユーリィ》 3
【9-056H】 《メーガス3姉妹》 3
【1-080H】 《バッツ》 3
【8-060L】 《フィーナ》 3
【9-057L】 《ヤズマット》 1
バックアップ(16枚)
【5-067R】 《ミューヌ》 1
【7-044H】 《アルハナーレム》 1
【8-047C】 《ウァルトリール》 1
【9-055C】 《フラン》 2
【7-043C】 《アーチェス》 3
【1-083H】 《マリア》 1
【5-051R】 《アリア》 1
【5-053R】 《エコー》 2
【8-058R】 《ノルシュターレン》 3
【9-054C】 《パンネロ》 1
召喚獣(4枚)
【8-046R】 《アレキサンダー》 1
【5-062L】 《ディアボロス》 3

――確かに「CRYSTAL CUP WATER」と「CRYSTAL CUP WIND」では、同じ「風単」でもデッキリストがかなり異なっていますね。

Jason:Joshua Freeman-Birch(イギリスの強豪プレイヤー)に原型をシェアしてもらった「CRYSTAL CUP WATER」の「風単」は速度を重視したデッキでした。展開と除去の一体化によるテンポアドバンテージの獲得がデッキのコンセプトです。

【4-060R】《シャアラ》imageと【9-045H】《エッジ》imageや【3-066R】《バルバリシア》imageなどのカードを組み合わせることで、より大きなブロッカーをブレイクしながら、ダメージレースを強いることができます。Joshuaが作成した元のリストには【2-069C】《見せかけの旅人》imageまで採用されていたのです!? 私はJoshuaのことを「クレイジーなサイエンティスト」と呼んでいます。彼を演じ切って彼のデッキをそのまま使うまでの勇気は私にはありませんでした。

 

――【9-059R】《レム》imageも印象的なカードですね。

Jason:【9-059R】《レム》imageは氷属性に対して非常に効果的だったので投入していました。「CRYSTAL CUP WIND」でも1~2枚採用したいと考えていましたが、今回も「風単」を使うプレイヤーは多いだろうと思ったため、彼女の優先順位を下げています。

「風単」には自由枠となるスロットが約7~9枚あり、想定されるメタゲームにあわせて調整できます。最近のトーナメントの傾向として、多くの人が「風単」をプレイすると感じていたので、対抗するようにカードを入れ替えました。

たとえば【8-049L】《エアリス》imageと【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageは役割が非常に似ていますが、【8-049L】《エアリス》imageは風属性の細かいダメージをシャットアウトして【7-128H】《ユーリィ》imageを守れるため、対「風単」とのマッチアップにおいてより有効です。しかし、それ以外の場面では【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageが有効なシーンの方が多いと判断し、【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageと【8-049L】《エアリス》imageは2:1で採用しようと決めました。

【8-060L】《フィーナ》imageは同型対決などの長いゲームで生き残るために本当に重要でした。彼女は【4-133C】《バイキング》imageなどの序盤から攻め込んでくる攻撃的なカードへの対抗手段として非常に優秀で、【7-054L】《チェリンカ》imageと組み合わせることで7000ダメージを全体に与えることができます。雷属性のデッキは全体的なパワーが低い傾向にあるため、この組み合わせでほとんど対処することが可能です。

【9-057L】《ヤズマット》imageも驚くほどいい働きをしてくれました。彼を保護するために【8-049L】《エアリス》imageと【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageの両方を入れていたので、リスクを恐れずにプレイできました。もし、メタゲーム上に風属性のデッキがもっと少なければ、2枚採用するのを試してもいいと考えています。

特に【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageをコントロールしている場合、【9-057L】《ヤズマット》imageを突破するのは本当に困難です。実際「CRYSTAL CUP WIND」で【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageがフィールドにいる間に【9-057L】《ヤズマット》imageをプレイしたゲームでは、対戦相手は非常に多くのリソースを消費していました。準決勝の対戦相手は【9-057L】《ヤズマット》imageを除去するために、大量の手札を消費して【5-019L】《フェニックス》imageを召喚しなければなりませんでした。EXバーストも強力で、大会中は2回のEXバーストで試合を大きく動かしてくれました。

――召喚獣も、新たに【8-046R】《アレキサンダー》imageが追加されていますね。

Jason:【8-046R】《アレキサンダー》imageを採用したのには2つ理由があります。まず「風単」のミラーマッチにおいて非常に有効なカードです。「風単」には相手の【7-128H】《ユーリィ》imageに対処する有効な手段があまりありません。こちらも【7-128H】《ユーリィ》imageでダメージを与えるか、ダメージを与える手段を2つ組み合わせて対処するかに限られるため、どうあっても4CP以上が必要になります。

また「CRYSTAL CUP FIRE」では「氷水」が結果を残していたので、これをコピーする人が何人かいるだろうと思いました。【8-046R】《アレキサンダー》imageは、「氷水」デッキでもっとも重要なカードの1つである【7-033R】《スノウ》imageを除去することができます。

――「CRYSTAL CUP WATER」ではバックアップをブレイクできるカードがたくさんありましたが、「CRYSTAL CUP WIND」ではデッキから外れていますね。

Jason:【1-088C】《弓使い》imageと【8-057C】《忍者》imageはあまりコスト効率がよくないと思っています。【1-057R】《ラーグ公》imageや【1-171H】《ミンウ》image、【3-050L】《エアリス》imageに【5-031H】《ギルバード》のような、非常に重要な役割を果たすバックアップをブレイクしない限り、コストに見合う働きはしません。メタゲームのかなり早い時期には「水風」の【1-177R】《ユウナ》imageや【1-089H】《リュック》imageをブレイクするために採用していましたが、「CRYSTAL CUP WIND」では3コスト以下のバックアップをキーとするデッキが主流になるとは思わなかったので、採用しないことにしました。

それらの代わりに入ったのは【1-083H】《マリア》imageと【5-051R】《アリア》imageです。両方とも、「風単」のミラーマッチを意識して採用しています。こちらのフォワードが相手のフォワードよりパワーが1000でも多い場合、相手はより対処にリソースを割かなければなりません。彼女たちはそういった状況を容易に作ることができるので、相手にプレッシャーをかけることができます。

また【7-128H】《ユーリィ》imageのパワーを9000にすることは、いくつかのマッチアップで非常に役立ちます。【7-128H】《ユーリィ》imageは自身の効果を2回使用して4000のダメージを与えることができますが、パワーが9000になると途端に除去されくくなります。大会では「火氷」デッキ相手に【9-014L】《ネール》imageや【5-019L】《フェニックス》imageから【7-128H】《ユーリィ》imageを守ってくれるなど、非常に活躍してくれました。

さらに【1-083H】《マリア》imageと【5-051R】《アリア》imageは、こちらのアタックを通すうえでも重要な活躍をしてくれます。【5-051R】《アリア》imageがアクティブの場合、相手は【5-068L】《ヤ・シュトラ》imageをパワー7000のフォワードでブロックできません。【7-128H】《ユーリィ》imageのアビリティはバックアップを使うため、アタックフェイズ中はバックアップがアクティブな場合が多く、相手をけん制することができます


◆強者の語る強さの秘密と「一貫性」

――Jasonさんはこれで3年連続となる世界選手権への出場権を手にしました。ご自身の強さの秘密を教えてください。

Jason:プレイヤーには、それぞれ独自の長所があります。もちろん練習によって短所を補い、各分野でのスキルを向上できると思いますが、成功の鍵は自分の強みを理解し、それらのスキルを最大限に活用する方法を発見することです。「自分は何が得意なプレイヤーなのか」を知る、ということですね。

自分を例にあげると、私は創造的なデッキビルダーではないので、ユニークなデッキやカードの組み合わせでプレイヤーを驚かせることは決してできません。
私の強みは、落ち着いてプレイし、情報を分析できることです。

対戦相手がどれだけ強いかをゲーム中に判断する能力は非常に高く、相手の行動を観察することで多くの情報を得ることができます。逆に、自分の強さや弱さは相手に決して悟らせません。
対戦相手が私のアクションに対するレスポンスを考えているとき、どういう選択肢から選ぼうとしているのかもおおよそわかります。そして、対応を決めて行動を取ってきたとき、それが相手の想定内なのか、それとも「嫌だけど仕方ない」と思ってプレイしてきたのかも把握できます。

▲「CRYSTAL CUP WIND」決勝戦を戦うJasonさん(写真左)。

ゲームが行なわれているその水面下では一種の情報戦が繰り広げられていますが、そこで優位に立てるのが私の強さであると思っています。
そのため、客観的な視点では相手が有利であっても、相手は自分が有利とは考えにくくなるでしょう。そうすれば判断に歪みが発生し、そのうち私にチャンスがめぐってきます。そして、私はめぐってきたチャンスを逃しません。

――正しい状況判断を味方につけ、劣勢であっても相手のミスにつけこめるということですね。

Jason:加えて言うならば、トーナメントの経験も豊富で、今では自分に必要なエネルギーとそのための食事についてよく理解しているということもあると思います。コンディション調整を怠らないということですね。
私は果物とバランスの取れた軽い朝食を必ず食べます。昼食はしっかりとは取りませんが、果物、プロテインバー、ナッツなどの軽食を食べます。また、大会で決勝ラウンドに進出できた場合は、短い時間であっても必ず仮眠を取るようにしています。

万全の態勢で試合に臨み、かつ、対戦中は情報を分析して正確なプレイができる。となれば、『FFTCG』で勝つためにあと必要なのはデッキです。
これまで「一貫性」ということを何度かお話ししましたが、私が「回ったら強い」不安定なデッキを好まないのは、一貫性のある信頼できるデッキを使うことが、自分の強みをもっとも発揮できると考えているからです。

――Jasonさんは「一貫性」を基準にデッキを選択するということですが、ほかのプレイヤーに「どのデッキを使えばいいか」と聞かれたら何と答えますか?

Jason:初級者から中級者までのプレイヤーにそう聞かれたら「手になじんでいて、柔軟性のあるデッキを使いなさい」と答えますね。『FFTCG』では常にプレイヤーは選択を迫られます。逆に言えば、選択さえ間違えなければ誰が相手でもしっかりとゲームができます。なので、デッキには柔軟性が必要です。

経験豊富なプレイヤーの場合は、まずデッキよりも「自分の強みは何かわかっているか?」ということを考えてもらいます。それを思い当たれば、自然と手に取るべきデッキは明らかになるでしょう。
あなたが長期的なプランニングが苦手でコントロールデッキを効果的にプレイできないなら、メタゲーム上で有力であってもプレイは避けた方がいいでしょう。創造的なデッキビルダーなら、多くの強力なプレイヤーを奇襲的に倒すことができます。

多くのプレイヤーは、少しゲームに慣れてくるとメタゲームを過剰に意識するようになってしまいます。しかし、メタゲームがデッキ選択にまで影響を与えるのはごく一部のイベント、プレイヤーのみだと私は考えます。ほとんどのプレイヤーにとって、手になじんだデッキをプレイすることで得る利益は、使いこなせていないデッキを使いデッキ相性の部分だけで得る利益よりも大きいものです。

――自分のスタイルを確立することが大事なわけですね。では、Jasonさんのスタイルに基づいた、お気に入りのカードとその理由を教えていただけますか。

Jason:私のお気に入りのカードは、『FFTCG』を始めて以来ずっと【1-064R】《エアリス》imageです。

非常に効率的なカードですし、「星の加護」による駆け引きが大好きです。 私は手札に《エアリス》を持っていないときも持っている素振りをして相手をまどわせたり、また実際に「星の加護」を使って相手の大きなプレイに対抗するのが大好きです。一連の「CRYSTAL CUP」でも、風属性のデッキが少なく氷属性が多いと思われたら【1-064R】《エアリス》imageを投入することも検討していました。

機能的なカードという意味でのお気に入りは【3-056H】《ジタン》imageです。

このカードは、対戦相手に関する完全な情報が得られるだけでなく、もっとも重要なカードを捨てさせることができます。
状況次第では、対戦相手の立てているプランを頓挫させられる可能性があります。また、賢いプレイヤーを罠に導くための手段にもなりえます。

たとえば「CRYSTAL CUP WIND」の決勝戦では、次のターンで【5-126L】《暗闇の雲》imageを出して【7-128H】《ユーリィ》imageを除去しようとしていた対戦相手にあえて【5-126L】《暗闇の雲》imageを持たせておいてプレイを誘導し、オートアビリティに対応して【8-046R】《アレキサンダー》imageでフォワードを減らし【5-126L】《暗闇の雲》imageでの除去を失敗させるという罠を仕掛け、これによって相手を出し抜くことができました。

――では最後に「世界選手権2019」への意気込みを聞かせてください。

Jason:これは去年と同じ目標なのですが、Alex Hancox(2018年の世界チャンピオン)にリベンジすることです。彼は「世界選手権2017」の第1ラウンドで私を打ち負かしました。「世界選手権2018」でも再戦を願っていましたが、叶いませんでした。今年こそは、という思いがあります。
また「世界選手権2019」では、今までに『FFTCG』を通じてできた世界中の友人たちと会うというのも大きな目的です。むしろ、こちらの方が楽しみかもしれません。しかし、世界王者を陥落させられればそれに越したことはありませんね(笑)。

――「世界選手権2019」の目標はやはり世界王者になることだと。

Jason:正直に言うと私は、私が「やりきった」と思えるだけのパフォーマンスを見せられるかを一番重要視しています。これまでに出場権を獲得しているプレイヤーを見ると、「世界選手権2019」は「史上最高の」トーナメントになると思われます。もちろん世界チャンピオンを目指しはしますが、トップ4を獲得しトロフィーを持ち帰ることができれば、その経験をもって十分に幸せだと言うことができると思います。

――ありがとうございました。

◆終わりに

今回はシンガポールでの「CRYSTAL CUP WIND」で優勝されたJason Zhe選手へのインタビューをお届けしました。
冷静な自己分析、デッキ構築へのこだわり、プレイの取り組みなど、まさに彼が終始口にしていた「一貫性」を体現しているプレイヤーだと感じさせるインタビューでした。
ゲームだけでなく、食事のルーティンへの気配りなど、トッププレイヤーから学ぶことは非常に多いですね。

さて、アジア・オセアニア圏での「CRYSTAL CUP」も京都での「CRYSTAL CUP LIGHTNING」を残すのみとなりました。
いくら僕でも、今度は会場にたどりつけないということはないでしょう!
「世界選手権2019」出場権獲得に向けて、また練習を重ねていきたいと思います。

それではまた次回の記事でお会いしましょう!