『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週はWorld Championship2019で準優勝となったダンカンさんのインタビューをお届けします。
皆さん、こんにちは。カードゲーマー編集部の編集(川)です。
「World Championship 2019(以下、世界選手権)」のレポート、第4回はダンカン(山田)さん[MASTERS2019 FINALで権利獲得]のインタビューをお届けします。
日本のプレイヤーでは唯一3年連続での世界選手権出場、今年は優勝まであと一歩まで迫ったダンカンさんに2日間の大会を振り返っていただきました。
第1回~第3回のレポートはこちらからどうぞ!
第1回レポート
第2回レポート
第3回レポート
◆『WOFF』は強い。では『WOFF』キラーとなるデッキは何か?
――世界選手権準優勝、おめでとうございます。まずは、今大会の構築戦で使用した2つのデッキについてお話しいただけますか。
ダンカン:使ったのは『WOFF』と「風土コントロール」ですね。『WOFF』に関しては、すでにほかの日本代表の方たちがいろいろ語ってくれているので簡単にまとめますが、【10-020L】《レェン》や【1-109R】《セラフィ》などによる実質0コストでの展開力と土属性によるリカバリー、ヘイストとアタック時のダメージ能力による制圧力の高さが「Opus X」発売から約2週間という未成熟な環境では強いと考えて選択しました。
また、『WOFF』のパーツはほかのデッキと重複する部分が少なく、相方となるもう1つのデッキに負担をかけない点も評価していました。
実際、私は土属性を含むデッキ2つで大会に臨みましたが、これが風属性のデッキ2つだったら、たとえば「【5-062L】《ディアボロス》をどちらにいれるか? 入れなかった方には代わりに何を入れればいいのか?」といったような問題が発生していたと思います。
このようにキーとなるパーツが独立しているというのも、今大会における『WOFF』の強みだと考えました。
世界選手権使用デッキA:『WOFF』
カードNo. | カード名 | 枚数 |
フォワード(25枚) | ||
1-027H | ラァン | 3 |
1-109R | セラフィ | 3 |
3-093H | ブレンディレス | 2 |
4-001H | アウィン | 3 |
5-073R | 異端の騎士 ガーランド | 1 |
8-006L | クラウド | 3 |
9-014L | ネール | 3 |
10-020L | レェン | 3 |
10-070H | ジークハルト | 1 |
10-129L | ハイン | 2 |
10-132S | ティナ | 1 |
バックアップ(18枚) | ||
2-009R | セルフィ | 2 |
3-076R | 仮面の女 | 1 |
3-083C | セグリワデス | 1 |
3-089R | 名前を忘れた少女 | 3 |
3-094C | ペリノア | 2 |
7-074C | タマ | 2 |
8-082R | プロンプト | 1 |
10-019C | ルゥス | 2 |
10-021C | ロォク | 3 |
10-015R | モーグリ -1組- | 1 |
召喚獣(7枚) | ||
9-063H | ドラゴン | 3 |
10-068C | クーシー | 2 |
9-017C | ベリアス | 2 |
ちなみにこの『WOFF』は世界選手権用にちょっとカスタムしているので、これをそのままコピーして使うのはやめたほうがいいですね。
まず『WOFF』の使用率が高いことを見越して入っている【2-009R】《セルフィ》は、パワー勝負にならないメタゲームなら外してもいいですし、【9-063L】《ガブラス》はもう1つのデッキに入っているのでこちらからは外したという事情もあります。
――もう1つのデッキは非常に独創的でしたね。
ダンカン:もう1つのデッキは【4-083L】《シャントット》をフィーチャーした「風土コントロール」を持っていきました。【4-083L】《シャントット》をはじめ、デッキに入っているカードにこれまであまり構築戦で使われてこなかったものが多く、大会中はよくカードテキストの確認を求められましたね(笑)。
世界選手権使用デッキB:「風土コントロール」
カードNo. | カード名 | 枚数 |
フォワード(15枚) | ||
4-083L | シャントット | 3 |
5-068L | ヤ・シュトラ | 3 |
8-068L | アーデン | 1 |
9-057L | ヤズマット | 3 |
9-063L | ガブラス | 3 |
10-127H | シトラ | 2 |
バックアップ(19枚) | ||
5-059R | セミ・ラフィーナ | 3 |
5-082C | 採掘師 | 2 |
5-091H | 星の神子 | 3 |
6-058R | モーグリ [XI] | 3 |
6-064H | アジドマルジド | 1 |
8-047C | ウァルトリール | 1 |
8-058R | ノルシュターレン | 3 |
8-088C | レイル | 1 |
10-078H | ドーガ | 2 |
モンスター(6枚) | ||
6-070C | 巨人 | 2 |
8-080C | プーマ夜光 | 1 |
10-045C | ウンサーガナシ | 3 |
召喚獣(10枚) | ||
4-093R | ヘカトンケイル | 3 |
5-062L | ディアボロス | 3 |
7-084R | ようじんぼう | 2 |
8-046R | アレキサンダー | 2 |
このデッキは『WOFF』を倒すために作ったデッキです。『WOFF』はダメージ以外でフォワードを除去する手段がほぼなく、またどうしてもフォワードを並べての戦いになることが多いため、【4-083L】《シャントット》が劇的に効きます。
【4-083L】《シャントット》のアビリティによるダメージを受けてブレイクされたフォワードはゲームから除外されるため、回収を許さないだけでなく自力で復活してくる【8-006L】《クラウド》に対しても有効です。
これだけではただ『WOFF』に強いだけなのですが、ここに「Opus X」の新カードである【10-045C】《ウンサーガナシ》が加わることで【4-083L】《シャントット》を守れるようになっており、ダメージ以外の除去手段を持っている相手とも戦えるようになりました。
このカードによって【4-083L】《シャントット》だけでなく、【8-068L】《アーデン》のようなカードも活躍させやすくなったと思います。
また、これは副次的な効果だったのですが、ダメージを5点以上受けている状態ではアクションアビリティですべてのフォワードを守りつつアクティブにできるので、思ったよりも多くのプレイヤーが使っていた氷属性を含むデッキとの戦いでも活躍してくれました。
『WOFF』に対しては本当に強いデッキなので、これからも流行し続けるようなら候補になると思います。
――これらのデッキのアイデアはどこから来たのでしょうか。
ダンカン:「風土コントロール」は、世界選手権の前に横浜で開催された「名人戦」関東地区予選で友人が使っていたのを見て、「これはいけるんじゃないか」とインスピレーションがわきました。
もう1つの『WOFF』は光、闇属性のカードで何を採用するかなど細部が人によって異なるのですが、同じ「名人戦」関東地区予選のプレーオフで勝利していたひーとさんの【10-129L】《ハイン》を採用するタイプを参考にさせてもらいました。
こういうデッキのアイデアや細かいカード選択については、自分1人ではたどりつけなかったかもしれない部分なので、ほかのプレイヤーとの交流は大切だなと感じます。そして今回は準優勝までいけたので、すごく感謝もしています。
◆構築戦とブースタードラフト戦、実戦での手ごたえ
――ダンカンさんはこの2デッキで初日を3-2で突破、決勝ラウンドも決勝戦まで勝ち進みましたが、振り返ってみてこの選択はいかがでしたか。
ダンカン:(優勝した)Kurosawaさんも使っていたのですが、海外のチームが持ち込んできた「水風」と「ランペール」の完成度に驚かされました。特に「ランペール」は自分でもパワーを感じていたのですがデッキを練りこむことができず諦めていたので、あの仕上がりには「すごい」以外の言葉がありませんね。
パワフルなデッキなのはもちろんですが、土の【5-091H】《星の神子》から氷の【10-039C】《ナグモラーダ》をサーチ、そこからモンスターをサーチというように、しっかりメインの属性からサブの属性にアクセスできるようになっていて、多属性デッキなのにちゃんと安定したつくりになっています。
また、これは恐らく意識していたわけではないと思いますが、【10-045C】《ウンサーガナシ》に対しても【10-129L】《ハイン》によってカードを使わずに揺さぶりをかけられ、相手がダルになるのを許容したら【10-028L】《暗闇の雲》でブレイクゾーンに置かせることができます。「大型フォワードを【10-045C】《ウンサーガナシ》で守る」みたいな局地的な戦術にも自然に対応できていて、新環境が始まって2週間程度でこの完成度はすごいと思いました。
正直、今すぐもう1回世界選手権をやるよと言われたら、この2つのデッキを貸してください! とKurosawaさんたちにお願いに行きます(笑)。
「水風」も【10-106L】《アーシェ》や【10-127H】《シトラ》によってデッキパワーが向上していて、非常にスマートでより強いデッキになっています。こちらも「名人戦」ではメタゲームに食い込んでくるデッキだと思います。
と、ほかのデッキをほめてばかりですが『WOFF』はやはり強かったとも感じています。『WOFF』を使ったほかの日本代表の方もおっしゃっていましたが、しっかり(2デッキ構築戦の)勝ち頭になってくれるデッキパワーがありました。
私自身もまず『WOFF』が勝って、それから「風土コントロール」で2戦してどちらかで勝つという状況が多かったですね。
しばらくは意識されるデッキだと思いますが、『WOFF』はそれを乗り越えることもできるので、これからもメタゲーム上には存在し続けるのではないでしょうか。
――初日を3勝2敗で終えたことによって2日目のブースタードラフトでは全勝が必要という状況で、見事その条件をクリアしての決勝ラウンド進出でしたが、ブースタードラフトの感想はいかがでしょうか。
ダンカン:今回の環境は 火土雷≧氷>風水 の順で強い属性だと考えていたのですが、そのイメージ通り「土雷」のデッキを組み上げることができ、しかも【10-127H】《シトラ》が3枚も集められたので、ドラフトを終えて「これはいけるぞ」と感じました。そして、実際に3戦全勝できたので事前の環境理解は正しかったのかなと思っています。
――「Opus X」ドラフトはどのような環境なのでしょうか。
ダンカン:これまでの環境に比べると、ピックに余裕がなく、必要なカードが不足しやすいですね。火、風、土、水はコモンでよく出てくる《たまねぎ剣士》が戦力にならないので、まだ序盤でもあちこちに手を伸ばしていくのではなく、ある程度属性を絞ってカードをピックする必要があります。
極端な話、1パック目のHやLのカードが強かったらその属性に決め打ちしてもいいくらいですね。そして、強いカードは【10-001H】《イグニシオ》や【10-098L】《フォルサノス》のようにわかりやすく強いので、デッキの軸を定めやすいかなと思います。また、闇属性ですが【10-129L】《ハイン》も、実質アクションアビリティのために1~2属性を決めてしまう理由になるカードです。
――こうして決勝ラウンドに進出し、決勝戦まで進んだわけですが、準優勝という結果についてコメントをいただけますか。
ダンカン:決勝戦で負けたときは本当に悔しかったです。しかし、Kurosawaさんは2017年の世界選手権決勝で負けた“忘れもの”を取りにきたと言って実際に今年優勝したわけで、それも納得の結果だとも思っています。
構築戦用の2つのデッキの完成度もそうですし、Kurosawaさんもブースタードラフト戦を全勝しています。Kurosawaさんの調整チームの上位進出率も非常に高いですからね。本当にすごいなと称賛する気持ちですし、そして来年こそは自分も優勝するぞ、という思いでいます。
――世界選手権を振り返っての感想はいかがですか。
ダンカン:これはもう毎年言っていますが、“最高!”の一言につきますね。初めて参加したむむさんやサトツさんも「絶対に来年もまた来たい」とおっしゃっていましたが、自分としては「そうでしょ!?」という思いです。
勝ち負けとか賞品とかではなく、しっかりと整えられた環境のなかで、単純に世界中の強いプレイヤーたちとゲームをするのってこんなに楽しいのかと毎年思っています。
そして、海外のプレイヤーにも顔と名前を覚えてもらっていて「また会ったね」みたいに話しかけてもらったり、サインを求められたりするのはすごくうれしいですね。
そして、来年もまた出場するのはもちろん、次こそは英語力も身につけて、もっとしっかりほかのプレイヤーとコミュニケーションできるようになりたいですね。これも毎年言っていますが(笑)。
くり返しになりますが、世界選手権は『FFTCG』プレイヤーにとっては最高のイベントです。来年も世界選手権に参加、そして優勝するのを目標にがんばっていきたいと思います。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今年の世界選手権で準優勝に輝いたダンカンさんのインタビューをお届けしました。
環境的に強いデッキを見きわめるだけにとどまらず「では、そのデッキに対してどうアプローチをするか?」と一歩踏み込み、その観点からこれまであまり使われていなかったカードも先入観にとらわれずに評価してデッキに組み込んでいく。その柔軟性が今回の結果につながったのだと思います。勝ち続けるプレイヤーの強さの根幹にあるものが少し見えた気がしました。
世界選手権レポート、第5回となる来週はいよいよKurosawaさんが登場します。インタビューではなくKurosawa自身によるレポートをお届けしますので、こちらもお楽しみに!