『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「World Championship 2019」でベスト8に入賞したハリガイさんへのインタビューをお届けします。
◆はじめに
皆さん、こんにちは。カードゲーマー編集部の編集(川)です。
『FFTCG』の「World Championship 2019(以下、世界選手権)」レポート第3回は、ベスト8に入賞したハリガイ(針谷)さん[CRYSTAL CUP EARTH(さいたま)で権利獲得]のインタビューをお届け。
初代“名人”として構築戦フォーマットで活躍を続けるハリガイさんに「Opus X」環境の考察と、二度目の世界選手権参戦の感想をうかがいました。
第1回、第2回レポートはこちらからどうぞ!
第1回レポート
第2回レポート
◆「Opus X」での変化 さらば「水単フースーヤ」
――まずは世界選手権ベスト8入賞、おめでとうございます。今回使用した2つのデッキと選択理由について教えていただけますか。
ハリガイ:使ったのは『WOFF』と「ウネコントロール」ですね。選択理由として、『WOFF』は「Opus X」環境においてバランスの取れた強さという観点からは最強だと感じていて、これを倒せてかつほかのデッキとも戦えるデッキが見つからなかったので、まず『WOFF』を選択しました。
世界選手権使用デッキA:『WOFF』
カードNo. | カード名 | 枚数 |
フォワード(25枚) | ||
1-109R | セラフィ | 3 |
3-093H | ブレンディレス | 2 |
4-001H | アウィン | 3 |
7-004C | イフチー | 3 |
8-006L | クラウド | 3 |
9-014L | ネール | 2 |
9-063L | ガブラス | 3 |
10-017R | ラァン | 3 |
10-020L | レェン | 3 |
バックアップ(18枚) | ||
1-030R | レブロ | 2 |
3-083C | セグリワデス | 2 |
3-089R | 名を忘れた少女 | 3 |
3-094C | ペリノア | 2 |
7-074C | タマ | 3 |
10-019C | ルゥス | 3 |
10-021C | ロォク | 3 |
モンスター(2枚) | ||
8-080C | プーマ夜光 | 2 |
召喚獣(5枚) | ||
4-073C | アトモス | 2 |
7-005C | イフリート | 3 |
やはり【10-020L】《レェン》の存在が大きく、0コストで展開できるテンポのよさにヘイストと除去までついてくるうえに、相方となる土属性による粘り強さもあいまって非常にパワフルなデッキになっています。
「Opus X」のリリース以降デッキリストの提出期限の6時間前まで、何かこれを倒せるデッキはないかと考えていたのですが、見つかりませんでした。
――『WOFF』は火、土の2属性を使いますが、残る4属性から「ウネコントロール」を相棒に選んだ理由はなんなのでしょうか。
ハリガイ:世界選手権が終わった直後に感想を聞かれて“人類には早すぎるデッキ”と言いましたが、多角的な戦いができるという点で「ウネコントロール」もレベルの高いデッキだったというのが選択理由です。
ただ、やはりデッキの土台となるバックアップの問題を解決できなかったのが敗因でした。こっちはリスト提出期限の2時間くらい前まで粘ったのですが(笑)。
世界選手権使用デッキB:「ウネコントロール」
カードNo. | カード名 | 枚数 |
フォワード(18枚) | ||
6-041L | リノア | 3 |
7-034L | セフィロス | 3 |
7-133S | アルティミシア | 2 |
8-060L | フィーナ | 3 |
9-057L | ヤズマット | 2 |
9-094L | フースーヤ | 3 |
10-127H | シトラ | 2 |
バックアップ(18枚) | ||
1-107L | シャントット | 1 |
1-183H | コスモス | 1 |
5-069R | セミ・ラフィーナ | 3 |
5-091H | 星の神子 | 3 |
8-069R | アプルル | 1 |
9-074C | モーグリ -10組- | 2 |
10-023H | ウネ | 3 |
10-047R | エコー | 2 |
10-063C | ヤ・シュトラ | 2 |
召喚獣(14枚) | ||
1-117R | ヘカトンケイル | 3 |
5-062L | ディアボロス | 3 |
6-052R | ディアボロス | 2 |
9-068H | ドラゴン | 3 |
10-068C | クーシー | 3 |
――(第2回のインタビューで)むむさんもおっしゃっていましたが、やはり【8-058R】《ノルシュターレン》などでアクセスできるカードの幅がまだ足りないということでしょうか。
ハリガイ:『WOFF』や「ランペール」といった土属性を含むデッキを持ち込む選手も少なくないと予想していたので、バックアップ破壊から【10-023H】《ウネ》を守るために【10-063C】《ヤ・シュトラ》を投入する必要がありました。これはデッキが機能不全にならないために必要なカードなのですが、バックアップの枠を圧迫してしまい、【8-058R】《ノルシュターレン》と【8-088C】《レイル》を入れるスペースがなくなってしまったんです。
この歪みをなんともできなかった、要するにデッキを詰め切れなかったのが最終的には響いてしまったと思います。
――「Opus X」環境が始まってから、デッキの調整などはどのように進められていたのでしょうか。
ハリガイ:基本的には第1期“名人”になったときにお話ししたやり方から変わっていません。ひたすらデッキを作り、それをコミュニティ内で回してもらってフィードバックを得るというものです。今回は、普段から一緒に遊んでいるむむさんも日本代表になっていたので、「ウネコントロール」などは彼にデッキを渡して使ってもらったりもしました。
――ハリガイさんといえば「水単フースーヤ」が代名詞になっている部分もあると思うのですが、こういったデッキは候補にあがりませんでしたか。
ハリガイ:「Opus X」環境になってからの変化というのは、(第2回のインタビューで)サトツさんもおっしゃっていましたが「実質0コスト」で脅威となるフォワードを展開できるデッキが増えたことがあげられます。
「水単フースーヤ」は「3コストのバックアップのアクションアビリティで、相手が3~4CPを払って出してきたカードを除去できる」というテンポアドバンテージに立脚していたデッキです。なので、0コストやそれに近い低コストでのビッグアクションに対しては弱いんですね。
今回ももちろん会場までデッキを持ってきてはいましたが、さすがに今は力不足になったと判断し、使用を断念しました。『WOFF』に【10-020L】《レェン》を出されてアタックされるだけで、こっちの【6-126R】《レイラ》や【4-133C】《バイキング》が除去されて戦線が崩壊しますからね(笑)。
実際、海外のプレイヤーは「水風」を多く使っていましたが「レイラバイキング」のパッケージは採用されていなかったことからも、『FFTCG』における“展開しつつアドバンテージを取れるアクション”のセオリーが変わったんだなと思います。
この点は「Opus X」以降の『FFTCG』でもデッキ選択、カード選択において強く意識しておきたいポイントですね。
「水単フースーヤ」には昔から本当に勝たせてもらいました。『FFTCG』というゲームが進化したとともにこのデッキはひとまず“天寿を全うした”と感じます。いいギミックでした。今後またメタゲームに変化があるまでは、しばしお休みなさいというところですかね。
◆二度目の世界選手権で見えてきたもの
――『WOFF』と「ウネコントロール」で2日間戦ってみての感想はいかがでしょうか。
ハリガイ:これは世界選手権に2回出てみて気づいたんですが、世界選手権には世界選手権独自のメタゲームがある、というのが発見でした。これは簡単に言えば2デッキ構築戦であることが影響してるんですが、1つは環境的に強いデッキを選び、もう1つは「とりあえず回せる」みたいなデッキを選ぶプレイヤーも少なくないということです。
メタゲーム的に有利かどうかではなく、一種のブランドというか“信頼と実績によるチョイス”みたいな。今回で言えば「氷単」がそれに該当していたかなと思います。
これは自分たちにも言えることですが、やはりすべてのプレイヤーが万全の状態で2つのデッキを選択できているわけではなく、「氷単」のような“手札破壊で押し込む”というシステムが確立しているデッキを選んで「うーん、これしかない! あとはこれまでの習熟度で何とかする!」という判断もあるんだなと。
デッキパワーやほかのデッキとの相性だけでメタゲームが構成されているわけではなく、一種、人間の気持ちのようなものも、特に世界選手権のような参加者が少ない大会では影響するんだな、というのが今回新たに得られた感触です。
そんなわけで少し読みを外してしまったところもあって、構築戦のラウンドでは安定性の高い『WOFF』がまず勝って、「ウネコントロール」で2回チャレンジしてどちらか勝つ、という勝ちパターンが多かったですね。やはり「ウネコントロール」は難しいですね(笑)。
――ハリガイさんは1日目の構築戦では4-1と好成績を残されました。2日目のブースタードラフトはいかがでしたか。
ハリガイ:大会中も言いましたが、100点満点で2点ですよ、2点(笑)。本当にドラフトは苦手で、これは課題だなと思います。
――今回はどのようなピックをしていったのでしょうか。
ハリガイ:1-1(1パック目の1枚目)が【10-095H】《デッシュ》で、そこから雷と土を取っていって、2-1が【10-070H】《ジークハルト》という流れでした。
1パック目の途中から雷が流れてこなくなって、その時点では土がメインになるかなと思っていたのでそのまま進めたんですが、2パック目では土も雷も来なくて迷走気味になり、3-1は取るものすらなく【10-032H】《スキュラ》。4-1でもう一度【10-095H】《デッシュ》、5-1が【10-130H】《レーゲン》ですね。
自分のパックからは結構いいカードがまとまった属性で出てくれたんですが、あとで確認したら下家(ドラフトで左隣のプレイヤー。1・3・5パック目のピック時にカードを渡していく)と見事に土雷氷の3属性がかぶってしまっていたという、典型的な失敗ドラフトでした。
(ここで、インタビューを聞いていたダンカンさんから「そりゃ自分のパックから出たカードだけでデッキ作ってたらそうなるよ!」というツッコミが入り、一同笑)
ドラフトではその下家プレイヤーと当たり、上家の有利を活かして勝ちました。構築戦の結果、1勝できればベスト8進出が確定という状況だったので、失敗したドラフトでも何とかなってよかったというところですね。
――構築戦であれだけ高い構築力を持つハリガイさんがドラフトは苦手というのは、意外な印象があります。
ハリガイ:構築戦のデッキ構築は、環境の一番外の枠というか“限界”みたいなものが見えるんですよ。キャンパスのここまで絵を描けばいい、色を塗ればいいといったような。単属性デッキであればその属性の限界、できることとできないことによって外枠が決まりますし、2属性デッキであればデッキ内におおむね20枚くらいしか同じ属性のカードが入らないので、今度は枚数的な限界があります。
その点、ドラフトではその“限界”が見えないんですよね。どんなカードが出てるのかも完全にはわからないし、私にとっては“限界”でもほかの人にとってはそうでないことがあって、意表を突かれて負けてしまうことも多くあります。これに関しては単純に言えばヘタクソ、いい言い方をすれば『FFTCG』というゲームに対するとらえ方の問題だろうな、という気がしています。反省材料ではありますが、諦めている部分でもありますね(笑)。
◆視覚世界選手権に参加することで生まれる世界との交流
――ハリガイさんは二度目の世界選手権参加となりましたが、再び来てみての感想はいかがでしょうか。
ハリガイ:去年3位になれたこともあって、昨年も参加していたプレイヤーが結構自分のことを覚えてくれていたのがうれしかったですね。Jason Zhe選手やAlex Hancox選手とかに声をかけてもらったり、ほかのプレイヤーにも「去年は負けたが今年は負けないぞ、リベンジだ!」と言われたり。
去年は会場で『FFTCG』をプレイするだけで精いっぱいでしたが、今年は海外のプレイヤーと交流することもできて、それがすごく楽しかったです。
前回参加したときからとても充実していましたが、来れば来るほどさらに楽しくなるイベントだなと感じました。当然ですが、来年もどうにか権利を取ってまた出場したいですね。
――では、最後にそんな来年の世界選手権への意気込みを一言いただけますか。
ハリガイ:来年もまた来たいので、そのためにしっかり勝って権利を取れるようがんばりたいですが、カードゲームに“絶対”はないので、しっかりと試行回数を重ね、これからのシーズンもベストを尽くしていきたいと思います。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今年の世界選手権でベスト8入賞を果たしたハリガイさんのインタビューをお届けしました。
前回のむむさん、サトツさんに続いてお話をうかがいましたが、皆さん異口同音に「『Opus X』の登場によるコストまわりのセオリーの変化」についてお話しされていたのが印象的でした。
「0コスト」をめぐる攻防は、これからの『FFTCG』において見逃せない要素となりそうです。
まだまだ続く世界選手権レポート、次回は準優勝に輝いたダンカンさんのインタビューをお届けする予定です。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。