梅雨の不安定な天気もひと段落し、本格的な夏が到来しそうな今日このごろ。
カードゲーマー的にはホイルカードが湿気で反り返って管理が大変な時期でもありますが、今回はそんな憂鬱な気分を吹き飛ばすナイスな記事をお届けします!
「カードゲーマー」では、現在活躍中のイラストレーターの先生方を毎号お招きし、ご自身の“理想の女の子”を描き下ろしていただく「カードゲーマー的彼女」を連載中。
当ブログでは「カードゲーマー的彼女」特別編として、
掲載イラストのメイキングを先生ご本人の解説付きでご紹介します!
今回は現在発売中の「カードゲーマーvol.52」掲載の第2回で登場いただいたアカバネ先生!
「ホビージャパン半世紀祭り」のライブペインティングでも披露された繊細なテクニックをさらに解説していただきます!
◆アカバネ先生の作業環境
cinteq13HD 、使用ソフト:SAI Photoshop
①ラフ(カラーラフ)
ラフからSAIで作業しています。
今回は梅雨の時期を感じられるイラストだと望ましいということでしたので、シンプルに梅雨から連想して「梅雨の大雨で衣服が濡れて透けてしまい恥じらう女の子」をメインに、紫陽花などの季節もモチーフを添えたイラストを想定してラフを起こしました。
臨場感がでやすいように、今回は魚眼パースを用いてのぞき込んでいるのような構図にしています。
最近はキャラクターにも顔の表情はもちろん、仕草(肩の張りやシワの流れ、手の表情)での表情もできるだけしっかり伝わるように気を付けているので、そこもしっかり伝わるようにラフを起こしていきます。
また、ラフの段階から完成形のおおまかな色を含めておくと、ぶれずに完成まで作業をすることができ、時間短縮やクオリティアップへとつながります。
②下書き
ラフをもとに、実際のモチーフの写真から特徴やシワの付き方などをよく観察しながらデッサンを見直しつつ、下書きを整えていきます。
今回は女子高生ですが、私は普段低身長低等身のキャラクターを描く事が多いので、それにひっぱられないように気を付けつつ修正していきます。
③線画
人物の線画を描いていきます。
少し鉛筆の質感を混ぜたエアプラシで線画はいつも描いていますが、かなり太目の線画でない限りは観ている側に質感は伝わりにくいので、細い線画の場合はお好みのペンで良いと思います。
④色分け
カラーラフの配色を参考に人物にベースの色を置きます。
⑤キャラ彩色
キャラクターの彩色をしていきます。キャラクターの印象の7割ぐらいが顔と顔周辺の髪の毛で決まるので、最初に顔周辺を彩色してから面積比を多い順番にそれぞれの質感を意識しながら彩色していきます。
髪の毛、髪の毛は塗り込みのバランスが難しく、あんまり塗り込みすぎてもくどくなってしまうので薄く塗っていき、岐波の部分だけ引き締めるようなイメージで彩色します。
【濡れ透けの描写】
今回の絵の大きな見どころでもある、濡れて透けている部分を着色していきます。
濡れ透けは薄い布が水分を吸い取り肌と張り付くことによって透けが発生するので、その状況描写をしっかりすることが重要です。
しっかり写真で濡れて透ける布の質感を観察しつつ、絵に落とし込んでいきます。
⑥背景彩色
背景はラフを元に、勢いが伝わる線や色を活かせる箇所は活かしたままクリンナップする形で進めます。
今回は近景で女の子の座るバス停をのぞき込むようなイメージですので、質感をしっかり描き込んでいきます。
遠くなるほどラフに描き込みするのがポイントですので、今回はトタンの奥の紫陽花をラフな感じに描きます。
⑦キャラクターの所有物彩色
キャラクターの持ち物のモチーフを彩色していきます。
キャラクターの持ち物はパーソナリティを印象付ける役割とともに、キャラの第2の表情とも化すので、質感をうまく描写して視覚的なおもしろさも狙っていきます。(バックのシワの付き方、濡れてぬいだニーソックスの質感など)
⑧水滴と手前の雨の描写
キャラクターと背景がある程度塗れてきたので、より臨場感をだすために濡れている水滴を描いていきます。
モチーフによって水滴を吸い取ったり、はじいて水滴になったりとモチーフごとの表情を意識して描きます。
また、バス停の前に降っている雨も視覚的に描写することにより、よりのぞき込んでいる感じと魚眼構図が活きてきました。
⑨環境色の強調
自分が作業しやすいようにレイヤーを結合して加筆したあと、雨の日の臨場感をあげつつイラストの各要素をまとめるために各パーツごとに青色のオーバーレイを重ねます。
⑩環境色、反射光の追加
青を重ねたことにより、ぐっと大雨が降っているときの色味が増してきました。
このままでもよいのですが、より臨場感とうるさくならない程度のプラス要素になりえる描き込みを、今回の環境色である青色をすくってスクリーンモードにして加筆していきます。
青をオーバーレイで重ねたことで1段階色が暗くなっており、ハイライトがより目立つ状態になっておりますので、ハイライトでより各パーツの質感を強調させつつ、やぶれたトタンから差し込む光りが反射している雨特有の空気感もスクリーンで描写していきます。
⑪結合加筆
結合して最終の細かい調整をして完成です。お疲れ様でした!
◆アカバネ先生のまとめ
簡単なメイキングでしたが読んでくださりありがとうございます!
イラストの魅せられる魅力の最大値は最初のラフの段階でどうゆう構図、どうゆうシュチュエーションにするかでかなり決まってしまうので、見る側になにを伝えたいかがわかりやすいイラストをしっかり練って進める事が大事だと思います。そのうえで進めていくうちにもっと踏み込める表現だと判断したら、より深い表現としてアプローチしていくような形が私はおすすめです。
以上、アカバネ先生のメイキング記事でした!
7月31日(金)発売の「カードゲーマーvol.53」でも、新たな先生をお招きして第3回「カードゲーマー的彼女」が掲載されますのでお楽しみに!!