『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は3年連続日本代表として「世界選手権」に出場している強豪プレイヤー、ダンカンさんに新環境でお気に入りだという「侍デッキ」について語っていただきました。
◆はじめに
皆さん、こんにちは。『FFTCG』プレイヤーのダンカンです。
今回は「Opus XII ~クリスタルの目覚め~」発売以降、私が愛用している火単の「侍デッキ」を紹介したいと思います。
先日開催された「第18回自宅名人戦」では4勝1敗で準優勝、「第19回自宅名人戦」では初めて優勝することができた(編注:自宅名人戦でのダンカンさんのプレイヤーネームは「kakka」)ので、現環境でもなかなか有力なデッキなのではないかと思っています。
今回取り上げるのは「侍デッキ」ではありますが、一部のギミックはほかの火属性のデッキでも流用できるものになっていますので、「侍デッキ」ファンの方だけでなく火属性のデッキが好きな方にもこの記事を役立ててもらえればうれしいです。なお、この記事で取り扱うフォーマットは「スタンダード構築」となります。
それでは、さっそく始めていきましょう。
◆デッキリストとデッキのキーカード
ではまず、最初に「侍デッキ」のデッキリストをどうぞ。
●火単「侍」(第19回自宅名人戦:優勝)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(26枚) | ||
【12-004R】 | アルフィノ | 3 |
【12-003R】 | アリゼー | 3 |
【11-003R】 | カイエン | 3 |
【12-012L】 | テンゼン | 3 |
【12-017H】 | マギサ | 3 |
【8-138S】 | ヒエン | 3 |
【10-132S】 | ティナ | 2 |
【9-014L】 | ネール | 1 |
【5-002R】 | アヤメ | 1 |
【8-004R】 | イロハ | 3 |
【12-015H】 | フォルツァ | 1 |
バックアップ(17枚) | ||
【12-009C】 | 侍 | 3 |
【7-009C】 | 侍 | 3 |
【8-137S】 | ゴウセツ | 3 |
【12-016C】 | ブレイズ | 3 |
【7-017H】 | ミース | 2 |
【10-006R】 | クラウド | 2 |
【2-001H】 | アーヴァイン | 1 |
召喚獣(7枚) | ||
【11-001R】 | イフリート | 3 |
【10-002H】 | イフリート | 2 |
【12-002H】 | アマテラス | 2 |
このデッキは見てのとおり【ジョブ(侍)】のキャラクターを中心としたデッキです。
「Opus XI ~ソルジャーの帰還~」で【11-064L】《アーシュラ》(モンク)や【11-045H】《エッジ》(忍者)などの、特定のジョブをフィーチャーした強力なカードが登場し、「忍者デッキ」や「モンクデッキ」が強化されました。
「侍デッキ」にも【11-003R】《カイエン》が登場しましたが、当時はまだ【ジョブ(侍)】のキャラクターに強力なカードが少なく、「侍デッキ」を見かけることはあまりありませんでした。
しかし、「Opus XII」で【12-012L】《テンゼン》という強力な【ジョブ(侍)】を得て、さらに火属性に優秀なカードがたくさん追加されたことで「侍デッキ」は一気に躍進を果たすことになりました。
では「Opus XII」のカードから、【12-012L】《テンゼン》をはじめ、このデッキのキーとなっているものをいくつか紹介したいと思います。
【12-012L】《テンゼン》
「Opus XII」で追加された「侍デッキ」の中心となるカードです。
「Opus XII」の全カードが公開される前にプレビューでこのカードを見たときは、デッキに【ジョブ(侍)】や【カード名(侍)】のキャラクター(以下、「侍」と書きます)を大量投入しなければいけないため使いづらそうなカードという印象でした。
「Opus XII」以前のカードプールには「侍」のカードが少なく、「侍デッキ」を組むなら一般兵のフォワードである各種《侍》の投入も検討しなければいけませんでした。
しかし「Opus XII」でバックアップに【12-009C】《侍》が追加され、デッキに投入する「侍」を吟味する余裕ができました。このおかげで【12-012L】《テンゼン》はほぼ毎ターン、追加のバックアップか戦力として数えられるフォワードを手札に加えながらブレイブのおかげでダメージレースにも強いというカードになっており、テストしてみると十分に「侍デッキ」を組む価値があると感じられるカードでした。
そして、実際に使ってみたことでその感覚が正しかったことがわかりました。【12-012L】《テンゼン》は強い、と。
『FFTCG』ではこれまで、やっかいなアビリティを持つフォワードはあえて対処せず放置するという対策も取られていました。
しかし【12-012L】《テンゼン》は継続的にアドバンテージを稼ぐカードであるため、相手からすると放置はできません。この点でも【12-012L】《テンゼン》は新機軸のカードであると感じます。
さらに【12-012L】《テンゼン》自身のアビリティによって2枚目以降の【12-012L】《テンゼン》だったり、「侍」をサーチできる【11-003R】《カイエン》を手札に加えやすく、仮に1体除去されたとしてもすぐ次の【12-012L】《テンゼン》を展開できるゲームも少なくありません。
おまけに、こちらが【12-012L】《テンゼン》のために支払ったコストは実質2CP程度であることがほとんどですが、相手は多くの場合それ以上のコストをかけて【12-012L】《テンゼン》を除去しており、こちらが【12-012L】《テンゼン》をキャストすればするほどカードアドバンテージの面で優位に立てるようになります。
フィールドに出た時点(正確に言えばエンドフェイズを迎えられれば)でほとんどの場合コストを回収できる仕事を果たしつつ、高いパワーとブレイブで戦闘要員にもなって、さらに生き残れば継続的にアドバンテージを獲得してくれる。ジョブやカテゴリに寄せたデッキのなかでもいち早くこういうタイプのカードを得たことが「侍デッキ」躍進のカギとなっているのは間違いないでしょう。
最後に【12-012L】《テンゼン》を使ううえでの見落としやすいポイントを1つお話ししておきます。
【12-012L】《テンゼン》の2つ目のオートアビリティが発動する条件は「フィールドを離れたとき」です。ブレイクはもちろんですが、ゲームから除外されたときや手札に戻ったときにも誘発します。【1-107L】《シャントット》や【12-098H】《ストラゴス》を使われたときにもブレイクゾーンからコスト3以下の「侍」を回収できるのでお忘れなく。この“損しにくさ”も【12-012L】《テンゼン》の強みですね。
【12-009C】《侍》
コモンの一般兵バックアップですが、このカードの登場により「侍」のバックアップが3種類(正確には【9-008C】《カイエン》もありますが、フォワードの【11-003R】《カイエン》を優先するためデッキに入りません)になったことも「侍デッキ」にとってはありがたい強化点でした。
もし17枚のバックアップのうち6枚しか「侍」を入れられないとすると【12-012L】《テンゼン》のアビリティを安定して運用するには15枚程度、つまり今よりももう3枚ほどフォワードの「侍」を増やさなくてはならず、そうするとデッキ全体が少し歪んでしまっていたでしょう。
また、この【12-009C】《侍》は単純な数合わせ要員にとどまらず、アビリティも強力です。アビリティの起動に必要な『「侍」が3体』という条件はこのデッキでは存在しないようなものですし、これともう1枚バックアップをアクティブにしておけばターン終了時に【12-012L】《テンゼン》のアビリティで手に入るカードによって起動に必要なCPを確保できるのも便利です。優先してキャストしておきたいバックアップですね。
【12-017H】《マギサ》
こちらは「侍」ではありませんが、「Opus XII」で火属性が得た強力な追加戦力です。
ダメージを与える手段の多い火属性ではアビリティの条件を能動的に満たしやすいため、こちらもアドバンテージ獲得および戦闘要員として採用されています。【11-001R】《イフリート》や【12-016C】《ブレイズ》、【2-001H】《アーヴァイン》などでアビリティの条件を満たしていきましょう。
呼び出すカードは「侍デッキ」のキーカードの1枚である【11-003R】《カイエン》、効果によってフィールドに出たときにキャラクターカードを何でもサーチできる【12-004R】《アルフィノ》、除去能力とサイズを兼ね備えた【12-015H】《フォルツァ》など、いずれも強力なフォワードです。
この【12-017H】《マギサ》とダメージを与える手段が初手にあることで、1ターン目から爆発的な展開を狙えます。
具体的には初手6枚の状態から、
・【12-017H】《マギサ》をキャスト、【12-016C】《ブレイズ》をキャストして5000ダメージを与える、【12-017H】《マギサ》のアビリティで【12-004R】《アルフィノ》をフィールドに出して【2-001H】《アーヴァイン》をサーチしてターン終了
これで1ターン目にフォワード2体とバックアップ1体を出せました。手札に【2-001H】《アーヴァイン》が残っているため、手札6枚のうち5枚を使った計算ですね。そして、そのなかの3枚がフィールドに残っているので実質カード2枚、4CPの支払いだけでこの展開ができたことになります。
さらに、対戦相手のターンで【12-017H】《マギサ》が対処されなければ、
・サーチしてきた【2-001H】《アーヴァイン》で【12-017H】《マギサ》に6000ダメージ、【11-003R】《カイエン》をフィールドに出して【12-012L】《テンゼン》をサーチ
とすることで次のターン、2枚のバックアップから【12-012L】《テンゼン》を無駄なく展開できる流れとなります。
この【12-017H】《マギサ》+ダメージを与えられるバックアップ+【12-004R】《アルフィノ》のパッケージが非常に強力で、フォワードとバックアップを同時に展開していくことができます。
これは火属性をメインにしたデッキであればほとんどのデッキに搭載できるギミックなので、「侍デッキ」に限らず火属性を採用したデッキではぜひ検討してみてください。息切れせずにどんどんカードを出していけるドライブ感は病みつきになりますよ。
ただし、注意点もあります。
【12-017H】《マギサ》のアビリティを使うために【12-016C】《ブレイズ》なら5000ダメージ、【2-001H】《アーヴァイン》なら6000ダメージを与えることになります。
なので、これらで【12-017H】《マギサ》を選んだときに対応して【1-198S】《ヴァルファーレ》などで3000ダメージを与えられると、アビリティを使うタイミングなく【12-017H】《マギサ》はブレイクされてしまいます。
先手の1ターン目にしかける場合は相手のデッキがわからないので判断はできませんが、判断材料となるものがある場合は「本当にしかけていいのか?」と一度立ち止まるようにしましょう。
【12-016C】《ブレイズ》
先ほどは【12-017H】《マギサ》とのコンボ要員として紹介しましたが、このカードは、たくさんあるオートアビリティでダメージを与えるバックアップのなかでも使い勝手のいい1枚です。
5000ダメージという数値は一見低めに見えますが、【11-045H】《エッジ》や【12-061L】《クルル》といったデッキのエンジンとなるカードに1枚で対処できますし、2体にダメージをばらまくため【11-003R】《カイエン》と相性がよく、ほかにもう1、2体「侍」がいればいずれかの「侍」のアタックで合計7000~8000ダメージを与えられるため、じゅうぶんな威力となります。
EXバーストを持っている点も重要で、単純な除去効果としてだけでなく、相手ターンに突然【12-017H】《マギサ》のアビリティが使えるようになったりもします。
おまけにフィールドに出したあともアクションアビリティでもう1回除去ができます。オートアビリティとアクションアビリティを両方持っているカードというだけでもあまり多くないのですが、このカードはそのどちらもが除去効果なので無駄になりにくい点も評価できます。
◆デッキの構成と使い方
次にデッキの使い方についてお話ししますが、その前にこのデッキの構成について触れておきます。
●「侍」パーツ
【12-012L】《テンゼン》のアビリティで安定して手札を増やせるように、デッキには一定枚数の「侍」が必要になります。
【12-012L】《テンゼン》
【11-003R】《カイエン》
【8-138S】《ヒエン》
【7-009C】《侍》
【12-009C】《侍》
【8-137S】《ゴウセツ》
この6種18枚は「侍デッキ」の必須パーツだと考えています。
自分はそれに加えて【8-004R】《イロハ》3枚と【5-002R】《アヤメ》1枚の計22枚「侍」を投入しています。このくらいの枚数を入れておけばゲームの序盤から終盤まで【12-012L】《テンゼン》のアビリティが空振るということは少ないはずです。
●「マギサ」パーツ
「侍」以外のフォワードはほとんど【12-017H】《マギサ》関連のフォワードで構成されています。
【12-004R】《アルフィノ》と【12-003R】《アリゼー》、そして高いパワーと除去能力が自慢の【12-015H】《フォルツァ》です。
「第18回自宅名人戦」の時点では【12-017H】《マギサ》でサーチする対象として【5-024H】《ルーネス》や【8-139S】《リセ》を採用していましたが、あまりサーチする機会がなかったので、このスロットが追加の【8-004R】《イロハ》になっています。単純に「侍」の枚数を増やすというだけでなく、ダメージを増やすアビリティが【11-003R】《カイエン》や【12-016C】《ブレイズ》と相性がいいカードです。
●バックアップのスロット
「侍」の3種9枚と【12-016C】《ブレイズ》、【2-001H】《アーヴァイン》で13枚を占めるため、残りは4枚です。
今回は【12-110L】《ネオエクスデス》対策になる【10-006R】《クラウド》と、キーカードを擬似的にサーチできる潤滑油の【7-017H】《ミース》を2枚ずつにしています。
●召喚獣のスロット
火属性デッキでは定番の【10-002H】《イフリート》と、これから新定番となりそうな【12-002H】《アマテラス》を2枚ずつ、そして【11-001R】《イフリート》を3枚採用しています。
序盤からしかけていく攻撃的なデッキなので【11-001R】《イフリート》を8000ダメージで使えることも少なくありません。また、序盤は【12-017H】《マギサ》に対して使うことで3コストのフォワードに変換できる点なども評価して3枚投入となっています。
あと、これは小ネタ的なものですが【10-002H】《イフリート》を【12-017H】《マギサ》に対してキャストすると8000ダメージとパワー+2000が同時に解決され、【12-017H】《マギサ》を生き残らせつつアビリティの発動条件を満たせるので覚えておいてください。
●光、闇属性カードの不採用
先攻時の初手で【12-017H】《マギサ》から【12-016C】《ブレイズ》、あるいは【11-003R】《カイエン》+【12-012L】《テンゼン》と展開するには一度すべての手札をコストにする必要があるため、コストにできない光、闇属性のカードは採用していません。
●デッキの動かし方
このデッキのキーカードは【12-012L】《テンゼン》と【12-017H】《マギサ》です。
基本的にこれら2枚のどちらか、あるいはこれらをサーチできる【11-003R】《カイエン》や【7-017H】《ミース》のない初手は引き直しましょう。
バックアップがなくて【12-012L】《テンゼン》だけ、という手札でも大丈夫です。【12-012L】《テンゼン》のアビリティでバックアップの「侍」にアクセスできるので、1、2ターン【12-012L】《テンゼン》が生き残ればバックアップの「侍」を手札に加えて展開していけることがほとんどです。
そうやってバックアップの「侍」をそろえたら、次は【11-003R】《カイエン》が真価を発揮するようになります。
このカードのダメージを与えるオートアビリティは、「侍」がアタックするたびに誘発するので「侍」の数が4体のときに2体でパーティーアタックすれば4000ダメージ×2で全体に合計8000ダメージを与えられます。
除去が少ないデッキ、頭数を並べてくるデッキに対してはこれだけで相手の戦線を壊滅させられる強さがあります。
また、高パワーのフォワードで勝負してくるデッキには【8-138S】《ヒエン》が立ちはだかります。
こちらは「侍」がアタックするたび、すべての「侍」のパワーが+1000されるので、相手はそのうちの1体と相打ちを取るのがせいぜい、となるでしょう。
序盤から出せてデッキのエンジンとなる【12-012L】《テンゼン》が除去に対してアドバンテージを失いにくいだけでなくパワーも高く、仮に対処されてしまったとしても【12-012L】《テンゼン》のもたらしたアドバンテージによって太い攻めを継続でき、さらに【12-017H】《マギサ》を絡めた別方面の展開手段もあります。この多角的で変幻自在な攻めが「侍デッキ」の強みです。
◆おわりに
私はふだんコントロール寄りのデッキを好んで使っています。
しかし、この「侍デッキ」はただ攻撃的であるというだけでなく豊富なサーチや追加のドロー手段で高い安定性があり、ただのアグレッシブなデッキではないと感じて非常に気に入っています。
キーカードとなる【12-012L】《テンゼン》や【11-003R】《カイエン》、【12-017H】《マギサ》などはいずれも最近のブースターパックに収録されているものですし、デッキ全体のレアリティも控えめです。
『FFTCG』を始めたばかり、あるいはこれから始める、という方にもオススメできると思います。気になった方はぜひ、この「侍デッキ」のパワーを味わってみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。