『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は昨年10周年を迎えた「Chapter」シリーズを振り返る振り返る記事の第6回をお届けします。
◆はじめに
皆さん、こんにちは。編集(川)です。
新ブースターパック「光の使者」の発売が少しずつ近づいてきていますね。公式コラムやユーザープレビューによりカード情報がオープンになっており、4月15日(金)の発売日が待ち遠しいところです。
今週の公式記事連載では「Chapter」シリーズの『FFTCG』事情を振り返る記事の第6回をお届けします。
これまでの「Chapter」シリーズ振り返り記事
#1(Chapter I-II)
#2(Chapter III)
#3(Chapter IV)
#4(Chapter V)
#5(Chapter VI)
今回は「Chapter VII」登場時の環境を取り上げます。
それではさっそくどうぞ!
◆氷が解けて水の時代
前回の記事では「Chapter VI」での氷属性の躍進ぶりをお伝えしましたが、続く「Chapter VII」は、雪解けからの“水の時代”という印象です。
その象徴がこの2枚、【7-122S】《ユウナ》と【PR-044】《ティーダ》です。
【7-122S】《ユウナ》自体はコスト4でパワー8000、召喚獣を使って味方を守ったり除去をしたりというフォワードなのですが、相方である【PR-044】《ティーダ》はフォワードの《ユウナ》をコントロールしているといつでもブレイクゾーンから出せて、さらに《ユウナ》が効果に選ばれなくなります。
つまりフィールドで2枚がそろっているときはもちろん、ブレイクゾーンに【PR-044】《ティーダ》にあるだけで【7-122S】《ユウナ》にほとんど手出しができなくなります。
除去できないなら純粋に高パワーのフォワードで押し切ろう、と思っても【7-122S】《ユウナ》のアクションアビリティで除去されてしまいます。また【PR-044】《ティーダ》を除外しようにも【7-122S】《ユウナ》のアビリティが守りますし、ブレイクゾーンにあるときに除外を試みても対応してフィールドに逃げられてしまいます。まさに難攻不落のカップルでした。
さらに【PR-044】《ティーダ》は守るだけでなく、いくら倒されても復活する不死身のアタッカーにもなります。そのため、フォワードの枚数を(モンスターを含めて)15枚程度にしても打点不足になることがなく、空いたスペースに【7-122S】《ユウナ》のための召喚獣を詰め込んだ構築が流行。この「ユウナティーダ」デッキは水単・水土・火水・水雷などさまざまなバリエーションで活躍しました。
また、「Chapter VII」の水属性の優良カード(【PR-044】《ティーダ》は「Chapter VII」収録ではありません)はほかにもちゃんとあります。
その代表格が【7-103U】《オズマ》。
まず何といってもフォワード化のコストが0というのが驚きで、必要なタイミングが来るまではモンスターでいられるのでフォワードを選ぶ除去に狙われにくく、バックアップを使い切っていても問題なくフォワードとして戦えるというスキのなさです。
また、干渉しにくいモンスターにしては破格のスペシャルアビリティ「フレアスター」を持っており、4コスト8000、5コスト9000といった標準的なパワーを持つフォワードなら一掃できます。アドバンテージにつながるオートアビリティを持っているフォワードであればそのぶんコストに対してパワーが低いことが多く、そういったフォワードを周りもろとも巻き込めばアドバンテージを失わずに対処可能です。こうして頭数を減らせれば【3-086U】《暗黒の雲ファムフリート》でピンポイントに相手の主力を狙いやすくなるなど、水の欲しかった補強ポイントをうまく埋めてくれる1枚でした。
なお、少し話は戻りますが【PR-044】《ティーダ》は【3-086U】《暗黒の雲ファムフリート》からこちらの主力を守ってブレイクゾーンに気兼ねなく置けるという点でも強力でしたね。こういう嚙み合いも水属性の活躍につながっていたと思います。
◆フォワードだけでなくバックアップにも好カードの多いセット
続いて、ほかの属性を見ていきましょう。まずは火属性から【7-016L】《フリオニール》。
ヘイスト、先制攻撃、ブレイブと、攻防に役立つアビリティがてんこ盛り。さらに1点のダメージを受けることでパワーを+2000できます。
このパワーを上げるアビリティ、さすがにリスクが高いのではないかと思われたのですが、ここがおもしろいところで、仮に相手がパワー7000のフォワードを出していても、1点のダメージで一方的にブレイクされると「1回アタックしたらEXバーストがめくれて倒された」くらいの損なので結局ブロックしたりせず、アタックがスルーされることも多かったですね。ブレイブ持ちなので、返しのターンにアタックしようと思っても同じロジックにより行けません。
直接除去する効果には弱いものの、相手にアタックやブロックを躊躇させるプレッシャーは強力で、火単や火氷などのデッキで長く使われるアタッカーとなりました。
次は【7-014S】《パロム》。
「オーバードライブ」は「Chapter VII」で登場した新能力で、追加のコストを支払うことで恩恵を得られるものです。【7-014S】《パロム》はこのオーバードライブと2種のアクションアビリティで状況に応じた火力を出せる柔軟性が魅力でした。
基本的にはオーバードライブ+全体ダメージのアクションアビリティで全体7000ダメージを狙い、撃ちもらしたものも1000ダメージのアクションアビリティで追撃すればこれ1枚で相手のフィールドを一掃できます。
大仕事をしたあとでフィールドに残る点も相手からするとやっかいで、すでに仕事を終えているにもかかわらず、1000ダメージ、2000ダメージをばらまくのでダメージでの除去効率が大きくアップします。そのため、相手からするときちんと除去しなくてはなりません。しかし、そうするとあとでまたオーバードライブを使われてしまうリスクもあるため、とても悩ましい存在でしたね。
この【7-016L】《フリオニール》と【7-014S】《パロム》は火属性を絡めたアグレッシブなデッキ、特に「Chapter VI」で強化された氷属性とあわせた火氷デッキで活躍しました。
続いてはそんな氷属性。「Chapter VI」で大きく強化された氷属性は、主にバックアップに優秀なカードが増えました。
相手のバックアップ1枚をダル、凍結させてテンポを奪う【7-025R】《クー・チャスペル》はお得なEXバースト付き。
手札破壊でとりあえずアドバンテージを稼ぎ、出したターンからすぐ使えるスペシャルアビリティで召喚獣ににらみをきかせる【7-023R】《ギルバート》、モンスターを出しつつ補充もしてくれる【7-035C】《ナグモラーダ》など、爆弾級ではないもののしっかりと仕事をしてくれる好カードが多かったですね。
次は風属性。こちらも使われるカードはバックアップが多かった印象です。
まずは【7-045C】《シド・ヘイズ》。
【ジョブ(一般兵)】のキャラクターなら何でもサーチできるため全属性にアクセス可能、EXバーストでも着実にアドバンテージを稼いでくれるいぶし銀でした。
そんな【7-045C】《シド・ヘイズ》からサーチできる【7-044C】《シーフ》はアクションアビリティが使えるようになれば、なかなか頼りになるディフェンス能力を発揮してくれました。
あとは、これも「Chapter」シリーズらしいと言える【7-052C】《ナッシュ》。お手軽にバックアップをブレイクできます。
次は土属性。対応する氷属性へのアンチカードの多い属性ですが、その方向性は今回も健在。まずは【7-079R】《ヤン》。
相手に選択権のある除去ですが、それでも9000ダメージは強力。効果でダルにならないので正面突破するしか方法はなく、土属性らしい骨太なフォワードでした。
小技としては【7-068U】《コカトリス》もおもしろいカードでした。
アタックを封じれば1ターンの延命に、ブロックを封じればとどめの一撃にもなる器用なカードで、ダメージを受けなくする効果はフォワードを守るだけでなく、アタック、ブロック後に使えば疑似的な除去にもなりました。「Opus」シリーズにもそのままの効果で再登場していますね。
続いて雷属性。これもバックアップが強力でした。
まず1枚目が【7-097U】《シド・クレイマー》。
サーチとヘイスト付与を1枚でこなすやり手で、これでコスト1の【7-094C】《サイファー》をサーチして次のターンにヘイストでアタックという流れが定石になりました。
さらに、この【7-094C】《サイファー》は新能力「覚醒」を持っており、コストを支払うことで同名のカードをデッキから出すことができます。これによって、相手がちょっと強いブロッカーを出してきたら【7-093S】《サイファー》にチェンジ。
こうなれば今度はパワー8000までを一方的に倒せるので、フォワードで止めるのは困難。おまけに雷属性には選ばれないため、【7-016L】《フリオニール》を意識して入れられることの多かった雷属性の除去カードが効きません。
この【7-097U】《シド・クレイマー》からの《サイファー》2種というのは【7-097U】《シド・クレイマー》1枚で成立するため再現性・安定感ともに高い、当時のベストな立ち上がりのひとつでした。
もう1枚、雷属性の強力なバックアップが【7-089C】《グラミス》。
コスト4でカードを最大2枚サーチできるため、実質0コストのバックアップです。3つあとのセットである「Chapter X」から『FFTCG』は本格的な“バックアップ0コスト時代”とでもいうべき環境に突入するのですが、その口火がここでひっそりと切られていました。「Chapter VII」ではこの【7-089C】《グラミス》と【7-022C】《ウルミア》が実質0コストのバックアップとして登場しています。
【7-022C】《ウルミア》は事前に《プリッシュ》をブレイクゾーンに置いておく必要があったため少し使いにくかったのですが、【7-089C】《グラミス》はこれを起点にほかのカードへアクセスするサーチカードということで非常に使い勝手がよく、《ヴェイン》は氷属性で《ラーサー》は水属性、【ジョブ(ジャッジ)】はほとんどの属性にいるため多属性化のサポートもしてくれるという器用さ。
そして【7-089C】《グラミス》からサーチするカードで強力だったのが【7-119U】《ラーサー》と【4-074C】《ドレイス》の組み合わせ。
【7-089C】《グラミス》から【7-119C】《ラーサー》を持ってくることでバックアップを枚数と属性CPの両面で安定させつつ、【4-074C】《ドレイス》が1コストパワー8000先制攻撃で登場、そんな流れを【7-089C】《グラミス》1枚から始められるということで、これも安定感抜群のトリオでした。アグレッシブなデッキでは【7-097U】《シド・クレイマー》を、中速デッキでは【7-089C】《グラミス》を、というふうに使い分けられていましたね。
◆おわりに
「Chapter VII」のカードを振り返ってきました。
フォワードが強化された火属性が氷属性と組んでアグレッシブなデッキとして台頭しつつ、中~低速のデッキとして水土、水雷、水単といったものが火氷包囲網を敷いていた、そんな環境でしたね。
一方で少しずつバックアップの低コスト化と質の上昇が進み、どの属性も強力なフォワードさえもらえれば…と牙を研いでいる印象です。
また、アクションアビリティが強力なカードや「覚醒」が登場した影響で、それらを封じる【2-104R】《皇帝》が再評価されたりもしていました。
次回は「Chapter VIII」環境のお話をしますが、この環境では『FFTCG』界に激震が走ります。新セットが出るたびにカードの種類が増えていくTCGとしては避けられない「一線を越えてしまったカード」がついに登場します。お楽しみに(?)。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。