木谷社長に聞く!「ブシロード新春大発表会 2025」とその後について

1月13日にTOKYO DOME CITY HALLで開催された「ブシロード新春大発表会 2025」。カードゲームだけでなく、多くのブシロードコンテンツが集まり、発表会だけでなくライブやパフォーマンスなどが行なわれた一大イベントだ。
そんな大きな発表会を終えたブシロード・木谷高明社長へ、後日インタビューを実施。
ブシロードカードゲームは2025年にどこをめざすのか。発表会を振り返りつつ、既存・新作タイトルの両面から気になるポイントをうかがった。

◆「ブシロード新春大発表会 2025」を振り返ってみて

───発表会後のインタビューの恒例の質問となりますが、「ブシロード新春大発表会2025」のカードゲーム関連の発表や内容について、点数をつけるとしたら何点でしょうか?

木谷高明社長(以下「木谷」):90点ぐらいかな。今回の発表会はかなり満足できています。発表のタイトル数は多かったのですけど、きっちりと紹介できたところが一番いいところでした。新春発表会と通常の戦略発表会との差別化も少しずつできてきたという気がしています。
残り10点の部分は、BtoB(企業同士の取引のこと)のつながりがまだ不十分だと感じた点です。でも気になったのはそのくらいで、全体としては非常によかったと思います。発表会自体は7時間近くにもなりましたけど、ライブなどのイベントを挟みつつの発表会だったので、来場された方も飽きずに楽しめたと思います。
新しい形の発表会ができてきたという感じですね。そう思えば、点数はもう少し高くて、95点くらいでもいいのかもしれない(笑)。

───前回のインタビューでは、今回の発表会では仮面を付けるかもしれないという話でしたが、木谷社長も仮面を付けて登壇されましたね。

木谷:今年の新春発表会はコンセプトを決めたいということと、「BanG Dream! Ave Mujica」の先行上映もあったので、仮面を付けさせてもらいました。当日登壇するゲストにもつけていただいて、統一感は出てよかったですね。新春らしい雰囲気だったかはわかりませんが(笑)。


 

───それでは、いくつかのカードゲームタイトルについてお話をうかがわせていただきます。まず『カードファイト!! ヴァンガード』(以下、『ヴァンガード』)になります。新春発表会では会場限定でTVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード Divinez デラックス編」の第2話が先行上映されました。そちらの反応はいかがでした?

木谷:「デラックス編」はみなさんに期待されていますし、会場の反応はよかったと思います。

───これまでの「Divinez」では、運命大戦や宿命決戦といった使命のためにファイトをするお話でしたが、「デラックス編」ではカードゲームをするための物語に戻ってきました。これはどのような意図があったからなのでしょう?

木谷:「will+Dress」でデラックス大会を描いたときの感触がよかったことと、「D」シリーズの原作を作るときに、運命大戦、宿命決戦と合わせてデラックス編もセットで考えていました。それと、デラックスというのは大会のブランドにもしたいと思っていたからです。リアルとファンタジーが入ったり来たりするような部分を作りたくて、それはうまく行きつつあるかなと感じています。

───発表会では「ぶっちぎりスタートデッキ」という、「月刊コロコロコミック」で連載している「カードファイト!! ヴァンガード スカイライド」の構築済みデッキが2つ発売されることも発表されました。こちらの商品は従来のスタートデッキよりも値段が少し高めなぶん、カードパワーも高めなデッキの印象を受けました。こちらは「コロコロ」読者の小中学生もすぐに大会に出られるような導線の一つということでしょうか?

木谷:そうですね。大会に参加してもらうところまで考えていますし、家で友だち同士で遊ぶにしても、強めなカードを使ってしっかりと遊べるようにデッキを作っています。それとこれは、カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ2からの導線にある商品でもあります。アニメを見たり「コロコロ」を読んで『ヴァンガード』を遊びたいと思っても、一緒に遊ぶ相手がいないという人もいます。「ディアデイズ2」なら1人でも遊べますし、友だちを誘えば2人でも遊べます。そこでゲームを2人で遊びつつ、次は実際のカードで『ヴァンガード』を遊んでもらう。その時期として狙ったのが、スタートデッキを発売する3月です。
「ディアデイズ2」でまずは『ヴァンガード』に慣れてもらって、そこでいつものスタートデッキより、遊びごたえのある今回のスタートデッキに触れてもらう。こういう流れを作っていこうと考えています。

───今後もこのスタートデッキを使い続けたいと思う人もいると思いますが、デッキコンセプトが強化されるカードは登場するのでしょうか?

木谷:それは開発チームがどう考えているかですが、ただ商品を出すだけではなく「スカイライド」のストーリー展開に合わせて今後のことを検討していると思います。

───今後は小学生以下の大会やイベントの施策を考えていますか?

木谷:実施していきたいですが、集まる人数しだいかなと思います。今の子どもは昔ほどカードゲームは遊ばないですから、少しずつでも遊ぶ子どもを増やしていきたいですね。
それと子どもの話だと、今中国がカードゲームブームなので、これからの中国は子どものユーザーも増えていきますよ。将来的にはカードゲームのマーケットは中国の方が大きくなると予想しています。

───「ぶっちぎりスタートデッキ」に続いて、4月には「Master Deckset」も数量限定で2種発売されますが、これは従来の「はじめようセット」の豪華版のような位置づけの商品かと思います。以前は7月発売の商品でしたが、今回の「Master Deckset」の発売を4月にする理由については?

木谷:ここで新規ユーザーを増やしたいということと、「カードゲーム祭2025」前だということですね。復帰組も増えてきてくれて、3~4年前に比べると4割ほどユーザーが増えてきています。さらにここから、子どもや女性といった“『ヴァンガード』が気になっていたけれどまだ始めていない層”をしっかり掴んでいこうと。これが3~4月の展開です。アニメに「ディアデイズ2」に「コロコロ」の連載を含めてここに当てているということですね。

───復帰組や新規層に向けての受け皿を春のタイミングで作っていったのですね。

木谷:そうです。そしてその締めくくりが5月の「カードゲーム祭」というわけです。そして夏から大規模大会も始まります。ユーザー数はしっかり増えていますけど、今年はもっと増えてくれると思いますよ。

───ちなみに4月の「Master Deckset」は「羽根山ウララ」「廻間ミチル」の2種ですが、ほかのキャラクターのセットも今後は登場するのでしょうか?

木谷:これは売れ行きしだいですね。今回の製品の売れ行きがよければ、他のキャラクターもあり得るかもしれません。『ヴァンガード』は最近、サプライが非常によく売れていて、以前より製造数を増やしているのにすぐ売り切れています。ですので、サプライの売れ行きがいいキャラというのも、「Master Deckset」の候補になるのかなと思います。

───サプライの売上がよかったということですが、これは『ヴァンガード』の需要が高まってきたのか、それともキャラクター自体に人気が出てきたということでしょうか?

木谷:両方だと思います。キャラクターも「D」シリーズのキャラもユーザーに定着して、特に「Divinez」から登場したキャラクターは人気が出ています。

───続いて「ディアデイズ2」についてもお伺いします。発表会ではリアルカードの先行収録をゲームで行なうことが発表されましたが、今後もDLCが追加されるタイミングなどで先行収録は実施されるのでしょうか?

木谷:可能性はあると思います。そもそもカードゲームジャンルのゲームの場合、DLCはとても相性がよくて、前作「ディアデイズ」でもDLCを出すたびに元のゲームを購入してくれるユーザーがいらっしゃいました。
また「ディアデイズ2」は前作よりカードの収録枚数が非常に多くて、ゲーム単体でみても非常にお得です。前作のデータを引き継げるので、前作を気に入ってくれたユーザーは、そのまま「2」も遊んでいただければうれしいですね。

 


───次は新規タイトルとして発表された『ゴジラカードゲーム』についてうかがいます。まずこちらは今年7月に発売されることが発表されましたが、この発売時期の理由は?

木谷:まずは今年が『ゴジラ』70周年を迎えたということで、そのなかの展開として東宝さんからお声がけいただいたのが始まりになります。『ゴジラカードゲーム』は英語版も同時に発売されるタイトルなので、アメリカで開催される「Anime Expo」で先行発売することは視野に入れていました。そこで大規模な講習会を行ないつつ、日本を始め世界に向けて講習会を開催していく予定になります。Anime Expoや「Gen Con」などの海外の大きなイベントに出展しつつ、日本でもショップを回りながら展開をすることを考えた結果、7月に発売が決まりました。

───英語版も同時展開されるとのことですが、他言語版同士が対戦できる大会などは実施されるのでしょうか。

木谷:対戦相手の使うカードの効果がわからないとスムーズに遊べないこともあるでしょうし、現状は考えていません。例えば世界大会の決勝のような、そこへ勝ち上がってくるプレイヤーならカードイラストを見るだけで効果が即座に把握できるようなレベルの大会であれば可能性はあるかもしれません。

───カードゲームで特撮を扱ううえで、木谷社長の思い入れや重視したいポイントなどはあるのでしょうか?

木谷:まずは何よりも原作の再現です。しっかりと原作をイメージできるゲームとなっていて、ゲームを体験していただいたショップさんからの評判は、こちらが予想していた以上にいいですね。ルールがボードゲーム的な感触もあって、その点ではボードゲームが盛んな英語圏の評価にも期待しています。
実は私が最初に見た映画は『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)という、ゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラが出てくる映画だったんです。4歳のときに従兄弟に映画館へ連れて行ってもらったことを今でも覚えています。そういう思い入れもあるので、東宝さんに声をかけていただいたときは、ぜひこのプロジェクトをやらせてくださいと受けました。そういう怪獣への想いがある一方で、カードゲームとしては女の子のカードを入れたほうが受け入れられやすいですよと提案したのですが、今回は見送りとなりました。どうも女の子のカードを入れないとカードゲームは売れないという考えがこびりついてしまっていて、これはよくないなと。そういうのとは違うカードゲームも出せないと、カードゲームメーカーとしてはプロじゃないですよね。

───原作再現への取り組みは、公開されたPVの時点でもかなり感じられます。怪獣カードを進めながら進攻と撃退を繰り返していくというルールも非常にユニークですよね。映画のポスタービジュアルが採用された「怒りカード」もワクワクさせられました。PVで紹介されていたプレイシートでは、怒りカードの置き場が他のエリアより広めになっている気がしたのですが、これは……?

木谷:怒りカードはゲーム中に複数枚置くことになるのですが、おっしゃるとおりイラストがかっこいいので、カードが重なって隠れないようにする意図がひとつあります。もうひとつは、実はシート上を進攻させる怪獣カードの代わりに怪獣のコマを置いて遊べるルールも考えていて、進攻中の怪獣カードを提示する場所としても使えるようにしています。今後も発表会などで順次公開していきますので、楽しみにしていてください。

 


 

───続けて、新規タイトル『ヴァイスシュヴァルツロゼ』(以下『ロゼ』)についてもお聞かせください。こちらは『ヴァイスシュヴァルツブラウ』(以下『ブラウ』)に続く『ヴァイスシュヴァルツ』(以下『WS』)の派生ブランドですが、本作が展開する経緯についてお聞かせください。

木谷:まずは『WS』の別ブランドとして出すことで参戦タイトルの分散ができることと、美少女ゲームタイトルのような、今まで『WS』としては出しづらかったタイトルを参戦させられることです。タイトル的には『WS』よりも年齢層は上になるかと思いますが、まだ『WS』に触れたことがない人たちが手に取ってくれるとうれしいですね。新しいブランドとして出すことで新規でも始めやすい気持ちになってくれると思いますし、『WS』というタイトルにもより厚みが出てくると思います。
また、参戦タイトルの「ゆずソフト」は中国でも非常に人気がありますから、世界大会などもできるといいですよね。

 

───『ブラウ』と同様に、ルールが『WS』と同じというのも気になるポイントかと思います。

木谷:『ブラウ』は世間に対してカードゲームを知ってもらうのがひとつの役目でした。今までカードゲーム化されていなかったタイトルをゲームにしていくうえで、カードテキストのわかりやすさを重視したというのがあります。さらに『ロゼ』では『WS』と同等のカードテキストで展開することで、遊びごたえのあるカードゲームをめざしつつ、今後の大会イベントの展開にもバリエーションが生まれるようなブランドとして考えています。

───参戦タイトルを見ると、どうしても従来の『WS』よりも過激なビジュアルのカードを期待してしまうのですが……。

木谷:そこは全年齢が遊べるカードゲームブランドとして展開する以上、難しいところもあるとは思います。もちろん『ロゼ』ならではの施策は考えていますので、楽しみにしていてください。

 


───次は『ヴァイスシュヴァルツ』の質問となります。まず新しいレアリティとして「AGR」「SEC+」が実装されて約2か月経過しましたが、木谷社長の印象としてはいかがでしょうか?

木谷:高レアリティのカードや直筆サインのカードはユーザーからの需要も高いですし、レアリティが増えること自体はいいと思っています。ただ気になっているのは名称ですね。『WS』の「RRR(トリプルレア)」というレアリティの名称は私が考えたもので、債券の信用リスクの度合いを示す格付けを元にしたんです。債券の場合はAAA(トリプルエー)といったものがあって、それならRRRもかっこいいだろうと。しかも「RR(ダブルレア)」よりRが一つ多いからRRRのほうがレアリティが高いのがすぐわかります。今回追加されたようなレアリティだと、ユーザーがどの順番で希少なのかがわかりづらくなってしまいますので、この点は今後議論していきたいですね。

───直筆サインカードとなる「AGR」は「ブースターパック 角川スニーカー文庫 Vol.2」では2種、「ブースターパック 甘神さんちの縁結び」では3種が収録されるとのことですが、今後も複数種のAGR収録は期待してよいのでしょうか。

木谷:1種収録というところにこだわりはありませんので、参戦タイトルによっては今後も可能性はあると思います。

───こちらは発表会の内容から離れますが、2月から「Weiß Schwarz Mart AKIHABARA」の営業が有限会社遊縁からブシロードへと引き継がれましたが、今後はどのような営業体制となるのでしょうか?

木谷:まずはメーカーが運営するショップとなるので、シングルカードの販売はなくなりました。残念に思う方もいらっしゃるかと思いますがご了承ください。その代わり、パックの品揃えはよりしっかりしたものになっていきますし、サプライ関連も今までよりも充実させていきます。また、『WS』に限らず、参戦したタイトルで独立のカードゲームになった『ラブライブ!シリーズ オフィシャルカードゲーム』や『五等分の花嫁 カードゲーム』といった商品も展開する予定です。「Weiß Schwarz Mart」の1階には「ヴァンガードストア」もありますし、ブシロードカードゲームの総合ショップとして魅力を高めていければと。ショップがある秋葉原は今も外国人観光客に人気のスポットですし、海外や地方から来られる方も楽しめるショール―ムとしての役割も果たす存在になると思います。また、Xで英語や中国語のポストをすることで、インバウンド向けの宣伝もできるといいですね。


◆本当の意味でのTCGカンパニーへ

───最後に、2025年のブシロードカードゲームの抱負や展望をお願いします。

木谷:弊社は7月が年度の始まりで、12月に半期の決算が終わりました。この半期は過去最高のペースで売上はありましたが、そのうちの多くがカードゲームの売上です。今、ブシロードのカードゲームは細かいものまで含めると11タイトルも展開していて、こんなにタイトルを出せるとは思っていませんでした。それは私だけでなく社員も思っていることだと思います。でもそれが実現できている。社員が頑張ってくれたおかげだし、会社としても幅ができたと実感しています。
あらゆるコンテンツを、その魅力をを活かしながらカードゲームに落とし込み、ユーザーに楽しんでもらう。そして、ひとつだけに注力せず、複数のタイトルをしっかりと売っていく。これが今年は実現できそうな気がしてきて、ブシロードが本当の意味でTCGカンパニー、いわば「TCGカンパニーver.2」へと進化できる年になれることをめざします。5月3日(土・祝)・4日(日)に開催される「カードゲーム祭2025」でもその一端をお見せできると思いますので、ぜひ遊びに来てください。

───タイトルもイベントもどんなバージョンアップを遂げていくのか期待させていただきます。本日はありがとうございました!