3月20日に開催された「ブシロードTCG戦略発表会2024 開幕」について、後日ブシロード・木谷高明社長へインタビューを行ない、発表会内容の振り返りや今後のカードゲーム業界についての展望・予測などを伺ってきた!
◆戦略発表会を振り返ってみて
───今回も、先日の「ブシロードTCG戦略発表会」で発表された内容を中心にお話を伺っていければと思います。
まず、今回の戦略発表会の手応えはいかがでしたでしょうか?
木谷高明社長(以下「木谷」):戦略発表会は年に4回開催していますが、タイトルが増えてきたので時間が長くなってきました。次回6月の戦略発表会は平日に開催予定ですが、9月以降は可能な限り休日に開催しようと思っています。休日ならユーザーも見ていただきやすくなりますよね。今回は3時間ほどの発表会でしたが同接数はあまり下がらなかったので、戦略発表会自体が一つのコンテンツになりつつあるなと感じました。
───今回の戦略発表会全体に点数をつけるとしたら何点くらいになりますか?
木谷:全体で85点くらいでしょうか。タイトルごとで感触は違いますけど、『カードファイト!! ヴァンガード』(以下、『ヴァンガード』)が伸びてきたのが大きいですね。
───それでは、戦略発表会で発表された内容について、発表順に伺っていければと思います。まずは『プロ野球カードゲーム DREAM ORDER』(以下、『ドリームオーダー』)ですが、こちらは4月20日に発売となりますよね(注:取材時点では発売前)。
木谷:もう発売まで1週間切りましたね。逆に聞きたいのですが『ドリームオーダー』はどう見えていますか?
───私の周りで体験会に参加された方の感想ですと「サブゲームとして非常に楽しめる」というものでした。ほかのカードゲームを遊ぶのに集まった際に、一緒に『ドリームオーダー』も遊んでみようと。このゲームの手軽さがそういう部分にはまっている印象を受けました。ほかにも、以前のインタビューで木谷社長がおっしゃっていたように、カードゲームファンの中にも野球ファンが多くいるので、ショップで野球ファン同士が集まって遊ぶシチュエーションが生まれてきそうだなと、カードショップの店長さんや常連の方が話されていましたね。
木谷:今のカードゲームっていわゆる「2次元モノ」がほとんどじゃないですか。だから『ドリームオーダー』はまったくの異質なんです。お店さんやユーザーも、「これって流行るのかな?」と思う人が多いと思います。ただ、本当に好きな人は流行るか流行らないかはあまり関係ないじゃないですか。もちろん流行ってほしいとは思うのでしょうけど、自分と遊ぶ相手がいればまずは満足なのかなと思います。Xのポストを見ていても、「一緒に遊ぶ相手ができた」とか「友だちに誘われたから『ドリームオーダー』始めます!」とか、そういうのが多いですね。
───ティーチングツアーやスタートデッキ体験会を実施中ですが、これらのイベントに参加されている方はカードゲームファンが多いのでしょうか?
木谷:野球ファンの方も多いです。逆に言えば、このカードゲームは野球のルールを知らないとイチから覚えるのは少し大変なんですよ(笑)。10代だと野球のルールを知らない人もいるので、そこがネックですね。野球もカードゲームも知らないという人が『ドリームオーダー』を遊んでもらうのは少し厳しいと思います。野球を知らなくてもカードゲームを知っていれば問題ないのですが、どちらかというと野球のルールを知っているほうが遊びやすいとは思います。
野球のルールってなんとなくは分かっていても、「インフィールドフライ」ってなんですか、「振り逃げ」ってなんですかとか、選手はいつ交代していいのかとか、選手は何度でも交代してもいいのかとか、細かいルールがサッカー等に比べて難しいところがあります。ただ、野球を子どもの頃から見ていた人はなんとも思いませんけど。そういった意味では、こちらが想定してたよりもカードゲームファンの中には野球のルールを知らない人が多かったなという印象です。
『ドリームオーダー』のターゲットとしては、カードゲームをプレイする人と野球を好きな人。この2つの層ですね。そして今盛り上げてくれている人たちは、この2つが重なった層ですが、発売後はカードゲームに触れたことのない人たちもかなり購入してくれると思っています。
───職場向けのティーチングツアーも実施されていますが、こちらはかなりユニークな施策ですね。
木谷:今のところ、職場向けのティーチングツアーはまだ数社しか開催できていませんが、先日は2万通のDMを企業の野球好きな担当者様宛でお送りしました。野球好きな企業の社長も多いので、これから増えていくだろうと考えています。
職場で流行してほしいというのが今回の一つのコンセプトでもあって、そういうコンセプトのカードゲームって今までありませんでしたよね。
───『ドリームオーダー』らしい施策だと感じましたが、ほかのタイトルでも職場向けのティーチングツアーというのは考えられているのでしょうか?
木谷:いや、『ドリームオーダー』が野球テーマだからこそできる施策だと思います(笑)。
───今までのブシロードカードゲームにはない施策ですが、どのような形で実施に至ったのでしょう?
木谷:私が発案しました。これを実施することで話題性も生まれますし、電車の中吊り広告や看板、TVCMやWeb広告なども発売1週間前から一気に回していきます。
───ティーチングツアーでおもしろい施策をされていると同時に、全国のローソンで取り扱われるということで、カードゲームファン以外のところにも届くような施策がかなり取られていると思います。こちらの手応えはいかがですか?
木谷:これに関してはやってみないとわかりません。ローソンは全国の12,000店舗で取り扱いがあり、その中の3割~4割のお店に『ドリームオーダー』ののぼりが出ると思いますし、お店の中でも目立つ商品になるのではないでしょうか。4,000店舗のお店がのぼりを出してくれたら、それだけでかなり目に付くと思いますし、コンビニはローソンで独占販売する代わりにほとんどの店舗に置いていただくようにしてもらいました。
野球好きな方が「プロ野球のカードゲームが出てるぞ」と買ったなら、それを他の人に見せるでしょうし、そうするとそこから人へ人へと広がっていきます。『ドリームオーダー』はクチコミで広がっていくと思っていて、だからこそまずは物を手に取ってもらわないとですね。
だから発売されてからが勝負です。
発売前の時点で今回の感触をよく聞かれますけど、“空振り三振”はもうありません。ただ、それが“ヒット”なのか“二塁打”なのか“ホームラン”なのかは発売してみないとわかりません。このインタビューが公開されているころには感触がわかっていると思いますが、非常にドキドキしています。
野球ファン世代は縦に長くて、小学生から60代くらいまでマーケットはありますから、僕ら世代でもゲームはしなくても買うだけ買ってみるという人はいるでしょうし、野球ファンの親子が一緒に買って遊ぶという商品にもなってると思います。
───全12球団すべてにスポンサー協賛し、12試合の冠協賛試合も決定されましたが、今後もプロ野球に絡んだイベントは実施していくのでしょうか?
木谷:もちろんです。今後もイベントは行っていきたいですね。
▲4月20日~6月6日までに開催される『ドリームオーダー』の冠協賛試合の始球式・ゲストに関するPV。
───ショップ大会についても発表されましたが、なかでも驚いたのがPRパックからシリアル入りのカードが出ることでした。
木谷:これは非常に貴重になると思います。まだこの情報はあまり広がってない印象なので、ぜひショップ大会に参加して手に入れてほしいですね。
───次は『Reバース for you』(以下、『Reバース』)についてお聞きします。『Reバース』もさまざまな発表がありましたが、なかでも気になったのは新ショートアニメ「ちょこりば」でした。こちらはYouTubeショートで配信されていますが、すべてのセリフに字幕をつけるなど、ショート動画向けの編集を意識されているなと感じました。こちらの手応えはいかがですか?
木谷:『Reバース』にとって久々のアニメで好評だと思います。『Reバース』の初期はアニメで牽引しているところもありましたし、今回はキャラクターたちの活躍をゆるく楽しんでほしいですね。
───バラエティ豊かな作品の参戦が発表されましたが、特にステージで話題になったのが、アニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」の大張正己監督の登壇かと思います。監督が登壇することになった経緯については?
木谷:「勇気爆発バーンブレイバーン」が『Reバース』に参戦するので、せっかくなのでお呼びしようと。大張監督は人前に出るのも好きな方なので。ユーザーからの質問にも楽しげに答えられていましたよね。
───次は『ヴァイスシュヴァルツ』(以下『WS』)についてお伺いしていきます。『WS』では「STAR WARS」の第2弾が出るのがインパクトがありました。ほかにも「MARVEL」第2弾も発表されましたし、ディズニー関連タイトルは今後も増えていくのでしょうか。
木谷:そうですね。ディズニー作品については従来の『WS』とは違う層にもアピールできるので、今後も可能な限り出していきたいです。それとこういう作品を入れることで『WS』がより広がっていきますよね。
───これらの商品は『Disney100』のようにディズニーストアでも取り扱われるのでしょうか?
木谷:多分ですが取り扱われると思います。「MARVEL」はどんな作品やキャラクターが登場するのか気になっている原作ファンの方も多いと思いますので、楽しみにしていてください。
───続いて『ヴァイスシュヴァルツブラウ』(以下『ブラウ』)についてお聞きします。3月以降の商品としては「ディズニー ツイステッドワンダーランド」「名探偵コナン Vol.2」「新テニスの王子様」「カラフルピーチ」「すとぷり Vol.2」と多彩な商品が発売されますが、それぞれファン層は年齢層低めのものから高めのものまであり、幅広い年齢層をカバーしていると感じました。『ブラウ』全体で見ると、どの年齢層がいま一番勢いがあるのでしょうか?
木谷:『ブラウ』は『WS』ほどユーザー層がはっきりと見えないというところはあります。女性が多くて、なかでも勢いがあるというなら20代の女性ということでしょうか。『ブラウ』は各タイトルごとにユーザー層が異なっているので、まとめて語ろうとすると非常に難しいですね(笑)。『ブラウ』で一番売れたタイトルは「すとぷり」ですが、では購入された方たちのほとんどがゲームをプレイしているかというと、そういうわけではないと思います。グッズの延長として購入されている方が多いのが現状です。私としては、そのなかから少しでもゲームをプレイしてくれる方が増えてほしいですね。
───『ヴァンガード』についてもお伺いしたいと思います。TVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード Divinez」(以下「Divinez」)がSeason1の最終回を迎えましたが、手応えはいかがでしたか?
木谷:戦略発表会でも話しましたが、「Divinez」Season1はとてもおもしろかったと思います。キャラクターがちゃんと立ってましたし、ストーリーも良かった。
───カードファイトが主軸なのと、運命大戦で願いを叶えるというのもストーリーにしっかりハマっているなと感じました。
木谷:商品についても2月に発売したブースターパック「運命大戦」がDシリーズで一番売れたのも良かったです。
───売上も手応えもあった本作で、もっと良くするための反省点や改善点などはありましたか?
木谷:ティーチング回を描写するなど、今までの反省点を反映させた作品なので、反省点ということではあまりない作品ですね。むしろホビーアニメとしてはかなり高い位置まで行くことができた作品だと思います。
───アニメの放映に関してですと、これまでは1シリーズが終わるとそのシリーズの再放送をはさんで次のシリーズを放映するという流れでした。今回は「Divinez」Season1が終わったあとに『ヴァンガード』のバラエティ番組「ENJOY!ヴァンガろうTV」を放送する今までにない施策ですが、こちらの狙いや内容についてお伺いできればと思います。
木谷:今は配信サイトでいつでもアニメが見られるようになったので、再放送の需要というのは下がってきたのかなと思いました。それもあって、バラエティ番組を制作しようと。アニメ制作費に比べるとバラエティ番組の制作費は抑えられますし、アニメとアニメの間を繋ぐバラエティ番組を制作し、そこでリアルにカードゲームの対戦を流したりですね。そうやって繋いでいくことで、常に『ヴァンガード』の番組が続いているイメージは出せますから。
───「Divinez」で主人公を演じた宮田俊哉さんが番組に出演されるというのも注目ですね。
木谷:タレントさんはアドリブが効きますし、宮田さんは『ヴァンガード』についても知っているのでおもしろい番組になると思いますよ。宮田さんも自分から『ヴァンガード』の情報を発信されていて、非常にありがたく思っています。
───今はホビー系バラエティ番組というのはほとんどありませんから、そういう点でも非常に期待しています。次はカードについてお伺いします。まずはクイックスタートデッキ購入でスリーブがもらえるキャンペーンについて、こちらの反響はいかがでしょうか?
木谷:キャンペーンの反響はいいですね。今もクイックスタートデッキのリピートが続いています。多分、スタートデッキを切らしていたお店が多かったのだと思います。キャンペーンがあるから再度仕入れてみて、それが売れたのでまたリピートして……という状況なのかなと。店頭に置いていないものは売れようがないですから。1月に発売したときの反響も良かったですし、今回のキャンペーンもよかったですね。
───続いて大ヴァンガ祭で先行販売される「フェスティバルブースター2024」についてもお聞きします。目玉としてSER(スペシャルエネルギーレア)が登場しますが、エネルギーカードは開発当初からこういったコレクターアイテムとしての扱いも想定していたのでしょうか。
木谷:今までもいろいろな絵柄のエネルギーカードはあり、こういうコレクターズアイテム的な需要もあると思っていました。また、エネルギーカードについてはコラボ等でも使いやすいカードで、開発スタッフも当初からこういう使い方も想定していたのかなと思います。
───ブースターパック「次元超躍」について、発表時のステージでは『Reバース』でも登壇した大張正己監督が再び登壇されましたが、予定になかった登壇というのは本当なのでしょうか。
木谷:はい、ロボや勇者と言ったら大張さんだろうと、発表会当日に声をかけて急遽登壇してもらいました。ステージ上で大張さんが話していた《超次元ロボ ダイカイザー》(注:デザインやイラストは大張正己氏が手掛けている)の再登場や「勇気爆発バーンブレイバーン」のコラボ、超次元ロボのPVの要望は、直前の打ち合わせにはない内容で驚きましたけど(笑)。
───その時のユーザーの反響は非常に大きいものでしたが、現状の実現度はどのくらいのものなのでしょう?
木谷:《超次元ロボ ダイカイザー》の再収録は100%、アニメPVについては90%くらいですね。いつかはともかくとして、これはもうやるべきだなと思いました。「勇気爆発バーンブレイバーン」とのコラボは弊社だけでなく関係各所との調整もあるので、まだどうなるかわかりませんけど。
───戦略発表会の壇上で出た話が実現するというのは、とても夢がありますし、今後もこういうことに期待して戦略発表会が楽しみになりますね。最後に、デジタルゲーム版の「カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ」(以下『ディアデイズ』)ですが、発売から1年半ほど経った今もDLCが継続的に出されていてサポートが手厚く感じます。こちらの現状についてお伺いできますでしょうか。
木谷:『ディアデイズ』は今でもゲーム本体が売れています。毎週コンスタントに売れていて、来月末には6万本に到達するところです。
───オンライン対戦のゲームはユーザー数が多いということ自体がこれから遊ぶ人にとっての後押しになりますから、非常にうれしい情報ですね。ちなみにどのプラットフォームが一番売れているのでしょうか?
木谷:Switchのパッケージ版、DL版、Steam版ともにだいたい同じくらいですね。
───Steam版は中国語や英語のローカライズもされているということですが、海外でも売れているのでしょうか?
木谷:Steam版のユーザーの多くが海外ユーザーになります。SwitchのDL版にも海外ユーザーがいますし、正確に把握しているわけではありませんけど、『ディアデイズ』のユーザーの半数以上は海外ユーザーなのかなと思います。
───それでは、タイトルとしては最後になりますが『Shadowverse EVOLVE』(以下『エボルヴ』)についてお伺いします。『ヴァンガード』コラボの発表は、戦略発表会でひときわ大きな歓声が上がったのかなと思いますが、いかがでしたか。
木谷:これは意外性が非常に大きかったからかなと思います。このコラボはCygamesさんからの提案で、『ヴァンガード』が弊社のオリジナルIPだからできたことですね。やはり『ヴァンガード』の海外人気を見られていてのことだと思います。『ヴァンガード』の売上の5割は海外の売上ですからね。発表後も想定以上の反応を頂いています。
───今回のコラボは『ヴァンガード』初期のカードとのコラボですが、今後続いていけばその後のカードたちが登場するということも?
木谷:それは最初のコラボ弾が出てみないことにはわかりませんね(笑)。まずは勢いもあってユーザーの印象も強かった最初期のカードからコラボしようという流れになります。
───『エボルヴ』の発表で気になったのですが、『エボルヴ』は新カードの性能を発表したり、大会のレギュレーションを発表したりと、ほかのタイトルの発表よりもユーザーライクなアナウンスが多いと感じました。
木谷:これはやはりゲーム性の高いタイトルだからですね。発表内容もほかのタイトルとは差別化できています。ほかのタイトルを観に来た方には少しとっつきにくいかもしれませんが、発表に関してはこの傾向でいいと思います。
◆アナログゲームの祭典!「カードゲーム祭2024」
───続いては「カードゲーム祭2024」についてお伺いします。イベントの開催も迫り、各タイトルの大会についても受付されているところだと思いますが、今回はサービスが終了したブランドのイベントもあるということで、今まで以上の反響があったと思います。こちらについていかがでしょうか?
木谷:『フューチャーカード バディファイト』(以下、『バディファイト』)の反響は特に大きいですね。当初の想定よりも多くの方から応募があり、人数を増やしては満員になり、増やしては満員になりという状況です。旧タイトルのイベントへの反響に驚かされていて、来年以降も考えていきたいと思っています。
『バディファイト』では「フューチャーカード バディファイト 10th ANNIVERSARY カードセット」という記念セットを販売しますが、当初想定していた数量より需要が大きく、何倍もの受注をいただいたので驚きました。
『バディファイト』は当時小学生が多くプレイしていて、そのユーザーたちが10年後大きくなって、再び『バディファイト』の商品を買ってくれているのだと思います。ユーザーが旧タイトルを大事にしてくれているように、会社としてもこれらタイトルは大事にしていきたいですね。
───以前から「カードゲーム祭2024」ではブシロードのタイトルだけでなくアナログゲーム全体のお祭りにしていきたいとおっしゃっていましたが、ブース出展の企業を見ると株式会社ブロッコリー(『Z/X -Zillions of enemy X-』)や大興印刷株式会社(『FORCE OF WILL』)など、いわゆる競合他社も出展されていて驚きました。
木谷:「カードゲーム祭」というイベントは、今後一つのプラットフォームにしたいと思っています。いろんなカードゲームのユーザーが来たり、そもそもカードゲームのユーザーではなく、ボードゲームのユーザーだったり、ゲームはやっていないけど『ヴァンガード』の世界観やキャラクターが好きという方が来たり、外国の方が遊びに来たりだとか、大きなプラットフォームに育てていきたいと思っており、今回がその第1弾のイベントになります。だから「ブシロードカードゲーム祭」から「ブシロード」を取ったイベントにして、毎年同じ時期に開催するようにしました。
参加人数は去年1万5千人でしたが、今年は2万人を目標にしていて、どんどん参加人数を増やしていきたいですし、場合によっては2日から3日開催にするといったこともやっていきたいですね。
───ゆくゆくは東京ゲームショウのようなイベントを目指されるのでしょうか?
木谷:いや、これはブシロードが主催のイベントで第三者の会社が主催するわけでなない(注:東京ゲームショウの主催はゲームメーカーではなく、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会という業界団体)ので、限界はあると思います。私たちとしては人は集めますので、そこでみなさんユーザーと交流してください。そこからどんどん広げていきましょうという形です。このブランドを広めていって、アジア各国からの出展もあるとうれしいですね。今年はビッグサイトの西3・4と南3・4の会場を使用しますが、今後はもっと広げていこうと思います。
───海外のカードゲームについては国内の多くのユーザーもまだ把握できていないでしょうし、こういうところから海外カードゲームに触れて国内・海外カードゲームが相互作用的に盛り上がっていくと楽しそうですね。今回の「カードゲーム祭」の気になるところを2つお伺いしましたが、木谷社長からもここに注目してほしいというところはありますか?
木谷:今年はメインステージをなくし、各タイトルごとにミニステージを作ってゲストをそこにお呼びする形にしました。今まではメインステージとカードゲームのコーナーが分かれていて、それだとやる意味が薄れてしまうと思っていましたから。それを各タイトルごとに散らしたので、コーナーによってはゲストとユーザーの一体感が非常に高いステージも生まれてくるのではないかと考えています。
それと、皆さんに名前を知ってもらいたいと思い、イベント名に急遽「PalVerse presents」と追加しました。この「PalVerse」は非常にクオリティの高いトレーディングフィギュアのブランドで、これから本格的に飛躍するだろうと期待しています。こちらのトレーディングフィギュアも展示するので、こちらもぜひ見学してもらいたいです。
ほかにも「カードゲーム祭」としては5月25日に九州でも開催するので、お近くの方にはぜひ足を運んでもらえればと思います。
◆新規タイトルが続々登場! 今後のカードゲーム業界はどうなる!?
───それでは最後になりますが、『ドラゴンボールスーパーカードゲーム フュージョンワールド』(バンダイ)や『名探偵コナントレーディングカードゲーム』(タカラトミー)など、各メーカーからも今年は新規カードゲームが登場し、カードゲーム業界がかなり賑わっているように感じられます。ブシロードからも『ドリームオーダー』が発売されたばかりですが、今のカードゲーム業界や今後の動向についてはいかがでしょうか?
木谷:すべてが大型タイトルというわけではありませんけど、来年は新作タイトルがさらに増えると思います。その要因はいろいろありますが、例えば外部要因だとスマホゲームの会社が昨今のデジタルの調子が悪く、カードゲームのほうが簡単そうに見えて参入しようとするわけです。そういう誤った新規参入もありますが、それはここでは置いておきます。
今カードゲーム自体のマーケットが大きくなる理由は2つあり、一つはいわゆるパッケージのゲームやCD、Blu-rayや本などのアナログなもの、デジタルをアナログのパッケージにしたもののマーケットの縮小です。これが縮小していくと、エンタメを提供しているTSUTAYAやブックオフ、GEOのようなお店は売り場が余っていきます。そういうお店が今はどんどんカードゲームを扱っていますよね。先に挙げたお店は地方にも出店していおり、そこのカードゲームの売り場が大きくなると、店員も増えていき、カードゲームで飯を食うという人もどんどん増えていきます。特に小売ですけど、社員、契約社員、アルバイトなどカードゲームを売ったり大会を運営する人が増えてくると、カードゲームを買いましょうと勧めてくる人が増えるわけです。売り場が広がり人も増える。これが要因の一つです。これはカードゲームが努力したから広がっているのではなく、ほかが縮小しているからカードゲームがそこに入ったわけですね。
2点目は『ONE PIECEカードゲーム』です。これは30年ぶりのパラダイムシフトでした。
『マジック:ザ・ギャザリング』が1993年に登場し、それ以降もいろいろなカードゲームは登場して、2000年~2001年ごろは特に多く新規タイトルが登場しました。カードゲームというのは「永遠に終わらない幻想」というのが必要で、例えば『マジック:ザ・ギャザリング』は世界観はオリジナルなのでクリーチャーはいくらでも作り続けることができます。『遊☆戯☆王OCG』はキャラクターの世界観とカードの中の世界観はありますが、カードの中の世界観ならいろいろなものを作ることができます。これは『デュエル・マスターズ』や『ヴァンガード』も同じです。『ポケモンカードゲーム』でも「ポケットモンスター」はキャラクターは尽きるイメージがまったくしませんよね。
もう一つが『WS』型のいろいろな作品が参戦するパターンで、その時々に登場する人気作品に参戦いただくことで続けることができます。これまではこの2パターンくらいしか、カードゲームが続くイメージを出せませんでした。ただ、『WS』型の場合はバランス調整が非常に難しく、バランスが悪いとキャラクターカードゲームとしては成り立たないので、内部的にはかなり難しいというところはありました。
『ONE PIECE』は原作者があと何年で終わります、物語は最終章ですと語っている作品で、ここからキャラクターがどんどん増えるとはあまり想像できません。それに作品にはエンタメ性の高い作品と作家性の高い作品があり、『ONE PIECE』はエンタメ寄りにどんどん映像を作って好きにしてくださいというタイプではなく、作家性の高い作品として終わらせるタイプだと思っています。ということはある程度の終わりをみなさん感じてるわけじゃないですか。それなのに『ONE PIECEカードゲーム』をみなさん買いましたよね。ということは「永遠に終わらない幻想」というイメージは半分くらいはもういらなくなったのかなと思っています。そして、そう考えた場合に成立するカードゲームというのはいっぱいあると思います。そのことに気づいて新規参入を検討しているところは、今いっぱいありますよ。
そしてそれが表に出るのは来年の春以降、再来年の春くらいまでカードゲームの新規リリースラッシュになると思います。
先日はカバーさんが『hololive OFFICIAL CARD GAME』を発表しましたが、これも非常にユーザーに受け入れられると思います。ホロライブは所属タレントが現在63名いて、この数ならカードゲームは成り立ちます。ただ、4年後、5年後を考えると、どんどん新しい人がデビューしないと開発側がかなり大変そうに思えるので頑張ってほしいですね。
他メーカーが新規タイトルを出すように、実はブシロードからも今後いろいろと出していきます。それらは順次発表していきますが、その中には商品の発売回数をある程度決めて出すというタイトルもあります。これは商品発表時にもお伝えすることですが、例えば商品は4回発売する予定だと最初に伝えることで、4回だけなら買ってみようかなという人たちが私はいると思っています。カードゲームはずっと続いていくことが大事ですが、それをハードルに感じる人たちもいます。そこでボードゲームのように遊べる商品にすることで、カードゲームの敷居を高くせず手にとってもらえる商品になると思います。
───未発表のタイトルが複数あるとのことで、来年の戦略発表会が非常に楽しみになりました。
木谷:来年以降はすごいことになりますよ。超ご期待ください!
『ONE PIECEカードゲーム』が大ヒットしたときに、どこまでヒットした本質を考えられたのか。ゲームがおもしろい、原作がビッグタイトルだからということで片付けてしまう人が非常に多く見受けられましたが、本質的には「永遠が必要じゃなくなった」ということだと思います。そうして『ONE PIECEカードゲーム』がヒットしたことで出てきたのが「ドラゴンボール」と「名探偵コナン」のカードゲームです。
ちなみに、なぜ今のタイミングで2つのビッグタイトルのカードゲームが出てきたかと言うと、おもちゃ会社のカードゲームだからです。おもちゃ会社だからノウハウや開発力がありすぐに作れましたけど、これが今までカードゲームに縁のないところが出すならあと1年はかかるでしょう。
自社IPでカードゲームを作れるだろうと参入してくるメーカーは多いと思いますけど、これに関してはあまり続かないだろうと予想しています。カードゲームに参入するには、やはりキャラの数が絶対に必要で、それを賄えるものはそれほど多くないと思います。それとグローバルでの知名度ですね。国内だけじゃなく海外でも売れないと今後は厳しいでしょう。
こういった流れの中で弊社は1年半ぐらい前から開発ラインを確保しています。自社開発もできますし、他社の開発企業にも協力頂いてます。それに今は製造ラインの確保がどこも難しい状況です。ですので以前から付き合いのあるマレーシアの工場にも先日出資して製造ラインを押さえました。
さらに弊社はブシロードEXPOを海外で開催していますけど、これは海外に浸透させるためだけではなく、グローバルで展開するにはこのくらいやらないと成り立ちませんよという国内向けのプレゼンでもあります。
開発ラインに製造ライン、そしてグローバルな展開力。カードゲームを手掛けるうえで今はこの3つが必要で、それらを確保したうえでIPが必要になってきます。この3つの要素がわからないまま、IPだけで参入できると思っているところが多く感じます。
ただ、小売の新規参入や売り場が広がっているのと同じように、メーカーとしての新規参入が増えるというのはカードゲーム業界にとって非常に大事なことです。新規タイトルが成功する・しないにかかわらず、関わっている人の数が増えるということは、それだけ間口が広がることに繋がります。カードゲーム業界は今が『ポケモンカードゲーム』のおかげでピークだなんて言われていますけど、来年あたりからもう1回大きく伸び始めると思いますよ。僕は国内のマーケットはここからさらに倍になると考えています。
───木谷社長ならではの視点で大変興味深いですし、今後のカードゲーム業界の盛り上がりに期待が高まりますね。本日はお話いただきありがとうございました!