『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「Opus VII」発売から今に至るまでの環境の変遷を、関東の強豪プレイヤー、ちょーぎょーじさんが解説します。
◆はじめに
皆さんこんにちは。『FF-TCG』プレイヤーのちょーぎょーじです。
「Opus VII」が発売されて1か月と少しがたち、日本国内では「名人戦」が始まり、そして「世界選手権」が開催され、環境も成熟してきました。
ここでは、それらの大会結果を踏まえて環境考察する記事を書いてみたいと思います。
これから大会に出ようと考えている人に役立てば幸いです。
◆「Opus VII」発売からこれまでの環境の推移
少し前の話になりますが「Opus VII」環境が始まったとき、まだ大会の結果が何も出ていないにも関わらず既にマークされていたデッキがあります。それが「水単フースーヤ」です。
このデッキは前環境締めくくりの「MASTERS2018 FINAL」で、ハリガイさんとサワダさんが使用し1、2位を独占するという衝撃的な結果になりました。
そのためデッキの強さは折り紙つきとされており、ここに「Opus VII」から【7-125C】《リヴァイアサン》が加わり、さらに【7-119H】《ハリカルナッソス》によって効果に選ばれないフォワードも除去できるようになるというパワーアップを果たしました。
他に前環境で強さを誇っていたデッキといえば【4-085H】《ダダルマー》、【4-058C】《サボテンダー》を使用した「土風」や、今は禁止カードに指定されましたが【5-034C】《ゲスパー》、【5-040C】《呪術士》を使用した「氷単」などがあり、これらも続けて使われることが考えられていました。
また「Opus VII」のカードを使ったものでは【7-128H】《ユーリィ》と【7-054L】《チェリンカ》を使用した風属性のデッキ、【7-002R】《アイギス》と【7-012H】《ソール》を始めとするジョブ「光の戦士」を持つフォワードが多く採用された火属性のデッキなどが出てくるのではないかと予想されていました。
そのような状況で「名人戦」関東予選が開かれます。
◆名人戦関東予選の様子
やはり「水単フースーヤ」の使用率が高く、次いでその「水単フースーヤ」に有利な「氷単」が続くかたちとなりました。
ただ「氷単」に関しては先日の禁止改訂により【5-034C】《ゲスパー》、【5-040C】《呪術師》が構築戦で使えなくなるため最後に使っておいたという人も一定数いたようです。
・権利獲得者のデッキ分布
「名人戦」関東予選上位入賞者のデッキ分布は下記のようになりました。
・氷単 3
・水単 2
・土単
・雷単
・水風 2
・水土
・風土
・火土
それぞれのデッキリストはこちらからご覧ください。
やはりというか、上位陣に共通する事項として「水単フースーヤ」への意識の高さがうかがえます
土属性のデッキなら【1-117R】《ヘカトンケイル》、風属性なら【1-088C】《弓使い》と【1-089H】《リュック》。氷なら【2-037R】《ジル・ナバート》を採用し【2-146H】《フースーヤ》を効果的に使われないようになっています。
また、すばやいフォワード展開で「水単フースーヤ」の体勢が整う前に押し切るのも対策の一つです。今回のデッキでいえば「火土光の戦士」がそれにあたります。
特筆するべきは【ジョブ(光の戦士)】をフィーチャーしたデッキにもかかわらず【5-146H】《ウォル》ではなく【5-075L】《ウォル》が採用されている点です。「水単フースーヤ」にはEXバーストが多数搭載されているため、早く攻めてもEXバーストでしのがれてしまうことが多いのですが【5-075L】《ウォル》を使用することでカバーしています。
ただ、そういった対策をされてもなお「水単フースーヤ」が2名いることを考えると、今後も引き続き環境には存在し続けるでしょう。
手札破壊に特化した攻撃的な「氷単」がいなくなることを考えると、使用率もまた増えるかもしれません。
そして注目すべき点として、この時点では権利獲得者のなかに【7-128H】《ユーリィ》を使用しているプレイヤーが一人もいませんでした。
フィールドにいるだけで要注意のカードとして、これまでは【4-085H】《ダダルマー》、【5-075L】《ウォル》、【5-068L】《ヤ・シュトラ》があげられていましたが「Opus VII」でさらに【7-128H】《ユーリィ》、【7-077L】《ノクティス》、【7-018L】《ラァン》が追加されました。そのため単体除去への意識が高まり、デッキの採用カードにも影響があったのではと思います。
私もこの大会では「土単」を使って権利を獲得できたのですが、パワーで押すだけでなくフォワードを除去する必要性を感じ、【4-096H】《ラウバーン》を採用することにしました。
このようにプレイヤーの意識が単体除去に向けられた結果【7-128H】《ユーリィ》を主軸としたデッキが勝ちきることができなかったと考えられます。
また【7-128H】《ユーリィ》を軸とした風単などは今までと違うアプローチのデッキになりますので従来の「風単」にただ【7-128H】《ユーリィ》を投入すればいいわけではなく、この時点ではデッキを完成させられなかったというのも理由でしょう。
それとは対照的に【7-129H】《ガルデス》は横浜大会の時点で早くも実績を出しました。
土単、雷単、氷単とまったく違う3つのデッキに採用されていることを見るに、デッキに入れやすい光闇のカードだといえるでしょう。
先ほども述べたようにこの大会は単体除去が強い環境だったため、除去に対してアドバンテージを得られる【7-129H】《ガルデス》が効果的に働く場面が多かったのだと考えられます。
この結果から環境初期の主要なデッキが定まり、既存のデッキはより正確にチューンされ、そしてその環境に対して新しいデッキがどうアプローチしていくのかという研究の時間が始まります。
●氷単
「氷単」は【5-034C】《ゲスパー》と【5-040C】《呪術士》を失い、速攻タイプのデッキは立て直しを余儀なくされています。
またアクティブ状態のFWを除去できるカードがほとんどないため、先ほどあげたようなフィールドにいるだけで要注意のカードの処理が難題となります。
注目のカードは【7-033R】《スノウ》でしょうか。継続的にフォワードをダルにできるので攻めをサポートする力が非常に高く、ダルにさえすれば除去できるカードも多くあるので氷属性を中心にしたデッキでは活躍してくれそうです。環境が遅くなるのなら、ダル・凍結を中心とした速攻戦略がまた有効になるかもしれません。
逆に環境が高速化し、コストの軽いフォワードが増えれば【1-192S】《シド・レインズ》、【7-042H】《ラスウェル》といったカードも非常に有効になるでしょう。
●土単
手前みそですが「土単」はこれからまだまだ調整しがいのあるデッキです。
【7-069C】《コルカ》を得たことによりデッキのキーカードやそのときの状況に応じたカードをサーチすることが可能になりました。
【3-095R】《ヤン》と【3-073C】《アーシュラ》をそろえる、《プリッシュ》を複数枚集める、1枚だけ入れた【5-083C】《PSICOM治安兵》を引き込むといった動きはいずれも強力です。
また4コストのフォワードは優秀なものが多く、その反面優秀な3コストのフォワードが少なかったという弱点がありましたが【7-077L】《ノクティス》と【7-129H】《ガルデス》の登場でその点も補われました。
優秀な闇フォワードを得たことで【5-078R】《ガブラス》と【3-147L】《戒律王ゾディアーク》のコンボも狙いやすくなり、【1-107L】《シャントット》と合わせて2種類の全体除去を搭載できるため、効果によって選ばれないフォワードに対して耐性があります。同じく全体除去としては【2-094H】《リディア》という選択肢もあります。
ただ展開力が低いため、【3-123R】《暗黒の雲ファムフリート》や【7-125C】《リヴァイアサン》などが弱点になります。
【1-093H】《ヴァニラ》を投入する、さらにフォワードのコストを下げて2コストのものを採用するといった調整が必要になるでしょう。
●水土
「水土」は今までにあまりなかったデッキで【6-126R】《レイラ》+【4-133C】《バイキング》に代表される水属性の展開力の高さに【5-075L】《ウォル》や【7-077L】《ノクティス》といった強力な土属性のフォワードを組み合わせたものです。
注目なのは【5-118L】《ラムザ》の採用です。このデッキはフォワードが並びやすいうえ【5-075L】《ウォル》によってパワーが10000に届きやすくなっています。出すために必要な雷属性のCPは【6-084L】《レオ》や【1-107L】《シャントット》が供給してくれます。
「水土」の組み合わせでは基本的にヘイストを持ったフォワードを採用できないため、除去能力と合わせて奇襲性が高いのがメリットです。
除去されても構わない水のフォワード、対処の難しい土のフォワードという攻め手の攻勢に加えて【5-118L】《ラムザ》や【5-126L】《暗闇の雲》といった除去能力を持つフォワード、さらに【1-107L】《シャントット》がひかえており「攻めつつ除去」ができるデッキになっています。
●風土
「風土」は前環境でもトップにいたデッキでしたが現環境でも結果を残しています。
「Opus VII」で得たカードは【7-077L】《ノクティス》くらいなので大まかな構成は変わっていません。
「風土」は完全に「受け」のデッキのため、状況に応じて適切なカードをサーチ、プレイすることが求められます。
まだわからないデッキが多い環境初期は、受け間違えが発生しやすくそのまま負けにつながることも多いです。
徐々に環境が固まってきた今の時期こそ強さを発揮できるようになってきているデッキですね。
●風水
「風水ユリパ」は【6-062R】《リュック》と【6-053R】《パイン》がそろうことによって【ジョブ(カモメ団)】のフォワードが効果に選ばれなくなります。
それに加えてアビリティに選ばれない【6-044L】《ジタン》、アビリティや呪文によってダメージを受けない【5-068L】《ヤ・シュトラ》の計5種15枚のみでフォワードが構成されており、そのぶんのスロットに召喚獣を18枚投入するという非常に特徴的な構築です。
除去耐性が非常に高いため単体除去のみで構成されているデッキには非常に強く【1-107L】《シャントット》や【3-147L】《戒律王ゾディアーク》といった全体除去に対しても【5-068L】《ヤ・シュトラ》がカバーしてくれています。。
最強の布陣をそろえさせてくれる環境かどうかによって活躍の度合いは変わってきそうです。
環境に多いデッキはおおよそこのようなラインナップでした。
ここでは紹介していませんが「雷単」や「火単」、「火土」なども躍進のときをうかがっています。
◆世界選手権開催、そして《ユーリィ》の台頭
その後に開催された「世界選手権」では【7-128H】《ユーリィ》の実力が花開くこととなりました。
この大会では「風単ユーリィ」に加えて「風水ユーリィ」が登場し、いずれも大きな活躍を見せました。
特に「風水ユーリィ」は先日開催された「名人戦」東北予選でAXZさんが使用し、ここでも優勝という結果を残しています。
「名人戦」東北予選レポートとデッキリストはこちらでご覧いただけます。
「風単」に水属性のカードをタッチしたかたちのこのデッキは「風単」の展開力に水属性の除去能力を加え、さらに【7-128H】《ユーリィ》の器用さをトッピングしたぜいたくなデッキです。
相手の除去に対してはバックアップをアクティブにする効果を介して1ターンに複数のフォワードを展開することで耐性を得つつ、特に相手から狙われる【7-128H】《ユーリィ》も出したターンにカードを引くなどして、除去されてもアドバンテージを失いにくくなっています。
相手のフォワードには【3-123R】《暗黒の雲ファムフリート》で対処しつつ、横に並べてくる相手に対しては【7-044H】《アルハナーレム》と【1-198S】《ヴァルファーレ》、【5-062L】《ディアボロス》を組み合わせた全体ダメージと弱体化、そしてバックアップをアクティブにしての追撃という対応策を持っています。
序盤にバックアップをしっかり置けなかったときにごまかす手段がないということだけが弱点ですが、
・採用されているフォワードが強力
・極端に不利な相手のいない対応力の高さ
・EXバーストを持つカードが無理なくたくさん採用できる
・ドロー手段が多く展開が安定する
など、環境研究が進むことで生まれた新機軸のデッキとなっており、今後の環境に大きく影響してきそうです。
これ以降の大会では意識しておきたいデッキの筆頭といえるでしょう。同時に【7-128H】《ユーリィ》は確実に除去できるようにしておきましょう。
◆終わりに
「Opus VII」が発売されてからここまで、どういうデッキが生まれ、活躍してきたかを駆け足でですが一通り紹介しました。
すでに「風水ユーリィ」という新デッキが生まれていますが、これからもさまざまなデッキが誕生することでしょう。
環境が【7-128H】《ユーリィ》をはじめとする風、水、土といった属性に偏るのならば多くのデッキは低速、中速化するため、その隙をついて氷や火などの速効系のデッキが勝利するようになりますし、それが進んで速効系に傾くのならば、フォワードへの処理を万全なものとする土風のような腰の重いデッキが輝くでしょう。
『FF-TCG』は「自分の好きなキャラクターを使いたい!」という選択をするプレイヤーが多くいらっしゃるため、いわゆるメタゲームを読み切るのは非常に難しいです。しかし、そのなかでも出遅れないように今どういったカード、戦略が注目されているのかには目を光らせておきたいところです。
次の機会があれば、またそのときの環境を紹介できればと思っています。
それでは、最後まで読んでいただいてありがとうございました。