【FFTCG】環境のベストデッキ!? 「風水【空賊】」深堀りインタビュー!

『FINALFANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「第3期名人位決定戦」で好成績をおさめた「風水【空賊】」デッキについて、製作者のeurekaさんにインタビューを行ないました。

◆はじめに
みなさん、こんにちは。『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。

前回の第3代“FFTCG名人”しどさんへのインタビューは楽しんでいただけたでしょうか?
新たな禁止・制限カードの制定直後の大型トーナメントでの優勝デッキということで、しどさんが使っていた「火土【アバランチ】」と「風氷」デッキには注目が集まっていると思います。

しかし「第3期名人位決定戦」で活躍したデッキはこの2つだけではありません。

今回は、インタビューでしどさんも大会のベストデッキに挙げていた「風水【空賊】」について、その製作者であるeurekaさんにお話をうかがいました。
このデッキを使用したeurekaさんは「第3期名人位決定戦」においてベスト4、さらにデッキを共有したダンカンさんは準優勝という結果を残しています。

現環境の台風の目と言えるこのデッキが一体どんなものなのか、お届けしていきたいと思います。

それではさっそく始めていきましょう!


◆「第3期名人位決定戦」のベストデッキ!?「風水【空賊】」の強み

――それではよろしくお願いします。今回の「第3期名人位決定戦」、eurekaさんはベスト4という結果でしたが、eurekaさんが作られた「風水【空賊】」を使ったダンカンさんが準優勝、ベスト4のなかでも実に3名が「風水【空賊】」を使用していたということで、今大会における最強デッキの一角であったことは疑いようがない事実だと思います。ズバリ「風水【空賊】」というデッキの強さはどういったところにあったのでしょうか?

eureka:「風水【空賊】」は2属性デッキですが、その本質は「風属性が持つ展開力」にあると思っています。
【空賊】のキーカードである【14-125L】《ヴァン》imageは風/水属性を持つ多属性カードで複数のアビリティを持っていますが、その根幹となるのはさまざまなシチュエーションでバックアップをアクティブにできる能力にあり、水属性を必要とする条件が付いた風属性のフォワードであるというのが私の個人的な考えです。


そのため「風水【空賊】」と言いつつも本質的には「風単」のようなデッキであると考えていて、「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」環境では、この展開力を活かして補助的に【空賊】を採用する構築が一般的でした。【空賊】ギミックはメインではなかったわけですね。しかし「クリスタルの支配者」で登場した【15-047R】《カイツ》imageや【15-115H】《パンネロ》imageによって【空賊】シナジーが強化され、現在は【空賊】シナジーにフォーカスしたデッキに変化していると考えています。

●デッキリスト:「風水【空賊】」(「第3期名人位決定戦」ベスト4 フォーマット:2デッキスタンダード)

カード番号 カード名 枚数
フォワード(24枚)
【14-125L】 《ヴァン》 3
【3-056H】 《ジタン》 3
【13-048H】 《バルフレア》 3
【14-042L】 《雲神ビスマルク》 3
【14-056R】 《嵐神ガルーダ》 1
【15-047R】 《カイツ》 3
【10-109C】 《エルザ》 2
【14-102L】 《海神リヴァイアサン》 3
【15-115H】 《パンネロ》 3
バックアップ(16枚)
【9-055C】 《フラン》 3
【12-038H】 《アルテア》 1
【14-053R】 《ミュリン》 1
【14-054R】 《ヨーテ》 2
【15-056R】 《フィロ》 3
【4-138R】 《メルウィブ》 3
【10-118R】 《トマジ》 3
召喚獣(7枚)
【8-046R】 《アレキサンダー》 3
【10-055H】 《チョコボ》 2
【9-114C】 《不浄王キュクレイン》 2
モンスター(3枚)
【14-049H】 《テュポーン》 3

【15-115H】《パンネロ》imageはフィールドの【空賊】の数だけコストが軽減されるアクションアビリティを持っており、これを毎ターン起動することで莫大なアドバンテージを稼げるのが現在の「風水【空賊】」というデッキの強みです。

また、このデッキではもう1つの強みとして【14-042L】《雲神ビスマルク》imageの存在があります。【3-056H】《ジタン》imageや【14-049H】《テュポーン》imageなどの干渉手段を使いまわしてゲームをコントロールできるのは現在の風属性が持つ強力な個性のひとつで、これと【15-115H】《パンネロ》imageを介した【空賊】ギミックという2つの継続的にアドバンテージを獲得できるエンジンを積めるようになったことで「風水【空賊】」は非常に強力なデッキに成長しました。

また、従来の「風単」と異なる点として、水属性が入ることで【14-102L】《海神リヴァイアサン》imageを採用できる点が挙げられます。
「風水【空賊】」はアドバンテージを稼げるだけでなく、それを還元できるリソースの使い道があるのも強力です。

――僕も「Opus?XIV ~クリスタルの深淵~」環境の「MASTERS?2021」で、L6構築ではありましたが「風水【空賊】」を使用する機会がありました。正直、当時は今ひとつ攻め手に欠けるという印象でしたが、もう少し詳しく【15-115H】《パンネロ》imageや【15-047R】《カイツ》imageが加わったことによる変化についてお話しいただけますか。

eureka:先ほども少しお話ししましたが【15-115H】《パンネロ》imageはお互いのターンに0コストでカードをドローできうるというのがシンプルながら強力です。【15-115H】《パンネロ》imageが生き残ればゲームが長引くほどアドバンテージを重ねていけるので、リソースを稼ぐ性能においてこのカードの右に出るものはいないと思います。

もともと風属性を含むデッキはバックアップをアクティブにすることで手札を使わずにカードを展開できるため、むしろあり余るCPの使い道が課題でした。CPはあるのに手札がないという状況が多かったわけです。これを解決するためにかつては【7-128H】《ユーリィ》image、最近は【11-056R】《フィオナ》imageや【12-048R】《チョコラッテ》imageなどをドローソースとしていましたが、ここの部分が【15-115H】《パンネロ》imageに置き換わり、より早く、効率的にCPを使うためのカードを供給してくれるようになりました。

カードを引く以外の選択肢も優秀で、相手のパワーをマイナスすることでコンバットトリックや直接的な除去としての運用もできますし、味方の【空賊】を守る効果も強力で、コスト2と軽いフォワードなのに相手からすると除去必須の避雷針となり、盤面の維持にも役立ちます。
自身のコストぶんのアドバンテージはフィールドに出たターンには稼いでしまうので、大抵の場合相手はコスト面での損を強いられながら【15-115H】《パンネロ》imageを除去しなければなりません。

――継続的なドローソースという点が展開力の高い風属性とシナジーがあり、アビリティのほかの選択肢も潜在的なアドバンテージを稼げるため非常に強力ということですね。【15-047R】《カイツ》imageについてはどうでしょうか。

eureka:【15-047R】《カイツ》imageは恐らく【空賊】のなかでも、使いところが難しく、一見すると強さのわかりにくいカードなのかなと個人的に思っています。

【15-115H】《パンネロ》imageと違いアビリティはひとつだけですが、本当にいろんな使い方があって、それをうまく使い分けるのがおそらく「風水【空賊】」をプレイするうえでのポイントになるんじゃないかなと思っています。

――なるほど。具体的にどういったポイントがあるのかお聞きしてもいいですか?

eureka:【15-047R】《カイツ》imageには、

・フィールドに【空賊】をそろえるためのエンジン
・【空賊】を守るための防御手段
・相手ターンにアクションを増やすためのアドバンテージソース

という3つの役割があります。

まず、フィールドに【空賊】をそろえるためのデッキのエンジンとしての使い方ですが、先ほどお話ししたとおり、このデッキは最終的に【15-115H】《パンネロ》imageのアクションアビリティを毎ターン0コストで起動して継続的なアドバンテージを獲得することが目的なので、できるだけ早くフィールドに【空賊】をそろえていく必要があります。

そこで、すでにフィールドにいる【14-125L】《ヴァン》imageを出しなおして、足りないバックアップや【15-115H】《パンネロ》imageをサーチして盤面の完成を狙っていくというのがこの使い方です。

次に【空賊】を守るための防御手段としての使い方ですが、これは特に【14-125L】《ヴァン》imageをフィールドに出すときに【12-002H】《アマテラス》imageをかわすのに役立ちます

【14-125L】《ヴァン》imageは高コストかつパワー8000のフォワードなので、【12-002H】《アマテラス》imageにとっては格好の餌食とも言えます。そのため「Opus XIV ~クリスタルの深淵~」環境では今ひとつ活躍しにくいカードでしたが、「クリスタルの支配者」で【15-047R】《カイツ》imageが登場したことにより、この弱点をある程度克服することができました。

また、【1-107L】《シャントット》imageのような全体除去に対しても【15-047R】《カイツ》imageは有効です。

特に現在は【14-062L】《岩神タイタン》imageや【15-082H】《ヘカトンケイル》imageなどの全体除去カードをふんだんに採用した「土水」などのデッキも存在するため、そういったデッキに対しても【15-047R】《カイツ》imageを使った除去回避は非常に重要でした。


この2つの使い方が、【15-047R】《カイツ》imageの運用方法として多くのプレイヤーがまず想定していた部分だと思います。

しかし、個人的には相手ターンにアクションを増やすためのアドバンテージソースとしての使い方が「風水【空賊】」を使ううえでもっとも重要で、難しい使い方だと考えています。

バックアップが十分に並び、特に除去に狙われているタイミングでもないときに【15-047R】《カイツ》imageで【14-125L】《ヴァン》imageを出し直し、再び【15-047R】《カイツ》imageを出してターンを終えるというプレイをする機会が大会中に何度かありました。

一見するとこれは前述した2つのプレイと比べて、ただ【15-047R】《カイツ》imageをデッキから1枚減らしてバックアップがアクティブになるだけの意味のないプレイにも見えますが、こうして相手ターンに使えるコストを確保することで【15-115H】《パンネロ》imageのアクションアビリティを使えるようになるので【15-115H】《パンネロ》imageを活かしきるうえでは実は重要なのです。

ただ、このプレイをするうえで難しいのが、相手ターンに何CP必要なのか? そのコストは相手ターンに使う必要がるのか? 【15-047R】《カイツ》imageを起動する瞬間に隙を見せていいのか??といった判断です。

この判断を的確にできるかが「風水【空賊】」のポテンシャルを発揮しきれるかの分水嶺であると考えています。

――構えているだけで相手にとっては厄介なカードですが、それをあえて能動的に消費することでさらなるアドバンテージ獲得につなげられるわけですね。ただし、そのタイミングはよくよく見計らっていく必要があると。

◆構築の細部に宿る完成度
――「風水【空賊】」はコンセプトが明確で採用するカードもある程度決まっているため、どういうふうに動くのかがイメージしやすいデッキだと個人的に考えていますが、だからこそeurekaさんの「風水【空賊】」は細部に至る調整によって完成度の高さを感じさせるのではないかと思っています。そこで、ここからは採用したカードのそれぞれの調整意図を聞いていきたいと思います。

まず、今回1枚採用されている【14-056R】《嵐神ガルーダ》imageは、以前「風単」のインタビューをしたときも非常に高い評価をされていたカードでした。

eureka:【14-056R】《嵐神ガルーダ》imageに関しては、このデッキでは【12-012L】《テンゼン》imageを倒すためのスロットとして採用しています。
またパワー9000以下のフォワードに対しては【14-102L】《海神リヴァイアサン》imageで除去ができるので、それより高いパワーを持つカードへの対処手段という、除去の役割分担の側面もあります。

ただ【14-118H】《シュテル・リオニス》imageが禁止カードになったことで仮想敵が減り以前ほど重要度の高いカードではなくなったので、採用枚数に関しては1枚に留めました。

――召喚獣に関しては、一般的に「風水」デッキでは汎用性の高い【10-055H】《チョコボ》imageや【9-114C】《不浄王キュクレイン》image などを厚く採用するイメージですが、このデッキではそれらを押しのけ【8-046R】《アレキサンダー》imageが3枚採用されています。こうした採用枚数の決定はどういった意図から決められたのでしょう?

eureka:【8-046R】《アレキサンダー》imageも【12-012L】《テンゼン》imageを意識して採用したカードです。

先ほど【15-047R】《カイツ》imageが登場したことで、【14-125L】《ヴァン》imageに対する【12-002H】《アマテラス》imageのケアができるようになったという話をしましたが、「火単【侍】」のような“攻め”のデッキに対しては、こちらも応戦しながら展開していかなければならず、すべての試合で【15-047R】《カイツ》imageをタイミングよく引けるわけではありません。

なかでも序盤からアタッカーとなり、アドバンテージソースにもなる【12-012L】《テンゼン》imageは対処が後手に回ると、結果的にこちらも無理な動きが必要になり、そうすると【12-002H】《アマテラス》imageに対するガードが下がってしまいます

今回の「第3期名人位決定戦」は2デッキスタンダードというフォーマットでしたが、調整期間が短いこともあり2デッキを調整しきるのは難しく、片方のデッキは既存のデッキのなかから強いものを選択するプレイヤーが多いだろうと考察していました。

「火単【侍】」は「クリスタルの支配者」でさらに強化を受けていたこともあり、一定数以上のプレイヤーが持ち込むデッキだと考えられたので、もともと苦手だということもあり厚めに対策カードを採用しています。

【9-114C】《不浄王キュクレイン》image については、そもそも「風水【空賊】」が風属性のカードで多く構成されているため、ある程度意識して水属性のカードを確保する必要があり、召喚獣の枠にも水属性のカードを採用したいと考えていました。

水属性の召喚獣には【14-113R】《リヴァイアサン》imageなどほかにも強力な選択肢がありましたが、今回【9-114C】《不浄王キュクレイン》imageを採用したのは、EXバーストでドローできる点でカードパワーが担保されていること、もとのコストが1なので【空賊】が選ばれたときに【14-125L】《ヴァン》imageでアクティブになったバックアップからキャストでき、プレイアブルなタイミングが多いカードだったことが理由です。

特に活躍するのが【14-102L】《海神リヴァイアサン》imageを相手にしたときで、【9-114C】《不浄王キュクレイン》image があればフォワードを2体守ることができます。

【10-055H】《チョコボ》imageも【9-114C】《不浄王キュクレイン》imageと同様に【14-125L】《ヴァン》imageの動きに絡めて強い召喚獣として採用していました。

どちらも構築初期は3枚ずつの採用でしたが、実際回しているうちに、コストとして捨てることが多く3枚すべて使うゲームはさほどなかったことから、2枚あれば十分なのかなと考えました。

反対に【8-046R】《アレキサンダー》imageは、仮想敵が明確で絶対に引かなければならないので3枚採用すべきだと思い、現在の配分になっています。


――次にバックアップに関して、「風水」という組み合わせでは【8-058R】《ノルシュターレン》imageや【13-093H】《サラ》imageなどのバックアップをサーチできてデッキの安定性を高めてくれるバックアップの選択肢が豊富ですが、このデッキではそれが【14-054R】《ヨーテ》imageのみ、しかも2枚しか採用されていません。

eureka:バックアップをサーチするバックアップに関しては、全種類使って確かめてみました。
初期には【11-056R】《フィオナ》imageを採用していた時期もあり、そのときは【8-058R】《ノルシュターレン》imageと【13-093H】《サラ》imageを2:1で両方採用するなども試していたのですが、やっぱり【空賊】のバックアップをサーチできないカードは優先度が低いと感じて採用をとりやめました。

【15-115H】《パンネロ》imageのアクションアビリティを0コストで起動するためには、しっかりと【空賊】のバックアップを展開しなければならず、いくら【8-058R】《ノルシュターレン》imageと【13-093H】《サラ》imageでバックアップの展開を安定させたとしても発揮できるポテンシャルは高くならないという結論に至り、現在の構築となりました。

【15-115H】《パンネロ》imageだけでなく【14-125L】《ヴァン》imageと【13-048H】《バルフレア》imageがセットでそろったときは、【空賊】が選ばれるたびに【13-048H】《バルフレア》imageのアクションアビリティのコストをバックアップから支払えるため、強固な盤面が作れるようになり、そういった意味でもバックアップは直接【空賊】につながる構成にしていくことが重要でした。

◆視点の多さは、チームの強さ
――ここまで「風水【空賊】」の強さについて教えてもらいましたが、こうしたデッキ制作の背景にはどういった調整過程があったのでしょうか?
eureka:そうですね。もともと「風水【空賊】」に関しては「クリスタルの支配者」発売直後から【15-047R】《カイツ》imageと【15-115H】《パンネロ》imageの登場でかなり強化されたんじゃないかという話題は出ていました。

デッキも今の構成と近いものを漠然と考えていたのですが、当時は「土水【ドーガ】」や「風単【チョコボ】」などのアグロデッキに対して【空賊】を展開してからゲームする余裕はないということで、一旦このデッキのことは脇に置いていたんです。

しかし禁止・制限の制定が発表されたタイミングでもう一度「風水【空賊】」について考えたとき、これから「風水【空賊】」はベストポジションのデッキになるんじゃないかと思い、再びこのデッキと向かい合ってみることにしたんです。

――今回の禁止・制限では【5-067R】《ミューヌ》imageも禁止カードとなりましたが、その影響はなかったんでしょうか?
eureka:【5-067R】《ミューヌ》imageの禁止について「風水【空賊】」の弱体化だと考えているプレイヤーも多いですが、実は私はその反対だと思っています

というのも、仮に【5-067R】《ミューヌ》imageが禁止を逃れていた場合、【5-067R】《ミューヌ》image+【1-090R】《リュック》imageのコンボを使った無限コンボが風属性最強のデッキだっただろうと考えていたからです。

「風水【空賊】」はゲームが長引くほど強力なデッキである半面、相手への干渉力があるデッキではないため、ある地点に到達した瞬間勝利する無限コンボデッキに対しては耐性がありません

今回の禁止・制限は【5-067R】《ミューヌ》imageも含めて「風水【空賊】」のストッパーになるデッキが軒並み規制を受けたことで、相対的に「風水【空賊】」に対して追い風な環境となりこれだけ活躍できたと考えています。

――以前のインタビューのとき、eurekaさんは「Team Flat Earth」という海外チームで調整を行なっているというお話をされていましたが、今回の「風水【空賊】」もチームで調整したデッキだったのでしょうか?

eureka:はい。今回はまず僕が「風水【空賊】」の素案となるデッキを構築して、それに対してチームメイトがそのデッキから採用カードや枚数を変えたものを試すかたちで、苦手とするデッキや採用してよかったカードなどの情報が共有されていきました。

例えば、先ほどの【8-058R】《ノルシュターレン》imageや【13-093H】《サラ》imageを採用しないというアイディアは自分だけではなくチームメイトとも意見が一致して確証を得たことで現在の構築に反映された部分なのですが、こうした確認作業は特に重要だったと思います。

ひとりでデッキを作って、ひとりで調整を考えていると、それがいいアイディアなのかわからなくなってしまいますが、人と確認しながら調整を行なうといいものができやすいのは間違いないですからね。

今回はチームメイトで「World Championship 2019」にオーストラリア代表として参加していたRobert Meadowsさんが、同じく「風水【空賊】」を使って意見交換をたくさんしてくれました。

――Robertさんには以前こちらの公式記事でもインタビューさせていただきましたね。
eureka:また、シアトルのチームメイトがいろいろなデッキを用意して対戦相手になってくれて、苦手とするマッチアップとの練習の場が多かったというのも、チームで調整する大きな意義でした。

しっかり練習して「火単【侍】」で相手をしてくれるプレイヤーに、こちらのプレイの何が有効だったか、どういうことをされるとキツイか、そういうことを聞けたのは貴重な機会でした。

たぶん、彼らが手伝ってくれなかったら苦手である「火単【侍】」に対して、ここまで勝率を出せる構築には行きついていなかったと思います。

また、対戦を観戦して、試合後に客観的な意見をくれるプレイヤーも何人かいました。
今回はチーム内だけではなくAlex Hancoxさん(※「World Championship?2018」優勝者)がいろいろと提案してくれたことで、さらにいい方向にデッキが煮詰まっていったと思います。

チームだけで意見を共有するのではなく、それをチーム外のプレイヤーと共有することで、さらにいろいろな意見を得られました。
こうしたたくさんの視点からの意見交換によって情報共有や認識の一致を図れたことで、デッキが正しく洗練されていったことが、今回のこのデッキの完成につながりました。

――ゲームを俯瞰する立場から意見が共有されるというのは、普段しどさんと2人で調整している僕には新鮮で、チームとしての魅力だなと感じました。
今回は準優勝のダンカンさんとも「風水【空賊】」をシェアして使われたと聞いていますが、こちらはどういった経緯からそうすることになったのでしょう?

eureka:ダンカンさんとは普段から結構仲良くしてもらっていて、一緒に練習する機会もあったりするんですが、プレイヤーとしての認識も近くて、もともと延期される前の「第3期名人位決定戦」でもデッキをシェアする予定だったんですよね。

禁止・制限が発表されたあとダンカンさんは「火単【侍】」の相方を探していたらしく、「なにかいいデッキはないか?」と相談を受けたので、それならということで「風水【空賊】」を紹介したというのが、今回デッキを共有した経緯です。

ダンカンさんはどんなデッキであっても扱うことができるプレイヤーなので、「風水【空賊】」のようにテクニックを必要とするデッキであっても、使いこなせるだろうと確信していたので。

――その確信が間違いでなかったことは、今回の大会の結果で証明されましたね。今後の環境でも「風水【空賊】」は要チェックのデッキだと思います。【15-047R】《カイツ》imageの能動的な使い方など、細かい部分に至るまでデッキテクを解説していただいて、ありがとうございました!

 

◆おわりに
今回は「第3期名人位決定戦」におけるベストデッキとの呼び声も高い「風水【空賊】」について、製作者のeurekaさんにお話をうかがいました。

デッキ本来のポテンシャルもさることながら、細部まで行き渡った構築と、それを裏付ける調整の行程からもその完成度の高さをうかがい知ることができました。

今後環境が進むなかでも「風水【空賊】」は活躍し続けるだけのポテンシャルを持つデッキとして意識せずにはいられない存在だと思います。

新型コロナウィルスの再流行により「MASTERS 2021」などの公式トーナメントは再び延期となってしまいましたが、いずれ開催されるであろう「MASTERS 2021 FINAL」でも活躍は間違いなしなデッキだと思いますので、この期間に「風水【空賊】」を練習してみるのもいいかもしれませんね。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!