『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は昨年10周年を迎えた「Chapter」シリーズを振り返る振り返る記事の第7回をお届けします。
◆はじめに
皆さん、こんにちは。編集(川)です。
新ブースターパック「反撃の雄たけび」の発売まであと2週間ほどとなりました。
公式のコラムやユーザープレビューで日々新カードが公開されており、また、プレリリースパーティーももうまもなく開催されますね。今回のPRカードは【PR-119/17-087H】《アフマウ》。私は『FFXI』が大好きなので、なるべく多くのプレリリースパーティーに参加したいと思っています。梶本ユキヒロさん描き下ろしの《エクスデス》スリーブもカッコいいですよね!
今週は、公式大会もひと段落した、こういう谷間の時期にお届けしている「Chapter」シリーズの『FFTCG』を振り返る記事の第7回をお届けします。
これまでの「Chapter」シリーズ振り返り記事
#1(Chapter I-II)
#2(Chapter III)
#3(Chapter IV)
#4(Chapter V)
#5(Chapter VI)
#6(Chapter VII)
今回は「Chapter VIII」当時の環境を取り上げます。
それでは、さっそくどうぞ!
◆嵐の前の静けさ
「Chapter VIII」発売直後の2012年12月末、『FFTCG』の第2回全国大会が開催されました。
このときの優勝デッキは「土水」。
前回の記事でも紹介した、何度でもブレイクゾーンから蘇ってくるタフな【PR-044】《ティーダ》と、“除去しにくくてパワー8000あるシステムフォワード”である【7-122S】《ユウナ》による強固なボードコントロール力を持ったデッキです。
「Chapter VIII」でさらに大幅に強化された、というわけではありませんが、ドロー付きの中堅フォワード【8-048R】《サラマンダー》などを手に入れ、デッキパワーが底上げされていました。
このコントロールの王道「土水」に食らいついていったのが「火氷」。「Chapter VI」で氷属性が、「Chapter VII」で火属性が強化されており、アグロデッキの雄として追随していきます。
「Chapter VIII」では新たなヘイスト持ちフォワードである【8-013S】《ルッソ》を獲得しており、さらに攻めが研ぎ澄まされていました。
また、中速デッキとしては前述の「ユウナティーダ」のユウナを、新たに登場した【8-083R】《ユウナ》に入れ替えたタイプも登場。こちらは「Chapter VII」で実質0コストのバックアップである【7-089C】《グラミス》が加わり、足回りが大幅に改善された「水雷」でよく見られました。
【8-083R】《ユウナ》は【7-089C】《グラミス》でサーチできる【4-087C】《ギース》のアビリティで出すことができ、アクションアビリティでジョブ【ジャッジ】を指定すれば、【4-087C】《ギース》や【4-074C】《ドレイス》を強化できる点もデッキにかみあっていました。
このようにコントロールの「土水」、アグロの「火氷」、中速の「水雷」の三すくみで環境が進むかと思いきや、翌2013年の年明けに開催された「MASTERS 2013」千葉大会にてとんでもないデッキがデビューします。
◆あらゆるものを焼き尽くす燎原の火「ガーネット」登場
「MASTERS 2013」千葉大会で衝撃的なデビューを果たしたのは【8-086L】《ガーネット》を中心にしたコントロールでした。
スペシャルアビリティ「幻獣」により、ブレイクゾーンの召喚獣2枚を再利用することで、盤面を強力にコントロールします。
特に、当時ブレイクできるバックアップに制限がなかった【1-097U】《ヘカトンケイル》を何度も召喚するのが強く、中盤以降は使用できるCPに大きな差が生まれます。
ならば、相手が態勢を整える前に攻め切ってしまおうとすると、今度は【6-056R】《レドナ》が立ちふさがります。戦闘で倒したり、ブレイクするためには3CPが必要となり、バックアップが狙われているなかでこのコストを捻出するのには大変苦労しました。
そして、何とか【8-086L】《ガーネット》や【6-056R】《レドナ》を除去したとしても、【4-014U】《フェニックス》や【2-033R】《アスラ》で回収されてしまい、しかもこれらの召喚獣も再び「幻獣」で使いまわされてしまうため、対処は困難を極めました。
フォワードを横並べして一気にダメージを与えようとする戦略には【1-090S】《シャントット》や【8-006U】《サラマンダー》などで対処可能で、【8-006U】《サラマンダー》+【4-014U】《フェニックス》で相手の盤面全体に8000ダメージを与えつつ【6-056R】《レドナ》などを復活させる動きは、このデッキの強大なコントロール力を象徴するアクションでした。
この当時はブレイクゾーンのカードを効率よく除外できるものが少なかったということもあって「幻獣」を妨害しにくくかったこともこのデッキの躍進につながりました。
当然、環境もこれに敏感に反応。
「幻獣」自体が止められないなら、ほかの部分で攻め込もうということで、まず「火氷」が対抗馬として注目されました。
【6-056R】《レドナ》は倒すのではなく、ダル・凍結状態にして無力化し、「幻獣」を使うためのバックアップを並べる前にテンポで押し切ってしまおうという戦略です。先ほど挙げた【8-013S】《ルッソ》によるブロック制限なども有効でした。
また、「幻獣」そのものを封じられる【2-104R】《皇帝》も再評価されました。「Chapter VII」時点でもフォワード化するモンスターや【7-122S】《ユウナ》などに有効であったため採用率が上がっていましたが、さらにここにきて評価を上げました。
これ以外にも【6-056R】《レドナ》のアビリティを発動させずに倒す手段が注目され、「Chapter VII」の【7-014S】《パロム》や、アタックしたときにキャラクターのアビリティを失わせる【2-092S】《ユウナ》などが採用されていきました。
このように、強烈に意識されたかたちとなった「ガーネット」デッキですが、「Chapter VIII」環境はもちろん、続く「Chapter IX」、「Chapter X」環境でもトップメタのデッキとして勝ち続けた結果、2013年10月にはついに「制限カード」に指定され、「カード名【ガーネット】はデッキに3枚までしか入れられない」ようになりました。
「Chapter I」から約3年間、『FFTCG』には禁止・制限カードがなかったため、カードゲームに禁止や制限はつきものとはいえ、当時プレイヤーのあいだには衝撃が走ったのを覚えています。
「そんなに暴れたのなら禁止カードではないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「Chapter X」環境では強いデッキではあったものの一強というわけではなく、デッキパワー的には許容できるレベルにおさまっていました。
ただ、デッキの強さとは別に問題視されたのが、“時間”です。
1ターンの間に多くのアクションが取れ、かつ選択肢も豊富なため、「ガーネット」デッキを使っているプレイヤーが試合時間を多く消費してしまい、それ以外のデッキを使うプレイヤーとの間で不公平が発生していたのです。
また、全体的な試合時間も長くなりがちで、当時の公式トーナメントでは時間切れは両者敗北ではなかったため、時間切れの追加ターンに入ってからの1ダメージで決着というような試合が発生するなど、別のかたちで環境をゆがめていたのでした。
これに対処するかたちで「ガーネット」というデッキタイプ自体は残しつつも、1ターンが長大になる「幻獣」の回数をおさえることで是正をはかるための改定となりました。
強さだけが問題になるわけではないという、ある種カードゲームの奥深さを感じさせる制限指定でしたね。
……ちなみにこのあと出た「Chapter XI」は【8-086L】《ガーネット》が霞むくらい、とんでもないカードがたくさん収録されていたため、制限改定とは無関係に環境は激変しました。それについても今後の記事で紹介していければと思います。
◆おわりに
今回は「Chapter VIII」シーズンの環境を振り返ってみました。
「Chapter I」の発売から丸2年が経ってカードプールが充実してきたことで、各アーキタイプごとに固定スロットと呼べるパーツが確立されてきた時期だったと記憶しています。
「ガーネット」デッキはそんな時期に登場した、まったく新しい形のデッキだったため、その驚きも大きいものでした。
しかし、プレイヤーの工夫により何とか強大なデッキを乗り越えていこうとする意志は、今でも大会結果やデッキリストを見ることで伝わってきて、カードゲームのおもしろさをあらためて感じられました。
それでは、今回の記事はここまで。次回「Chapter IX」編でお会いしましょう。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。