『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS 22-23」仙台大会で優勝した、けすうゆらはさんに「火風【キャスト】」についてお話をうかがいました。
◆はじめに
みなさんこんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
今週も前回に引き続き「MASTERS 22-23」の優勝者インタビューをお届けしていきたいと思います。
今回取り上げる大会の舞台となった宮城県仙台市は、戦国武将の伊達政宗が拓いた「杜の都」としても知られる地です。今大会の決勝は、けすうゆらはさんの「火風【キャスト】」対 ai_fftcgさんの「土雷【黒魔道士】」の対決となりました。
奇しくも「MASTERS 2021」仙台大会の優勝者であるai_fftcgさんに、けすうゆらはさんが挑む格好での対戦となりましたが、1戦目は長期戦の末ai_fftcgさんがデッキ切れで勝利、2戦目はけすうゆらはさんが勝利をおさめたものの、残る制限時間はわずかという状況。最終戦はお互いにダメージを1点も受けられないサドンデス対決となります。ひりつく試合は展開力に優れた「火風【キャスト】」が制し、見事けすうゆらはさんが「MASTERS 22-23」仙台大会の優勝を飾りました。
今回は「MASTERS 22-23」仙台大会を勝ち抜いたけすうゆらはさんにインタビューを行ない、新たな風属性の可能性を示した「火風【キャスト】」と、仮想敵を見据えたデッキ構築のアプローチについてお話をお聞きしました。
◆主軸はそのままに弱点を埋めるアプローチを施した「火風【キャスト】」
――けすうゆらはさん、「MASTERS 22-23」仙台大会優勝おめでとうございます。
けすうゆらは:ありがとうございます。
――けすうゆらはさんは以前インタビューさせていただいたときは“ケンタッキー”さんと名乗っていましたが、またプレイヤーネームを変えて参加されたんですね。
けすうゆらは:はい。スタッフの方からは発音がしにくいと苦笑されてしまいました(笑)。
――それについては僕も同意見です(笑)。さて、今回使用された「火風【キャスト】」デッキは、風属性のキャストギミックを用いた構築で「風単」や「風氷」のようなキャスト型デッキのバリエーションのひとつだと思うのですが、相方として火属性を選択していることが特徴的なデッキだと思います。まずは今回この「火風」という属性を選択した理由について聞かせてください。
けすうゆらは:現在の風属性はカードパワーが全体的に高い水準を誇り、何でもできるオールラウンダーな属性となっています。しかしそれゆえに対策が進み、現環境では「火土【アバランチ】」・「火氷【FFVI】」・「火土水【リディア】」など風属性を意識したデッキが数を増やし、相対的に向かい風の吹く環境になっています。そこで、それらのデッキに対して強い構造を持ちつつ、本来の風属性の強みと両立できるデッキを作りたいと思って考えたのがこの「火風【キャスト】」です。
●デッキリスト:「火風【キャスト】」(「MASTERS 22-23」仙台大会優勝 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(13枚) | ||
【14-042L】 | 《雲神ビスマルク》 | 3 |
【16-135S】 | 《ルールー》 | 2 |
【3-049C】 | 《イザナ》 | 1 |
【16-048H】 | 《ジタン》 | 2 |
【17-063R】 | 《ルッソ》 | 2 |
【10-132S】 | 《ティナ》 | 1 |
【13-107C】 | 《ケイト》 | 2 |
バックアップ(16枚) | ||
【8-058R】 | 《ノルシュターレン》 | 3 |
【9-054C】 | 《パンネロ》 | 1 |
【16-055C】 | 《チョコボ・サム》 | 1 |
【12-038H】 | 《アルテア》 | 3 |
【13-043C】 | 《スティルツキン》 | 1 |
【12-048R】 | 《チョコラッテ》 | 1 |
【13-046R】 | 《パブロフ》 | 1 |
【11-020C】 | 《リルティ》 | 1 |
【11-004C】 | 《クー・チャスペル》 | 1 |
【13-006C】 | 《ザンデ》 | 1 |
【16-001R】 | 《ヴァン》 | 1 |
【13-014R】 | 《ラーケイクス》 | 1 |
召喚獣(14枚) | ||
【10-055H】 | 《チョコボ》 | 2 |
【2-049H】 | 《アスラ》 | 3 |
【12-039C】 | 《アレキサンダー》 | 2 |
【17-053R】 | 《チョコボ》 | 1 |
【12-002H】 | 《アマテラス》 | 3 |
【15-014H】 | 《ブリュンヒルデ》 | 3 |
モンスター(7枚) | ||
【14-049H】 | 《テュポーン》 | 1 |
【16-043H】 | 《アトモス》 | 3 |
【13-037C】 | 《オチュー》 | 3 |
――火属性は、風属性の弱点を克服するためのアプローチとして採用したということですね。具体的に風属性の弱点はどういったところにあると考え、それに対して火属性はどのようなアプローチができると考えたのでしょうか?
けすうゆらは:さきほど例に出した風属性を倒してくるデッキには、序盤の1~2ターン目からのフォワード展開を意識したデッキであるという共通点があります。対する風属性は序盤の展開をバックアップの準備に徹する必要があるため、相手のフォワードに対処することができずに押し切られてしまうという展開になりがちです。逆に、これらのデッキはこちらの【14-042L】《雲神ビスマルク》を倒す手段が乏しいため、一度でも【14-042L】《雲神ビスマルク》をキャストすることができれば、そのまま【14-042L】《雲神ビスマルク》をフィールドに定着させコントロールすることが可能だと考えました。
そこで、この「序盤をバックアップ展開に費やす必要がある」という弱点を克服するためのアプローチとして、火属性の除去能力を持つ【13-006C】《ザンデ》や【16-001R】《ヴァン》、【13-014R】《ラーケイクス》といったバックアップを採用し、バックアップを出しながら相手のフォワードを対処することで、隙を作らずに【14-042L】《雲神ビスマルク》のキャストを狙える構築を目指しました。
――【13-006C】《ザンデ》は除去能力を持つバックアップとして火属性のデッキではおなじみのカードですが、【16-001R】《ヴァン》と【13-014R】《ラーケイクス》は比較的珍しいカードだと思います。
けすうゆらは:【16-001R】《ヴァン》はターン中に3回以上キャストしている必要があるものの、条件を達成していればフィールドに出たときに相手のフォワードに8000ダメージ与えることができるバックアップです。もともと風属性のキャストギミックを軸とした「火風【キャスト】」では条件を達成するのも容易なため、類似効果を持つ他のカードに比べてより高いパフォーマンスを発揮できます。また、スペシャルアビリティも強力でフィールドに出たあとも除去として機能し、同名カードを重ね引いてしまうこともリスクになりにくいカードです。
【12-038H】《アルテア》で手札に戻して再キャストしたり、【2-049H】《アスラ》で回収しスペシャルアビリティを使いまわしたりといった動きも可能です。これ自体が特別強い行動というわけではありませんが、序盤に時間を稼ぐ動きとしては及第点で、バックアップでこうした動きができることには価値があると考えています。
【13-014R】《ラーケイクス》は高パワーのフォワードやブレイクに耐性を持つフォワードへの対抗策で、【13-014R】《ラーケイクス》で除外しているカードと同名のカードが出ている状況なら【12-038H】《アルテア》で【13-014R】《ラーケイクス》を手札に戻しても除外したカードは戻ってこないので完全な除去手段になり、使いまわして重要度の高いカードを除去することで、相手のデッキのキーカードに対して非常に刺さるカードになります。アクティブフェイズにアクティブにならないというフィールドアビリティも、バックアップをアクティブにするカードが豊富な風属性と組み合わせることでデメリットを感じにくい点からも、デッキに合ったカードでした。
これらをサーチできる【9-054C】《パンネロ》や【8-058R】《ノルシュターレン》といったカードが風属性に存在することも「火風【キャスト】」のデッキコンセプトにかみ合っていました。
――それぞれのカードが持つアビリティの条件やデメリットを風属性の特性でフォローすることで、他のデッキにはないパフォーマンスが発揮できるようになったということですね。
けすうゆらは:はい。また、アグロデッキに対しては【15-014H】《ブリュンヒルデ》が有効です。「火風【キャスト】」では【16-135S】《ルールー》のアビリティでパワーを5000にして、それを【15-014H】《ブリュンヒルデ》で打ち取るというコンボがあります。
【14-042L】《雲神ビスマルク》と組み合わせることもできるため、【15-014H】《ブリュンヒルデ》の与えるダメージの低さを補う手段が豊富です。これらのコンボで盤面を対処しつつ、ドローを進めてキーカードにたどり着く動きでアグロデッキのスピードに対抗できるというのも「火風【キャスト】」ならではの強みだと思います。
――火属性の除去を採用し対戦相手のゲームスピードを相対的に遅くすることで、自分の有利なゲームレンジに持ち込むというアプローチを取られたということですね。では次にデッキの主体となる風属性側の要素についてお話をお聞きしたいと思います。基本的には「風単」や「風氷」と同じく【14-042L】《雲神ビスマルク》のフィールドへの定着や、1ターンにカードを7回キャストして【17-063R】《ルッソ》のアビリティを狙うデッキという認識で間違いないですか?
けすうゆらは:そうですね。【14-042L】《雲神ビスマルク》は風属性のカードを使いまわしつつドローを進められるアドバンテージ力と、継続した除去による制圧力をあわせ持つ、言わずと知れた風属性を代表するフィニッシャーです。そのなかでも特に【14-042L】《雲神ビスマルク》と【16-135S】《ルールー》の組み合わせの強さに注目しています。先ほどの【15-014H】《ブリュンヒルデ》との組み合わせもそうですが、【14-042L】《雲神ビスマルク》で【16-135S】《ルールー》を手札に戻し、【16-135S】《ルールー》で召喚獣を回収という動きを何回も繰り返すことでコントロールして勝つというのがこのデッキの基本的な狙いです。
――たしかにこのデッキでは召喚獣の採用が13枚とかなりのスロットを割いています。「反撃の雄たけび」環境のトーナメントで入賞してきたキャスト型の「風単」や「風氷」では召喚獣を6枚程度にとどめていることが多いですが、それらの倍以上の採用はかなり思い切っていると感じました。それぞれのカードの役割についてお聞きしてもよろしいですか?
けすうゆらは:まず【2-049H】《アスラ》は1枚でバックアップを5枚アクティブにできるカードで、これを先述の【16-135S】《ルールー》と組み合わせて使いまわすことでアドバンテージの獲得を狙います。【16-048H】《ジタン》や【17-063R】《ルッソ》などを回収できる点も強力で、フォワードの回収手段に乏しい「火風【キャスト】」で【10-068C】《クーシー》のような役割を果たしてくれます。初期段階ではアドバンテージの獲得手段として【14-057H】《ローザ》を採用していたのですが、現在は【14-057H】《ローザ》に代わるデッキのエンジンとしての役割を担っています。
――キャスト型のデッキなのに【14-057H】《ローザ》を採用していないのは気になっていました。これはどういった理由からなのでしょうか?
けすうゆらは:【14-057H】《ローザ》自体はもちろん強力ですが、リターンが大きい反面弱点も多いカードでした。具体的にはフィールドに出て何もしないまま除去されてしまうと以降の展開が止まってしまうので、【14-057H】《ローザ》を確実に使うために、連続でキャストするカードを手札に貯めこむ必要があります。この動き出しまでのタイムラグが、アグロデッキに対しては大きな隙になってしまいます。
また【14-057H】《ローザ》の5キャスト目のオートアビリティを狙ってキャストを重ねたのに不発に終わり、カードを使うだけ使ったのにバックアップがアクティブになっただけ、という裏目もあります。
もちろん【14-057H】《ローザ》が生き残って試行回数を重ねられればリターンは増していくのですが、「火風【キャスト】」はコンセプト上、序盤のテンポを意識しているので、なにか【14-057H】《ローザ》に代わるカードがないかと考えたときに思い当たったのが【2-049H】《アスラ》でした。
――デッキの潤滑油となるカードとして速度重視の【2-049H】《アスラ》を選択したということですね。【12-039C】《アレキサンダー》と【17-053R】《チョコボ》は役割の近いカードだと思いますが、あえて散らして採用されたのでしょうか?
けすうゆらは:【12-039C】《アレキサンダー》はカードパワーが高いので3枚採用してもいいと考えているのですが、ただドローカードだけを入れても勝てるようにはならないので、手札に加えられるカードの質を重視して1枚は【17-053R】《チョコボ》にスロットを譲りました。
アグロデッキに対しては【16-055C】《チョコボ・サム》でサーチしておいて、2ターン目に【17-053R】《チョコボ》ともう1枚なにかキャストできれば【16-001R】《ヴァン》による8000ダメージを狙うことができます。風属性のバックアップ1枚と【3-049C】《イザナ》でも同じ動きを狙えるので、序盤からキャスト数を稼ぎやすいカードという意味でも重宝しました。
――【3-049C】《イザナ》や【16-055C】《チョコボ・サム》からサーチするカードといえば【10-055H】《チョコボ》も風属性ではおなじみのカードですよね。3枚採用されていることも多いですが、2枚にとどめられています。
けすうゆらは:【10-055H】《チョコボ》は【3-049C】《イザナ》と合わせて3キャストを確約してくれるカードなので3枚採用してもいいのですが、デッキに除去カードが多くなっているぶんフォワードが少なくなっているので、全体のボリュームに配慮して2枚採用にとどめました。
――火属性の召喚獣は【15-014H】《ブリュンヒルデ》に加えて【12-002H】《アマテラス》も3枚と、どちらも最大枚数での採用ですね。
けすうゆらは:【12-002H】《アマテラス》は展開を優先して2枚採用で試したこともあったのですが、対戦を重ねるにつれ妨害手段の少なさや物足りなさを感じたため3枚に増量しました。もともと召喚獣を繰り返し使える構成を目指していたので【12-002H】《アマテラス》は最大限採用したほうがいいだろうと考えています。
――召喚獣の選定を慎重にされたことが伝わってきました。回収役である【16-135S】《ルールー》はデッキのメインギミックとのことでしたが採用枚数は2枚となっており、【10-132S】《ティナ》と散らしての採用となっています。【14-042L】《雲神ビスマルク》の兼ね合いもあるのでこの比率での採用は少し違和感があるのですが、どのような経緯でこういった判断をされたのでしょう?
けすうゆらは:これは【14-057H】《ローザ》を採用していたころの名残で、5キャスト達成時の“当たり”を増やすために名前を散らして採用していたためです。【14-057H】《ローザ》の採用自体は見送ったわけですが、コストを確保するために火属性のカードの枚数を増やしたい意図もあり、採用しているフォワードがコスト3以下に集中していたこともあって【17-090R】《イクシオン》に巻き込まれないコスト4のフォワードであることが活きたシーンもあったので、最終的に入れ替えずそのまま採用しています。
――そのほかのフォワードについても教えてください。【17-063R】《ルッソ》は「反撃の雄たけび」の新カードで風属性の多くのデッキで採用されていますが、採用枚数はプレイヤーによってまちまちという印象です。この「火風【キャスト】」では2枚採用にとどまっていますが、どういった理由からこの枚数になったのでしょうか?
けすうゆらは:デッキのスロットが限られているというのが一番の理由です。基本的に3キャストを狙いつつドローを進めるのが主な役割になるのですが、役割の近いカードで【13-037C】《オチュー》を3枚採用していて、盤面の展開はそちらを優先することが多いので【17-063R】《ルッソ》は2枚に収めています。
【2-049H】《アスラ》からの回収も可能なので、2枚採用で困ったことは特にありません。とはいえ【17-063R】《ルッソ》の7キャストを達成することがデッキの1つのゴールにもなるため、なにか一枠捻出できたら3枚採用も十分に視野に入るカードです。
――次に【3-049C】《イザナ》ですが、これはほとんどの風属性のデッキに採用されているものの、多くのデッキで1枚採用に留まっている印象です。この1枚採用にはどういった意味があるのでしょうか?
けすうゆらは:【3-049C】《イザナ》はバックアップの【12-048R】《チョコラッテ》や召喚獣の【10-055H】《チョコボ》などさまざまなカードをサーチできますが、これ自体が何かをするというカードではありません。むしろこのカードの本質は「確実に2キャスト以上を稼げるカード」だと考えているので、キャスト数をフォローするためのスロットとして1枚だけ採用しています。
――【16-048H】《ジタン》は同名の【3-056H】《ジタン》を優先する方も多いですが、こちらを採用した意図はどういったところにあるのでしょう?
けすうゆらは:【16-048H】《ジタン》は風属性どうしの、特に「風氷」との対面を意識して採用したカードです。「火風【キャスト】」と「風氷」の大きな差は【12-116L】《ロック》や【12-114R】《バラライ》といった強力な多属性カードがある点だと考えています。直接対決では【12-114R】《バラライ》を【12-038H】《アルテア》でひたすら守っているだけで勝負が決まってしまうこともあるので、総合的なデッキパワーという意味では「風氷」に軍配が上がると思います。
「火風【キャスト】」側は何度も使いまわして強いカードが【12-116L】《ロック》のいる「風氷」と比べて少ないので、【16-048H】《ジタン》を使いまわして相手のデッキから有効なカードを奪うことで、この差をイーブンにしたいという狙いで採用しています。このカードを採用したからこそ、風属性どうしの戦いで極端な不利関係にならなかったと考えています。どうしてもフォワードの少なさがネックになるデッキなので、ヘイストや相手のデッキから奪ったフォワードでそのあたりを補えることも【16-048H】《ジタン》の強力な点でした。
――相手とのデッキの性質が近いほど奪ったカードを有効に使いやすいのは【16-048H】《ジタン》ならではの強みですね。「風氷」に対しては不利というお話でしたが、同じくキャスト軸である「風単」との相性関係はいかがでしょうか?
けすうゆらは:「風単」は「火風【キャスト】」や「風氷」と違い単属性のデッキなので、少ない枚数のバックアップからでも動ける安定性というメリットと、引き換えに採用できるカードの選択肢が狭く長期戦を想定した有効札が少ないというデメリットがあります。
対「火風【キャスト】」や対「風氷」との対戦では、お互いに【12-038H】《アルテア》を使えるため常にキャスト数が担保されていて、多少引きが悪くてもその次のターンに一定以上のアクションをとることができます。そのため単属性でデッキを固めるメリットが活きにくく、長期戦におけるデメリットの面だけが目立ってしまいます。こうした理由から、個人的には同型対決は属性の多さを活かした「火風【キャスト】」・「風氷」側が有利になると考えています。
この「火風【キャスト】」はフォワードの採用枚数をかなり絞っているため、フォワードの展開できるバリエーションの差が「風単」との対戦での課題になるかと考えていたのですが、実際に使ってみた結果、除去の豊富さがこの差を埋めてくれることがわかり、想定していたほどフォワードの少なさが問題になることはありませんでした。この点でも「風単」側に対して不利な要素となるとは考えにくかったです。
この3デッキだけでデッキパワーに序列をつけるのであれば「風氷」>「火風【キャスト】」>「風単」という順になるのかなという印象です。
――個人的にはもっとも「火風【キャスト】」ならではのカードだと感じたのが、多属性カードである【13-107C】《ケイト》の採用です。
けすうゆらは:【13-107C】《ケイト》は「風氷」に採用されている【12-115C】《リュック》と同じ役割のカードですが、【12-115C】《リュック》よりさらに1枚多くバックアップをアクティブにできる上位互換的なカードだと考えています。
また、バックアップの枚数分のダメージを与える効果も最大5000ダメージでちょうど【16-135S】《ルールー》のアビリティと噛み合っており、【2-049H】《アスラ》で回収しながら【16-135S】《ルールー》でパワーを修整し、そのまま【13-107C】《ケイト》で打ち取るという動きができます。
――除去能力を持つバックアップがコンセプトということはお聞きしてきましたが、それ以外のバックアップの採用カードについても教えてください。
けすうゆらは:【8-058R】《ノルシュターレン》をはじめとする【カテゴリ(FFCC)】のバックアップについてはもはや風属性のほとんどのデッキで採用されています。このデッキも例にもれず採用していますが、「火風」というカラーリングなので先ほどの【13-014R】《ラーケイクス》に加え【11-020C】《リルティ》と【11-004C】《クー・チャスペル》を採用しています。【11-020C】《リルティ》は「風氷」の【11-041C】《ユーク》と同じ役割としての採用、【11-004C】《クー・チャスペル》は【15-083L】《リディア》に有効なカードとしての採用でした。
もちろん【15-083L】《リディア》に限らず有効な対象は多く、今回の大会ではカブキンさんが不意に出してきた【14-087L】《武神ラーヴァナ》にも的確に対処できたなど、特定の対面に依存しない汎用性の高さを感じました。
――【カテゴリ(FFCC)】のバックアップとしては【12-038H】《アルテア》が3枚で、かなり手厚く採用している印象を受けます。
けすうゆらは:【12-038H】《アルテア》は当初2枚採用で使っていたカードだったのですが、【12-038H】《アルテア》を引かないことで攻め手が遅れ、それが原因で時間切れしてしまった試合を経験したので、仙台大会にあたって3枚に増量しました。「火風【キャスト】」は【16-001R】《ヴァン》、【13-014R】《ラーケイクス》、【16-135S】《ルールー》、【13-107C】《ケイト》など、とにかくフィールドに出したときに除去をするカードが多いので、【12-038H】《アルテア》を早く引けば引くほど盤面の制圧が早くなります。また【12-038H】《アルテア》があることで少なくとも以降のターンのキャスト数が保証されるので、重ねて引きすぎるデメリットより早く引けるメリットのほうが大きいと判断しました。
――モンスターカードは【16-043H】《アトモス》を手厚く、【14-049H】《テュポーン》を抑え目に採用している印象を受けました。
けすうゆらは:【16-043H】《アトモス》は従来【14-057H】《ローザ》が担っていた役割を補える点や【10-039C】《ナグモラーダ》などのサーチ手段がないことを考慮して3枚採用しています。
モンスターゆえの対処されにくさで盤面に定着させやすいだけでなく、ダメージを3点受けると強力なアドバンテージ源となるため、フィールドにあるだけで相手のアタックを抑制してくれる点も【14-057H】《ローザ》にはない強みでした。総じて裏目のない【14-057H】《ローザ》という印象で、デッキの潤滑油として活躍してくれたカードです。
【14-049H】《テュポーン》については、除去が豊富な「火風【キャスト】」では他の風属性デッキほど優先度が高いカードにはなりにくいと考え採用枚数が絞りました。とはいえ元々のフォワードの少なさを考慮するとフォワード化できるモンスターは十分採用の価値があるとも考えていたので1枚採用したかたちとなります。
【12-038H】《アルテア》で風属性のバックアップの枚数を調整して除去をかわすというテクニカルな使い方もできるので、全体除去を連打してくるデッキに対してフォワードが維持しやすくなるのはこのカードの強みだと思います。
◆デッキ作りのポイントは仮想敵に強いデッキ構造を見つけること
――けすうゆらはさんは「光の使者」環境の「火単【ブラスカ】」や、今回の「火風【キャスト】」など、環境に一石を投じるデッキを大会に持ち込み勝ち抜いている印象がありますが、デッキを作るにあたって意識されていることなどがあれば教えてください。
けすうゆらは:「このデッキを倒したい。」という具体的な仮想敵を想定して、どうすればそのデッキに勝てるかという“勝つためのポイント”を見つけることを意識しています。そのうえで気を付けているのが「カード単位で対策するのではなく、そのデッキに有利な構造のデッキを作る」ことです。
『FFTCG』はいわゆるサイドボード(ゲームとゲームの間にデッキのカードと入れ替えられるカードのこと)があるゲームではないので、特定のデッキに対してのみ有効なカードをピンポイントで採用するデッキ構築には向いていません。
極端な話、「火土水【リディア】」が流行っているからという理由で【17-090R】《イクシオン》を多めに採用すると、コスト4以上のフォワードを軸にしたデッキには弱くなってしまいますが、トーナメント中は【17-090R】《イクシオン》を入れ続けなければならないので、仮想敵以外とのマッチアップでは活躍させにくいカードを抱えた状態で対戦しなければなりません。
いざ「火土水【リディア】」と戦うときに【17-090R】《イクシオン》を引けずに負けてしまう可能性もあります。そういった原因で負けてしまうことは個人的にはナンセンスだと思っているので、そうではなくまずはデッキ自体にポテンシャルがあり、そのうえでデッキの構造が仮想敵に対して有利なものになるようなアプローチが求められると考えています。
今回の「火風【キャスト】」は、ここまでお話ししてきたとおりまず「風単【キャスト】」という土台があり、そこからアグロデッキを意識して火属性の除去能力を持つバックアップを採用することで、バックアップの準備で生まれる隙をフォローしようというコンセプトで考えたデッキなので、「風単【キャスト】」並みのデッキパワーは担保されつつも、仮想敵に対して絶対にこのカードを引かなければならないという特定のカードがないため、デッキ本来の動きを目指すことで自然に仮想敵に勝てるポイントがあります。
――メタゲームで具体的な仮想敵を想定したデッキを持ち込むのは、それ自体が環境への高い理解度が必要になると考えているのですが、いわゆるメタ読みをするときにどういった基準でメタゲームを考察されるのでしょうか?
けすうゆらは:直近の大会でどういったデッキが勝っているかという結果はもともと意識していましたが、最近はショップ大会にも積極的に参加していろいろなデッキを使ったり、みんながどんなことを考えてデッキを選んでいるかなどを考えています。そうしたなかで環境への意識の変化を考え、トーナメントごとに適切なデッキを持ち込むことが大事だと考えています。
――前回、伊勢崎大会にご一緒したときも「火風【キャスト】」を使用していましたが、仮に今回優勝を逃していた場合、次の大会でも「火風【キャスト】」を使おうとは思っていましたか?
けすうゆらは:「火風【キャスト】」については、今回ダメだったらまた別のデッキを一から考え直そうと思っていました。今回引き続き使ったのは、伊勢崎大会では不燃焼気味な結果で終わってしまいデッキに心残りがあったこと、そして当日の参加者を見てある程度使うデッキの傾向にあたりがついたので、仙台大会は「火風【キャスト】」が有効な環境になると想像できたことが理由です。
――では参加者によっては別のデッキを選択する可能性もあったということですか?
けすうゆらは:そうですね。もう1つの選択肢として「火土水【リディア】」も調整していたので、状況次第ではそちらを使用することも視野に入れていました。『FFTCG』は長くプレイしているぶん大会参加者に知っている人も多いので、この人はこういうタイプのデッキを使うだろうというなんとなくのイメージがあります。なので、基本的には大会に参加するにあたってデッキを2つ用意しておき、プレイヤーを見ながらその日のデッキを決めることが多いです。
――ひとつのデッキにこだわるのではなく、その大会ごとにベストなデッキを選択できるよう常に意識されているのですね。それでは最後に一言お願いします。
けすうゆらは:次は「MASTERS 22-23」横浜大会に参加予定なので、L3構築でも環境を見定めたデッキ作りができるよう心掛けていきたいと思います。参加する方はよろしくお願いします。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回は「MASTERS 22-23」仙台大会で優勝したけすうゆらはさんにインタビューを行ない、新たなキャスト軸デッキの可能性を示した「火風【キャスト】」についてお話を伺いました。
もともとのデッキのポテンシャルを活かしつつ、弱点を克服しさらにブラッシュアップした構築を打ち出すデッキ作りのセンスはさすがと言うほかありません。
今後もけすうゆらはさんのデッキ構築に期待していきたいと思います。
次回は10月30日(日)に開催された金沢大会のインタビューをお届けしたいと思います。
環境に再び姿を現したコントロール型「火単」を深堀りしていきますので、ご期待ください。
それではまた次回の記事でお会いしましょう!