『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週はライターのたるほさんが、いよいよ開幕した「光の使者」環境のメタゲームについて考察します。
◆はじめに
皆さん、こんにちは!
『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
最新ブースターパック「光の使者」が発売されて2週間、新環境の『FFTCG』はいかがでしょうか?
僕はプライベートな時間はほとんど『FFTCG』に捧げてしまうほど全力で楽しんでいます。
「光の使者」は非常に強力なセットで、既存のデッキを強化するものはもちろん、新たなデッキタイプを成立させるカードも多く、いくら遊んでも遊び足りません。
前回の「たるほの隙あらばデッキ語り」では新カードを使ったデッキを紹介しましたが、今回の記事では「光の使者」の新カードがトーナメントシーンにどのような影響を与えるかという視点から、新環境のメタゲームを考察していきます。
再開され始めた「MASTERS 2021」や、5月下旬からスタートする「第四期 名人戦」といった公式トーナメントに参加される方の参考になれば幸いです。
それでは、さっそく始めていきましょう!
◆環境に吹く新風
冒頭でも触れたとおり「光の使者」の新カードはどれも強力で、『FFTCG』全体のカードパワーを一段階上のステージへと引き上げてくれました。
そんななかでも風属性は「光の使者」発売前に行なわれたプレビューでも、レジェンドカードである【16-051L】《セシル》をはじめインパクトのあるカードが多く「新環境では風属性が活躍するだろう」と考えたプレイヤーも多いのではないでしょうか?
もちろん僕もその1人でした。
そして、恐らくこの予感は正しいものであったと思います。
風属性の新カードには【16-051L】《セシル》のほかにも【16-048H】《ジタン》、【16-043H】《アトモス》、【16-135S】《ルールー》などが追加され、そのどれもが非常に強力な効果を持つカードとなっています。これらのカードは汎用性が高く、「風単」や「風水【空賊】」といった風属性を採用したデッキが大きな恩恵を受けています。
また、これらのカードには「このターンにキャストしたカードの枚数」にまつわる効果を持つカードであるという共通点があります。
風属性で“キャスト回数”といえば「第3期名人位決定戦」でも優勝した「風氷」デッキの軸となるギミックでしたが、こうしたカードの登場で「風氷」は既存のデッキの中でも頭ひとつ抜けた強化を受けたデッキではないかと考えられます。
また、風属性が強化されるということは、【14-042L】《雲神ビスマルク》が強化されることであるとも言えます。
【14-042L】《雲神ビスマルク》はここまで挙げた「風氷」、「風単」、「風水【空賊】」にも採用されている風属性のエースカードです。
大幅に風属性が強化された「光の使者」環境では、1ターンでも【14-042L】《雲神ビスマルク》に生き残られてしまうとそのまま勝敗が決まってしまうほどのアドバンテージを与えてしまいかねません。
しかし、実はこの【14-042L】《雲神ビスマルク》に対抗しうるカードもまた「光の使者」で登場しているのです。
それが先ほど挙げた【16-051L】《セシル》です。
【16-051L】《セシル》の、キャラクターが選ばれるたびに2CPを要求するアビリティは、除去のために複数回フォワードを選ばなければならない【14-042L】《雲神ビスマルク》にとって、非常に厄介なもの。いかに【14-042L】《雲神ビスマルク》が優秀といえども、アビリティの半分を封じられてはたまったものではありません。
この構図を見るに、風属性のなかで1つのメタゲームが成立していると言えるほど「光の使者」の登場が風属性に与えた影響は大きいと言えるでしょう。
◆メタゲームという氷山、その一角に
新カードによって大きく強化されたと思われる風属性ですが完全無欠というわけではなく、2つの弱点が考えられます。
1:バックアップの展開を前提としたデッキであること
2:除去手段が乏しいこと
この弱点を突き、風属性を打倒するための活路は氷属性にあると思っています。
バックアップの展開を前提とする風属性デッキにとって、氷属性の得意とするダル凍結と手札破壊で準備を整える前にリソースを奪われてしまうのは、デッキの根幹を破壊されることに近いです。
コストが返ってくるカードが多いとはいえ元のコストが重いこともたたり、手も足も出ずに負けてしまうという展開もしばしばです。
なかでも、そういった展開の立役者となるのが【16-023H】《アグリアス》です。
選ばれるたびに手札を捨てさせる【16-023H】《アグリアス》は実質的に除去に対して追加で2CPを要求しているため、先ほどの【16-051L】《セシル》と同様に【14-042L】《雲神ビスマルク》に対しても非常に強力なカードです。除去に乏しい風属性で【16-023H】《アグリアス》を単体で除去できるカードは【14-049H】《テュポーン》など手段が限られており、仮に除去できたとしても後続で出てきたフォワードを止めるのが難しくなります。
また【16-023H】《アグリアス》は【カテゴリ(FFT)】のキャラクターをコントロールしていればパワーが+3000されるため、半端なブロッカーでは太刀打ちできません。
【1-057R】《ラーグ公》や【1-156C】《オヴェリア》と合わせて使えば、パワー9000になるためエース級のアタッカーとなります。
また、そんな【16-023H】《アグリアス》とセットで強いのが【16-042R】《ラスウェル》です。
ダル凍結と手札破壊の効果をあわせ持つ氷属性の特徴を体現したようなカードで、単体で見ても非常に強力でありながら、そのどちらも【ジョブ(騎士)】とシナジーを持つため【16-023H】《アグリアス》を強化してくれます。【16-023H】《アグリアス》と【16-042R】《ラスウェル》のコンビは、今後氷属性の顔としてさまざまなデッキで見かけることになるでしょう。
ほかにも氷属性の【ジョブ(騎士)】には【13-023R】《シャルロット》がいて、こちらもDamage 3のアビリティで【13-023R】《シャルロット》が受けるダメージを軽減することで【14-042L】《雲神ビスマルク》を無効化でき、相性のよさを発揮してくれます。
さらに、氷属性が風属性の天敵になると考えている理由は【16-023H】《アグリアス》などによるかく乱効果だけではありません。別の理由として、【16-030L】《シャントット》の登場による突破力の向上が挙げられます。
相手のフォワードをすべてダルにして強行突破できるためこちらのフォワードの数=ダメージとなり、クリスタル1つとフォワードの頭数さえ用意できれば簡単にゲームを決めることができます。
個々のフォワードを選ばないため【16-051L】《セシル》や【16-058R】《フィーナ》のような「選ぶ」に耐性を持ったカードに対しても有効で、召喚獣などによる介入手段を持たないデッキ相手にはこれ1枚で勝ててしまうこともあります。
問題となるクリスタルの獲得も【16-023H】《アグリアス》でまかなうことができるので、無理なく使うことができる強力なフィニッシャーと言えるでしょう。
もちろんフィールドに出しても強く、ブレイクゾーンからの回収というこれまで氷属性に不足していた要素も補うどころか、同系統の効果のなかでも頭ひとつ抜けた使いやすさで実現してくれています。
◆メタゲームに適した除去需要の高まり
風属性の【14-042L】《雲神ビスマルク》、氷属性の【16-030L】《シャントット》などの活躍が予想されることから、メタゲームにおける第3勢力には、環境に適した除去能力が求められることになりそうです。
除去といえば火属性ということで、「火単【侍】」や「火単コントロール」は今環境でも安定した活躍を見せてくれることとなるでしょう。
【12-002H】《アマテラス》は、【16-051L】《セシル》や【16-023H】《アグリアス》を選ばずに処理できるカードとして、今後さらに活躍の機会を広げるでしょう。
また「光の使者」の新カードでは今日紹介しただけでも【16-048H】《ジタン》、【16-023H】《アグリアス》、【16-042R】《ラスウェル》と、パワー5000のフォワードが多いことから【15-014H】《ブリュンヒルデ》の重要度が高くなるであろうことが予想されます。
【15-014H】《ブリュンヒルデ》を意識して、パワー5000以下のカードは必要以上に採用しないというのも今後デッキの構築段階で注意すべきポイントかもしれません。
また火属性には【16-011L】《スコール》や【16-014R】《ディリータ》など新たなバリエーションの全体除去も追加されていて、これらのカードは【16-051L】《セシル》や【16-023H】《アグリアス》など、あまり効果で選びたくないフォワードでも一掃できる可能性がある点も強力です。
そして「光の使者」は火属性に限らず、各属性の除去カードの選択肢が増えたことも印象的なセットです。
前回紹介した「火雷【黒魔道士】」はこと除去に関していえば特に抜きん出ているデッキで、【16-088L】《黒のワルツ3号》は相手の手札破壊でもアビリティが誘発することから、氷属性のアグロデッキに対しては無類の強さを発揮します。
また氷属性の【16-026L】《暗闇の雲》や水属性の【16-124H】《ライトニング》のように、これまでフィールドの脅威に干渉しにくかった属性が、条件付きではあるものの除外という形で除去する手段を得たことは無視できない変化だと感じました。
環境が進み、除去すべき仮想敵が明確化することで、こうした除去のバリエーションのなかからもっとも適した除去手段を持つデッキが台頭してくるのではないかと考えられます。
◆おわりに
最後に、現時点での僕の考察をまとめると、
・風属性の新カードが活躍し、「風氷」をはじめとする風属性のコントロールデッキが台頭する
・風属性に対抗する形で氷属性のアグロデッキが活躍の幅を広げる
・【14-042L】《雲神ビスマルク》や【16-030L】《シャントット》などの影響から除去デッキの需要が高まる。各属性の除去手段が多様化したことで、環境に適した除去手段を持つ属性がメタゲームで勢力を伸ばす
というのが環境の大きな潮流になるのではないかと考えています。
もちろんこのほかにも【16-070L】《麒麟》や【ジョブ(モールズの夜会)】を軸とした、フォワードの展開に特化したデッキも存在します。
「火単【侍】」や「火土【アバランチ】」などに加え、こういった自分の展開を押し付けてくるアグロデッキは多少の相性差なら覆して勝ってしまうポテンシャルがあるので、こういったデッキもチェックしておく必要がありそうです。
とはいえ、現時点での考察は自分のプレイ環境を前提とした部分が大きく、机上論の要素も多くなっています。
今週末に開催される「MASTERS 2021」京都大会からついに「光の使者」の新カードが解禁となりますので、今後の大会の動向を追いつつ、答え合わせをしていければと思っています。
また各大会の優勝者インタビューから活躍しているデッキを掘り下げていきたいと考えていますので、そちらもぜひご注目ください。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!