『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は新ブースターパック「秘められた希望」で登場する「Limit Break」がゲームに及ぼす影響を考察します。
◆はじめに
みなさん、こんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
最新ブースターパック「秘められた希望」の発売が目前に迫ってきました。
3月22日(金)の発売に向け、公式サイトでは全カードリストが公開され、今週末からは全国各地で「プレリリースパーティー」(※イベントページにリンク)が開催されます。
発売が目前に迫り、多くのプレイヤーが新たなカードの登場に期待を高めていることと思いますが、そのなかでもプレイヤーの関心を集めているのが新メカニズム「Limit Break」の登場でしょう。
今回はカードリストも公開されその全容が明らかになった「Limit Break」について考察し、開始目前の「秘められた希望」環境を先取りしていきたいと思います。
それでは、さっそく始めていきましょう!
◆新メカニズム、「Limit Break」を考える
みなさんご存じのとおり「Limit Break」は3月22日(金)発売のブースターパック「秘められた希望」で新たに登場するキーワードアビリティです。
「ファイナルファンタジー」シリーズでは『ファイナルファンタジーVII』で登場したメカニズムで、これにより主人公たちはまさに限界を超えた必殺技「リミットブレイク技」を使えるようになります。これまでの『FFTCG』ではこのリミットブレイク技は「スペシャルアビリティ」という形で再現されてきましたが、今回の「Limit Break」はメカニズムそのものをゲームのギミックとして『FFTCG』で再現しようというものになります。
まずは簡単に「Limit Break」のルールを確認していきます。
「Limit Break」を持つカードは「LBカード」と呼ばれます。これらのカードはメインデッキ(通常使用する50枚)には入れられず、LBカードのみを使用し最大8枚で構築できる「LBデッキ」に入れられます。LBデッキに入れることができる同じカードの枚数は、通常のカード同様3枚までです。
LBカードは通常のカードと同じタイミングでキャストできますが、その際に通常のコストに加えてカードごとに指定されている「Limit Break — X」 (※Xはカードによって異なる)という、「LBコスト」を支払ってキャストする必要があります。
LBコストはXで指定された枚数分、裏向きのLBデッキのカードを表にすることで支払うことができます。表向きになっているLBデッキのカードはキャストしたり、LBコストの支払いにあてることはできません。
フィールドを離れたLBカードは一度移動先の領域を経由し、即座にLBデッキに表向きで置かれます。※たとえばLBカードのキャラクターがブレイクされた際はブレイクゾーンに置かれたのちLBデッキに移動するため、「ブレイクゾーンに置かれたとき〜」のようなオートアビリティは発動します。
ゲームでは、戦闘中にリミットゲージが満タンになるとリミットブレイク状態になり強力なリミット技を使えるようになります。そしてリミットゲージは時間とともに徐々に減っていくのです。
『FFTCG』における「Limit Break」もLBデッキをリミットゲージに見立て、これを表にしていく(=リミットゲージを消費)ことで強力なLimit Breakが使えるというリミットブレイクのメカニズムを再現したギミックと言えるでしょう。
では、ここからはLBカードの登場がこれからの『FFTCG』にどういった影響を与えていくのかを考察していきたいと思います。
★考察①:ゲーム中に使用できるリソース量が増加
「Limit Break」の登場でまず考えられるのが、ゲーム中に使用できるリソース量が増えることです。
先ほど確認したとおり、LBカードはLBデッキから直接キャストできるので、第2の手札のような感覚で使うことができます。つまり手札が2つある状態でゲームするようなものです。
LBデッキには最大で8枚のカードを使えるため行動の選択肢も幅広くなります。
もちろんLBカードにはLBコストが設定されているので、この8枚すべてを使い切れるわけではありませんが、使用するカードの組み合わせによって1~4枚分ゲーム中に使えるカードが多くなります。
といっても使えるカードが増えるという条件はどちらのプレイヤーも変わらないため、プレイヤー間ではこれによる影響は感じにくいかもしれません。
個人的に「Limit Break」の登場によるこの変化がもっとも影響を与えるのは「属性間の力関係」に対してだと考えています。
なかでも氷属性は特に大きく影響を受ける属性と言えるでしょう。
氷属性はこれまで相手に手札を捨てさせる、あるいはキャラクターをダル・凍結させることで相手のリソースに干渉し、ゲームを優位に進行することを戦略の軸とする属性でした。しかし「Limit Break」が登場したことで、仮に相手の手札を0枚にしてもLBデッキからカードをキャストされるようになり、これまでのように相手の行動が制限できなくなったことでこの戦略は相対的に弱体化したと考えられます。
こうした背景からか「秘められた希望」で登場する氷属性のカードはこれまでよりカードパワーが上がっているように感じます。【22-024L】《クラサメ》は条件次第で最大5枚もの手札を捨てさせるオートアビリティを持っていますが、これまでの『FFTCG』においてこれほどまで容易に大量の手札を捨てさせる効果を持つカードはなかったので、こういったところからもLBカードがゲームに与えるであろう影響の大きさを感じ取ることができます。
氷属性と反対に「Limit Break」の登場が追い風になっていると考えられる属性もあります。それが水属性です。
水属性は相手のフォワードの対処手段としてフォワードを手札に戻す、いわゆるバウンス効果による除去が中心の属性でした。しかしバウンス効果は脅威を一時的に排除しても再度キャストされてしまうため、ダメージによる除去や直接ブレイクする効果と比べ質の面でやや劣りその代わりコストが軽いという特徴を持っていました。
しかし一度フィールドを離れると二度とキャストができないLBカードに対しては、単にコストが軽いメリットだけが反映される有効な除去手段となります。
そのため今後「Limit Break」が強力になればなるほど、水属性の有用性は高くなっていくと考えられます。
もちろんこうした変化は「Limit Break」のメカニズムを設計する段階で当然想定されていたことだと思うので、過去のカードへの影響は大きいものの、未来のカードはそれに適応したものが登場することが予想されます。むしろ「Limit Break」の登場は今後の各属性における戦略の転換期となるかもしれません。
★考察②:再現性の高い動きが可能に
「秘められた希望」で登場するLBカードのなかにはデッキの根幹となる【22-113L】《モント・リオニス》のようなカードも登場しています。
これまでの『FFTCG』においてデッキのコンセプトとなるカードは、サーチ効果を持つカードなどと組み合わせ確実に活躍させることがセオリーでしたが、LBデッキから直接キャストできるLBカードはサーチという行程を挟む必要がなく、引けないという心配が万が一にもありません。
このことからLBカードを主軸としたデッキは、非常に再現性が高いデッキになることが予想されます。
また【22-120H】《クラウド》のような除去効果を持つLBカードは、相手の行動に対する回答を的確に用意できるため、状況に確実に対処できます。このようなに防御性能の面でも、LBカードが持つ再現性の高さは活躍が期待できます。
そしてカードリストの公開とともに更新された総合ルールのなかでは、召喚獣のLBカードの存在も想定されています。
召喚獣はその性質上相手の行動に介入する力が強く、現在でも【12-002H】《アマテラス》や【9-068H】《ドラゴン》といったカードが活躍しています。
仮にこれらに匹敵する性能を持つ召喚獣のLBカードが登場したら、「あのカードを持たれていたら……」という仮定で判断していた局面も、「あのカードがあるから……」という妨害を念頭に置いた判断が求められるようになるかもしれません。
★考察③:デッキ構築にも変化が
「Limit Break」の登場は今後のデッキ構築にも影響を与えるかもしれません。
たとえば「土水カオスアーク」のように召喚獣を多用するデッキはこれまで、フォワードのスロットを召喚獣に回すことでデッキを成り立たせていましたが、LBカードの登場でこれまで以上にそのスロットを切り詰めることもできるようになりました。
「秘められた希望」で登場するLBカードはすべてフォワードですが、もしバックアップのLBカードが登場すれば、「水単」や「風単」のようなバックアップを切り詰めていたデッキは、よりとがったデッキ構築を目指すことが可能になります。
また【19-104HH】《マディーン》や【19-105H】《アーク》のようなデッキ構築に制約をかけてくるタイプのカードもLBデッキのカードで条件を満たせるようになるため、これまで条件の厳しさがネックになっていたカードもデッキに採用しやすくなります。
実際【22-124H】《リレルリラ》が登場したことで、メインデッキに闇属性のカードがなくても本来より軽いコストで【19-105H】《アーク》をキャストすることができます。今後は恐らく光属性のLBカードも登場するでしょうから、【19-104H】《マディーン》がより活躍を見せる日も近いでしょう。
このように過去のカードに再び焦点が当たる可能性が生まれたことも「Limit Break」というメカニズムのすばらしい点だと思います。
★考察④:LBカードと通常カードとの違い
ここまで「Limit Break」の優れた点を考察してきましたが、LBカードと比較して通常カード側のほうが明確に優れている点もあります。それが、再利用が可能という点です。
LBカードのキャストにはLBコストの支払いが必要であり、一度フィールドを離れたLBカードは表向きでLBデッキに戻ります。表向きになったLBデッキのカードを裏向きにする手段は現状では存在しないので、これらのカードはゲーム中に再度使用することはできません。
しかし通常のカードはコストにしたり、フィールドを離れてもブレイクゾーンから手札に加えることで再度キャストできるので、使用制限がないという強みがあります。
またLBコストとして支払えるコストの総数は通常のカードに比べてかなり少なく、一度コストを支払ってしまうとその後で使えるLBカードは限定されていきます。
たとえば「Limit Break — 3」の【22-113L】《モント・リオニス》は1ゲーム中最大2回使うチャンスがありますが、ゲーム序盤の展開をしのぐために【22-112R】《ザックス》をキャストするとそのゲームでは1回しか使えないことが確定してしまいます。「Limit Break — 7」の【22-118H】《シャントット》はよりこの性質が顕著です。
このようにLBカードと通常カードではゲーム中で使用できる回数に明確に違いがあるので、一概にLBカードのほうが優れているとは言い切れない絶妙なバランスのデザインとなっています。
◆注目のLBカードをピックアップ
それでは最後に、僕が個人的に注目しているLBカードをピックアップしていこうと思います。
【22-113L】《モント・リオニス》
火属性のレジェンドカードである【22-113L】《モント・リオニス》は「モント・リオニスがフィールドに出たとき、あなたのブレイクゾーンにあるコスト3以下の火属性のフォワード1枚とコスト5以下の火属性のフォワード1枚を選ぶ。あなたが火属性のバックアップを5体以上コントロールしている場合、それらをフィールドに出す。ターン終了時までそれらにヘイストを与える。その後、あなたのコントロールするバックアップ1体をブレイクゾーンに置く。」というオートアビリティを持つLBカードです。
火属性のバックアップ5体をコントロールしているというかなり厳しい条件があるものの、1枚で3枚分のフォワードになり、さらにヘイストを付与することで一気に攻勢に出られるオートアビリティであり、これ1枚で戦況を覆す非常に強力なLBカードです。コスト3以下とコスト5以下を参照するので、【21-010H】《タイヴァス》や【12-017H】《マギサ》といったコスト3以下のフォワードを活用できるカードとの組み合わせをイメージするプレイヤーも多いと思います。
ただし、これらを使ったデッキはバックアップをあまり必要としないアグロ性能の高いデッキだったため、そのまま【22-113L】《モント・リオニス》を採用して即活躍というわけにはいかなそうです。しかしコントロール色の強い「火単」であれば【22-113L】《モント・リオニス》の条件を満たしつつ、上記のカードも採用できるので、「秘められた希望」環境では「Limit Break」がどれだけ活躍するかのひとつの指標になるのではと考えています。同時に登場した【22-112R】《ザックス》は【19-001R】《イフリート》と相性がよく、対アグロ性能も向上しているので、「火単」は新環境で特に注目していきたいデッキです。
【22-120H】《クラウド》
コスト4、パワー8000というスペックを持ちながら「クラウドがフィールドに出たとき、コスト3以下のフォワード1体を選ぶ。それをブレイクする。」というシンプルかつ強力なアビリティを持つ【22-120H】《クラウド》は活躍の場も広く、さまざまなデッキで見かけることになるカードでしょう。
前環境で活躍した「雷単カオスアーク」のように雷属性を採用したデッキはもちろん、【1-107L】《シャントット》や【11-072R】《デシ》が採用されているデッキでも容易にキャストでき、「火単マギサ」などに採用されている【19-124L】《ヤ・シュトラ》からもコストを支払えるため、むしろ採用されていないデッキのほうが少なくなるのではないかとさえ考えられます。
これだけ幅広いデッキに採用される可能性がある以上、「秘められた希望」環境はコスト3以下のフォワードにとって向かい風の環境になることは間違いありません。
環境に与える影響力という意味で、今回のLBの中でもっとも注目すべきカードだと考えている1枚です。
【22-122L】《ティーダ》
水属性のレジェンドカード【22-122L】《ティーダ》も非常に強力なLBカードです。【22-122L】《ティーダ》のオートアビリティは「ティーダがフィールドに出たとき、あなたがフォワードかバックアップを合わせて8体以上コントロールしている場合、あなたは《水》《水》《水》を支払ってもよい。そうしたとき、以下から最大3つまで選択する。「フォワード1体を選ぶ。それをデッキの1番下に置く。」「バックアップ1体を選ぶ。それをデッキの1番上に置く。」「カードを2枚引く。」」というもので、フォワードとバックアップが8枚必要という条件はかなり厳しいものの、【22-113L】《モント・リオニス》ほどの属性の制約はなく、さまざまなデッキに採用される可能性があります。
フォワードとバックアップに同時に干渉できる強力さは【19-119L】《ウネ》などで証明されていますが、幸い【19-119L】《ウネ》ほどの速度で展開されることはありません。
【22-120H】《クラウド》同様に、強力な除去効果を持っているカードが多くのデッキに採用されるであろうことから、「秘められた希望」環境はかなり除去が強い環境になることが予想され、トーナメントシーンにおいても間違いなく活躍する1枚になると言えるでしょう。
◆おわりに
今回は新メカニズム「Limit Break」が今後の『FFTCG』にどういった影響を与えるのか考察してきました。
メカニズムとしての強力さはもちろんですが、各カードの強さという点でも環境に与える影響は相当なものになりそうです。
次回はさらに一歩進み、実際に「Limit Break」を使用したデッキについて考えていこうと思いますので、ぜひお楽しみに。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。