『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「光の使者」環境初の公式大会である「MASTERS2021」岡山大会で優勝したkenさんに「水単【ティーダ】」についてうかがいました。
◆はじめに
皆さん、こんにちは!『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。
公式トーナメント「MASTERS 2021」の最終盤の日程が「光の使者」環境で開催され、さらに5月21日(土)からは「第四期 名人戦」も始まるため、一気に「光の使者」環境がヒートアップしてきました。
僕も先日「MASTERS2021」東京大会に参加しましたが、環境の序盤から前回の記事での考察をはるかに飛び越え、これまで活躍していたデッキはもちろん「光の使者」で登場した新たなタイプのデッキも活躍する、群雄割拠の混沌としたメタゲームとなっています。
今回はそんな「光の使者」環境で最初のスタンダードでの大会となった「MASTERS 2021」岡山大会でみごと優勝されたkenさんにインタビューを行ない、新環境の口火を切った「水単【ティーダ】」はいかに生まれたか、お話をうかがいました。
ken
広島を中心に活動するコミュニティのエースプレイヤー。
「MASTERS 2021」シーズンでは、同じく広島勢のデッキビルダー、
居ないヒト氏謹製のデッキを操り二度の優勝を果たした。
優秀なプレイヤーとビルダーの布陣で臨む広島勢に、今環境も要注目だ。
◆プレイしていて爽快!?【16-116L】《ティーダ》のコンボデッキ!
――「MASTERS 2021」岡山大会、優勝おめでとうございます。
ken:ありがとうございます。
――kenさんは「MASTERS 2021」では昨年11月の徳島大会とあわせて二度目の優勝ということで、さすがの実力を発揮されましたね。「水単」というデッキも水属性を好むkenさんらしい選択だと思いますが、今回はどういった経緯でこのデッキを使うことになったのでしょう?
ken:いまお話があったように、僕は水属性が好きで「光の使者」の発売以降も水属性のカードを中心にデッキを模索していました。特にレジェンドカードである【16-123L】《メイア》と【16-116L】《ティーダ》を軸にしたデッキを作りたいと考えていたのですが、召喚獣という明確なテーマを持つ【16-123L】《メイア》に比べて、【16-116L】《ティーダ》は何となく強そうだという漠然とした印象のカードで、実際にどうやってデッキにしたらいいのかわかりにくいなと悩んでいたところ、広島勢の仲間である居ないヒトさんが、「【16-116L】《ティーダ》を使ったデッキを考えてきたよ」と教えてくれたのが、今回のデッキの原案となるものでした。
それを僕たちのコミュニティで仮想敵としていたいくつかのデッキと対戦してみたところ、高い勝率と手応えを感じることができたため、広島勢の中でさらにブラッシュアップして持ち込んだのがこの「水単【ティーダ】」です。
●デッキリスト:「水単【ティーダ】」
(「MASTERS 2021」岡山大会優勝 フォーマット:スタンダード)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(12枚) | ||
【16-116L】 | 【ティーダ》 | 3 |
【10-120L】 | 【フォルカ》 | 3 |
【6-124H】 | 【ライトニング》 | 3 |
【14-116H】 | 【マシュリー》 | 3 |
バックアップ(7枚) | ||
【1-177R】 | 【ユウナ》 | 3 |
【4-138R】 | 【メルウィブ》 | 3 |
【15-116C】 | 【ヒルダ》 | 1 |
召喚獣(24枚) | ||
【1-178R】 | 【リヴァイアサン》 | 3 |
【6-125R】 | 【リヴァイアサン》 | 3 |
【7-125C】 | 【リヴァイアサン》 | 3 |
【13-100R】 | 【リヴァイアサン》 | 3 |
【14-113R】 | 【リヴァイアサン》 | 3 |
【15-106C】 | 【アトモス》 | 3 |
【12-097H】 | 【シルドラ》 | 3 |
【12-108C】 | 【レモラ》 | 3 |
モンスター(7枚) | ||
【16-117H】 | 【トロス》 | 3 |
【15-118C】 | 【ブルードラゴン》 | 3 |
【14-100H】 | 【オクトマンモス》 | 1 |
実はもう1つ広島勢のなかで注目して調整していたデッキとして、こちらも居ないヒトさん考案の【16-070L】《麒麟》を軸にしたデッキがあり、どちらを使うべきか直前まで悩んでいたのですが、最終的にはサイコロを振って、その結果僕は「水単」を使うことに決まりました。
――【16-116L】《ティーダ》をどうやって使えばいいのかというのは、たしかに頭を悩ませるところですよね。実は僕もこの「水単」を居ないヒトさんから教えてもらい東京大会で使用したのですが、このデッキを知るまではどうやってデッキにすればいいのか、ピンときていませんでした。実際に【16-116L】《ティーダ》を軸にしたデッキとして、どういったアプローチがあったのかお聞きしてもよろしいですか?
ken:【16-116L】《ティーダ》はブロックされないアタッカーでありながら、選ばれると自分と相手のフォワードをデッキに戻し、自身がデッキに戻ると3ドローするというアビリティを持っており、放置しにくいのに選べば損をするという性質があります。こうした性質は、カードを見るだけで何となく強力そうというイメージはできるのですが、「じゃあどんなカードと合わせて使えば効果的に活躍できるのか?」というのがこのカードの難しい点だと思います。
この「水単【ティーダ】」では、序盤から【16-116L】《ティーダ》を押し付けて対処を強いていくことで、【16-116L】《ティーダ》の強みを活かすことをコンセプトにしています。
長くフィールドに居座らせることで、常にプレッシャーをかけ続け、どこかで対処しなければ負けてしまうという状況を作るというアプローチですね。
またこのデッキには【16-116L】《ティーダ》とは別に、【16-117H】《トロス》と【10-120L】《フォルカ》というコンボで戦うプランもあります。
【16-117H】《トロス》の「対戦相手のフォワードを手札に戻したときカードを引く」アビリティを、【10-120L】《フォルカ》と合わせて継続して使うことができるのが強力です。
【10-120L】《フォルカ》を使う都合上、水属性の召喚獣を多用することになりますが、【16-117H】《トロス》がいることで【1-178R】《リヴァイアサン》などがEXバーストしたときにおまけで1ドローがついてくるようになり、採用している召喚獣のスペックを底上げしてくれているのも地味ながら優秀な働きでした。
また、【16-117H】《トロス》と【10-120L】《フォルカ》はどちらも選ばれにくいので、その点でも【16-116L】《ティーダ》との相性が良好です。
【16-116L】《ティーダ》で序盤からプレッシャーをかけてダメージを重ね、その間に展開した【16-117H】《トロス》+【10-120L】《フォルカ》のコンボでアドバンテージを稼ぎ早期に詰め切るというのが「水単」のコンセプトです。
――【16-117H】《トロス》と相性がいいカードとしては、【14-116H】《マシュリー》も採用されています。召喚獣を多用するデッキとの相性もよく、非常にマッチしたカードだと思いますが、光属性ながらサーチ手段なしで3枚採用というのはなかなか強気な構築にも思えます。
ken:【14-116H】《マシュリー》は、極力相手のフォワードを手札に戻すのを念頭に置いて運用することを心がけました。
そのため【14-116H】《マシュリー》を守るために自身を戻すというアビリティの使い方はせず、除去されても問題がないように3枚採用しました。
サーチ手段がないのは、序盤から積極的に引きたいカードではなく【16-116L】《ティーダ》である程度ダメージを重ねた後に詰めの手段として引けていれば問題がないためで、召喚獣にデッキのスロットを割くためにバックアップは極力節約したかったので、このデッキでは【14-116H】《マシュリー》をサーチするカードは採用していません。
――バックアップの採用を極端に絞っている点も、このデッキの特徴的な構築ですね。
ken:元々は【5-132R】《バデロン》を採用しバックアップを並べることも意識していましたが、調整の結果このデッキの軸になるフォワードは3コストに集中していて、同じターン中に2体以上展開することを重視していないので、バックアップは1枚置けていれば十分に動けるという結論になり、スロットは最小限に絞って採用しています。
ただ結果的にですが、【14-100H】《オクトマンモス》をフォワードとして使いにくくなってしまった側面もあるので、そのあたり構築面でまだまだ詰められる点はあったかと思います。
――召喚獣に関してはどういった基準での採用なのでしょうか?
ken:先ほど少し触れたのですが、僕たちのコミュニティでは居ないヒトさんの持ち込んだ【16-070L】《麒麟》デッキが強いという認識があり、それに勝てることがデッキの1つの指標となっていました。
このデッキは【16-117H】《トロス》がいることで、相手の展開のリソースが枯れるまでフォワードを手札に戻し続けることができるので、召喚獣も先ほどの【1-178R】《リヴァイアサン》をはじめ【6-125R】《リヴァイアサン》、【7-125C】《リヴァイアサン》など、役割の近いカードを採用しています。
ただしこのスロットに関しては、環境にあわせて自由にカードを選べるので、今後のメタゲーム次第でまだまだ変わっていく部分だと思います。
――新カードの【16-124H】《ライトニング》は一見するとフォワードの展開を先行したいこのデッキとは相性が悪いようにも見えますが、3枚しっかりと採用していますね。
ken:【16-124H】《ライトニング》は原案では1枚のみでしたが、調整のなかで増量したカードです。
「水単」は属性の都合上、相手のフォワードを対処する手段がどうしても手札に戻すことに集中してしまいます。
もちろんこれまで話してきたように、このデッキはそれを活かすコンセプトを持っているのですが、風属性のように手札があればあるだけ展開ができるようなデッキ相手には、こうした戦術はかえって逆効果となってしまいます。
なかでも【16-051L】《セシル》は対処自体が難しいこともあり、手札に戻す以外の除去手段となる【16-124H】《ライトニング》は重要なカードだと判断し、3枚しっかりと採用しました。
また【16-116L】《ティーダ》への対抗手段として、相手がフォワードを大量展開し、こちらより先にゲームを決めようとするゲームプランを取ってくることがありますが、こうした相手に対する切り返しとしても【16-124H】《ライトニング》は有効です。
――デッキを使ううえで、特に意識していた点などあれば教えてください。
ken:とにかく重要なのが【16-116L】《ティーダ》を相手より先に展開し、こちらが攻めのイニシアチブを取るということです。そのため相手によっては、初手から手札を2枚コストにしてキャストするというのも重要です。
実際大会でも、バックアップを展開してからきれいにコストを支払って展開することを意識した結果、出遅れが響いて負けてしまった試合があったので【4-138R】《メルウィブ》や【12-097H】《シルドラ》から積極に【16-116L】《ティーダ》につないで、初手からキャストすることも視野に入れつつ展開するのがいいです。
こちらのデッキは【16-116L】《ティーダ》で4~5点目までダメージを稼いでしまえば、残りの数点は【16-117H】《トロス》と【10-120L】《フォルカ》や【14-116H】《マシュリー》で強引に攻め込むこともできますし、【16-116L】《ティーダ》は対処されたとしてもこちらにその分リソースが返ってくるので、相手次第では序盤から大胆に動くことも重要です。
――ありがとうございました。
◆おわりに
今回は「MASTERS 2021」岡山大会で優勝されたkenさんへのインタビューでした。
「光の使者」環境のスタンダードでの最初の大会ということもあり特に注目が集まった大会でしたが、そんななか早くも新カードの【16-116L】《ティーダ》が大活躍したという結果には強い衝撃を受けました。
インタビューのなかでも出てきた【16-070L】《麒麟》デッキなど、広島勢が今後どんなデッキを送り込んでくるのかも期待したいところです。
長かった「MASTERS 2021」の予選大会も終わり、ついに「MASTERS 2021 FINAL」への参加者が出そろいました。
各大会の優勝者が最強の称号をかけ、6月25日(土)に東京のスクウェア・エニックス本社に集います。
そして次回は、最後の予選大会となった「MASTERS 2021」東京大会で優勝された現・世界王者のKurosawaさんによる、新環境型「土水【リディア】」の解説となります。
それではまた次回の記事でお会いしましょう!