『FINAL FANTASY TRADING CARD GAME』の公式記事連載。今週は「MASTERS22-23」福岡大会で優勝した、サトツさんのインタビューをお届けします。
◆はじめに
みなさん、こんにちは! 『FFTCG』公式記事ライターのたるほです。今週も引き続き「MASTERS 22-23」の優勝者インタビューをお届けしたいと思います。
今回取り上げる大会の舞台は九州第一の都市・福岡市。もつ鍋や水炊き、博多ラーメンに博多うどん、明太子など「食」の街としても知られる人気の観光都市です。会場となった「博多バスターミナル」は博多駅に隣接する施設で、バスのターミナルとしてだけでなくさまざまなお店が軒を連ねる商業施設としての顔も持ち合わせます。
そんな福岡の中心で、「L3構築」で開かれた福岡大会の決勝は、ともに地元福岡の強豪プレイヤーであるサトツさんとあとら@あそくまさんによる「火水」のミラーマッチとなりました。熾烈なコントロール対決となった決勝戦でしたが、互いの除去の応酬のなか、その一手先にあるデッキ切れをいち早く意識したサトツさんが2本連取するかたちで勝利を飾り、世界選手権への出場経験を持つプレイヤーとしての威厳を示すこととなりました。
今回は「MASTERS 22-23」福岡大会で見事優勝したサトツさんにインタビューを行ない、環境最強と言われたデッキのその先についてお話をうかがいました。
◆最高到達点のその先へ。【15-009C】《バハムート》採用型「火水」
――「MASTERS 22-23」福岡大会優勝おめでとうございます。
サトツ:ありがとうございます。
――今回の福岡大会はL3構築での大会となりましたが、サトツさんは横浜大会でも優勝していた「火水」を使用しての参加でした。構築の面でも横浜大会でひれひれ(∵)さんが使用されたものに非常に近い内容だと思いますが、まずは今大会で「火水」を選択された経緯について教えてください。
サトツ:「反撃の雄たけび」環境のL3構築はサーチ手段が少なく、特にバックアップをサーチできるバックアップがほとんどないため、スタンダードと比べて動きの再現性が高いデッキが限られているという印象でした。そこで【16-112C】《コルセア》、【15-116C】《ヒルダ》、【17-116C】《ゴードン》といったドロー効果を持つバックアップが充実している水属性を採用したデッキを使いたいと考えていました。そうしたなか神戸大会ではANNKAKE@あそくまさんの「水雷」、横浜大会ではひれひれ(∵)さんの「火水」と、ともに水属性を軸にしたデッキが優勝を果たしており、大会の結果を見ながら環境の推移に合わせて「火水」を選択することにしました。
●「火水」(「MASTERS 22-23」福岡大会 優勝 フォーマット:L3構築)
カード番号 | カード名 | 枚数 |
フォワード(23枚) | ||
【17-002L】 | 《エドガー》 | 3 |
【17-017H】 | 《マッシュ》 | 3 |
【15-124H】 | 《リルム》 | 2 |
【15-110C】 | 《ガウ》 | 2 |
【15-122L】 | 《モグ [VI]》 | 3 |
【15-126R】 | 《レナ》 | 3 |
【16-115H】 | 《セーラ[MOBIUS]》 | 3 |
【17-113L】 | 《グラセラ・ウェズエット》 | 3 |
【17-129H】 | 《ヴィネラ・フェネス》 | 1 |
バックアップ(16枚) | ||
【15-002C】 | 《エアウォリアー》 | 2 |
【15-007C】 | 《侍》 | 3 |
【16-001R】 | 《ヴァン》 | 3 |
【15-116C】 | 《ヒルダ》 | 1 |
【15-123C】 | 《予言士》 | 3 |
【17-116C】 | 《ゴードン》 | 1 |
【16-112C】 | 《コルセア》 | 3 |
召喚獣(6枚) | ||
【15-009C】 | 《バハムート》 | 3 |
【15-014H】 | 《ブリュンヒルデ》 | 3 |
モンスター(5枚) | ||
【16-010H】 | 《ジン》 | 1 |
【17-007C】 | 《ゴブリン》 | 3 |
【16-117H】 | 《トロス》 | 1 |
――水属性が使われていて、かつ最新のメタゲームに合ったデッキを検討していたということですね。具体的に「火水」に魅力に感じたポイントはどういったところにあるのでしょう?
サトツ:先ほども触れましたが、水属性には【16-112C】《コルセア》、【15-116C】《ヒルダ》、【17-116C】《ゴードン》などのドローを進めることができるバックアップが豊富で、序盤の立ち上がりが非常に安定します。今回のデッキでは合計5枚これらのカードを採用していますが、これに加えて【16-115H】《セーラ[MOBIUS]》でもバックアップを探しに行くことが可能なので、バックアップ1枚からゲームスタートしなければならない場合のプランも確保されています。
このほかにも【15-007C】《侍》か【15-123C】《予言士》+【17-129H】《ヴィネラ・フェネス》から立ち上がるなど、スタートプランのパターンが多いのが個人的に気に入っているポイントです。そのうえで「火水」には【17-113L】《グラセラ・ウェズエット》や【17-002L】《エドガー》といったわかりやすいパワーカードが多いので、安定して強い動きができるという点で、他のデッキより一歩先行していると思います。
また、これは前々回のひれひれ(∵)さんのインタビューのなかでもお話しされていましたが、「土氷」に対して有利というのも「火水」の魅力的なポイントだと考えていました。
神戸大会の結果を見たとき個人的にもっとも目を引いたデッキが「土氷」で、L3構築の大会に参加するうえで無視できない存在であり、今大会の参加者の中にも明確に「土氷」を選択してくるだろうと確信していたプレイヤーがいたので、その対戦を意識したデッキ選択が重要だと考えました。
福岡など、九州地区での大会は他地域と比べて遠方ということもあり遠征してくるプレイヤーもそれほど多くありません。そのため大会に参加するプレイヤーがある程度固定化されていて、プレイヤー単位でのメタを意識したデッキ選択が有効な傾向にあります。今回、こういった個人メタの事情も踏まえ、デッキ選択や構築で意識した箇所が多いです。
――構築の面ではほとんどひれひれ(∵)さんの「火水」と変わりありませんが、【17-007C】《ゴブリン》ではなく【15-009C】《バハムート》を採用している点が明確な違いかと思います。このカードはどういった意図で採用したのでしょうか?
サトツ:福岡大会に向けて調整をする過程で、あそくま勢のまっすーさん(福岡で活動するあそくま勢の一員で「MASTERS 22-23」下関大会でも優勝している実力者)の「王の剣」デッキと対戦する機会があったのですが、そのときに【15-094L】《ニックス》のアビリティに選ばれない能力がかなり苦手だと感じた経験がありました。これ以外にもL3構築では【15-121R】《マヤコフ》のようにアビリティでの対処が難しいフォワードや【16-051L】《セシル》のように複合ダメージで対処しにくいフォワードが存在します。
【15-009C】《バハムート》はこれらのカードを1枚で対処できるという点がそれ以外の除去カードに比べ優れています。先ほど挙げたカードを採用したデッキを調整しているプレイヤーがごく身近にいたこともあり、大会中対戦する機会も多いだろうという予想しこれらのカードへのガードを下げすぎないようにと今回採用を決めました。また、横浜大会の結果を受け自分以外にも「火水」を選択するプレイヤーがいるだろうと仮定したとき、ミラー対決では召喚獣による除去の重要性が上がるだろうという予想もありました。
――「火水」ミラーで召喚獣の重要性が上がるというのは具体的にどういったことでしょうか?
サトツ:これには大きく2つの理由があります。まず1つが「火水」のミラー対決では【15-009C】《バハムート》が局所的に活躍するタイミングがあるというものです。「火水」の動きの強みの1つとして、除去と展開の要となる【17-002L】《エドガー》+【17-017H】《マッシュ》の存在があります。ご存じのとおり【17-002L】《エドガー》で回収した【17-017H】《マッシュ》をキャストし、そのまま【17-002L】《エドガー》のアクションアビリティで【17-017H】《マッシュ》の「オーラキャノン」を狙うという動きですが、【17-002L】《エドガー》のアクションアビリティで【17-017H】《マッシュ》に対象をとったタイミングで【15-009C】《バハムート》で【17-017H】《マッシュ》を除去すると、除去をしつつ相手の狙いを外すことができます。
相手からすれば狙ったカードが除去できず想定した盤面も作れないので、ここが攻守を入れ替えられるターニングポイントになります。ひれひれ(∵)さんのインタビューで触れられていましたが、『FFTCG』において基本的に召喚獣による除去はコスト面で損しやすい傾向にありますが、特定の状況においては単なるコスト交換だけではないテンポの面でのアドバンテージを得られるというリターンがあるのが召喚獣ならではの強みと言えます。
そして、もう1つの理由が「火水」のミラー対決での勝敗を分ける要因がデッキ切れによるものになりやすいということです。
「火水」どうしの対戦では出したフォワードを交互に除去しあい、フォワードが並ばずダメージが進まないという展開がよく起こります。フォワードを出した分だけ相手にフォワードを出すチャンスを与えることになるので、お互いフォワードを出さず手札に除去を温存してターンを回す、いわゆるドローゴーの展開となり、結果デッキの残り枚数が勝敗を分けることが多いのです。このとき重要になるのが、序盤をいかにサーチやドローを行なわずにやり過ごすかというプレイなのですが、【17-007C】《ゴブリン》は後続を含めサーチによってアドバンテージを伸ばすカードなので、フィールドに出す選択を取りにくいミラー対決ではかえって自分の首を絞めてしまうカードになってしまう可能性がありました。
実際に福岡大会の決勝では【15-009C】《バハムート》による盤面の対処でテンポをとり、最終的には対戦相手のデッキ切れで決着がつく試合運びとなり、狙ったとおりの働きをしてくれました。
――横浜大会からさらに一歩メタに踏み込んだことが「火水」のミラー対決を分けたということですね。2位のあとら@あそくまさんの構築では【17-007C】《ゴブリン》が採用され、【15-009C】《バハムート》は不採用ということからも、明確にそこの差はあったのだろうと思います。こうした採用の違いはあれど、基本的にはひれひれ(∵)さんの構築を踏襲しています。その他の変更されていない部分に関しては納得のいくものだったということでしょうか?
サトツ:序盤の立ち上がりに強い【16-115H】《セーラ[MOBIUS]》、中盤以降を支える【17-002L】《エドガー》といった【カテゴリ(VI)】のフォワードや【17-113L】《グラセラ・ウェズエット》、クリスタルギミックの頂点となる【15-126R】《レナ》など、どのカードも活躍してくれたのでカード選択に関しては原案となるデッキの完成度の高さがうかがえました。
ただ、個人的な好みでいえば【15-124H】《リルム》に関しては1枚採用を減らして、別のカードにしてもよかったんじゃないかという思いは調整段階から大会まで通じてありました。【15-124H】《リルム》は【17-002L】《エドガー》とセットで使うことを前提としたカードであり、それぞれのカードが完結した強さを持つ「火水」というデッキとは方向性が異なるという印象でした。特に自分が【15-009C】《バハムート》を使っていたこともあり、組み合わせで使うカードは相手の召喚獣にテンポを取られてしまうかもしれないという意識もありました。
もちろん【17-002L】《エドガー》とセットで使うことで高いパフォーマンスを発揮できる点は強力だったため最終的には2枚採用しましたが、結果的にこのスロットには【15-116C】《ヒルダ》をもう1枚採用してバックアップを増やしつつEXバーストを持つカードを増やし、【16-117H】《トロス》も1枚増やしてモンスターで戦うプランを重く見る構築にしてもよかったかなと思います。
――デッキ切れによる勝利も意識してプレイされたとのことでしたが、プレイするうえでなにか心がけたポイントなどはありましたか?
サトツ:「火水」のミラー対決ではデッキ切れが勝敗を分けると考えていたため、デッキ枚数を意識し山札のカウントは序盤から行なうように心がけていました。とはいえ、露骨にカウントするとこちらがデッキ切れを狙っているのが見え見えなうえ、そのために時間をかけてしまってはその行動がそもそも時間切れのリスクにつながるため、お互いに使ったサーチやドローの枚数、与えたダメージの量からデッキの大体の残り枚数を把握しておき、適度なスピードでゲームを進めることも同時に意識していました。特に福岡大会の決勝トーナメントはベスト4のうち3人が「火水」を使っていたので、こうした構築やプレイが活きた試合は多かったです。
◆さらに盛り上がる福岡の『FFTCG』事情
――サトツさんは福岡を拠点に活動されているプレイヤーですが、福岡は「MASTERS 22-23」でも各地で活躍しているあそくま勢など含め、特に盛り上がっている印象がある地域です。今回も大会に向けた調整などは地元の方と取り組まれたのでしょうか?
サトツ:実は今大会は自分含め地元プレイヤーの都合がつきにくかったこともあり、あそくま勢のまっすーさんと数回対戦できた程度でした。調整にかけた時間という意味ではこれまででも特に少ないなかでの参加になりました。ただ、大会中は最初に話した「土氷」はもちろん、仮想敵と考えていた「火水」、そして【15-009C】《バハムート》を採用した動機にもなった【15-121R】《マヤコフ》を使った【踊り子】デッキなど、事前に想定していたデッキとはひととおり対戦したので、かなり自分の想定したメタゲームだったと思います。
もともと九州地域は『FFTCG』に限らずカードゲーム全般でいわゆる「地雷デッキ」と呼ばれるメタゲーム外のデッキが多い傾向にあるため、メタゲーム予想が外れやすいと思っているのですが、最近はあそくま勢を中心に他地域の情報を取り入れメタゲームの流行に沿ったデッキ構築や調整を行なうプレイヤーが増えたことで、逆に想定外のデッキと当たることが少なくなってきたように感じます。
もちろん想定外のデッキを得意とするプレイヤーもいるのですが、コミュニティ間の距離が近いことでそうしたデッキを知る機会も多いため、この人はどういうデッキを使うだろうか? という予測が立てやすく、仮想敵が明確な環境であれば長く『FFTCG』に取り組んできた自分に一日の長があると考えていましたし、そういった強みが今回の結果に出たのかなと思います。
――ある意味、古参プレイヤーとしての気概による勝利だったというわけですね。
サトツ:最近福岡ではかなり『FFTCG』が活発で、自分たちやあそくま勢以外にも新規プレイヤーを見かけるようになりましたが、だからといってまだまだ新勢力に負けるわけにはいきませんからね。
――それでは今後に向けて一言いただきたいと思います。なにやら今回は告知したいことがあるんだとか。
サトツ:はい。先ほど話したとおり現在福岡では『FFTCG』が盛り上がっており、新規のプレイヤーの方も増えてきた印象があります。そこで自分でも非公認イベントを開催し、この盛り上がりを応援したいと考えました。
今回、「力の復活」の発売にあわせて12月18日(日)にGameスペース&cafe『ドラグーン博多』さんにて第2回目となる非公認大会を開催するので、ぜひその告知をさせていただきたいなと。
大会と銘打っていますが、順位など気にせず参加できるゆるい感じのイベントですので、初心者の方も大歓迎です。
実はこれまでも『FFTCG』の非公認イベントは行なってきたのですが、今回はホビージャパンさんからサプライをご提供いただいておりますので、参加いただく皆様に楽しんでいただけるイベントを予定しています。
詳しくは自分のTwitter(@satotsu0620)で応募を募っておりますので、ご連絡ください。福岡で『FFTCG』をプレイしている方をはじめ、他地域からの参加も歓迎ですので、興味がある方はぜひご参加ください!
――サトツさんの主催イベント、とても楽しそうですね。関東からは少し遠いですが、本当なら僕も遊びに行きたいところです。
サトツ:今後も定期的に開催していきたいと考えていますので、たるほさんもいつか遊びに来てくださいね。
――ぜひ遊びに行きたいと思います。本日はありがとうございました。
◆おわりに
今回は「MASTERS 22-23」福岡大会で優勝したサトツさんにインタビューを行ない、横浜大会に引き続きL3環境を制した「火水」についてお話をうかがいました。
デッキの根幹はそのままに、さらに一歩踏み込んだ構築で優勝を手にしたのはさすがのひとことです。こうした小さな構築の違いが、結果に大きな影響を与えるのもカードゲームの奥深い点ですね。
また、サトツさんはご自身でイベントを主催されるということで、こちらも非常に楽しそうです。今回、僕は残念ながら参加できないのですが、次回以降ぜひ遊びに行きたいと思っています。
興味がある方は、ぜひ参加してみてください。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!